明治の唱歌を合唱ソフトに唄って貰う513
四 近代教科書アーカイブ 發兌 大日本圖書株式會社
(M26.8.15印刷M26.8.18発行)
巻之四下
4-b15
春の惠
作曲 シヱルウヰン氏
作歌 安保暫庵
一
花(はな)に鳴(な)くとり水(みず)に住(す)む虫(むし)
をりを忘(わす)れず哥(うた)ふとぞ聞(き)く
ましてあはれを知(し)れる世(よ)の人(ひと)
春(はる)を空(むな)しく過(すご)しやはする
二
山(やま)になく鳥(とり)こゑものどかに
そのに咲(さ)く花色(はないろ)もかぐはし
こゝろ隔(へだ)てぬ庭(には)の友(とも)がき
とけて語(かた)らふ春(はる)ぞ樂(たの)しき
三
岸(きし)の柳(やなぎ)は雨(あめ)にいろまし
にはの櫻(さくら)は風(かぜ)に散(ち)りかふ
ふるも晴(は)るゝもながめ盡(つき)せぬ
春(はる)の惠(めぐ)みの深(ふか)き君(きみ)が代(よ)
春の惠
此曲も、前曲と同様の旨意を以て、之を載せたるものなり。其唱法、成るべき的、快活な
るを可とす。六度音程の所は、優美に唱ひ去るやう注意すべし。
第一歌の第四句までは、古今集の序文に、「花になく鶯、水にすむ蛙の聲をきけば云々」
とあるに據りて、陽春萬物の化育する時に方りては、人は、殊に其自然を樂み、其徳を
賛けねばならぬものなれば、徒らに過ごしてはならぬぞ」と云へるなり。「すごしや
はする」は、すごさうか、むなしくすごす事ではない」といへるなり。
第二歌は、第一をうけて、春の氣色をとりいでゝ、之を賞し、さて、平常は、業務に勉屬し
て後、朋友相共に、花を賞し、鳥を聞くも、天地自然を樂むものなれば、是が、即ち人間の眞
の樂みである」と云へるなり。
第三歌は、第一第二をうけて、春雨には、柳色、綠を添へ、春風には、櫻花、霏々として散る
など、或は賞し、或は愛(をし)むも、即ち自然の恩恵にて、その氣色を樂むヿを得るは、亦太平の
御代の恩澤に他ならず」と云ふの意を、詞に陳ねて、「春の惠のふかき君が代」とはいへ
るなり。
六 広島大学教科書ライブラリー 發兌 大日本圖書株式會社
(M.26.9.14印刷M26.9.17発行)
巻之六下
6-b14
一
花(はな)に鳴(な)くとり水(みず)に住(す)む虫(むし)
をりを忘(わす)れず哥(うた)ふとぞ聞(き)く
ましてあはれを知(し)れる世(よ)の人(ひと)
春(はる)を空(むな)しく過(すご)しやはする
二
山(やま)になく鳥(とり)こゑものどかに
そのに咲(さ)く花色(はないろ)もかぐはし
こゝろ隔(へだ)てぬ庭(には)の友(とも)がき
とけて語(かた)らふ春(はる)ぞ樂(たの)しき
三
岸(きし)の柳(やなぎ)は雨(あめ)にいろまし
にはの櫻(さくら)は風(かぜ)に散(ち)りかふ
ふるも晴(は)るゝもながめ盡(つき)せぬ
春(はる)の惠(めぐ)みの深(ふか)き君(きみ)が代(よ)
春の惠
此曲は、「ト」調にして、既に生徒の熟知せるものなれば、温習を主として、之を授くべし。
其唱法、成るべき的、快活なるを可とす。六度音程の所は、優美に唱ひ去るやう注意す
べし。
(略)
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