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チビッコとクリスマスツリー


アタイはクリスマスツリー。生まれはグリーンランド、性別は組み立て式。

生まれて初めて聞いた言葉は「クリスマスが今年もやってくる〜♪」

体長160センチ、家庭用にしては大きめなタイプだわ。


アタイが活躍する期間は短い。12月のはじめ〜中頃あたりに表に出され、12/26には綺麗さっぱり片付けられる。

セミとまではいかないが、たった2週間ちょいの出番なのである。一年は365日間もあるのにだ。なんたる短さ。


しかしだ。アタイの重要性はすごい。年末ラストの大イベント「クリスマス」の象徴といっても過言ではなく、世界中を見ても一年で最もロマンティックなひとときなのである。

アタイのいるこの家には、まだ引っ越したてホヤホヤの夫婦とその子どもたちが住んでいた。

子どもといってもまだまだチビッコで、4才と5才だ。ちょろちょろと動きまわっている。


そして来たるクリスマスイヴ。父ちゃんがアタイを買ってきて家で組み立てる。イヴにアタイを組み立てるなんてギリギリな男である。

「わー、、、」
チビッコたちは感心したような顔で見上げている。 だろう? アタイはすごいだろう?

もさもさとしたビニール性の葉っぱに、キラキラした装飾をていねいに取り付けていく。チビッコたちも手伝う。上のほうは届かないので、下のほうを担当する。


いよいよ完成!父ちゃんが一番下のチビを肩車して、アタイのてっぺんに星型の飾りを取り付ける。

「できたね!」
チビッコたちは嬉しそうにはしゃいでいる。

その夜はみんなでケーキをたべて、眠りについた。


そして翌朝。チビッコたちが起きてリビングにいくと、ツリーの下にプレゼントが置いてあった。

「サンタさんだ!わーい!」
猛ダッシュで駆け寄る。プレゼントを開けて目をまんまるくする。

すぐに父ちゃんと母ちゃんに報告しにいき、喜びの舞のようなものを踊っている。


子どもたちのワクワクした顔、両親のしたり顔、浮かれた街の雰囲気とジングルベルの音楽。

なんと素敵な日なのだろう。

でも、この子たちが大人になってもこの表情をアタイに見せてくれるのだろうか。そこだけが心配だった。


それから12年後、チビッコだった子どもたちももう高校生。あっというまに大人っぽくなった。背丈もアタイと変わらない。

そしてクリスマス当日。

子どもたちは朝起きて一番にツリーに駆け寄る。プレゼントを見てワクワクする。この表情が見たかった。変わらない二人にホッと安心した。


そしてなんと、両親の枕元にも小包みが2つ置いてあった。

「ボクたちからのプレゼント」
子どもたちはニヤッとしたり顔をする。

父ちゃんと母ちゃんが嬉しそうにしてるのを見て、喜びの舞のようなものを踊る。あの頃となんら変わらない。

この家に、やんちゃな二人のサンタが誕生した日であった。



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