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明治の唱歌を合唱ソフトに唄って貰う〜番外46

貮 近代教科書アーカイブ 明治二十五年五月發行 大日本圖書株式會社 (M25.5.30印行M25.5.31出版)

小學唱歌
第二巻 目次

 各種音階對照圖
(注意)音階とは、自然に存在せる樂音中より、互
に快適の関係を有する諸音を撰び、之を連續し
て、階級を設け、一連となしたる者なり。即ち律旋
法にて、宮、徴を生じ、徴、商を生じ、商、羽を生ずと云
ふが如き、又自然音階にて、一弦を彈すれば、初音、
甲音、五音、第二甲、三音等を續發すと云ふが如き、
其諸音は、皆自然に快適なる関係を有するによ
り、括りて一連と為し以て音階を組成せるなり。
斯く音階は、天然の法則に依りて成れるものな
る故に、其原理、古今東西に渉りて異なることな
し。唯其主音(宮)の在る所を異にするにより、自ら
旋法の差異を来すのみ。
上圖の如く、自然長音階の主音は、「1」に在り。律旋
法の主音は、「宮」に在りて、自然長音階、第二音の位
置に當り、俗樂調第一種の主音は、其第三音の位
置に、俗樂調第二種の主音は、其第七音の位置に
當る。以上各種の音階は、多く本邦に行はるゝ樂
曲の要部を成せる者なり。但樂理上の説は、生徒
に授くるを要せず。又諸音階中、點線にて記する
音級は、甚だ稀に用ひらるゝ者と知るべし。
 譜表 五線及短線 「ト」字記号 縦線
 音名 階名 音符及略符 拍子
 数字及母韻練習
(注意)前葉の初段に掲げたる圖解は、自然長音階の圖に基
き、各音級の線を延長して譜表を構成し、以て「ト」字記号の位
置を明知せしめ、之より推して上には、「イ」「ロ」「ハ」「ニ」「ホ」「ヘ」「ト」「イ」の
諸音あり、之より下には、「ヘ」「ホ」「ニ」「ハ」の諸音あることを教へ、併
て其音は、第何線の上、又は第何間の中に當ることを教へん
がためなり。其第二段に掲げたるは、音符と略符との関係を
示したるものなれば、之に依りて四分音符の一は、常に「,」の
一に同じ、故に半音符は、「,」の二に、全音符は、「,」の四に等しき
を知らしむべし。第三段には、主なる拍子の種類を掲げ、音符
と略符とを對照し、「タ」字を用ひて、其應用を示したるものな
り。但此諸課は、決して一時に授くべきものに非ず。最初其大
体を示し、生徒の學力進歩するに随ひ、漸次に精しく之を教
へんことを要す。
上圖は、数字によりて、音程を練習し、母韻によりて、發音を練
習せしめんが為にして、「師」とあるは、教師、先ず唱へて模範を
與へ、「生」とあるは、生徒、之に倣ひて、唱ふることを示せるなり。
茲に「1」「2」「3」「5」「6」の五聲音階を用ひ、之に配するに「ア」「エ」「イ」「オ」
「ウ」の五韻を以てしたるは、多年實驗の上、樂理と樂史とに照
し、又發音生理の學に徴して、斯くは定めたるものなれど、學
説上の事は、今此に略す。

 五聲音階
  歌曲
1,2,3,4神楽あそび(遊)
5蹴鞠
6ゑのころ
(注意)此課は、「1」「2」「3」「5」
「6」五聲を譜表に移し
て、之を練習せしめ、猶簡
短なる歌詞を加へて、其
應用を教へんが為に設
けたり。故に最初、数字に
て練習し、其熟するを待
ちて、歌詞を授くべし。又
第六曲は、生徒の既に口
授唱歌にて、其樂調に熟
せる者なれば、今其記譜
法を授け、且譜表より数
字に移すヿを學ばしめ
んが為に、此に再出せり。
歌は或る人の作にして、
第一乃至第四は、神樂遊
を詠じ、第五は、蹴鞠を詠
じたるなり。
7あり
8天長節
(注意)此課に、あり の曲
を再出したるは、前課と
同一の學習を為さしめ、
且半音符の後の附点は、
四分音符に仝じき事を
教ふるに在り。又下段に
数字のみにて掲げたる
は、天長節の歌なるが、こ
れを数字のみにて練習
する時は、生徒中、既にそ
の何曲たるを想起する
ものあらん。此時機を利
用して、其歌詞を暗唱せ
しめ、益々習熟に至らし
めんことを謀るべし。但
し此處にては、其曲を、譜
表に記せしむるを要せ
ず。

