勿忘汀について
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勿忘汀について

どもです、シミズユキ(あるす)です。

言語化することは、とても難しくて重要なことです。昔は、「こういう解説ってぶっちゃけダサくね?」と囁く悪魔が心の中に棲んでいましたが、単純に難しいことを避けるための口実だけだったのかもしれません。
また、今回は久々で思い入れも非常にあり、記録に残したいと思ったので、「やりたいからやる」をモットーにいろいろと書いていこうと思います。

というわけで今回は、頒布いたしました新譜「勿忘汀」の諸々の解説なんてものを少々。

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◆アルバムを作るに至って

この歳になると、紡ぐ縁もあれば切れる縁もあります。切れる縁と聞くと悲しい響きですが、これは業務や責任に金勘定と、成長に伴って【やらなきゃいけないこと】が増えると同時に発生する取捨選択であって、ごく自然で仕方のないことなのでしょう。
同人という趣味そのもの、やらなきゃいないことではない以上、どちらに転んでもおかしくない縁です。実際、私にとって切れかけの縁でした。ですが、そんな中でも一昨年は合作に呼んでいただけたり、昨年はライブやMCで呼んでいただけたりと、わたしの切れかけの縁を紡いでいただきました。そんな皆様に本当に感謝しないといけないなと思い、長らく休眠していた時間を、縁を紡ぐためにアルバムの制作をはじめました。

◆タイトルの由来など

作るぞ!と決めた直後、昨年末から年始にかけて。今まで作った楽曲の中でまだアルバムとして記録していないアレンジをまとめ、あるものは昔のプロジェクトファイルデータを復元しながら、ないものはいちから再録しながら作業を進めはじめました。そして1月も終わりかけの頃合、楽曲がある程度出揃い、アルバムのタイトルを考えはじめました。
考えるなかで、こんな感じにしたいなあとぼんやり描いていたイメージが2つありまして。1つは【楽曲と関係のないアルバムタイトル】。アルバムにはA面もB面もなく、すべて等しく必要な楽曲、聴いてもらいたい楽曲なので、アルバム名を安直にメイントラックのタイトルと一緒にしてしまうと、他がおざなりになってしまう印象があったためです。そして、もう1つのイメージは【花の名前】。花は感情を持たないのに、感情を伝える手段として用いられます。その実直なのか曖昧なのかわからない雰囲気がとても好きです。サークル名にも花の名前が入っていますしね。花で感情を伝えようと考えていました。

そうして、いろいろ思い巡った末に付けたタイトルの初案は【勿忘】でした。

勿忘草の花言葉は、その花弁の色によって変わります。青には【真実の愛】、ピンクには【真実の友情】、そして白には【私を忘れないで】。
作ったアレンジ楽曲では散々愛を語ってきましたし、その楽曲でみなさまとの縁(友情)を紡いできた自分にぴったりだなぁと思いました。また、ものづくりの根幹、あるいは人の生の根っこにある(と勝手に思っている)承認欲求の最果てにある言葉、【私を忘れないで】。
死=忘却であると考えている私にとって、一番怖いことは忘れられることです。そんな、【忘却を恐れる感情】もまた、同時に伝えることのできる花でした。
ぴったりの花言葉が3つそろっているこの花にしよう。そうして、勿忘草をベースにしたタイトルに決まりました。

そこから、あえて【草】を除いて抽象的なイメージにすることで、勿忘草の物質的価値を取り払い、ある種の偶像的な扱いにできる言葉にしました。
そうしてついたタイトルが【勿忘】。ちょうどこのタイトルが決まった頃、今回諸々のデザインを依頼させていただきましたいちのせさん(本当に本当にありがとうございました)にご連絡して、イメージ共有をはかっていました。

◆タイトル変更

そんな渦中!なんと、某大バズり中のアーティストから、このアルバムタイトルと完全に同名の楽曲が公開されました。(めっちゃいい曲ですよねあれ)
これには私もびっくり! 急遽手を加えることに。

変更イメージとしては、大好きなTaNaBaTaのアルバムタイトルイメージで、口ざわりのいい造語にしようというところから着手。【勿忘】をベースにしたいけれど、【わすれな】に続ける言葉が全然見つからずまあまあな時間を費やしました。そんな中、たどり着いた言葉が【汀】でした。
汀(なぎさ、みぎわ)…海や湖など水と陸地が接している水際、波が打ち寄せる波打ち際。そんな、ある種ニッチで狭い世界を生きている自分のような人間にぴったりの言葉でした。
また、渚・凪・汀の字の中から、なぜ汀を選んだのか、といった点に関しては、渚は【なぎさ】の印象が強くて【わすれ/なぎさ】と分断されそうだとか、凪は【なぎ】のイメージが強いからとか色々な理由があるのですが、1番の決め手は別の読み方にありました。
【汀】という字は、この一文字で【かんじょう】と読むことがあるそうです。意味は【感情】とは全く異なる、仏教で行われる頭に水を注ぐ儀式のことなんですけどね。意味こそ違えど、歌詞で使われる率トップ独走中の【かんじょう】と読める部分に運命性を感じ、汀を選びました。

