マギレコで”redEyes"パロ

""内はルビ

あらすじ

1950年代。日本の広島に誕生した一人の魔法少女により、世界はいち早く〈核〉なき時代を迎えたが、それは混沌に満ちた世界の始まりだった。

 世界各地で生起した局地戦と無数の混乱はやがて魔法少女の存在を人々に認知させ。やがてその戦闘能力から少女たちは人間兵器として戦場に立つようになった。

 これはそんな世界における極東で起きたある戦争の話。

本編

終わったんだよ、私ちゃん達の戦争はさ

西暦2021年7月5日

首都〈神浜〉市より北に○○km、宝崎市近辺の海岸線。

それは正規軍にとって最後の組織的戦闘だった。

前月22日をして実施された空爆により戦力の約30%を消失。敵軍第一上陸地点に展開した国防地上軍第一師団は敵海軍陸戦隊3個師団及び陸軍2個機甲師団に対し絶望的な防衛戦を繰り広げていた。

 海上から次々と上陸する「八一」と書かれた赤星の軍章が描かれた洋上迷彩塗装の水陸両用戦車や歩兵戦闘車、続いて接岸したLCACKや戦車揚陸艇からはライトグリーンのウッドラントパターン迷彩がほどこされた99式主力戦車A2型が上陸してくる。それらを盾に前進するはグレーとグリーンが混じったデジタルパターンの迷彩服とヘルメットに95式ブルパップ・ライフルを装備した兵士たち。

 この国の植生に適しない塗装を施された戦闘車両軍と迷彩服を着た集団は洪水のように、国防軍第一師団が展開する最終防衛戦に殺到した。

 国防軍ーこの国の植生に合わせたウッドラントパターンの迷彩がほどこされた戦闘服、戦闘車両の一団の寡兵は素人目にも明らかだった。


 旧ソ連式の戦車帽にグリーンとグレーを基調としたデジタルパターンの迷彩服。


125mm滑空砲より放たれた附翼安定徹甲”APSFDF"が歩兵の直協支援を行っていた国防軍の10式戦車に命中。


降下した少女たちを塹壕から頭を半分ほど出して様子をうかがっていた少尉は見た。

「あれが噂の戦乙女”ヴァルキリー”たち?たった8人じゃないか!大体彼女らの戦果は誇張だろ?」

「誇張はあっても、あの娘らの強さはデタラメじゃありません」

少尉同様、頭を半分だけ出した軍曹は続けた。

「見てください。あの娘たち、みんな衣装がバラバラですよね、あれは魔法少女たちが本来身に着ける固有の衣裳ですが、軍に所属する場合は風紀上の問題や所属を明らかにする等諸々の理由で固有の衣裳を着ることを許されません。大抵は調整師(ソウルジェムを調整する能力を持った魔法少女)によってデザインを統一された野戦服に変えられます。しかし、唯一例外となるのが高い潜在魔力やユニークかつ強力な固有魔法を持つ魔法少女です。その攻撃力は戦車並み、機動力なら戦闘ヘリあるいは戦闘機に匹敵するかもしれないモンスター...。しかし.....本当の化け物はその力をフルに発揮する少女たち自身の兵士としての素質です」

軍曹たちの視線の先では手にした機銃を撃ちながら前進していく静香の姿があった。

「全国から集められた高い素質を持つ魔法少女たちが、兵士として過酷な訓練を受け、更に実戦の洗礼を受けて生き残り、極限まで鍛えられた結果。戦場での生死すらも〈円環の理〉(魔法少女たちの間に伝わる神様のようなもの)に委ね破壊と殺戮を自らの存在意義とするようになった究極の魔法少女たち」

静香の目の前に人民陸軍の魔法少女たちが立ちはだかる。静香は疾走を止めることなく発砲。魔力で強化された脚力により発揮された瞬足、しかしそれ故に走りながらの射撃は不安定なはずだが、発射された銃弾は全てアーマーに守られていない顔面や頸”くび”に命中した。

「中でも、あの魔法少女......〈百禍〉の隊長でありながら常に単独で戦場を駆け、敵を神への供物として捧ぐ戰巫女 時女静香」

軍曹はいったん区切ると今度は先ほどとは違う調子で話し始めた。きわめて個人的な話をするような感じだった。

「少尉殿、俺は見たんです。九州西部のちょうどここと同じような平原の戦場でした。中国軍はいつもの機動襲撃、戦車と魔法少女”MS”を前面に押し寄せてきた。大隊本部はやられ各中隊は孤立。俺の居た小隊も包囲され、バリバリとなり続ける12.7mm(×108)の銃声を聞きながらもう駄目だ、と思いました。.....そこにやって来た援軍は魔法少女”M.S”たった一人のみ。しかし....その一人の魔法少女が自分の小隊を包囲していた人民軍1個中隊を....殲滅した」

 軍曹の脳裏に浮かぶ記憶。

 今でも鮮明に覚えている。

 周囲に広がる中国兵たちの骸、擱座させた奴らの15式軽戦車の砲塔に乗りハッチから脱出しようとして息絶えた敵戦車長を細い片腕で引きずり出している彼女の姿を.....。そしてその時、彼女と目が合ったことを。