 發音練習 第一
(注意)此課は、既に授けたる母韻練
習を横めて、五十音に及ぼし、前同様
の順序に従て、之を五聲音階に配し、
「カ」「ケ」「キ」「コ」「ク」、「ク」「コ」「キ」「ケ」「カ」等の
如くに、各行を上下して、發音を練習
するの用に供したるなり。或る地方
にては、一般に或る行の發音に難澁
を感じ、又或る生徒は、特に或る發音
に苦むものなどまゝあることなれ
ば、斯る時は、其行の練習に、能く注意
して、之が矯正を務むへし。概して口
を十分開かずして、發音に鼻聲を帶
ぶるは、一般の通弊なれば、發音練習
の際、常に此に注意すべし。但十分其
目的を達せんには、視話法の原理を
應用し、且伊澤氏定韻器に依りて、
各發聲器開合の度を定むるを可
とす。
 數字及子韻練習
(注意)前課の練習は、一時に習了せしむべきに
非ず。時々臨機にこれを行ひ、又「ア」「ケ」「シ」「ト」「ヌ」、「ヌ」
「ト」「シ」「ケ」「ア」等の如く、斜行に音階を上下せしむる
も可なり。
此課は、「タ」「テ」「チ」「ラ」「ト」「ツ」「リ」の子韻を、音階に配し、
先づ數字に依りて、音程を練習し、次に子韻に依
りて、發音を練習せしむるものなり。「師」「生」等の事
由は、前に述べたるが如し。今五十音中に就き、特
に「タ」行と「ラ」行とを選びて、此目的に應用したる
は、古来我國にて音調の形容は、該二行に依るも
の多きと、其發音の力勁くして、且分明なるとの
利あるを以てなり。
上に掲げたる旋律は、短音階的の五聲より成る
もの多し。又曲尾の「2」に終るものを加へたるは、
律旋法の樂曲の豫習とせんが為なり。

 律旋法五声音階
  歌曲
9仰ぎ見よ
(注意)此課の初段に掲げた
るは、律旋法五聲音階の諸音
を、數字及假字唱号(「タ」「テ」「チ」
「ラ」等を假字唱号と稱す)と
對照して、相互の関係を示し
たるものなり。又 仰ぎ見よ の
曲を再出したるは、生徒の既
に習熟せる曲調を利用して
數字及假字唱号を教へ、容易
に其関係を悟らしめんが為
なり。次の 皇御國の曲も、律旋
法五聲音階より成れるもの
なるにより、此に彙輯せり。こ
れ亦最初數字及假字唱号に
て練習し、終に歌詞を授くべ
し。
10皇御国

 發音練習 第二
(注意)此課は、五十音の各段なる十
音を両分して、「ア」「カ」「サ」「タ」「ナ」、「エ」「ケ」
「セ」「テ」「ネ」等を第一部とし、「ハ」「マ」「ヤ」「ラ」
「ワ」、「ヘ」「メ」「エ」「レ」「ヱ」等を第二部とし、
各部の五音を一連として、五聲音階
に配し、以て發音練習の用に供した
るものにして、其主音は前に示した
る所に異なるヿなく、教授法も概ね
前に述べたるが如し。但發音の結合
を種々に變化するは、其練習上最も
肝要なることなれば、縱横、左右、逆斜
等、各種の行法により、變通を多くす
るを可とす。
 自然長音階 音階原圖 音階練習
  「ハ」調 音階練習
(注意)此課は、自然長音階の學に
入るの門なれば、初段には、其模範
たるべき「ハ」調の各音を、譜表に記
し、此に附するに、階名と音名とを
以てせり。中段なるは、自然長音階
の原圖、下段なるは、音階練習の為
め用ふべき教課にて、之を上圖に
適用し、一音級毎に上下すること、
恰も階級を上下するが如くすべ
し。但第七音級には止らずして、直
に第一音の甲に至るは、旋法上然
らざるを得ざるの理あるによる
ものなり。

   歌曲
11紀元節
(注意)紀元節の歌は、既に生徒の、其曲調に熟せるものなれば、此に掲出
して、數字より譜表に移すの練習に供す。此曲中、間々歌詞の字割により、
音符の分合を要する所あり。故に此にて其分合の方法を教ふべし。又次
の曲は、「ハ」調の應用を授けんが為なり。但其初段に於ては、再唱記号の事、
第三段に於ては、連の記号の事を、併せて教ふべし。

