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明治の唱歌を合唱ソフトに唄って貰う480

三 近代教科書アーカイブ 發兌 大日本圖書株式會社
(M26.8.15印刷M26.8.18発行)
巻之三上
3-a06


四季の景色
作曲者 未詳
作歌 佐々木信綱


山邊(やまべ)にのべに霞(かす)み渡(わた)り鴬(うぐひす)かはづ
ひばり胡蝶(こてふ)さくらに梅(うめ)に
春(はる)はたのし

若葉(わかば)のこずゑ茂(しげ)りあひて山時鳥(やまほととぎす)
初音(はつね)もらし橘(たちばな)かをり
夏(なつ)もをかし

百草千艸匂(ももくさちぐさにほ)ひ乱(みだ)れさやけき月(つき)に
むしも鳴(な)きて紅葉(もみぢ)に菊(きく)に
秋(あき)もたのし

霜(しも)おく夕(ゆふ)べ千鳥鳴(ちどりな)きてこぼるゝ霰(あられ)
つもる深雪寒(みゆきさむ)くはあれど
冬(ふゆ)もをかし

あゝはれ樂(たの)し春(はる)も秋(あき)もあゝはれをかし
夏(なつ)も冬(ふゆ)もあゝはれあはれ
四季(しき)のけしき

四季の景色
此曲は、前の秋景色と同性質なれば、前同様の問答を爲して、前に學び得たる所を確定し、且つ十分練習の功を積ましむべし。
音階練習も、前曲と同一にして可なりと雖も、猶ほ左の旋律の練習を加ふるを要す。
1,-,3,5|.1,-,6,5|6,-,.1,6|5,-,0,-||
1,-,5.,3|1,-,5.,5|3,-,1,6|5,-,0,-||
[注意]本書には、讀下の便を謀りて、數字練習譜を、縱行に書せり。實地臨教の際には、勿論、横行に改むべし。
・「夏も、をかし」とある、「をかし」は、こゝには、興味あるをいへるにて、若葉や、時鳥や、橘薫りや、夏もさま乀゛の面白き氣色のあるをとりいでゝ、「をかし」といへるなり。
・「あゝはれ」は、感歎詞にて、「あはれ」といふに同じ。「あゝ」も、「はれ」も、別々にすれば二つの歎詞なれど、こゝにては、「あはれ」と均しく、一つの感歎詞とみるべし。

第一歌は、春の景物を列ねて、其景色をほめ、第二歌は、夏、第三歌は、秋、第四歌は、冬、皆な其
をり乀の物をとりいでゝ、春のゝどけき狀、夏の涼しげなる狀、秋のものあはれな
る狀、冬のさびしき狀をあらはしたるなり。而して、第五歌に於て、春夏秋冬、四季をり
乀の氣色は、みなあはれにおもしろし」と總括していへるなり。

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