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明治の唱歌を合唱ソフトに唄って貰う505

四 近代教科書アーカイブ 發兌 大日本圖書株式會社
(M26.8.15印刷M26.8.18発行)
巻之四上
4-a07


母の惠
作曲 納所辯次郎
作歌 岡部虎子


なにはも知(し)らぬ春(はる)べより
心盡(こころつく)しておほしてし
母(はは)の惠(めぐみ)をあさ夕(ゆふ)に
月日(つきひ)と共(とも)に仰(あふ)ぐべし

難波(なには)の浦(うら)もなにならず
あさかの山(やま)も淺(あさ)からず
はゝのめぐみを朝夕(あさゆふ)に
月日(つきひ)と共(とも)に仰(あふ)ぐべし


母の惠
・此曲は、何調なりや。
・變「ホ」調なり。
・何を以て、これを知れりや。
・末の變、即ち變「イ」より、下へ四度數へて、變「ホ」を得ればなり。
・此調號には、三個の變あり。其音名を、順次に言へ。
・變「ロ」變「ホ」變「イ」
・變「ロ」より、變「ホ」まで、變「ホ」より、變「イ」まで、音程の度数各〻如何。
・いづれも、皆な四度なり。
・然り。斯の如く、調號として現はるゝ變は、皆な前者に對し、毎に四度の音程を有するを知るべし。是れ變種の調號に關する通則なり。汝等、此通則を應用せば、次に現はるべき變は、何の音位にありて、其調は、何たるかを豫知し得べし。
[注意]此曲も、六拍子なれば、問答を設けて、前課にて學び得たる、六拍子の要件を
確定し、且つ音階練習、及び發音練習を適用して、之を熟せしむべし。

・此歌、第一、第二とも、母の恩の、大なるを詠じたるにて、「なにはもしらぬはるべ」とあ
るは、古今集の序に引かれて、昔は、手習ひの始に、今の「いろは」の如くならひけると云へ
る、「なにはづに、さくやこのはな、ふゆぐもり、いまははるべとさくやこのはな」と云へ
る歌によりて、幼穉にて、なに事も知らぬ時より」といふを、「なにはもしらぬ」といへる
なり。・「おほしてし」は、「おほし」は、「令生」と云ふ意の詞にて、此歌にては、幼穉の時より、母
の養育せられたるを云へるなり。
・「なにはのうらも」は、「なにならず」と云はんが爲に置きたる序句なり。「あさかの山の」
も、「あさからず」と云はん爲にて、第一歌に、「なにはづ」の歌の詞を假りたるゆえ、第二歌
には、其對の歌なる、「あさかやま、かげさへみゆる、山の井の、あさくは人を、おもふもの
かは」といへる歌の、「あさか山あさからず」とかゝれる躰に倣へるなり。

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