12春秋季皇霊祭
  「ト」調 音階練習
(注意)上圖の如く、「ハ」調に於ては、音
名の位置と、階名の位置と、能く一致
すれども、他の調に於ては、常に相一
致せず「オルガン」、又は洋琴の黒鍵を
用ひざるを得ず。即ち或る音より、上
へ半音(一律)上るを、嬰と稱し、下へ
半音(一律)下るを、變と稱す。此課に
掲げたる調にては、上圖の如く、「ヘ」音、
半音上る故嬰の記号「#」を、譜表の第
五線、即ち「ヘ」音の処に附す。之により
て、此曲の、「ト」調にして、「1」の「ト」音に在
るを推知するなり。何れの曲にても、
嬰變記号の數と位置とによりて、そ
の何調たるを知り得べきことを教
ふべし。

   歌曲
13武夫
(注意)此課に於ては、四分音符と八
分音符との関係を教へ、又四分音符
の後の附點は、八分音符に等しき事
を教へ、併て拍子の讀方及拍方をも
教ふべし。
14雀鴉
(注意)此課は、八分音符より成れる樂
曲の練習に資し、以下二課は、半音符、四
分音符、八分音符の活用、及音名、階名、唱
号等の練習に資する者なり。

15都の花
16鶏

17狛の渡
(注意)樂曲の拍子には、強音部と弱
音部とあり。四拍子なれば、一、三は強
にして、二、四は弱なり。此課は、弱音部
より起る例を授くるものなり。
18春の野遊x
(注意)此課は、十六分音符を教へん
がために設く。又此曲に依りて、反始
記号の事を教ふべし。

   発音練習第三第四
(注意)此課は、前の發音
練習の旨意を、猶一層擴
めて、五十音に、濁音、半濁
音を交へ、之を適當の行
に挿入して、練習をなさ
しむる者なり。但或る行
に、平假字にて記せるも
のは、同一の音を、重ねて
用ひざるを得ざる場合
を示し、「カ゚」「ガ」「キ゚」「ギ」の如く、
傍點に單複の別ある者
は、複點は硬音、單點は、軟
音を示す。此課も、時々臨
機に施すべきは、前に述
ぶる所の如し。
  「ヘ」調 音階練習
   歌曲
19君・国
(注意)此課は、「ヘ」調を教へんが為に
設く。「ヘ」調にては、「4」の所「イ」と「ロ」との
間に来る故、嬰「イ」又は変「ロ」とせざる
を得ず。然るに「イ」は、既に「3」の位置に
現はるゝを以て、樂譜に其重出を避
けて、変「ロ」とするなり。これによりて
嬰変二種の記号の必要なるを悟ら
しむべし。上の歌曲は、数字にて練習
し、之を譜表に移さしむべし。

20玉
  「ニ」調 音階練習
   歌曲
21まなべ
(注意)此課は、「ニ」調を教へんが為に
設く。此調にては、「ト」調よりも、猶一個
の嬰音を加へ、即ち嬰「ヘ」嬰「ハ」となる
なり。又 まなべ の曲は、既に此調にて
習熟せるものなれば、その歌調によ
りて、曲調を想起せしめ、數字及譜表
に記するヿを學ばしむべし。

22忍耐
23友愛
(注意)樂曲の拍子には、二の數より
成り立てるものと、三の數より成立
てるものとあり。二拍子四拍子等は、
前者に属し、三拍子、六拍子等は後者
に属す。此課は、三拍子を授けん為なり。

  拍子練習
(注意)通常唱歌に用ふる拍子は、此
までにて大抵授け了りたれば、各種
の表紙を一纒して、交互の関係を明
にし、且其讀方及拍方に熟せしむべ
し。凢そ拍子の練習には、初は、一二三
四 等の數を用ひて、其理を觧せしめ、
生徒の漸く熟するを待ち、「タ」音其他
適當の子韻を假りて、之が應用を授
くるを可とす。單に数のみに依りて
は、容易に精細なる関係を了知せし
め難きものなり。又上圖には、同一の
線の長さを以て、同一の時の長さを
表したれは、教授の際之を實地に利
用せんヿを要す。
  變「ロ」調 音階練習
   歌曲
24春景
(注意)此課は、變「ロ」調を教へんが
為に設く。此調は、「ヘ」調よりも、猶一
個の変音を増し、変「ロ」変「ホ」の二と
なれり。唱号に「ニ」調には「カ」行を用
ひ、此には「サ」行を用ひたるは、發音
練習の変化を為さんが為なり。又
此歌曲は、譜表練習と、弱起拍子の
復習とに資せん為なり。

