【往復書簡】1通目(ジャッキーさん)

拝啓 ジャッキー様

お会いしたのは一度きりにも関わらず、先日はお話する貴重な機会をいただき、そしてその流れからこの往復書簡の申し出への快諾ありがとうございます。電話を切った後にじわじわと冷静になり改めて己の無鉄砲さに気づいて変な汗が出ましたが、ともあれ結果こうやってやりとりができることを嬉しく思います。

この書簡を通して現在お互いが営んでいる場(やそれに伴う思想)の話や、そこから広げて理想的な場のあり方(場論)や更に欲張って街や社会や文化形成にまでずんずんと踏み込みながら、ざっくばらんにキャッチボールができれば幸いです。言っておきながら自分が満足に球を投げれるのか心配ですが、常に全力投球を心がける甲子園球児の気持ちで文字を紡がせていただきます。プレイボール!

さて、壮大なテーマを掲げておきながらさっそく小さな話から始めますが、このやりとりをさせていただくにあたり改めてジャッキーさんが営まれている夜学バーさんのジャーナルや長文を読み返していました。読めば読むほどに「ああ、この賢人とこれから問答を繰り広げるのか…」と緊張が高まる一方で、現在僕が営んでいるひつじがが目指す姿(まだ遠く及びませんが)に近い思想が度々出てきて感動しました。同じようなことを考えている人がいてよかった、と。

夜学バーさんの屋号にも入っている「学び」(学ぶ姿勢)は生きていく上で必要な技術だと思っています。とはいえ今は学ばなくてもある程度生きられるのもまた現実です。学んだり、知ったり、考えたり、考えて話したりするのはどうしても少し面倒で、面倒だから楽な方を選ぶのができてしまう世の中になっているような気がします。

そんな中でその面倒さをあえて面白がるような場所が必要だと思い、開いたのが今のひつじがです。知ったり考えたり話したりすることを面倒がらずに面白がる人がせめて自分の周りに増えたらなあという淡い期待と、思考停止に向かう世の中への恐怖が原動力でした。なんだか雲行きが怪しくなってまいりました。

実際にお店を開けてみると街の様子がよくわかります。現状まだ多くはないものの、ひつじがには学ぶことや考えることを面白がる方の来店(特に二回以上来られる方は)もあり、思っていたほど悲観的になる感じでもないなあとじわじわ高まる熱で胸が膨らんでいます。

ただ街の中にはまだまだ学びを面白がろうとされる方がいるはず(いないとさみしい)なので、まだ届いていない方にこういう場所があることをどうやったら伝えられるのかが喫緊の悩みです。ともすれば押し付けがましくなってしまう「学び」という価値観を、どうすれば野暮ったくなく周辺の方々に伝え広めることができるのでしょうか。

(シモダ)

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