見出し画像

明治の唱歌を合唱ソフトに唄って貰う523

四 近代教科書アーカイブ 發兌 大日本圖書株式會社
(M26.8.15印刷M26.8.18発行)
巻之四下
4-b25


京の四季
作曲 高野茂
作歌 稲垣千頴

花(はな)さく春(はる)はひがし山(やま)
月(つき)すむ秋(あき)はかつら川(がは)
鳥羽田(とばた)の早苗小野(さなへをの)の雪(ゆき)
みやこにつきぬそのながめ

京の四季
此曲、調號の形は、「ヘ」調と同一なれ〓(とも)、其實、俗樂調第一種の旋法に屬せるヿは、其首尾
の音に徴して、明なるのみならず、一たび其奏曲を、生徒に聞かしめば、皆な忽ち其然るを
發見するなるべし。而して、教授上、最も注意すべきは、切分聲の事、再附點音符の事等に
して、唱法上の注意は、前に上篇末曲、「身はたをやめ」の場合に述べたるが如し。特に此
曲の末尾三小節は、曲節細密にして、習ひ易からざれば、一層、注意して授くべし。
[注意]此類の曲は、前にも述べし如く、可成的、下段の樂譜に随ひ、樂器を伴奏する
を可とす。是れ唱者の拍子を規正するに、緊切なる關係あるを以てなり。

此歌は、京都の四季、をり〻〻につけて、優美なる氣色をよめるなり。東山には、祇園清
水など、春の花の名所あり。桂川は、京都の西、嵐山の麓を流れて、桂の里に至る、名高き
清流なれば、秋夜の月を觀るには、渡月橋など、眞に好位置なり。鳥羽田は、京都の南に
在りて、田園、數十里に連亘し、夏日早秧の頃は、一面に青氈を敷くるが如く、見るも涼
しき氣色なり。小野は、北山の麓にて、雪に名高きは、千年の昔よりにて、業平卿の歌に
ても著し。右の如く、京都の四季をり乀の氣色を、東西南北に配合して、山水明媚の
勝地なることをよみいでんなり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?