25孝子x
  「イ」調 音階練習
   歌曲
(注意)此課「イ」調は、「ニ」調より猶嬰音
一個を増し、「ヘ」「ハ」「ト」の三嬰音となる、
大和の御民 を數字にて掲げたるは、
八分音符、十六分音符を交へたる複
雑の者を、譜表に移すを教へん為也。

26大和の御民

27母
 律旋法
  壹越調 旋法練習
(注意)律旋法は、我古樂の製曲の多く準依せる
所の旋法にして、宮、商、嬰商、角、徴、羽、嬰羽の七音よ
り成り、其宮は、前に謂へるが如く、自然長音階の
「2」に當れり。而して壹越の律は、殆ど「ニ」音に同じ
く、黄鐘は「イ」音に均しきに依り、二種の音律を對
照すれば、上圖の如き関係となる。壹越調にて「ニ」
音に宮を定むれば、自然長音階の「ハ」調と同じく、
「オルガン」又は洋琴の黒鍵を用ひずして、壹越、平
調、勝絶、双調、黄鐘、盤渉、神仙の各律、皆出で、以て壹
越律旋法を組成するを得るなり。
次に掲げたるは、君が代 の曲にして、既に生徒の
習熟せるものなれば、之に律旋唱号(宮、商、
嬰商、角、徴、羽、嬰羽)と數字唱号、及假字唱号を配して、
交互の関係を明ならしむ。以下の諸曲にも、皆此
法を適用して、其理を了觧せしむべし。
神武天皇祭の歌、第一は、天皇の武徳を頌し、第二
は、其文徳を頌し、第三は今日の祭典に當り、御威
徳を欽仰するの意を述べたるなり。第三の歌詞
中に在る「ウナネツキヌキ」は、古語にして、低頭し
て拜するの義と知るべし。

   歌曲
28君か代
29神武天皇祭

30新嘗祭
  黄鐘調 旋法練習
(注意)黄鐘調に於ては、黄鐘、盤渉、神仙、壹越、平調、
下無、双調の諸律出づるなり。而して、下無は、「ヘ」と
「ト」の間に在る故嬰「ヘ」とし、譜表には、一個の嬰
音の記号を要するなり。これを自然長音階に比
すれば、其形「ト」調と同じく見えれど、此調の宮は、
黄鐘即ち「イ」音にて、「ト」よりは一音上にあり。總て
律旋法にては、何の調にても、其宮は、常に自然長
音階に於ける、同形の調よりも、一音上にあるこ
とを知らしむべし。
律名、又は唱号の右肩に、「甲」とあるは、甲音即ち第
八音を表し、又黄、皿、神、壹、平などとあるは、黄鐘、盤渉、
神仙、壹越、平調等の略字なり。
前葉に掲げたる 神(新?)嘗祭 の歌詞中に、「シル」とある
は、「シルカユ」にて、今の粥のこと、「カヒ」とあるは、元
来稲穂のことなれど、古来飯の義に用ひて、祝詞
には、汁にも顆にもなど多くあり。「ニヒシボリ」は、
新醸の義、「シロキ」「クロキ」は、白酒黒酒にて、其製法
式二あり。清白二様の酒の義とするも妨げなか
らん。

   歌曲
(注意)教育に関する勅語の、聖旨を貫徹
し奉るは、教育者の、須曵も怠る可らざるこ
となれば、此には、恭儉、博愛、修學、就業、啓智、成
徳の六項を、歌詞に綴り、其萬分一の稗補た
らしめんことを謀りたり。されど其深旨は、
短簡なる詞もて言ひ盡すべきに非れば、教
授の際、特に注意して、懇に説示せられんこ
とを望む。
次に掲げたる樂曲は、古来 越天樂 と唱へて、
有名なるものなり。何人の作に出づるかは、
諸説、區々にして詳ならざれ〓(とも)、世に漢の張
良の作ならんと言ひ傳ふ。加藤櫻老の如き
は、これもと周の遺音にして、孔子の嘆美せ
られたる、韶の樂なるべしとまで賞讃せり。
此曲、元来平調なれども、幼年生徒の音域に
適せしめんが為め、此には黄鐘調に移した
り。
31恭倹博愛

