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明治の唱歌を合唱ソフトに唄って貰う504

四 近代教科書アーカイブ 發兌 大日本圖書株式會社
(M26.8.15印刷M26.8.18発行)
巻之四上
4-a06


夕景(ト調)
作曲者 不詳
作歌 阪正臣


夕日(ゆふひ)の影(かげ)を羽(はね)にうけて
ねぐらをさして
鳥(とり)はかへる
吾等(われら)も行(ゆ)きて
樂(たのし)き家(いへ)に
手足(てあし)を休(やす)め
あすをまたん

作(な)すべき業(わざ)を勤(つと)め終(をは)り
家路(いへぢ)をさして
帰(かへ)るそらは
心(こころ)にかゝる雲(くも)こそ
なけれ
夕月影(ゆふづきかげ)も
笑(ゑ)むに似(に)たり

夕景(ト調)
此曲も、同じく「ト」調なれど、新奇なるは、拍子にして即ち六拍子なり。これは、三拍子の倍
數にして、第一と第四とに強音勢を有すれど、少しく異なる所は、第一拍の、第四拍より
も、少しく強きに在り。今、數を以て之を表せば、
一拍6 二拍4 三拍2 四拍5 五拍3 六拍1
となる。是れ此拍子の、三拍子と區別して、一種を作す所以なり。而して拍節法は、下、左、左、
右、右、上の法を用ふ。
[注意]此拍子練習には、音階練習を利用すべし。而して發音練習を適用するには、
「マ」「メ」「ミ」「ま」「モ」「ム」「み」「マ」、又は、「タ」「テ」「チ」「ダ」「ト」「ツ」「ヂ」「タ」の如き重音を用ひて、
唇舌の運動を圓滑ならしむるの助となすべし。又、連、及び帶の温習を行ふべし。

第一歌は、或は、公務に從事し、或は、農商業などにて、終日、外に在りて、身躰、又は、精神を
勞し、其日の業を卒へて、歸途につきたる夕景の氣色と、感情とを併せてよめる歌
なり。今朝拂曉に、家を出づる〓(とき)、塒をいでゝ、何地ともなく飛び行きし烏なども、今、
夕になれば、やはり入日(いりひ)の影を、翅にうけて、もとの塒に歸るである。我亦、終日、業務
に從事しつれば、愉快に我家に歸りて休息し、明日も、亦夙くより、今日の如く務む
るであらう」と云へる意なり。
第二歌は、第一をうけて、終日、業務に勉強しつれば、實に愉快にて、少しも氣がゝりの事
はない」と云ふて、「心にかゝる雲こそなけれ」といへるなり。かく、さつぱりした愉快
の心でみるゆえか、山の端ににほひ初めたる夕月の影も、笑を含めるが如くであ
るよ」といへるなり。

六 広島大学教科書ライブラリー 發兌 大日本圖書株式會社
(M.26.9.14印刷M26.9.17発行)
巻之六上
6-a06


[4巻と歌詞の齟齬あり]
*歌詞と譜面で齟齬あり、[]内が譜面
夕景(ヘ調)


夕日(ゆふひ)の影(かげ)をはねにうけて
ねぐらをさして帰(かへ)る空(そら)は[とりはかへる]
われらも行(ゆ)きて樂(たのし)き家(いへ)に
手足(てあし)を休(やす)めあすをまたん

なすべき業(わざ)をつとめ終(をは)り
家路(いへぢ)をさして帰(かへ)るそらは
こゝろにかゝる雲(くも)こそ
なけれ
夕(ゆふ)づき
かげも笑(ゑ)むに
にたり


夕景(ヘ調)
此曲は、「ヘ」調にして、既に生徒の、學知せるものなるが、次曲の轉調の豫備として、此に
出だせるなり。又新奇なるは、拍子にして即ち六拍子なり。これは、三拍子の倍數にして、
第一と第四とに、強音勢を有すれど、少しく異なる所は、第一拍の、第四拍よりも、少しく強
きに在り。今、數を以て、之を表せば、
一拍6 二拍4 三拍2 四拍5 五拍3 六拍1
となる。是れ此拍子の、三拍子と區別して、一種を作す所以なり。而して拍節法は、下、左、左、
右、右、上の法を用ふ。
(略)

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