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明治の唱歌を合唱ソフトに唄って貰う532

六 広島大学教科書ライブラリー 發兌 大日本圖書株式會社
(M.26.9.14印刷M26.9.17発行)
巻之六上
6-a08


*歌詞と譜面で齟齬あり、[]内が譜面
母のおもひ
作曲者 未詳
作歌 山田美妙


出(い)づれば送(おく)りてかげをながめ 帰(かへ)れば門邊(かどべ)に
立(た)ちて迎(むか)ふ 盡(つき)せぬ情(なさけ)をそめぐ笑顔(えがほ) あだには得(え)
ならじ母(はは)の思(おも)ひ あだにはえならじはゝのおもひ

頰(ほほ)すふ口(くち)にもこもる情(なさけ) うつ手(て)の下(した)にも餘(あま)るなさけ
肌(はだ)にて温(ぬく)むる夜半(よは)の臥戸(ふしど) あだにはえならじ母(はは)
のおもひ[めぐみ] あだにはえならじはゝのおもひ[めぐみ]

優(やさ)しき涙(なみだ)の露(つゆ)に濡(ぬ)れて 幼(をさな)きはつ花園(はなその)に
香(にほ)ふ 我身(わがみ)を忘(わす)れて子(こ)をし思(おも)ふ あだには得(え)な
らじ母(はは)のおもひ[なさけ] あだにはえならじ母(はは)の思(おも)ひ[なさけ]

母のおもひ
・この曲は、何何調なりや。
・「二」調なり。
・今、此調號に、尚ほ一個の嬰を加へんには、何の音位に置くべきぞ。
・「ト」の音位に置くべし。
・何故に。
・調號に現はれるべき嬰は、毎に前者に對し、五度の音位に置かるべき通則あればなり。
・然り。而して、其調は、何となるべきか、併せて,理由を述べよ。
・「イ」調となるべし。何となれば、主音は、常に新出の嬰音の、直に上一度に在るべき通則なればなり。

斯の如く、豫め問答し置き、本曲の練習に移り、進て、第二段に至り、其段末は、轉調に
屬し、主調「二」より、屬和絃たる「イ」調に轉じたるものなることを知らしむべし。

[注意]此曲に就ては、弱起拍子なると、末段の半に在る、延聲記號とに注意すべし。

第一歌は、慈母の恩愛の、深く限なきは、出入送迎の際、我子の恙なきを見て喜ばるゝ
様に就ても、思ひ量らるゝれば、其恩恵をあだに思うてはならぬぞ」と戒めたるなり。」

第二歌は、我身、幼穉なりし〓(とき)、母は、善事に就きても、悪事に就きても、慈愛を垂れ、其懐
にて愛育し給ひしことをいひ出で、それを徒にしてはすむまい」と教訓せるなり。」

第三歌は、草木の初花の、雨露の恵によりて、開くが如く、子は、母の慈愛によりて、育つ
ものなれば、母は、我身を忘れても、子を思ふものなり。この慈愛の恩を空しくしては、
成るまい」と戒めたるなり。

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