自慢げなこたつ
わたしはこたつ。生まれはニトリ、性別は和柄、相棒はみかん。
生まれて初めて聞いた言葉は「冬はやっぱこれだよね」
冬に居間で団らんするなら、わたしは必須だ。
わたしたちの破壊力はすごい。
一度入ってしまったら最後、もう二度と抜け出せなくなる。そのまま寝落ちしていった人を何人も見てきた。
寒い冬は、幸せの象徴として君臨するのよ。まいっちゃうわよね。あー忙しい忙しい。
今年も冬がきたわ。わたしの担当する家もそろそろこたつを出す頃。
「寒くなってきたし、こたつでも出すか〜!」
そういってお父さんが物置に向かう。ガサゴソとわたしを持ち上げて居間へと運ぶ。
ふふふ。冬にわたしを出したら最後。甘く見るんじゃないわよ。
この家は、父さん、母さん、兄、弟、ネコが2匹というラインナップで構成されていた。
朝、みんなが起きてきて居間にあつまる。もぞもぞとわたしの中に入ってくる。
「あったけ〜」
弟が幸せそうな顔をする。かわいいやつめ。そうして兄弟は学校に、父さんは職場に向かっていった。
お昼、ネコたちがあつまってきた。こたつの中はさすがに暑いのか、身体の半分だけわたしの中に入って、上半身は外に出して寝っころがる。
5秒もたたないうちに二匹とも寝てしまった。いっちょあがりだ。コイツらはたやすい。
つぎに家事を終えた母さんが入ってきた。夕方のことだ。
母さんはサスペンスドラマを見ながらポテチをバリバリとたべている。さぞ幸せな時間であろう。
40分後、なんとドラマがクライマックスに差し掛かるであろうタイミングで寝てしまった。犯人もわからずに、寝た。
まあわたしにかかればこんなもんよ。
夜になって兄弟が帰ってきた。お風呂に入り、ごはんをたべ、こたつに入ってゴロゴロしながらスマホをいじりだした。
こうなればわたしの勝ちパターンだ。見事30分もたたずに寝落ちしてイビキをかいている。
ラストは父さん。こいつぁ少し手ごわい。父さんは帰宅して、同じく支度を済ませ、こたつに入る。いいぞいいぞ、こっちのペースだ。
しかしなかなか寝てくれない。歴史の本を読んでいる。趣味に没頭するタイプか…。
よし、すこし温度を上げてみた。
1時間後、コロッと寝落ちした。わたしガッツポーズ。家族全員がこたつに入って爆睡、ネコたちもゴロゴロと喉を鳴らして寝ている。
この幸せな光景が好きなのだ。わたしがいるだけで家族がひとつの場所にあつまって、うっかり寝落ちする。
「やべっ寝ちゃった!」なんて言いながら深夜に起きて、ぞろぞろと寝室に向かうのだろう。
そうなると分かっていながら、きっとまた明日もこたつに入る。そして寝落ちするニンゲンたちを見て「可愛いな」ってわたしは思うのだろう。
そんな日々もいいじゃないか。冬くらい、ね。
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