マイプロタウンのつくりかた
はじめに
5月11日、しまね探究学習推進事業を展開している地域・教育魅力化プラットフォームから、島根県教育委員会の後援のもと、島根県内の高校生をはじめ学生(学びつづける人!)がマイプロを推進していくためのプラットフォーム「マイプロタウンしまね」をリリースしました。
開始から5日目には住民登録が100名をこえ、フェイスブックページの「いいね!」も400名をこえました。反響の大きさとともに、「私の地域でもつくってみたい」「つくり方を知りたい」という声もいただき、今回「マイプロタウンのつくりかた」を公開することにしました。
「マイプロタウンしまね」に集った住民たちが、例えばオンライン遠征をとおして他の地域の方たちと交流したり、「マイプロタウン●●」という姉妹タウン・兄弟タウンが各地に誕生したりするのを、ぼくたちは夢みています。このノートが、そのきっかけになれば嬉しいです。
◆つくり方
「マイプロタウンしまね」は以下の9つのステップでつくりました。4月17日に緊急事態制限が島根県を含む全国に拡大したことを受け、ゴールデンウィーク明けのリリースをみすえながら、4月21日から毎日2時間、オンラインでMTGを重ねてきました。
「マイプロタウン」というコンセウトやビジュアルイメージが見えたのはMTG開始から5日目の4月24日。「おぉ!」というわくわく感とともに、関係性がさらに深まり、チームがひとつになった瞬間でもありました。以下、それぞれのステップを、簡単ではありますが紹介していきます。
①自己紹介(チームメンバーの性質を知る)。
サービスを作っていくにあたって、メンバー同士の特性、得意不得意を知っておくことは重要。元々の関係性に合わせて、ひととなりがわかる自己紹介をします。
サービス作りに参画した理由なども聞けると、その人が得たいこともわかるのでコミュニケーションが取りやすくなります。
(運営こぼれ話🗣)
MTGでは毎回のチェックインとチェックアウトをとっても大切にしてきました。年齢や性別が違うからこそ、それぞれの違いを生かした安心安全な時間になるよう、関係性を丁寧に育んだのが、チームの推進力につながっている気がしています。
②マイプロタウンの中で大切にしたいコンセプト(あり方)を一つ決める(タマゴワーク)。
マイプロタウンを作っていく中で、ここだけはブラさない!と言える大切にしたい「あり方」を決めます。
島根チームではタマゴワークを使って「あり方」のすり合わせを行いました。
自分の大事にしたい価値観をタマゴの黄身に見立てて、配置していきます。
大事なものほど黄身の大きさを大きくしたり、中心に近くしたり。表現方法は自由です。
自分のタマゴが完成したら、メンバー全員ですり合わせを行います。
島根チームでは全員のタマゴを聞いた上で、大切にしたいあり方を一つ選び、それぞれタマゴに記入。それを発表して一つに絞りました。
島根チームの大切にしたいコアのあり方は
「It’s me!」わたしそれ!を見つけられる場でありたい。ということ。
(運営こぼれ話🗣)
多様性を推進力に変えるために、関係性の他にぼくたちが大切にしたのが共通性でした。SFC・井庭先生が考案した「全体性のたまご」を応用し、大切にしたい「あり方」や「やり方」を「たまご」で擦り合わせていきました。「It’s me !」でそろった瞬間のぞくぞく感は、忘れられません。(ぼくたちはたまたま1日目でそろいましたが、そうじゃない事例も知っています。このプロセスを急がないことが、長い目でみたらおすすめです。)
③決めたあり方のために必要な機能をいくつか決める(タマゴワーク)。
②で決めた「あり方」を達成するために、どんな機能が必要なのか。
再度それぞれタマゴを作って発表・すり合わせ。
全員分を聞いて、再度3つに絞って記入。共有。
この場では、妄想や自由な発想や願望を無くさないために、あえて機能確定はしません。
メンバーそれぞれの必要と思う機能を頭に入れ、次のステップに進みます。
(運営こぼれ話🗣)
このプロセスでは、共通性と多様性をいったりきたりしている感じでした。こだわりは繰り返し書いたり、チームメンバーの話を取り入れたり。具体性や抽象性もメンバーごとにちょっとずつ違って、個人的にはおもしろい時間でした。そういえば「マイプロタウンしまね」で大切にしたいグランドルールは、このプロセスから生まれました。
④機能案を並べてカスタマージャーニー(サービス体験の軌跡)を作り、高校生が辿る体験を妄想・イメージする。
全員の妄想する必要な機能を踏まえて、それぞれでカスタマージャーニー(サービス体験の軌跡)をつくり、共有します。
(運営こぼれ話🗣)
カスタマージャーニーを書こうという声がでたのが、まず驚きでした。住民目線に立ちながら「点」を「線」にするっていう、いま振り返ればそれしかないって感じだけど、ぼくの発想にはなかったので、嬉しかったのを覚えています。「タウン」のメタファーは、まさにこの時間から生まれました。
⑤妄想したものを絵(マチの地図)にしてみる。
ここまできたら、具体的なタウンの様相が見えてくるはず。
みんなで自由に話し合いながら、マチの地図を作っていきます。
みんながおしゃべりできるカフェ。
タウンの住人との出会いのばとしての広場。
興味関心のタネを発見して、大事に育てていくための農場。
いろんな機能をタウン内の施設や、場所に例えて、タウンの全貌をみんなでイメージして、それを絵にしていきます。
(運営こぼれ話🗣)
カスタマージャーニーで見えてきた「線」が「面」になった瞬間でした。ビジュアルにするのがうまいメンバーが下書きで絵を描き、そこから「これがほしいね」「あれもあったらいいね」とアイデアを出しあいながら、膨ららませていきました。なんだろう、オンラインなのに高揚感が伝わりあうという、体験したことない時間でもありました。