私は狭い世界の薄い存在だけども、そんな私を忘れないで。そんな、エゴ丸出しで人間臭く、けれども感情を動かされるような、そんな意味合いを込めて、最終的にアルバムタイトルは【勿忘汀(わすれなぎさ)】となりました。

ちなみに、造語はエゴサーチしやすいので、そういった観点からも便利です。tips

◆なんであんな頒布形式にしたのか

いろいろ複合的な理由から、普通のCDケースに普通のジャケットを入れて普通に作る、という利口なやり方を辞退することにしました。
今の時代、【CD】というものを象る価値は、音源以上にそのジャケットや盤面、バックインレイデザインであったり、そういった外見の部分が強いと考えています。とすると、デザインを全て出来ないならCDである必要がそもそもないのではないかと思い至りました。自分のいまの環境・与えられた時間では、プレスの完パケ制作は難しく、手焼きで作るにしても盤面印刷等、なかなか難しい状態だったためです。

だったら、CDを【おまけ】扱いにして、音源や、そのほかの部分に価値を与えよう。そう思って企画構想をはじめました。
CDはあくまでおまけ。CDの中身およびオフボーカル音源等のコンテンツがHPからダウンロードできるダウンロードカードをメインの頒布物にしよう。となると、そのカードを入れるケースをつけなければ。ケースは、首から下げるネックストラップみたいにしよう。ネックストラップにするなら、しゃれた社員証みたいにしよう。社員証みたいにするなら、追加でもう1枚カードをつけよう。そんな連鎖で、今回の【CD+ダウンロードカード+サークルカード+ネックストラップ】という頒布形式になりました。

商業やプレスでは難しいであろう、手刷りの同人だからこそ作れる形態でパッケージング。もちろん他との差別化という意味合いもあります。
また、想定はカード類をケースにしまうイメージですが、サークルカードだけ入れてなにかのイベントにつけていってもいいですし、カードケースは捨ててもらっても構いません。あとは全部任せます、ご自由にどうぞといった丸投げ感のあるパッケージですが、それもまた同人らしくていいのではないでしょうか。

さて、そんなこんなでタイトルと頒布方法が決まり、あとは中身。というわけで、最後に全楽曲の解説をかんたんにします。

◆楽曲解説

ここからは、楽曲ごとに歌詞や出立ち、作ったときの思い出なんかを解説と呼べない程度の雑談レベルで記します。

1.スタアダスト
やっぱりガツンとくる新曲を初手に置きたい!と思い、耳に残るフレーズと多めのキメ(曲がぴたっと止まったりする部分)に重きを置いて作りました。
歌詞もサテヒマらしく。選ばれる私でいたいから明るく振る舞う。選ばれない私なんていらない。そんな複雑な思いを真っ直ぐに乗せました。【そんな私を今すぐに選んで】には、明るさの裏にある不安とそれを隠す明るさを内包しています。
また、傀儡に穿った存在、白昼籠り切ったお前は、アリスやパチュリーのことでもあり、視聴者のことでもあり、同時に魔理沙とわたし自身のことでもあります。同じ穴の狢ってことですね。

しっかし魔女達の舞踏会はいい曲です。実は初めて聴いた東方(西方)の曲だったりします。小学生の頃とあるフラッシュゲームにて。そんな感じの思い出深い曲だったので、アレンジできてよかったです。

2.不器用
2019年の春、人生で最も病んでいた時期に作ったアレンジの再録です。
この曲は、ある意味自分(私)を押し付けた自分(私)が編曲したような感じの内容になっていて、自分らしく作らなきゃと自分を抑圧して作ったような記憶があります。メロディから歌詞まで。不器用なのは私なのかもしれません。

歌詞もまあよくもこんなドロドロした内容を書けたものです。愛(=心)を言葉と行動に分解した時、言葉だけで伝わるのだろうか?と考えると、行動が伴わないと伝わらないと思うのです。行動の中で一番単純ならものは何か?と考えた時に出てきたのが愛の象(=行為)なわけで、それを求めて求められて破滅していく共依存の歌詞です。
破滅に向かっていく様ってなんか芸術的ですよね。

