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【本紹介】Think again①(Adam Grant著)

  考える。今よりもっと良い考えがあるんじゃないかと、考える。Un-learn, think again. テクノロジーが発達し、私たちの生活に変化をもたらしていく世の中ですが、人間が持つ、"考える"という行為には、より深淵なものがあり、その行為に秘められた大きな力にフォーカスをあてたのが、本書「Think again」です。

 なんだか第六感が働く、なんだか嫌な予感がする、そんな直感が当たった事がある人も多いでしょう。あなたの経験や考えが、そのような形で発露しているのかもしれません。匠と呼ばれる職人が、ある湯呑みを見て、「佇まいがよくない」と言ったという話があります。そんな言葉に表せない、全体のバランス、調和。何かが崩れている時に、その分野の匠(人間)が感じる違和感。そんなものを磨いていきたいと感じさせる本です。人間は、「考え」を改めることができます。それが人に本来備わっている、考える力。

 本書では、山火事に出動する、森林救助消防士の例が紹介されます。自らの装備を脱ぎ捨てられなかった、最後まで自分の考えに固執してしまったがゆえに、Rethinkをできなかった人の例が実例・実名を用いて挙げられています。Blackberryを発明し、一躍時の人となった経営者も、あるポイントで「時代」を読み間違えて自分の考えに固執してしまったため、凋落の道を辿りました。そんな事例を読んで、もしかすると読者は"そんなの学者の後付けだ、後からは批評するのは何とでも言える"と思うかもしれません。

 しかし、何かを決める際に、「あ、ちょっと待てよ、もう一度(この点から)考えてみよう」と思えるかどうかで、結果は大きく変わってくるかもしれません。Think again、この再考の習慣が身につける事ができれば、その積み重ねは大きな差となって、あなたの人生を好転させる可能性が増えるでしょう。

 「当時に問題に直面している当事者は、今あなたが見ている情報の見方とは異なるはず、当事者は当時に出来る情報を集め、ベストな選択をしたはずだ」とあなたは言うかもしれません。それは確かに一理あります。では、なぜそんなリスクを冒してまで、ましてや実名で誰かの失敗を掘り起こすような指摘を、本書の著者Adam Grantは試みたのでしょか。Originals、 Give&Takeなど、数々のベストセラーを発行してきた著者の狙いは何なのか。読者に思考をさせる、今一度立ち止まって、考える力の重要性を感じてほしい。そんなメッセージを私は受け取りました。

 我々には、学ぶ能力があります。自身の失敗経験からの学びが一番深いですね。ですが、もし他人の、しかもその道で一流と言われた人々の失敗事例からも「学び」を得られるとしたら、どうでしょうか? 今後の自分の人生における、決断・判断の際にも、参考に出来るとは考えられないでしょうか。

 よりbetterな選択をするための「引き出し」を多く持っているに越したことはありません。そんな武器を著者は、読者に共有しようとしたのではないでしょうか。

 If knowledge is power, knowing what we don't know is wisdom.

知識が力ならば、何を知らないかを知ることは、知恵である。

Scientific thinking favors humility over our pride, doubt over certainty, curiosity over closure. When we shift out of scientific mode, the rethinking cycle breaks down, giving way to an overconfidence cycle. If we are preaching, we can't see gaps in our knowledge, we believe We have already found the truth. Pride breeds conviction rather than doubt, which makes us prosecutors:  we might be laser-focused on changing other people's minds, but ours is set in stone. 

 科学的思考は、見栄よりも恥を好む。確かさよりも疑問を好む。閉鎖よりも好奇心を好む。私たちが科学的思考に自らをシフトした時、"rethinking"のサイクルが回り出す、自信過剰サイクルを締め出す。もし説教しているならば、自身の知識の中にあるギャップに気づくことができない。すでに真実を見つけたはずだと信じがちだ。見栄・プライドは、疑問よりも確信を育み、私たちを検察官にしてしまう。他人の心を変えようとすることに極小フォーカスしてしまう、自身の心が石のように堅くなっていることにも気づかず。

That launches us into confirmation bias and desirability bias. We become politicians, ignoring or dismissing whatever doesn’t win the favor of our constituents - our parents, our bosses, or the high school classmates we are still trying to impress. We become so busy putting on a show that the truth gets relegated to a backstage seat, and the resulting variation can make us arrogant. We fall victim to the fat-cat syndrome, resting on our laurels instead of pressure testing our beliefs.

 それは、私たちに確証バイアスと欲求バイアスを発動させる。私たちは政治家モードになり、構成要素の好みを勝ち得ないものを無視したり、解雇する- 両親、上司、高校の同級生に、印象付けさせるために必死になる。真実が後部座席に追放されるように、ショーを演出することに忙しくなってしまう。もたらされる検証は私たちを傲慢にする。金持ちシンドロームの犠牲になり、信念を検証する圧力の代わりに、月桂樹の上で休む羽目になるのだ。

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 ただ単に自分の思いを書き出して、悩みを繋ぎ合わせるだけではなく、さらにそれを一歩"抽象化"して、自分の悩みへの解決法、処方箋、自分の取扱説明書を用意できるようになると、ぐっと自分の人生を生きやすくなります。なぜなら、自分の弱点、癖を把握しており、その対処法をわきまえているから。

 自分の"トリセツ"は一度にわかるものではなく、日々改定されていくものです。経験やインプットを通じて、毎日毎日、少しずつ改訂されていき、自分もそれに合わせて、自分との付き合い方をちょっとずつ変えていく。自分の感情の動きを俯瞰的に見えたり、考え方のパターンに気づく機会が増えてきたら、しめたものです。そうして月日が経つと、自分が大きく変わったことに気づきます。それを、成長と呼ぶのかもしれません。

我々は、賢くなればなるほど、行動する前にリスクが見えてしまうので、行動する率が下がります。それは悪いことではありません。熟考した上で、それでも行動せずにはいられないと思うまで、自分の頭のなか、ノートの上で、熟成させるのもよいでしょう。

 今という時間は戻ってきません。お金は稼げるようになるかもしれませんが、時間をお金で買うことはできないのです。だから、よりベターな選択を今する事がとても大切。決断をしたしばらく後にその選択を後悔するということは、若いうちはいいでしょうが、できれば避けたいもの。本書は、そのヒントになるでしょう。




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