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明治の唱歌を合唱ソフトに唄って貰う499

四 近代教科書アーカイブ 發兌 大日本圖書株式會社
(M26.8.15印刷M26.8.18発行)
巻之四上
4-a01


上野公園
作曲 バンディー氏
作歌 加部嚴夫


山杜鵑(やまほととぎす)血(ち)に啼(な)きし
その五月雨(さみだれ)の暗(くら)きよも
今(いま)はむかしの物語(ものがた)り
忍(しの)ぶが岡(をか)こそ
をかしけれ

紅葉(もみぢ)に花(はな)にみや人(びと)の
くるまもたえず集(つど)ひ來(き)て
雲(くも)の上野(うへの)に袖(そで)かへす
君(きみ)が御代(みよ)こそ
樂(たの)しけれ


上野公園
・此曲は、何調なりや。
・「ハ」調なり。
・何を以て、之を知るか。
・調號の、嬰變なきを以て、之を知る。
・然り。元來、調號に、嬰、又は、變を附するは、「ハ」調の外は、音階の組成上、或音の本位を變ぜざるを得ざるにより、其變ずべき記號を、樂譜の首に置きて、一目瞭然たらしむるの用を爲すものなることを忘るゝ莫れ。
[注意]此曲の音階練習には、「/ハ」(1)より「//ハ」(.1)までを、一連とし、「/ト」(5)より「//ホ」(.3)までを、一連とし、交互錯用して、上唱下唱するを可とす。又、發音練習の爲め
 ナネニなノヌに/ナ
     ノヌに/ナ/ネ/ニ と上唱し、
 /ニ/ネ/ナにヌノ
    /ナにヌノなニネナ と下唱すべし。又は、
 ヤエイやヨユい/ヤ の行を用ふるも、可なり。

此歌、明治元年、徳川の脱徒、江戸上野寛永寺に據りて、彰義隊と稱し、擧動、穏かな
らず。官軍に抵抗しけるにより、五月十五日、朝廷、諸藩の兵を遣りて、討たしめられし
〓(とき)、樓門、本堂、鐘樓等、悉皆烏有に歸し、賊徒、或は討たれ、或は落ちゆきて、後に遺るは、賊
徒の朱に染みし屍骸のみなるに、時、恰も五月雨、ふりつゞきて、日影もみえず、時鳥の聲
のみ頻〻なるは、亡魂を吊するが如くなりき。當時の有様を追想すれば、慄然として膚
に粟するが如くなるを、既く廿有餘年の昔物語となりて、今は、都府第一の大公園とな
り、昔をシノブと云ふに因みさへある、忍ヶ岡てふ名を負へる、此公園のおもしろき氣
色なることよ」と云へるなり。
其第二は、第一をうけて、今は、公園となりしにより、衆人の、此園に遊ぶ者、いと多きは、
云ふまでもなく、花につけ、紅葉につけて、宮人の車さへつどひ來て、其優美なる粧を
見ることをも得るは、昔に引きかへて、實に樂しき、君が大御世であるよ」と云へるな
り。

六 広島大学教科書ライブラリー 發兌 大日本圖書株式會社
(M.26.9.14印刷M26.9.17発行)
巻之六上
6-a01


山杜鵑(やまほととぎす)血(ち)に啼(な)きし
その五月雨(さみだれ)の暗(くら)きよも
今(いま)はむかしの物語(ものがた)り
忍(しの)ぶが岡(をか)こそ
をかしけれ

紅葉(もみぢ)に花(はな)にみや人(びと)の
くるまもたえず集(つど)ひ來(き)て
雲(くも)の上野(うへの)に袖(そで)かへす
君(きみ)が御代(みよ)こそ
樂(たの)しけれ


[教授法、及び解釋 仝上]

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