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明治の唱歌を合唱ソフトに唄って貰う538

六 広島大学教科書ライブラリー 發兌 大日本圖書株式會社
(M.26.9.14印刷M26.9.17発行)
巻之六下
6-b17


商船
作曲者 未詳
作歌 芙蓉


吾日(わがひ)の本(もと)のくにつ物(もの) めでたきかぎり
積(つ)み載(の)せて 愛(めで)たき限(かぎ)りつみ載(の)せて
いそぐやこころ千里(ちさと)の外(ほか)
残(のこ)るや煙波路(けむりなみぢ)のうへ

見込(みこみ)に違(たが)はず外國人(とつくにびと) こゝころに深(ふか)く
叶(かな)ひやせし 心(こころ)にあつくふさひやせし
價(あたひ)も問(と)はず我先(われさき)にと
争(あらそ)ひあひて買(か)ひ去(さ)れり

思(おも)ふにまされる利益(りえき)を得(え)て 帰(かへ)るや東(ひがし)
日(ひ)の出(で)の旗(はた) かへるや東日(ひがしひ)の出(で)のはた
あなのどけしの千里(ちさと)の海(うみ)
あな心地(ここち)よの波路(なみぢ)の風(かぜ)

商船
此曲は、「二」調にして、殊更困難なる所なし。快適の感情を表すべきものなれば、其心に
て練習すべし。特に末二段は、優美に歌はしむるやう注意すべし。

此歌、第一は、我商船の貨物を搭載して、解纜する形狀なり。國益をなさんと、心は、既に
千里の外に駛すれども、さすがに滊船の烟の、後に靡くが如く、本國を離るゝ時は、無
限の感情を起すよ」といへるが、「殘るや烟波路のうへ」なり。

其第二は、外國の或港に到着せし狀況なり。・「ふさひやせし」は、相應せしかと云ふ
意にて、本邦の産物が、果して外國人の氣に入りたる故かと云ふが如し。

其第三は、目出度く歸航の意を叙せるなり。・「かへるやひがし日の出の旗」は、貿易
の事をへて、本國日本へかへることのうれしきに付けても、國旗の日章は、日の出づ
るわが日の本を表したれば、いといさましきなり。

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