美樹さやかvs 擬人化QB1個分隊


 目の前に現れたインキュベーターが、迷いのない極めてスムーズな動作で自動小銃(AKM)を構えた。黄色い木製のハンドガードとコントラストを描く黒い無機質な、先端が斜め上に切り取られたような銃口にブレることなくピタリと目が合い、さやかの体は硬直した。
 
 まずい!避けなきゃ!!

 しかし、体が動かない。目の焦点は完全に銃口にとらわれており無機質なそれはブラックホールのように思えた。まるで自分の視線と意識が吸い込まれるようだ。そもそも、避けられるのか?ここは1本の通路だし左右に避けたところで直ぐにまた、銃口にとらわれるのがオチだろう。かといって、このまま突っ立っていると狙い撃ちにされる。
 そんなことが、マズルフラッシュで黒い銃口が見えなくなるほんの一瞬の間、頭の中をぐちゃぐちゃに埋め尽くした。
 マズルフラッシュの直後、銃口から放たれた第一弾を強化された動体視力で目視し咄嗟に持っていた剣でそれをはじいた時、さやかはその超人的な動きが自分でやったものと思えなかった。言うなれば、 飛んできたボールから咄嗟に顔を守ろうとする(本当に顔めがけて飛んできたかどうかはさておき)反射的な動作だった。
 事実、敵が発砲しそれを自分が咄嗟に剣を掲げて防いだという一連のアクションを彼女の頭が認識したのは、自分の眼前に寄せた剣により7.62mm×39ラシアン弾が金槌で鉄筋を思いっきり叩いたかのような音を立てて弾かれるとともに火花が生じ、手に剣を拳ごと持っていかれそうなすさまじい衝撃を感じてからだった。

「(弾切れ?今だ‼︎)やぁー!」
剣を中腰に構えて突貫。強化された脚力による足捌きで一気に詰め、間合いに入ったところで踏み込み、剣を突き出す!

キュゥべぇその1、右手をAKの握把から銃床に持ち替え、銃身を傾けて弾倉を鍔代わりにして刃を受け止める。

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