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おじさんの冒険

昨日の夕方、出かける予定が急にキャンセルになった。
出かけるつもりで何となく支度をしていたので、中途半端に手持無沙汰になった。
やっつけたかった作業をとりあえず終わらせて、アマプラで映画を観ることにした。
観た映画は「君の名は。」と「天気の子」。
「君の名は。」は2回くらい子供と観たけれど、何となく観た感じだったのできちんと観たいと思っていた。
観ている途中で娘が帰ってきたけれど、電車に乗って気持ちが悪かったらしくてすぐに部屋に行って寝たらしい。
「君の名は。」観ている途中、猫がミャーミャーミャーミャー訴えてきた。
トイレをチェックして、ここのところ食べすぎなので少しだけカリカリを出してあげてもまだミャーミャー訴えてくる。
「うるさいよ~」と言ったら、娘が部屋から猫の名前を呼んだ。
それでもミャーミャーは止まらない。
なでてあげながら続きを観ていたら、いつの間にか部屋から出て行った。
「君の名は。」の余韻があったので、勢いで「天気の子」も観た。
途中でお婿君が帰ってきた。
花粉と気圧で体調が悪いお婿君。
一度カギを開けて家に入り、それからプラごみを捨てに出たみたい。
戻って階段を上がりながら
「ただいま~」。
うん、全員帰ってきた…とやっぱりちょっとほっとする。

「天気の子」を観終わるころ、外で猫同士がけんかする声が聞こえた。
うちの猫が反応すると面倒なので(以前網戸を壊されそうになって慌てて抱きかかえたら思い切り腕を引っかかれて大きく腫れて大変なことになった(笑))猫を探した。
娘たちの部屋かもしれないけれど、ドアが閉まっていたし、二人とも体調悪いから声をかけづらい。

台所や居間、お風呂やトイレも探したけれどいない。
まぁ、娘たちの部屋だと思いながら、念のため外に出て名前を呼ぶ。
夜中だからそっと呼んだけれど反応がない。

ベッドに入ったが気になってなかなか眠れない。
うとうとして朝になって目が覚めた。
朝になるといつも私のベッドの上のどこかに寝ている猫がやっぱりいない。

お婿君は今日は早出らしくて朝早くに家を出た。
そっと娘の部屋に行って「猫いない?」と声をかけた。
「いるよ~」と返ってくるはずだったのに、実際に返ってきた言葉は
「いないよ~」
「え???猫いないんだけど…」

ひゅっと胸の奥が冷たくなった。
きっと、夕べお婿君が帰ってきて、2度目に出て行ったときに、猫が自分で戸を開けて出たんだろう。
そして、夕べ聞こえてきた猫のけんかの声はきっとうちの猫だろう…。

娘が慌てて部屋から出てきて二人で外を探す。
チュールやまたたびのお菓子を持って名前を呼ぶけれど出てこない。

家の裏に行ってウッドデッキの下をのぞき込んでみたら、そこにいた。
探し出して10分も経っていなかった。

ところがそこからなかなか出てこない。
チュールは食べるけれど出てこない。
階段用に置いてあるブロックが邪魔をしていたこともあるけれど、どこかをけがしているかもしれない、と思うと無理に引っ張り出すのも怖かった。

娘と二人で、ウッドデッキの手前と向こうから名前を呼んだ。
なかなか動かない。
突然猫はデッキの下からしゅっと抜け出て表の方に向かった。
慌てて追いかけて、娘と二人で玄関の前ではさみうちにした。
娘がさっと玄関の戸を開けると、当たり前のように猫はしゅっと家に入っていった。

廊下で「ミャー」と鳴く猫を抱き上げて体を確認した。
温かいタオルで足を拭いた。
特に痛いところはない様子。

「良かった~」

と思わず声が出た。
そのあと、娘と二人、多分20回は「良かった」を繰り返した。

猫自身はどこ吹く風。
そのあとカリカリを食べて、とっとと私のベッドにもぐりこんでいた。
初めて一晩外で過ごした。
雨は降らなかったものの、夜は気温は下がっていた。
寒かっただろうし心細かっただろうな…。
と思うけれど。

あとでベッドをのぞき込んだら、特に甘える様子もなくガン見してきた。
なんとなく
「俺、やったぜ」
とどや顔に見える。

頼むよ。
君は私の癒しなんだから。
朝目が覚めた時の、君の重みが幸せなんだから。

怪我もなく風邪もひかず帰ってきてくれて本当に良かった。
外にはもう出てほしくないけれど…
「冒険出来てよかったね」
とほんのちょぴりだけ思う。
人間だったら50歳近く。

おじさん猫の冒険。

玄関の戸にはテプラで
「猫が出るので開けるときには気を付けて」
と貼ることにした。











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