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明治の唱歌を合唱ソフトに唄って貰う503

四 近代教科書アーカイブ 發兌 大日本圖書株式會社
(M26.8.15印刷M26.8.18発行)
巻之四上
4-a05


*歌詞と譜面で齟齬あり、[]内が譜面
日本三景
作曲者 未詳
作歌 鈴木重嶺


島(しま)てふしまは多(おほ)かれど松島(まつしま)こそは愛(めで)たけれ
小船(をぶね)をさして眺(なが)むれば何(いづ)れの島(しま)もちよやちよ
松(まつ)の茂(しげ)らぬかたぞなき松島(まつしま)こそはめでたけれ

厳島(いつくしま)こそをかしけれ右(みぎ)も左(ひだり)もならびたつ
燈籠(とうろ)てふもの數(かず)しれずみ社近(やしろちか)く音(おと)もなき
波打(なみうち)よせてこゝかしこいはん方(かた)なきけしきやな

與謝(よさ)の浦(うら)わに来(き)て見(み)れば船(ふね)のほのかに霞立(かすみた)ち
御代(みよ)のどかなる様見(さまみ)えて寄(よ)せ来(く)る波(なみ)も音(おと)ぞせぬ
松(まつ)たち並(なら)び景色(けしき)よき天(あま)の橋立(はしだて)たぐひなし[や]

日本三景
此曲は、前曲と同調にして、其轉調の法も、同一なれば、専ら前二課にて學び得たる所を
確定せしむることを主とすべし。其轉調の區域は、第四段に在りて、最も發見し易きも
のなり。
[注意]天長節歌の第六段は、全く本曲第四段と、轉調の性質を同じうするものなり。
故に、此處にて、彼曲に遡り、説明を施さば、生徒等、大に悟る所あるべし。

・第一歌、「松島」は、陸前國宮城郡にあり。南は、血鹿の浦を極め、北は、磯前に至りて、數百
の小嶼、海上に散布して、悉皆、蒼松の繁茂せる狀は、實に面白く愛(めで)たきなり。・「めでた
し」と云ふ詞は、此には、賞歎愛好するの意なり。・「をぶねをさして」は、小舟を棹すと、「め
ざして」みるとにかけてよめるなり。
・第二歌、「嚴島」は、安藝國佐伯郡にあり。周圍、凡そ七里卅一町餘ありて、景色佳絶なり。・
「みやしろちかく、おともなき、波うちよせて」は、嚴島神社の神門より、回廊の下まで、汐、
滿ちわたりて、實に海神(わたつみの)宮とも云ひつべき景色をよめるなり。
・第三歌、「天の橋立」は、丹後國與佐郡にあり。故に、此の海を、古より、與謝の海とも、浦とも
いへり。・「ふねのほのか」は、漕ぎ回る船の帆に、「ほのか」と云ふ詞をかけて、面白くよみ
なしたるなり。

六 広島大学教科書ライブラリー 發兌 大日本圖書株式會社
(M.26.9.14印刷M26.9.17発行)
巻之六上
6-a04


島(しま)てふしまは多(おほ)かれど松島(まつしま)こそは愛(めで)たけれ
小船(をぶね)をさして眺(なが)むれば何(いづ)れの島(しま)もちよやちよ
松(まつ)の茂(しげ)らぬかたぞなき松島(まつしま)こそはめでたけれ

厳島(いつくしま)こそをかしけれ右(みぎ)も左(ひだり)もならびたつ
燈籠(とうろ)てふもの數(かず)しれずみ社近(やしろちか)く音(おと)もなき
波打(なみうち)よせてこゝかしこいはん方(かた)なきけしきやな

與謝(よさ)の浦(うら)わに来(き)て見(み)れば船(ふね)のほのかに霞立(かすみた)ち
御代(みよ)のどかなる様見(さまみ)えて寄(よ)せ来(く)る波(なみ)も音(おと)ぞせぬ
松(まつ)たち並(なら)び景色(けしき)よき天(あま)の橋立(はしだて)たぐひなし[や]


日本三景
此曲は、「ト」調の轉調の例を示すものなれば、先づ調號によりて、其「ト」調たるを確認せし
め、次に、之に、一個の嬰を増し、「ハ」を、嬰「ハ」とすれば、「ニ」調となることを豫知せしめ置き
て、本曲の練習に移り、往々、問答を設けて、其曲の主調は、「ト」にして、附屬調は、其屬和絃
たる「ニ」なること、其轉調の區域は、第四段の首なる、附屬調の第一音に始まりて、其第
四小節なる、同音に終ることを發見せしむるべし。
(略)

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