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明治の唱歌を合唱ソフトに唄って貰う478

三 近代教科書アーカイブ 發兌 大日本圖書株式會社
(M26.8.15印刷M26.8.18発行)
巻之三上
3-a04



作曲者 未詳
作歌 福羽美静

影見(かげみ)つゝ こゝろ つくろふ 人(ひと)あらば
いかに かゞみも うれしから まし


・此曲は、何調なりと思ふか。
・「ト」調なりと思ふ。
・然り。其形は、「ト」調に同じ。然れ〓(とも)、其首尾の音は、如何。
・首尾共に(3)の音なり。
・前に學びたる樂曲中、(3)に始まり、(3)に終りしは、多く何種のものなりしか。
・多くは、俗樂調第一種のものなりき。
・然り。此曲も、俗樂調第一種のものなり。併し此曲には、調號の外、中途に嬰の記號現出す。今、之を、臨時記號と稱し置くべし。此記號は、何音の處に附せられしぞ。
・「ハ」音、即ち(4)の處に附せられたり。
・然り。斯かる場合には、(4)を、半音高く歌ひ、(ヤ)と呼ぶなり。
[注意]弱音勢部の音と、強音勢部の音と結合せる場合、又は、一拍の中途に、或音の
現はれて、次拍に延長する場合を稱して、切分聲と云ふ。斯かる時には、弱音勢部も、
強音勢部となるを常とす。此曲の第四小節に於ける「ロ」音の如きは、第一の場合
に當れるものなり。又、此曲に就きて、連(スラー)の適用法を練習し、極めて宛轉流暢に唱歌
することも學ばしむべし。

此歌の意は、鏡は、固と萬物の形象を映(うつ)す用を爲す物なれば、當に粧飾の具として、之を
備へ置き、容儀をつくろふは、誰もする業なれど、人の心は、形なければ、眼前(めのまへ)にこそう
つらね、容貌の醜美を映すが如く、心の醜美をも、之に映し、容貌をつくろふが如く、自(み)
ら顧みて、心の邪を除きて、正に移す人あらば、鏡の心になりても、さぞうれしと思ふ
ならん」とて、無心のものをかりて、反省の徳を勸めたる歌なり。

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