見出し画像

ないしっぽは振れない

以前から思っていることがある。
例えばコツコツと努力が出来る人。
そういう人は「コツコツと努力ができる能力」が備わっている。
「コツコツ」続けることは大事だけれど、それが出来ない人はそういう能力がないのだから、もしかしたらその無理な努力を他に振り分けたほうがいいのかもしれない。
…というのは極端だけれど。

小学校の時から算数が苦手だった。
例えば、0.2×0.2
0.2という数字が、ほんの少しでも0.2分増える。
なのになぜ、0.04に減ってしまうの?

頭の中に「×」=「増える」という概念が出来上がっていて邪魔をする。
そうではない。
きちんとルールに従って処理すれば答えは導き出されるのに…。

中学の時、連立方程式に苦労した。
公式に当てはめて答えを導き出す。
ある日突然「どうしてもできるようになりたくて」
徹夜で問題を何問も解いた。
翌日のミニテストでは満点の予想だった。
ところが予想に反して結果は玉砕。

さすがに担任の先生に相談した。
「これから高校受験もあるのに数学がわからない。どうすればできるようになりますか?」
担任は国語の担当だった。
出された答えはシンプル。
「努力してもできないことに力を注ぐより、できることを伸ばしなさい」
今だったら絶対に問題になりそうな言葉。
でも私の中にはとてもその言葉が残っている。

その後、生活の中で買い物をするときや、前を走る車のナンバープレートを勝手に計算したりして少し数学に免疫がついた。
大人になってからやってみた方程式は結構簡単に解くことができた。

「ないしっぽを振ることはできない」
例えば私が犬だとして、ご主人さまに
「大好き」の気持ちを伝えたい。
でも、私はしっぽがない犬だったとしたら???
そうしたらないしっぽを振る努力よりも、ご主人様が呼んでくれた時に元気に「ワン」と返事をしたり、ご主人様が困ったときに真っ先に飛んでいく、ご主人様が出してくれたご飯をおいしそうに平らげることに努力を注いだ方がいい、と思うのだ。
もしかしたらいつか意図せず小さくて短い尻尾が生えてくるかもしれないし……。

先日、かかりつけの占いに行ってきた。
(かかりつけの占い…この言い回しちょっと気に入っている(笑))
40年来の親友、静かな室内、窓から見下ろした師走の小春日和(本当はもう小春日和の時期ではないけれど)の通り、占う人の心地よい声、香りのよいお茶、ご夫婦の明るく和やかな会話…。
これは私にとって特別の時間。

来年に向けて2つ質問をした。
その中の一つが娘の事。
来年、娘は大きなイベントを控えている。
そこを踏まえてどう関わっていけばいいのか、ちょっと悩んでいたのだ。
占う人はすっきりしたショートヘアになっていた。
インナーカラーのさり気ないメタルな赤が映えている。
彼女は明るく、そして当然のことを言うように言った。
「娘さんは、相手を察するってできないのよ~。『自分』なの」
すとーんと腑に落ちた。
「夢中になるとのめりこんで周りがみえなくなるでしょう」
にこやかな声に大きくうなずいた。

時間を守ることだったり、共用の場所を綺麗に保つことだったり、あとは私が具合が悪い時の家事だったり、生活の中の様々なささいなことが積み重なって
「いや、もう無理でしょ」
と思う時がある。
一つ一つがささいなので、つい心の中にためてしまう。
それがある日やっぱりささいなことで爆発してとんでもないことになる。
たいてい決裂する。

娘は理由がわからないことを言われたようで怒り狂う。
ひどい事態になる。
わけがわからないのが意味がわからない。
伏線はいたるところに仕掛けている。
あとはあなたが回収するだけ。
ところがそうは問屋が卸さない。

たいてい娘の粘り勝ち。最後までほとんと娘は謝らない。
日常ではない殺伐とした日々に根負けするのは私で、結局日常に戻る。

…そうじゃないか、とは思っていた。
私が思うほど、娘は私の気持ちを察しようとは思っていないのではないか、と。
こう書くと、娘がすごく自分勝手でひどい人のようだけれど、そうではない。
そこに悪意はないのだから(笑)
娘は娘なりに優しくしようとしてくれているし、優しいけれど、でもやはり彼女は「自分が一番大事」。
他の人との関係性でもそういう部分が見え隠れしている。

それでも娘は嫌われることがあまりないと思う。
多少、人と歩調がずれていること、夢中になると他に目がいかなくなってしまう自分の得性などぼんやりと理解していて、無駄に勝手に傷つくことも多かったから、人間関係の構築に慎重になっていることもあるけれど、彼女にも美点はある。
それは
「いじわるなところがないこと」
他にももちろんあるけれど、この特性はとても大事なことだと思う。
言い換えると、自分に意識が向いているから意地悪になる程人に気持ちがいかない、とも言える。
それでも人に対して悪意を向けない。
文句も言うし愚痴もいう。
でも悪意ではない。
そんな娘はある意味子供のように無邪気だ。
子供って(その子によるけど)、
「早く寝ないとお母さんも休めない」
とか
「早くしないとお母さんも用事ができない」
とか思わない。
疲れ切るまではしゃぐだけはしゃいで、電池が切れたようにばたんと寝てしまう。
そんな感じ。
後先を考えない。
いつでも「自分」の感情が優先。子供のような彼女だから憎めない。
だから悩む。
「私が悪い?」と思うこと多々ある。
結構つらい。
いつも堂々巡りだ。

けれど、占う人の言葉で呪縛が解けた。
「ないしっぽは振ることができない」
できないことを求め続けても仕方がない。
中学生のときの私の方程式と一緒。

そう思ったら気持ちがすとんと楽になった。
来年は諦めるところは諦めて、新しい関係性を築かなきゃ。
うすうすは気づいていた。
優しく背中を押してもらっただけ。
そして気持ちが楽になった。

話は変わるけれど、占う人によると親友とは吉方位が重なるところがあるそうだ。
条件を満たすのは無理なんだけど、吉となる日に一緒にドライブくらい行けたらいいな。

占いが終わり、季節外れに暖かいね通りを歩きなら
「できれば定期的に来たいね」
と親友と笑いあった。
「その時にはこのお店に来るのも定例にしよう」
と約束したのは、占いの人お勧めのイタリアン。
キトさん、さすがに今回は迷わずに行く事ができましたよ🤗
おいしいパスタとコーヒーに会話が止まらない。

今度行くのは節分過ぎかな。
私のかかりつけの占い師さん。
今度は私にも
「ないシッポ」
があるか聞いてみよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?