__修学習業
__啓智縄徳
  平調 旋法練習
(注意)平調に於ては、平調、下無、双調、
黄鐘、盤渉、上無、壹越の諸律出で、上無
は、嬰「ハ」に當るを以て、前の黄鐘調に
比すれば、譜表上に猶一個の嬰音を
増し、自然長音階の「ニ」調と、其形を同
くす。
次に掲げたる 元始祭 の歌詞中に、「ム
タ」とあるは、古語にて、「共に」の義、「ミシ
ルシ」は、天津日嗣のしるしにて、即ち
三種の神器を指し、「ヲロカミ」は、「ヲガ
ミ」の古語なり。此歌、第一は、天皇陛
下の御祭典在らせらるゝの、いとも
尊きを詠じ、第二は、臣民の、謹て此日
を奉祝するの意を述べたるなり。

   歌曲
32元始祭
  盤渉調 旋法練習
(注意)盤渉調に於ては、盤渉、上無、
壹越、平調、下無、鳬鐘、黄鐘の諸律出
で、鳬鐘は、嬰「ト」に當るを以て、譜表
上には、「ヘ」「ハ」「ト」の三音、嬰となりて
顕はれ、其形、自然長音階の「イ」調と
同一になるなり。
次に掲げたる孝明天皇祭の歌詞
中に、「月ノ輪云々」とあるは、天皇の
御陵の名に縁ある、月に寄せて、其
御事績を、比の體に叙したるなり。
又神嘗祭の歌詞中に、「タナツモノ」
とあるは、種物、「タノミ」は、思頼と田
實との二者に通じ、「ミテグラ」は、幣
帛の義なりと知るべし。

   歌曲
33孝明天皇祭
34神嘗祭

  俗楽調第一種 旋法例解
35うさぎ
(注意)俗樂調第一種の旋法は、其主音、自然長音階の「3」
の位置に當る。故に「ホ」を、主音とすれば、「ホ」「ヘ」「ト」「イ」「ロ」「ハ」「ニ」
の順序に随ひ、各音皆出で、「オルガン」又は洋琴の黒鍵を
用ひずして奏することを得るなり。但「ト」音は甚だ稀に
出づるものなるにより、点線を以て之を區別せり。
従来俗樂の唱号には、「チン」「トン」「ツン」「リン」等を用ひ来り
たれど、甚だ錯雑して、一定の方法を見出し難きにより、
本書には、數字唱号、假字唱号を用ふることゝせり。又
「イ」「ロ」「ハ」等の音名を用ふるも可なり。此に古来俗間に傳
はれる、兎 の歌曲を掲げて其例證とす。
   歌曲
36小鼠

37養老の瀧
(注意)小鼠、及養老の二曲は、俗樂調
第一種の曲を數字及譜表にて練習
せしめんが為に之を掲ぐ。乃ち前曲
に於ては、其主音、「ロ」に在りて、自然長
音階の「ト」調、律旋法の黄鐘調と、譜表
の形を同くし、此曲に於ては、其主音、
「イ」に在りて、「ヘ」調と其形を同じくす。總
て俗樂調、第一種の主音は、自然長音
階の主音より、三(二?)音上、律旋法の宮よ
り一音上に在るものと知るべし。
此に譜表を、上下二段に分ちて記し
たるは、上段を、唱歌に用ひ、下段を、器
樂(箏、オルガン等)に用ふることを
知らしめんが為なり。

  俗楽調第二種 旋法例解
38高い山
(注意)俗樂調、第二種の旋法に於
ては、其主音、自然長音階の「7」に在
りて、常に彼調の主音の半音下に
位す。故に「ロ」を主音とすれば、譜表
上に、嬰変の記号を要せず。此に世
人の熟知せる、高いやまから の曲
を掲げ、又終に 數へ歌 を掲げたる
は、此調の例證として、容易に其理
を悟らしめんが為なり。
   歌曲
39水鳥
(注意)此課は、俗樂調、第二種
の歌曲の練習の為に設く。前
に述べたる所により、此曲の
主音は、「イ」に在りて、長音階の
変「ロ」調と、同形なるを知るべ
し。又譜表を、上下二段に記し
たるは、前に述べたるが如し。

40教育数ヘ歌
  應用歌曲
以下数曲は、生徒の學力進歩の程度を計り、實地應用に資せんが
為め掲載せり。故に教師は、好機に挟じて、之を授けんヿを要す。
41一月一日

42學の園
43勧学

44治まる御代
45卒業式歌

(注意)此歌曲は、小學卒業の
時に用ふべき者にして、其第
一、第四は、全校生徒一同に合
唱せしめ、第二、第三は、特に卒
業生徒に歌はしむべき趣向
なり。若し卒業生中、尚進で高
等の學業を修むる者と、直に
世務に就く者とある時は、第
二を甲に、第三を乙に、歌はし
むる趣向とするも可なり。

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