⑥仮でできたタウンの地図を見ながら、必要最低限の機能を決定し、機能ごとにリーダーを決める。
様々な機能を持ったカフェ、広場、農園、図書館などを見て、「これ運営してみたい!」や「これ〇〇がやったら面白そう!」みたいな自薦他薦をしてみます。
うまくはまれば、その人が運営担当をやってもいいし、その場にいなければ協力してくれそうなメンバー外の人を思い浮かべたりしながら、各機能の担当を決めます。
その中でコンテンツを固めるに当たってのリーダーを決め、担当チームを組織します。
(運営こぼれ話🗣)
このチームのバランスの良さが垣間見えた時間でした。最低限を意識しすぎて縮こまるでも、妄想たくましくなるわけでもなく、自薦も他薦も含めていったりきたりしながら、リリース時点での機能と担当が決まっていきました。
⑦それぞれ機能ごとのチームでコンテンツ・スケジュールを詰め、共有。
ここからはある程度チームごとでコンテンツ完成までの活動を行っていきます。
各機能のチームで何度かミーティングを設け、
・内容
・頻度
・初回のスケジュール
等を決めていきます。
初回のスケジュールについては、他の機能チームとの兼ね合いもあるので、
スプレッドシート等で同時編集し抑えた日程を共有しながら決めていきます。
(運営こぼれ話🗣)
ここからは実務的に詰めていく時間。マイプロタウンの全体やそれぞれの機能との相性も意識しつつ、それぞれを伸びやかに準備していきました。やりとりはメッセンジャーとグーグル・スプレッドシートがメインでしたが、プロセスをできるだけ透明にし、同じものを見ながら進められたのは、やはり良かったです。
⑧マチの機能・接続を整え、WEBなどの形にしていく。
マイプロタウンは住民がいることで初めて完成します。そのためには住民にタウンに参加してもらう仕組みが必要です。WEB・SNS・チラシなど、住民がマイプロタウンを知ったり、各コンテンツのイベント申し込みができるような仕組みを整えていきます。
◆ホームページ◆
https://www.shimane-myprotown.jp/
◆SNS◆
・Facebook
https://www.facebook.com/myprotownshimane/
・Instagram
https://www.instagram.com/myprotownshimane/?hl=ja
・Twitter
https://twitter.com/myprotown
◆島根県内の高校に配布したチラシ◆
(運営こぼれ話🗣)
改めてマイプロタウンの魅力やマチの概要を知らない人向けに言語化することが求められます。高校生、大学生、教員などターゲットにあわせた発信・表現を考えていく大切さがありました。WEB、SNSなど爆速でサービスを仕上げてくれる人がこのタイミングで参加してくれたこともポイントでした。
⑨オープン。運営進めていく。
マイプロタウンのオープンです。各コンテンツのイベント開催はもちろん、ここからメールによる住民とのコンタクト、イベントのお知らせ更新、SNS運用、など、バックヤード業務もスタートしていきます。基本的には各コンテンツやバックヤード業務に担当者を置き、各自の判断で進めていくことは変わっていません。随時、気づきを共有しながらマイプロタウンを進化させていきます。
(運営こぼれ話🗣)
担当者が自己決定をし、自ら業務を進めていくプロセスを大切にしています。今後、進化の過程で既存メンバーのみで解決できなさそうなものについては「求人」という形で住民から協力者を募ることにしていくことにしました。住民の出番づくりやまちづくりを自分事化してもらうきっかけになるといいなと思っています。
◆つくるときのポイント
つくるときに重要だと思ったポイントを紹介します。
・共創の三条件(共通性・多様性・関係性)
メンバー全員がマイプロジェクトに関わったことがあり、同じ「みんなのIt’s meを探す場所をつくりたい」という意思を持って制作に望めた「共通性」。
メンバーの年齢性別のばらつきがあり、属性・キャラ・ポジションが被らずに、いろいろな立場から意見を反映することができた「多様性」。
メンバーの多様性も気にさせることのないフラットで率直な「関係性」が安心安全な議論の場を生み出していました。
・チーム外のメンバーに対する制作議論への開き方
製作を進めるに当たって、当初のメンバー以外の人から意見をもらったり、ミーティングに参加してもらうこともあると思います。これはチームの多様性の観点でも非常に重要なことです。しかし、メンバー外の人にうまく前提条件や、共通言語などを共有した上で入ってもらわなければ、まったく議論に入っていけません。
かと言って、そのフォローに時間が取られすぎると、製作自体が進みません。
なのである程度前提条件がわかるくらい共有をして、なるべく滞りなく製作が進められるイメージ、「ドアを開け閉めして、人が入ってくるときは『いらっしゃい!』と暖かく迎えてあげる」イメージで、メンバー以外にも開けた製作現場である必要があります。
・理性と感性の行き来
タウンをつくるに当たって機能や完成のイメージ妄想することはとても大切です。
しかし、タウンをリリースし、運営していくには理性的にスケジュールを書いたり、機能の「最低限」を話し合ったりと、合理的な考え方も大変重要です。
なので、妄想するとこは全力で妄想し、世界を広げる。きちんと合理的に考えることは、集約しまとめあげる。うまく右脳(妄想)と左脳(理性)の行き来をすることがタウン完成にこぎつけるカギです。