【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】26

翌年のシーズン

投げる際の裂けるような痛みもなくなり
僕はピッチャーをやることとなる
ピッチャーをできる人がいないというチーム事情だったとはいえ
チームから頼まれた僕は〈やりがい〉を感じ
やる気に満ちていた


とはいえ
ピッチャー経験の浅い即席ピッチャーだったためいろいろな壁が立ちはだかる
試行錯誤が始まる
一つ課題をクリアしても
また違う課題が出てくる


「たいへんだけど、楽しいなぁ!」


大事故から一年を過ぎて
仕事や生活など苦労はしてきたけど
それとは違ったたいへんさが心地良くもあった

僕はこのシーズンで投打に活躍し
リーグの中でも押しも押されぬ有数の選手になる

だが…やはり腹部の傷の影響で
今までできてたプレーができない葛藤を毎回毎回感じては


「本当だったら…」


言い訳のようなセリフが頭の中を
よぎることが多くなる…
わかってる
わかってる
言われなくても
わかってる


もうあの頃の僕ではない


受け入れ難い事実を直視するだけの
力が僕にはなかったらしい


でもこのことがのちに
僕の中で多大なる影響を与えることとなる


ときは流れ…



つづく


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