「俺は味方だっていうのに震えが止まりませんでした」



 てき弾に魔力を込めて威力を増強、瞬く間に05式水陸両用戦車の足回りを破壊。

「左右履帯破損!!各座しました」

操縦士が冷汗をかきながら戦車長に必死の形相で報告。

「奴はどこだ!?」

 叫ぶ戦車長。

対人センサーを確認した砲手が言った。

「6時方向!真後ろです!!」

真後ろに回り込んだ静香は自分の固有武装である七支剣を抜いた。

剣先を戦車にとって最も脆弱な後部エンジン廃熱孔に向け、そこに魔力を集中させる。

 炎がやどり刀身が赤く輝き始めた。

「砲塔回せ!」

 砲手の操作に応じて砲塔が急速回転。昔の映画のようにゆっくりと砲塔が旋回することは無い。

しかし、静香の方が速かった。

「一つ」

そういうと同時に刀身から火球が放たれる。

火球は戦車の後部にあたるとHEAT弾のメタルジェット以上の高温で戦車の装甲を溶かしエンジンブロックを破壊。弾薬庫にまで到達し05式水陸両用戦車は爆散した。



 「動きが止まった?グリーフシードによる浄化(チャージ)中か?しめた!かかれっ!!」

 人民軍の魔法少女1個小隊(5人)が一気に吶喊した。


 自軍の魔法少女兵5人をたった一人で屠った日本側の魔法少女を照準鏡ごしに見た砲手は思わず一言漏らした

「あ、悪魔だ.....」

冷汗が流れる。そんな砲手を車長が𠮟責した。

「怯むな!!」

「し、しかし!?」

「あれは悪魔などではない!!」

車長は自分のペリスコープを覗きながら続けた

「否、悪魔の方が救いがあったかもしれん......おそらく奴は」

ペリスコープの先、先ほど味方の魔法少女兵五人を屠ったツインテ―ルに着物を思わせる帯を巻いたノースリブにミニの衣裳、手には七支の剣。少女は背負っていた01式誘導弾のランチャーをその場に無造作に落として捨てた。顔に着けていたゴーグルをとり素顔が明らかになる。戦車長は確信した。

「奴は日本国防軍最強の魔法少女、時女静香」

ペリスコープの車長専用モニターに表示される静香。

「距離400。敵魔法少女に動き無し......奴は対戦車ミサイルを使い果たしたはずだ」

一旦モニターから顔を話すと砲手に目を向けながら言った。

「トップアタックを仕掛けるしかないんだ必ず接近してくる!ぎりぎりまで引き付けるんだ!至近距離からの砲撃なら奴とて躱せん!」

モニターに映る静香をにらみつける。

「奴を葬るのは俺たちだ!!」

対憲兵特殊部隊

「何か降って来たぞ!」

「何だぁ!?こりゃぁっ?」

「て、手だぁっ!女の子の手!!」

周囲の喧騒を他所に、中尉は静香が立て籠もっているであろう廃ビルを見つめ思った。

「(時女静香,,,,。皇国の英雄にして、最後の戦いで祖国を裏切った売国奴....。しかし、これほどにまで戦える魔法少女が本当に味方を殺してまで敵に寝返るものか......?もし違うなら一体、一人で何をしようとしているんだ?)」

天乃鈴音

柊ねむ

「現在、我々は全力を挙げて皇都奪還作戦を進めています。物資も十分集積され士気も問題ありません。ですが、どうしても魔法少女”MS”隊の隊長格が一人足りません。そこで、お手元の資料48ページをご覧ください」

羽佐間大将「.......?」

参謀長

「柊君、この魔法少女は誰だね?見た覚えもないし名を聞いたこともない」

柊ねむ

「将官級で彼女の名を知っている人は少ないでしょうね。彼女は天乃鈴音少尉、戦場に身を置く兵士なら一度は耳にする名です。彼女は開戦以来常に最前線で戦い続け、数多くの戦功を上げました」

羽佐間大将

「確かに戦歴も戦果も赫赫たるものだ。何故少尉どまりなのかね?」

柊ねむ「彼女にとっては生死の交錯する戦場で戦うことだけが全てらしく上官が行おうとした昇進・叙勲の推薦をすべて拒み続けました。彼女は地位・名誉・権力に一切興味がなく、上官にすら屈することははありません」

そこで静香を見ながら言った。

「誰かさんに似て私たちが最も苦手なタイプです」

静香は年相応にフンッ!!と拗ねて見せた。

参謀長「で、その厄介な奴はどこにいるのだ?」

羽佐間大将「誰だね?その人物とは」

静香とやちよ は みたま を見た。短い沈黙の後、彼女はその人物の名を言った。

「美琴椿少佐です」

やちよ「うーん」

静香「それは無理ね」

参謀長「何故だ!?何か問題があるのか?」

やちよ「美琴椿少佐は今年の6月、新潟県防衛戦で戦死しているんです」

参謀長「それではどうしようもないではないか!」

聞いたことない?傭兵〈来栖有人〉大佐.....って

世間から忘れ去られた秘境、時女の里に住んでいた少女・時女静香は里の神官である神子柴が自分の願いを政治官僚に売る形でキュゥべぇに願わせ、叶えさせていた事実に激怒し、一族の少女たちと共にさとを抜け出した。その後、地方都市の〈神浜〉にでて成れない都会に生活に苦労しながら仲間と共に魔獣を狩っていたが、ある時一人の初老の大佐を助けたことで運命が変わる。

