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明治の唱歌を合唱ソフトに唄って貰う368

明治二十三年(1890)明治唱歌 第五集
28 なごりの花
高知市民図書館アーカイヴより

なごりの花
大和田建樹 作歌 小原甲三郎 作曲

黄(き)ばみゆく草(くさ)をちからに
なほたのむ朝顔(あさがほ)あはれ
色(いろ)うすく身(み)も痩(や)せがれて
さきのこる一花(ひとはな)あはれ

のぼる日(ひ)は花(はな)にむかへど
まばゆしと顔(かほ)もそむけず
老(お)いはてし秋(あき)のかきねを
いまもなほ杖(つゑ)とぞたのむ

咲(さ)きそめし汝(な)が世(よ)の始(はじまり)
かゝらんと誰(たれ)かおもひし
はらからも友(とも)としぼみて
たすけなき一花(ひとはな)あはれ

有明(ありあけ)の月(つき)のしづくを
身(み)にかゝる玉(たま)とよそほひ
つくろはぬ笑顔(ゑがほ)さゝげて
世(よ)に立(た)ちし朝(あす)もありしを

ふきあるゝ夜半(よは)の嵐(あらし)に
その夢(ゆめ)はよしやぶれても
やぶられぬ花笠(はながさ)みせて
ほこりつる朝(あす)もありしを

たよりつる薄(すゝき)はたふれ
したしみし小蝶(こてふ)は失(う)せぬ
時〻(ときゞき)に落(お)つる木(こ)の葉(は)も
身(み)をうちてよそにぞ過(す)ぐる

敵(てき)と見(み)し日(ひ)のひかりさへ
けふはその命(いのち)となるに
親(おや)と見(み)しきのふの露(つゆ)は
身(み)をころす霜(しも)とかはれり

あはれその花(はな)のみなし兒(ご)
あはれその栄花(えいぐわ)のなごり
さきだつものこるもしばし
いざねむれ神(かみ)のたまへる
このまくらに

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