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明治の唱歌を合唱ソフトに唄って貰う535

六 広島大学教科書ライブラリー 發兌 大日本圖書株式會社
(M.26.9.14印刷M26.9.17発行)
巻之六上
6-a12
四の時
作曲者 未詳
作歌 鳥山啓



山風(やまかぜ)はやみ雪(ゆき)かとばかり
桜(さくら)の花(はな)のちりしく坂(さか)を
越(こ)えてし来(く)れば履(くつ)こそ薫(かを)れ

いろくづ遊(あそ)ぶ木影(こかげ)の池(いけ)に
白珠(しらたま)ちらし噴(ふ)きづる水(みづ)を
見(み)つゝし居(を)れば心(こころ)も涼(すず)し

錦(にしき)やさらす綾(あや)をやしける
真萩(まはぎ)の花(はな)のさきちる野路(のぢ)を
分(わ)けてし行(ゆ)けば袖(そで)こそにほへ

散(ち)りかふ花(はな)か降(ふ)り来(く)る雪(ゆき)か
はなゝす雪(ゆき)の木(こ)の下道(したみち)を
さしてし来(く)れば傘(かさ)こそ重(おも)れ

四の時
此曲の調の、變「ホ」なるは、新出の調號變「イ」より、下へ四度數へて、之を發見せしむべし。
又此曲は、自ら流暢の體を具ふるものなれば、其心にて練習すべし。其歌も、優雅の情を
述ぶるに在るものなり。又、六拍子の練習をも行ふを要す。

第一歌は、晩春、櫻花の散りゆく頃に、所謂、志賀の山越えなどのやうに、山路をこえゆ
く氣色をよめり。・「山かぜはやみ」は、「山風はげしさに」と云ふ意なり。・「くつこそ
かをれ」は、ちる花をみつゝゆくゆえ、はきたるくつも薫るやうにおもふなり。
第二歌は、夏日、泉水に臨みて、游泳する魚を觀つゝ樂むさまなり。・「いろくづ」は、魚
のことなり。・「しらたまちらしふきづるみづ」は、飛泉(たき)の激(ほとばし)るを形容せるなり。
第三歌は、秋日、郊外に遊びて、秋草の中をわけゆくさまなり。・「にしきやさらすあ
やをやしける」は、「萩の花」のさきみだれて、錦繍をしきちらしたるが如しと賞美せる
なり。・「そでこそにほへ」は、萩の花の、袖にうつりて、さながら匂ふこゝちのすると
いへるなり。
第四歌は、冬日、雪ふる日に、山路などをゆくさまなり。雪のふるを、花かと疑ひ、其花の
如き雪のかゝれる木蔭をゆけば、我さしてをる傘がおもくなる。してみれば、これは、
花ではない、雪が、だん乀ふりつもるとみえる」といへる意なり。

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