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またいつか。元気で会える、とは限らない


多くの人が、またそのうちね。落ち着いてからね。って「自制の夏」を過ごしているけれど。誰のもとにも平等に「次の機会」が訪れるとは限らないことを、本当は誰もが知っています。

母は、前のがんから10年を経た去年、ようやく「寛解」の太鼓判をいただいてそれはそれは喜んでいました。だけど、2月に前回とは全く異なる病がわかり、判明から2ヶ月半で、鬼籍に入りました。わが家には「次のゴールデンウィーク」も「次のお盆」も、ありませんでした。

もしも今、あなたの大切な人が、急に体調を崩して入院したら。面会も叶わず、そのまま旅立つことになってしまう可能性だってあります。災害や事故で突然、いのちを失うことだってあります。

またいつか、なんて言わずに、大切な人には。会いたい人には。会えるときに会ってください。会いたい人に会うために、1〜2週間余分に休めば済むのなら、休めばいい。マスクや消毒、手袋などなど重装備だって構わない。そう言うコスプレだと思って楽しんじゃうのもあり。いろんな理由でリアルに会うことが難しい人は、オンラインでもいいので、惜しまず対話をしてください。この辺は、インターネットも未整備のところばかりなので、親御さんがスマホをお持ちでないのなら、顔を見ての対話も難しいかもしれないけど、、、最悪、電話でもいいので、伝えたいことを伝えてください。耳が痛くなるような話が出てきたら、親にバレないように聞き流していいから(笑)、じっくりお話を聞いてあげてください。お盆休みじゃなくてもいいから。サプライズだってなんだっていいから。なんなら、家とは違う、オープンエアな場所で密会だってできるから。

「今日が人生最後の日」と思って、どうか、そのご縁を大切に。。。

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人が出入りするたびにドアノブを消毒するなんて、普段なら「なんて失礼な!」と叱られそうなスタイルでとり行わせていただいた異例づくしの初盆でした。

お昼になると惣菜やパンを出し、持ち込みオッケー、出前もオッケー。ビューティーサロンとティーサロンを足して2で割ったようなお店だったので、これが平時ならば、母がしていたようにみんなでお茶や惣菜をつまみながら、「あら!あんたも来とったね!?」なんて相席が増えていくくらい、のんびりお過ごしいただきたかったのですが。ほとんどの方が、マスクをつけて、ひとりでお参りにきてくださる。そうしてまでもお越しくださる想いとご配慮も含めて、感謝の気持ちでいっぱいです。

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ところで。長年、通ってくれた常連さんの多くが、お子さんやお孫さんと離れて暮らしています。20〜30年くらい前までは、お盆前になると「もうすぐ子どもたちが帰ってくるから」と、パーマやカラー、カットに来てくださる方の予約がいっぱいで、仕事終わりは深夜帯に及ぶほどでした。

普段はカットだけで節約なさっている方も、お盆や正月前にはパーマやカラーをなさいます。白髪が増えた髪で出迎えて、子どもたちに余計な心配をかけないように。せめて、若々しい姿で出迎えたい。と、踏ん張っておられる方もあるのだろうと感じていました。そしてそれほどに、子どもや孫に会うのを楽しみにし、「その日」を、心の支えにしておられるのです。自分を律して暮らしていらっしゃる高齢者ほど、なおさらに。

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でもこの夏は、というより、ゴールデンウイークからこの方、この集落では多くの方が、「今年は帰らないでいい」「何かあったら周りに迷惑がかかるから」と、お子さんやお孫さんの帰省を断っておられます。県外からの帰省だけでなく、熊本市内からの帰省でさえも。

 「うちのじいさんも年じゃっで」
 「家族が病院に勤めとるけんね」
 「移動中になんかあったらいかんし、来るなっていうた」
 「周りも年寄りが多かけん」
 「病院も遠かもね、ね」

などなど。

まさに、「自制の夏」です。

でも、本当は会いたい気持ちを抑えている人もいる。「最近、ここがきつかとよ。でもね、子どもも忙しかけん。病院に連れて行ってとは言いきらん」と、堪えておられる人もいる。そして、子どもの側もどんなに忙しくたって、久しぶりに会った親の顔や動きを見れば、その異変に気づいて気遣ってあげられることも知っているから。もしも何かがあったときに、「あのときこうしてあげらればよかった」と、どんなにいろいろやっていても、抱える後悔があるのも知っているから。

今回そんなお話を聞くたびに、親のこと、子どものこと、孫のこと、どの立場を想像しても、胸がギュッとなりました。

どうか、平穏が訪れますように。

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