3.切躁
またしてもメンヘラソング。あ、タイトルはカットソーと読みます。せっそうじゃないです。カットソーの隙間から覗ける赤い直線(傷)ができたhttn曲です。その傷は気付かれたいのか気付かれたくないのか、わからないまま何か言葉で伝えられないことを伝えようとしています。それは、【単純な快感を言い淀んで取り繕った】君に対してなんでしょう。そんな環境を100回も1000回も繰り返して写す、躁鬱する暗く澱んだ内容です。前曲に引き続きなんかドロッとしていますね。

この曲、実ははたて合同的な企画に誘われて作っていたアレンジなんですけど、高校生のカップルが卒業後に自然消滅するかのごとく話がなくなっていたので、じゃあまあいっかと思って他で発表しようと形にした曲です。そういった経緯があるので、(コンピ内で原曲被りが多くなることを想定して、差別化を図るために)いつもに増して原曲を崩しています。どのフレーズがどこを模しているのか考えながら聴くと楽しいかも。

4.Resetless
Retractablesのつきいちさんという方といっしょに作った合作から再録。つきいちさんがRestless(休みのない、休めない)という曲を作ってきたので、返歌としてResetless(リセットできない、戻れない)というアレンジを作りました。
この頃は私に打ち込みの技術がなかったので、「ざっくりこんな感じのピアノ入れたいんですけどいかがっすか?」と、簡単な繰り返しのフレーズを投げたら、およそ1000倍近い情報量のピアノフレーズが返ってきました。今回は、当時の音源のミックスを根本から変えて再録。

歌詞の内容的には、甘い言葉や嘘をやめて!私を搦めとらないで!といったいつもの感じ(?)。その点、次曲の【花吐き嘘】にかなり近い雰囲気でね。
あと、現実という名の地獄から逃れたいよね〜というかなり後ろ向きな感じです。まぁこの頃作った曲は後ろ向きなものばかりなんですけど…
普段あんまり発信してないですけど、実は秘封めちゃくちゃ好きなんですよ。本当に。人によって【濃度】が全然違うところが特に好き。

5.花吐き嘘
【はなはきらい】と読みます。癖。こちらワンルーム・パレードという、イラスト先行で曲をつける企画にお呼ばれして作ったアレンジの再録。ナオイさんの描いたパチュリーで曲を作らせていただきました。
なんでも、創作界隈においては【花吐き病】という病があるそうで、そこから歌詞を考えました。片思いを拗らせると口から花を吐き出すようになる病だそうです。

やさしい嘘で宥めるあなたが愛しすぎて嫌いという、これまた拗らせ女子全開の歌詞です。基本的に恋という病はかかった自分ではなくてかけてきた相手が悪いんです。そうやって笑って頷いて唆してくるあなたのせいなんですよ。やさしくするあなたが悪いんです、全部。あなたの嘘(優しさ)で花を吐く、花吐き嘘、花は嫌い。そんな、どうにもならないやつあたりの感情をナオイさんの絵に添えて、花吐き病を使って表現してみました。成人男性が書いてます。

6.梔子と向日葵
騒想者たち零という合同に出した曲なんですけど、これも思い入れがあって。ちょうど、「さあ作るぞ!」と思い立ったタイミングでパソコンが壊れて、今まで使っていた音源まわりが全て死んだんですよね。そんでドラム音源も使えないもんだから、急造で用意した新しいパソコンで、ドラムなしで曲を作りはじめたところからのスタートでした。ドラムなしで合同面子に戦いを挑むにはどうするか、を考えた結果、アンビエント感あふれるフレーズをとにかく重ねるところに落ち着きました。ギターのボディーを叩いて重ねて、フレーズを弾いて重ねて…を繰り返したら、今まで作ったことのないいい感じのアレンジになりました。そんないきさつがあったので、非常に思い入れのある曲です。

歌詞は、壊れたゆうかりんがすべてを壊す内容です。存在も関係も、倫理観すらも壊します。わたしは、感情のいきつく先は生殺であり、暴力だと考えています。その単純な破壊を、感情表現の最上位である【花】を用いてぶち撒けました。歌詞の隠れている部分は【犯してよ】と歌っていますが果たして?