 その大佐の名は来栖有人と言った。

 大佐は静香たちの生い立ちや彼女たちの「日ノ本を守るために戦う」という理念を聞き。自分の所属する部隊に招く。

統合レンジャー連隊第1魔導中隊。それが大佐の率いる部隊だった。陸海空、そして内務省憲兵隊の4軍から選ばれた精鋭兵士、そして全国から集められた優秀な魔法少女たちが所属する部隊だった。 


私たちの戦争はまだ終わっていない!!!

(広場)

大佐

「彼女は前政権や軍部が失態を隠蔽せんがため、ありもしない罪を被せられ生贄の羊”スケープ・ゴート”にされたのです。決して反逆者などではなくむしろ...それでもなお日ノ本の為闘い続けた英雄なのです!」

高山雄造(平和団体リーダー)「そ....そんなの嘘だ......」

民衆

「......確かに、なんだかおかしいと思ってたんだ」

「何で彼女が裏切る必要があったんだ?」

「前首相は昔から人民共和国”中国”と通じていたらしいしな」

「濡れ衣を着せられて味方殺しの反逆者扱いか.......」

「あんな若い娘に......」

「酷いな......俺だったら堪えられないぜ」

大佐「時女少佐。言いたいことは無いか?」

しばしの沈黙。そして....

「確かに私は....『人殺し』よ」

高山がほくそ笑み、民衆がざわめく。

静香は続けた。

「でもその前に.......この日ノ本を守る魔法少女〈巫〉”カンナギ”でもあるの。正直、人からどう呼ばれようと、どう思われようとも私には関係ない」

人々は静香の言葉に聞き入っていた。

高山は唖然とし、変な汗を流していた。

静香の演説は続く。

「私は私の戦いをするだけ。私の場合は本当に命のやり取りをする戦場だったけど......人にはそれぞれ戦い......戦場があると思う。逃げてもいい、いくら時間をかけてもいい.....ただ、戦うこと、立ち向かうことを諦めないで!私たちの戦争はまだ終わっていない!!」

 集まった人々の間に先ほどとは違う揺れが広がった。

 それは先ほどのような、風にあおられた木の葉が揺れ動くようなものではなかった。まるで地響きのような一つの大きなエネルギーが時間をかけて人々の間を駆け巡っているかのようだった。そして、程の無くして.....

エネルギーは歓声という形で爆発した......。

うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!

広場に集まった人々が、そしてどちらに着くか決めあぐねていた全国の駐屯地の食堂でテレビを見ていた正規軍兵士たちが、一斉に拳を掲げ彼女の名前を叫んだ。

静香っ! 静香っ! 静香っ! 静香っ! 静香っ! 静香っ!


(テレビ・ニュース)

キャスター

「今回の作戦とその成功は、まさに驚異の逆転劇ですが今回の作戦では先ほど演説が紹介された時女静香少佐を始めとする魔法少女の活躍が大きかったとか。木連さん、いくら魔法少女の活躍があったとはいえ戦争の対局そのものを変えてしまうことなど可能だったのでしょうか?」

田上紘平(魔法少女・評論家)

「近年の研究で、歴史上、様々な局面で魔法少女が関わってきたことが判明しおり、歴史上何らかの活躍により名を遺した女性は全て魔法少女だったという学説が持ち上がっています。我が国では邪馬台国の女王・卑弥呼がそうだったのではないかと言われています。それは、戦争においても同じです。かの有名なフランス救国の聖女〈ジャンヌ・ダルク〉も近年の研究で魔法少女であった可能性が取り沙汰されています。ジャンヌ・ダルクは戦場で兵を鼓舞し、時に最前線で戦っていたそうです。私はそこに、時女静香との共通点を感じます、実際、先ほどの演説で全国のレジスタンスや市民の蜂起、政府軍の恭順が活発化しているという情報もあり、彼女の功績は極めて大きいといえるでしょう。だとすると時女静香は我が国の歴史において卑弥呼に続き、大きく名を遺した魔法少女になるかもしれません。」

「かつて、フランス救国の聖女〈ジャンヌ・ダルク〉は〈魔女〉の烙印を押され処刑されました。本来なら時女静香も終戦後、同じ結末を辿ったはずでした。しかし、彼女はその運命をはねのけ、見事な逆転劇をやってのけ、ここに復活した。彼女は疑いなくかつてのジャンヌ・ダルクを越える救国の英雄でしょう」

「私とて、見たことがありませんが再び魔法少女が戦局を左右する時が来ているのかもしれません」

諸君らに不可能は無い





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