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TBS新番組『ジョンソン』初回放送日決定。ところで、ジョンソンって?

TBS新番組『ジョンソン』初回は10月23日!

10月23日(月)が初回放送として正式発表されたTBS新番組『ジョンソン』。ダウンタウン、さまぁ〜ず、雨上がり決死隊、キャイ〜ンによる伝説的バラエティー番組『リンカーン』の後継番組というのだから、期待しないわけにはいかない。そして、なんといってもその番組レギュラーのなかに、ニューヨークがいるんだから尚更だ。

『ジョンソン』という番組名は、リンカーン大統領の次に大統領を務めた「ジョンソン大統領」からとったもの。でも、ジョンソン大統領というひとは一体どんなひとなのだろう?リンカーン大統領なら、「人民の人民による人民のための政治」という言葉を用いたゲティスバーグの演説だったり、奴隷解放宣言を発表したりしたひとということはなんとなくわかるのだけれど、ジョンソン大統領という名前を聞いても今ひとつピンとこない……というひとも多いのではないだろうか。

それなら、番組が始まる前に調べてみるのも面白いかもしれない。ニューヨーカーなら、アメリカのことについて知っておいて損はないはずだ。

アメリカ合衆国第17代大統領アンドリュー・ジョンソン

南北戦争は、1861年から1865年にかけて、北部のアメリカ合衆国と合衆国から分離した南部のアメリカ連合国の間で行われた内戦であり、両軍合わせて50万人近くの戦死者を出したとされている。そんな戦いにおいて、勝利を収めたのは奴隷解放を大義に挑んだ北部であった。

しかし、南部の指揮官であったリー将軍の降伏からわずか5日にして、北部のリンカーン大統領が暗殺されてしまう。この危機的状況のなかで、リンカーン前大統領の意思を受け継ぎ、これからのアメリカをどのように導いていくかを任されることになったのが、番組タイトルの由来ともなっている、アンドリュー・ジョンソンというわけだ。

奴隷解放を宣言し勝利を収めた北部であって、すぐさま南部における奴隷を解放して、黒人に白人と同等の権利を与えようと動き出すというのが、多くのひとが思い描く道筋かもしれない。でも、ジョンソンはそうは考えなかった。ひとまず南部各州の連邦復帰を優先させ、黒人に諸権利を与えるのは個別具体的な事情に応じて、徐々に行うべきだというのがジョンソンのプランなのだった。

一方、共和党が優勢の議会はそうではなかった。黒人には直ちに白人と同等の権利を与えて、南部各州の戦争責任を厳しく追求していく必要があると考えていた。そして、ジョンソンがめざす漸進的な取り組みには我慢ならず、大統領の拒否権を押し切って、憲法修正案を通過させていくのであった。その内容は、「本人の意思に反する強制労働の原則的な廃止(第13条)」「人種や皮膚の色、過去の強制労働などを理由に、合衆国市民の投票権を拒否あるいは制限することの禁止(第15条)」などである。

ジョンソンは、奴隷制を一部擁護したり、戦争で没収したはずの南部のプランテーションを早々に返却したりして、急進的な改革を推し進めようとする議会との対立を深めていく。なかでも、最も議会の反発をかったのは、1865年ごろから南部で制定されていった、解放された奴隷の社会進出を阻むような「黒人法」を認めてしまったことであった。この法案により、解放されたはずの黒人の地位は奴隷時代とさほど変わらず、しかもプランテーション雇用主に縛り付けられた状態になってしまったのである。解放奴隷のために土地を確保して分配するという計画は潰え、そのほかにも解放奴隷のための学校を創立あるいは設立の援助をする法案や、州の裁判所で公平な裁判が受けられない場合は連邦裁判所で審議できるようにする法案などが議会を通過したけれど、いずれもジョンソンの拒否権によって阻まれてしまうのであった。

そして、人種によって差別せず、平等に扱っていくという「革命」はついに実現せず、その後、アメリカはこの問題を抱えたまま、歴史を紡ぐことになる。

多くのメディアで、過去40年間におけるアメリカ大統領の評価をランキングした調査結果が発表されているけれど、常にリンカーンが上位にランクインする一方で、ジョンソンは常に最下位に近い評価が成されている。

1865年、アメリカの歴史において、リンカーンからジョンソンへとバトンがうまく渡ったとは言い難いのである。2023年、伝説的バラエティ番組からバトンを受け取り、10月23日から毎週月曜21時に、ニューヨークが出演するTBS新番組『ジョンソン』が放送される。果たして、今回はどのようにバトンが受け継がれるだろうか。今回の『ジョンソン』は評判よく、多くの人に受け入れられる存在になってほしい。期待して初回放送を待ちましょう!


参考

奥田暁代『アメリカ大統領と南部―合衆国史の光と影』慶應義塾大学出版会/2010

世界史の窓 世界史用語解説「南北戦争」

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