7.Kinkakuji
一時期文花帖のスペカ【金閣寺の一枚天井】にどハマりしていたので、それで書いたスペルソングです。キャラソンならぬスペソン。スペソンだからレトロスペクティブ京都×竹取飛翔の夢のコラボも実現。そんな感じの、スペルを遊ぶ俺vs輝夜の闘いを歌に落とし込みました。
この曲を含むここから3曲は、曲中の歌詞ではっきりと事象を歌っているので、特別解説する必要のあることが少ない気がします。

タイトル的に、本能寺で待ってる!のパロディかと思う方も多い(?)と思いますが、実際にパロディ要素は最終盤にちょろっとしか出てきません。知らない人はHonnojiで検索してみてください。

8.ルナティックタイム
バトルソング2曲目。クラピを殺したいくらい愛しているので、クラピに殺される曲を作りました。意味がわかりますか?意味がわからないと言われても、それに尽きるのでほかに表現のしようがありません。ドMとかではないです。

多くは語らない…というか歌詞に書かれていることが全てです。楽しそうにわたしたちを殺してくるクラピの弾幕を脳裏に浮かべながら聴いてみてください。あと、皆様も紺珠伝のルナティックを遊んでみてください。そうすれば、全て理解できるはず。

9.守谷も祭
こちらは2020年のエア例大祭で作った曲です。コロナで先行きが不透明な中だけど、いつかまたハレる(晴れる、ハレの日が来る)ので今を耐え抜こう的な内容です。書いてて思ったけどうちで踊ろうじゃんこれ。うちで踊ろうです。

音楽的な話でいくと、変調だったりドラムフレーズだったりいろいろ語れる部分も多いのですが、そういった部分も含めて歌詞・音楽性の詳細な解説動画を作っているので、詳しくはそちらを参照ください。
https://youtu.be/uUX5vTGj62o

10.泡沫想い
昔ふらっとサウンドクラウドに上げた曲の再録。多分このアルバムの中でいちばん芯のあるテーマ、というかアルバムタイトルに通ずるメインテーマといっても過言ではない内容です。
そして、同時に一番解釈が難しい内容だと思われるので、他より真面目に説明していきます。


【さよならクリストファー・ロビン】という、私が愛してやまない小説作品があります。内容をざっくり説明すると、【物語は忘れられることで消滅する】といったことをキャラクター目線で描いている内容です。つまり、この曲でいうところのフランドール・スカーレットも、【東方】という作品が忘れられると同時に消滅するのです。
ただ、現状の東方というコンテンツの盛り上がりっぷりを考えると、【東方】が【忘れられる】なんてことは当分考えられませんよね。これは、歌詞の上ではフランドールの独白のように見えますが、実際は、フランドールに【忘却されることの恐れ】を代弁してもらっている【私】という物語の曲です。
私という存在が忘れられないように、曖昧な歌を届けましょう、いつか忘れてしまうあなたへ。

世界の全ては物語です。東方も、私たちの生活も、人生も、創作も、音楽も。生きることで、忘れられません。忘れられない、他者に認識されることで、生きていることを証明できます。
その【生】が終わって、いつか悲しい終末を迎えることは宿命です。延命は可能かもしれませんが、結末は変わりません。ですが、その宿命に少しでも抗えるように、残せるものを残しましょう、という、私の創作理由をそのまま言葉に落とし込んだ内容です。
私は、これからも忘れられないように曖昧な歌を届けようと思います。それが、どれだけ独りよがりのエゴだとしても、いつまでも忘れらないように。

11.そして閉ざした
こいしが目を閉じるまで、をテーマに描きました。
全てが見えることと、全てを理解することは似て非なるものです。この狭間で苦悩した結果、あの人もこの人も離れていってしまいました。そして、気付くことと傷付くことの繰り返しの末、こいしは目を閉ざしましたとさ。そんな救いのない内容を締めにどうぞ。

この曲について、これ以上詳細に書くのは無粋なのかもしれません。細かな部分に関しては、ぜひみなさま自身で解釈していただければと思います。よろしくお願いします。

Ex.Raim Claim Daydream
おまけトラックは、ハヌマーンのFever Believer Feedbackというド名曲のパロディです。賭博合同というイカれた合同で提出したアレンジのリミックスですね。

歌詞の改変っぷりがマジでいい感じに東方ナイズドされている自信作なので、よければ原曲(ハヌマーン)と歌詞や曲調を比べてみてください。
湿っぽく終わるのが嫌なので、最後にはっちゃけたトラックで締めました。


◆おわりに

以上、アルバムすべての解説でした。いかがでしたでしょうか。
自己満足も甚だしい文章ですが、もしこれを受けて、頒布した内容をさらに深く楽しんでいただければ、これ以上に幸せなことはありません。
みなさまの物語において、なにかの参考になれば幸いです。


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シミズユキと申します。あるすと呼ばれることもあります。趣味で音楽やってます。 https://shimizuyuki.themedia.jp/