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ヤマザキマリさんに学ぶ、目に見えないものを思い描く力

 「テルマエ・ロマエ」を知らない日本人は多くないと思うが、原作者ヤマザキマリさんが、いかにして、2000年以上の時空を超えたあのような作品を生み出せたのか、本作の着想を得たのか、そのちょっとフツウじゃない半生の一端を垣間見れる本。ヤマザキさんというヒトがいかに形成されてきたかのヒントが、少しだけわかる。

 なんか、わたしを取り巻くこの日常、この世界に違和感を感じている10代、20代の人には、ぜひお勧めしたい一冊。

ヴィオラ奏者で文字通り国境を軽々と超えてきた母親の元、北海道の厳しい寒さのもと育ち、14歳で欧州ひとり旅、17歳でイタリアへ絵を描くために留学、ダマスカス(シリア)、ポルトガル、シカゴ(アメリカ)と、地球を転々と過ごしてきたヤマザキさんの物事の見方は、ちょっとフツウじゃない。

 今の自分の考えを支えている価値観、「枠の中の安定」という妄想、そんなものを、一度取っ払いたい、外から覗いてみたいと思う人には、感じることがいくつもある文章が散りばめられている。

 例えば、こんな文章。

「自分はこうだから」って、それに合わせたアイテムで装ったり、それに合わせた考え方をするようになっていたり、あるいはそこから外れたようなことをすると「自分らしくない」というけれど、「一体、誰がそれを決めたんでしょうね?」という話です。
自分らしいとか、らしくないとか、何かをやる前から囲いを決めてしまうことは、最初から自分で自分の限界を決めてしまう事に等しい。
「ここからここまでが私ってことで、よろしく」みたいに自分の輪郭を決めて、その中に安住しようとする。そんな狭小住宅みたいなところに、自分を押し込めてどうするのでしょう。振り返ってみても、私は、ただ前からやってくるものを、はっ、はっと必死で乗り越えたり、よけたりしながら、ひたすら前に進んできただけで、その時に自分らしいとか、らしくないとか考えたことは一度もなかったと思います。
無我夢中で生きていると、そんなことは二の次、三の次で、どうでもよくなるのではないでしょうか。

 正解がある問いについては、これからも、どんどん正解が見つかるスピードが速くなっていく。

 枠にはまらず、外からモノゴトを見れる人は、強い。

 強く生きるには、エネルギーを調達する必要がある。

 自分を包んでくれる存在を大切にしよう、と思える本。

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