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ハードディスクを物理的に破壊してみよう!黒歴史データ抹消・新旧HDD比較分解レポート

壊れたハードディスクや、古くなって使わなくなったハードディスク。どうしていますか? メルカリやヤフオクで売るという手もありますが、ソフトウェア的にフォーマットや消去しただけでは、どうしてもデータ復元・流出のリスクが付きまといます。
専門業者に依頼しても、破壊せず中古品として横流ししていた事件があったように、黒歴史データを復活させることなく確実に息の根を止めるには、自ら手を下すのが確実に近い方法と言えます。
今回は2010年/2019年の新旧ハードディスクを分解しながら構造を簡単に紹介したり比較しつつ、どうすれば破壊できるのか解説したいと思います!

日曜大工用のドリルで穴開け破壊する方法などもありますが、今回分解破壊してみたところ、危険性も低く簡単だったため、HDDの処分にお困りの方は是非お試しください!

破壊するHDD

今回は下記2台のHDDを分解・破壊します!
Seagate製ST8000DM004(8TB 2019年7月生産)
 こちらは使用から2年半くらいで動作不良が発生、保存したデータが消える問題が起こったため使用停止。ギリギリ保証期間外(2年)…。
WesternDigital製WD10EALS(1TB 2010年5月生産)
 こちらは経年劣化。温度が上がりやすくなってきたため退避させていましたが、PCのSATAポートの空きも少なく、今回廃棄処分に決定。

左がWD製1TB、右がSeagate製8TB
同上の並び。2010年製(左)と並べてみると、2019年製(右)は基板がコンパクトになっているのがわかりますね。

工具の準備

さて、いざ分解!の前に、工具の紹介です。
こういったHDDには星形の特殊ネジ(トルクス)が使われていることが多く、一般的なプラスドライバー等では分解できません。ネットではサイズ調べてホームセンターで買ってきて…みたいな話をよく見ますが、AliexpressやAmazonで買える、こういった電子機器分解用の特殊ネジセットを2千円くらいの安いもので良いのでひとつ買っておくと色々使えるのでおすすめです。

ポイントですが、ねじ先のビットが金属の素材そのまま(銀色)のものではなく、こういったコーティングされているものがおすすめ。一度某iPhone分解修理などで有名なサイトで売られている1万円くらいのキットを使う機会があったのですが、コーティングのないビットがあまりに脆く、ボロボロと金属粉が出てくる有様でした…。それから、ビット保持部分はシンプルなものを選びましょう。カッコいい構造の安物はそこから壊れます。

愛用している分解セット。日本円で2000円くらいで、Aliexpressでは高級クラス。
今のところ3年目くらいで相当使いこんでますが、長持ちしてます。

まだ売ってたのでリンクを貼っておきます。63in1のほうですね!

基板の取り外し

早速、裏側の基板を取り外します。
HDDの基板は中のディスク装置を制御する基板なので、データは保管されていません。しかし、装置を制御するための固有情報は保管されています。基板を破壊する必要は必ずしも有りませんが、取り外して分けて捨てると、データ復旧を防ぐ手立てにはなるでしょう!

※極論、制御基板はどれだけ破壊しても、同じ型番品を持ってきて、固有情報チップを書き換えれば(相当な技術が必要ですが)HDDを動作させることができます。言わばHDDの基板は金庫の鍵のようなもので、時間をかければいくらでも突破できるものです。金庫の中身を見られたくなければ、鍵をかけて捨てるのではなく、捨てる前に中身を破壊することが肝要ですね。

※※一部、Windows Vistaの時代に流行ったハイブリッドHDD等、基板側にデータ保管領域を持つタイプもあります。その場合はSSDを壊すのと同じく、基板上のメモリ部分も破壊する必要があります。

Seagate 8TB @ 2019

星形ネジをすべて外します
ケーブルで繋がっているのかと思ったら、簡単に取れました。
どうやら、この本体のポゴピンに基板パッドを押さえつけることで本体と通信している模様。
なるほど、考えられてますね。
ボードに乗っている大型チップはコントローラSoCらしきもの、DRAM、
モーターコントローラ(HDDを回転させるため)ですね。
あとは電源系や、EEPROM(上述の制御用固有情報を記録している)らしきICと部品が見えます。

WD 1TB @ 2010

同じく、星形ネジをすべて外します
こちらはスポンジがついていました。本体側もSeagateに比べると少し複雑な形状をしていますが、メーカーというより時代の違いが大きいと思われます。
WD製(2010)ボード。Seagate(2019)に比べるとICのサイズが大きく、ピンピッチも大きい。
BGAでなくリードタイプの部品が目立ちますね。
よくみたら、HDD内部と通信するための接触部パッドに腐食?が… 
既に使用していませんでしたが、こちらのHDDも残り寿命は長くなかったのでしょう。
ということで分解した2枚のボードを並べてみました。
左がWD製@2010、右がSeagate製@2019。
2010→2019の9年間による半導体の進化や、コストダウンの努力が見て取れますね。

