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明治の唱歌を合唱ソフトに唄って貰う506

四 近代教科書アーカイブ 發兌 大日本圖書株式會社
(M26.8.15印刷M26.8.18発行)
巻之四上
4-a08


歳暮歌(變ホ調/變イ調)
作曲 スミス氏
作歌 小出粲


この歳(とし)この日惜(ひをし)むべし
落葉(おちば)は枝(えだ)にかへり來(こ)ず
流(なが)れはふちに止(とど)まらず
此(この)つきこの日惜(ひをし)むべし

この月此日(つきこのひ)をしむべし
昨日(きのふ)の吾(われ)はわれながら
明(あ)くる日(ひ)けふの日(ひ)にあらず
このとしこの日(ひ)をしむべし

歳暮歌(變ホ調/變イ調)
・此曲は何調なりや。
・變「ホ」調なり。
・變「ホ」調に、尚ほ一個の變を増さんには、何の音位に置くべきぞ。
・「ニ」音に。
・本曲中、變「ニ」の現出せる所ありや。
・有り。第三段の第三小節に在り。
・然り。之に就きて、よく研究すれば、本曲の主調は、變「ホ」調にして、第三段に至りて、其第四音、即ち次屬和絃たる變「イ」調に轉じたるを知り得るなり。
教師、是に於て、前に「山家」の曲に在りては、一變を失ひて、屬和絃に轉じ、今は、一變
を増して、次屬和絃に轉ぜしを注意し、規則を授けて曰く、
 變種の調號に在りては、其一個を失へば、主調は、屬和絃の調となり、其一個を増せば、次屬和絃の調となる。
  之に反して、
 嬰種の調號に在りては、其一個を失へば、主調は、次屬和絃の調となり、其一個を増せば、屬和絃の調となる。
[注意]第三段第三小節の臨時音の數字唱號は「ネー」なり。

第一第二歌共に、日月の、復び歸り來らざるを、歳暮に至りては、ひとしほ感慨するは、人
情の常なれば、そを陳ね述べたるなり。今年の落葉は、復び枝に着かず。流水は、淵に止ま
るが如くなれ〓(とも)、終に止まるヿあたはず。今日は、昨日の日にあらず。我身こそ、昨日も
今日も、同じきが如く思へ、是亦、日月と共に老いゆくものなれば、決して一日半日も、
空しく費しては、悔いてもかへらぬ。されば、歳暮となりし今日のみならず、一年三百
六十五日を、一日として、徒らに過ごしてはならぬ。即ち、今年今月今日を惜みて、有益の事
に使用せねばならぬぞ」といへるなり。

六 広島大学教科書ライブラリー 發兌 大日本圖書株式會社
(M.26.9.14印刷M26.9.17発行)
巻之六上
6-a09


歳暮歌(ニ調/ト調)


この年(とし)この日惜(ひをし)むべし
おち葉(ば)は枝(えだ)にかへりこず
流(なが)れは渕(ふち)にとどまらず
この月(つき)この日惜(ひをし)むべし

此月(このつき)このひをしむべし
きのふの吾(われ)はわれながら
あくる日(ひ)けふの日(ひ)にあらず
このとしこの日惜(ひをし)むべし


歳暮歌(ニ調/ト調)
・此曲は何調なりや。
・前曲と同じく「ニ」調なり。
・「ニ」調より、一個の嬰を取り去らんには、何の調となるべきぞ。
・「ト」調となるべし。
・本曲中、嬰を去りし所ありや。
・有り。第三段の第三小節に在り。
・然り。之に就きて、よく研究すれば、本曲の主調は、「ニ」調にして、第三段に至りて、其第四音、即ち次屬和絃たる「ト」調に轉じたるを知り得るなり。
教師、是に於て、前に「屯田兵」、「三景」等の曲に在りては、一嬰を加へて、屬和絃に轉じ、
今は、一嬰を去りて、次屬和絃に轉ぜしを注意し、規則を授けて曰く、
 嬰種の調號に在りては、其一個を加ふれば、主調は、屬和絃の調となり、其一個を去れば、次屬和絃の調となる。
  之に反して、
 變種の調號に在りては、其一個を去れば、主調は、屬和絃の調となり、其一個を加ふれば、次屬和絃の調となる。(「磯山元」の曲參照)
(略)

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