本体分解

さあ!いよいよメインディッシュです。

Seagate 8TB @ 2019

星形ネジをすべて外します。
必ずラベル下などに隠されたネジがあるので注意。

警告ですが、HDDは密閉された状態で調整されており、
一度開封しただけでも埃が混入し、個人レベルでは復活が相当難しくなります。
廃棄前提以外での興味本位の分解は絶対にやめましょう!!
組みなおしてもまともに動きません。
御開帳!
全てのネジを外せていたら、角を軽くマイナスドライバーで引っかけるだけで簡単に開きます。
「力を入れても開かない」場合は隠されたネジがまだあることが多いです。
HDDのディスク(プラッタ)は美しい鏡面になっています。
これがディスクを読み取る部分(磁気ヘッド)。
非常に精密にできています。回転するときはわずかに浮き上がり、
ディスクとは非接触で磁気によるデータの読み書きを行います。
分解。この磁気ヘッドはマグネットと電磁コイルで制御されています。
左側が非常に強力なネオジムマグネット。
この金色部分が磁気ヘッドの位置制御をするための電磁コイルです。
裏側に隠されたネジが一本あり、これを外すと…
磁気ヘッドが取れます。先が相当に鋭利なので注意。
この磁気ヘッドがボディにはめ込み固定されていた先述のポゴピン部品と繋がっています。
こうして密封されたHDD内部と外部の基板で通信を行ったり、ヘッドの制御をするんですね。
取り外した後の図。
下側にもネオジム磁石の部品があります。
こちらのディスクも外していきます。
昔のタイプはガラス製などもあるようですが、最近の物はほぼ金属製のようです。
この状態のまま無理やりディスクを破壊する人もいるようですが、
ネジ外すだけで簡単に取れるので全部バラします。
ディスク間にはスペーサーも入ってます。
全部取れました。
綺麗に並べるとこんな感じ!
どの部品も相当に高精度に作られていて、
これが1.5万円くらいで売られている世の中ってすごいな…とか思う次第です。

WD 1TB @ 2010

WDはラベル下に加えて、ネジがいくつか黒いテープでふさがれてました。
こちらは2023年に買ったWD製には無かったので、WDのメーカ固有ではなく、昔は貼ってたというやつでしょう。どうやら本HDDには内部部品の固定と兼用の蓋ネジ穴があり、その箇所には黒いテープが貼られているようです。
御開帳。
1TBだからか、ディスク数が少なく、スペーサーが目立ちます。
ヘッドも控えめ。
ディスク数に合わせて固定穴だけが残り、1か所実装されていないのがわかります。
ヘッド取り外し。こちらは固定ネジがHDD内側にあるタイプでした。
通信のための構造は同じようです。腐食?焼け焦げ?が痛々しい…。
ディスク取り外し。2枚しか入ってませんでした。
並べてみるとこんな感じ!あっさりしてますね。
左がWD製1TB、右がSeagate製8TBのディスクですが、並べた見た目にはほぼ同じに見えます。
重ねてみると違いが見えてきます。
左がWD製1TB(2010)、右がSeagate製8TB(2019)。
新しいSeagate製はより薄く、わずかに大きくなっているのがわかりますね。
この辺は材料と加工技術の発達の賜物というところでしょうか。

ディスクの破壊

さて、綺麗に分解できたところで、本家本命のディスクを破壊し、何があってもデータ復旧されて黒歴史が流出することがないよう最終処理します。

一般的なご家庭にはどこにでもあるハンマーとモンキーレンチなどのデカめの工具を用意します。
ディスクはジップロックに入れましたが、今回は実は金属製ディスクなので不要。
ガラス製ディスクの場合は割れると大変危険なので袋や箱、保護具など対策を用意しましょう。

叩きます!!曲げます!!
この時の注意点はベランダなど外で、近所迷惑にならないよう昼に、出来るだけご近所さんに見られないように作業しましょう。黒歴史完全抹消するつもりが新たな伝説を作ってしまいます。

どうしてもという場合はフライパンで叩いてもよい
出来上がった現代アート
さらにヤスリなどを使って細かな傷をまんべんなくつけます。
ついでに、おまじない程度にHDDについていたネオジムマグネットでこすっておきました(磁気記録式のため…)。

ここまでやれば、恐らく大丈夫でしょう!!
逆にこれをなんとかしてまで復旧する人がいたら、もうどうぞ見てくださいという感じですね。あとは不燃ごみとして捨てるだけです。
一応、私は基板・HDD部品・ディスク本体と3つに分けて捨てました。
ということで、HDDくんお勤めご苦労様でした。

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