私たちの戦争はまだ終わっていない!!!


(広場)

大佐

「彼女は前政権や軍部が失態を隠蔽せんがため、ありもしない罪を被せられ生贄の羊”スケープ・ゴート”にされたのです。決して反逆者などではなくむしろ...それでもなお日ノ本の為闘い続けた英雄なのです!」

高山雄造(平和団体リーダー)「そ....そんなの嘘だ......」

民衆

「......確かに、なんだかおかしいと思ってたんだ」

「何で彼女が裏切る必要があったんだ?」

「前首相は昔から人民共和国”中国”と通じていたらしいしな」

「濡れ衣を着せられて味方殺しの反逆者扱いか.......」

「あんな若い娘に......」

「酷いな......俺だったら堪えられないぜ」

大佐「時女少佐。言いたいことは無いか?」

しばしの沈黙。そして....

「確かに私は....『人殺し』よ」

高山がほくそ笑み、民衆がざわめく。

静香は続けた。

「でもその前に.......この日ノ本を守る魔法少女〈巫〉”カンナギ”でもあるの。正直、人からどう呼ばれようと、どう思われようとも私には関係ない」

人々は静香の言葉に聞き入っていた。

高山は唖然とし、変な汗を流していた。

静香の演説は続く。

「私は私の戦いをするだけ。私の場合は本当に命のやり取りをする戦場だったけど......人にはそれぞれ戦い......戦場があると思う。逃げてもいい、いくら時間をかけてもいい.....ただ、戦うこと、立ち向かうことを諦めないで!私たちの戦争はまだ終わっていない!!」

 集まった人々の間に先ほどとは違う揺れが広がった。

 それは先ほどのような、風にあおられた木の葉が揺れ動くようなものではなかった。まるで地響きのような一つの大きなエネルギーが時間をかけて人々の間を駆け巡っているかのようだった。そして、程の無くして.....

エネルギーは歓声という形で爆発した......。

うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!

広場に集まった人々が、そしてどちらに着くか決めあぐねていた全国の駐屯地の食堂でテレビを見ていた正規軍兵士たちが、一斉に拳を掲げ彼女の名前を叫んだ。

静香っ! 静香っ! 静香っ! 静香っ! 静香っ! 静香っ!


(テレビ・ニュース)

キャスター

「今回の作戦とその成功は、まさに驚異の逆転劇ですが今回の作戦では先ほど演説が紹介された時女静香少佐を始めとする魔法少女の活躍が大きかったとか。里見さん、いくら魔法少女の活躍があったとはいえ戦争の対局そのものを変えてしまうことなど可能だったのでしょうか?」

里見太助(魔法少女研究家)

「近年の研究で、歴史上、様々な局面で魔法少女が関わってきたことが判明しており、歴史上何らかの活躍により名を遺した女性は全て魔法少女だったという学説が持ち上がっています。我が国では邪馬台国の女王・卑弥呼がそうだったのではないかと言われていますね。それは、戦争においても同じです。かの有名なフランス救国の聖女〈ジャンヌ・ダルク〉も近年の研究で魔法少女であった可能性が取り沙汰されています。ジャンヌ・ダルクは戦場で兵を鼓舞し、時に最前線で戦っていたそうです。私はそこに、時女静香との共通点を感じます、実際、先ほどの演説で全国のレジスタンスや市民の蜂起、政府軍の恭順が活発化しているという情報もあり、彼女の功績は極めて大きいといえるでしょう。だとすると時女静香は我が国の歴史において卑弥呼に続き、大きく名を遺した魔法少女になるかもしれません」

「かつて、フランス救国の聖女〈ジャンヌ・ダルク〉は〈魔女〉の烙印を押され処刑されました。本来なら時女静香も終戦後、同じ結末を辿ったはずでした。しかし、彼女はその運命をはねのけ、見事な逆転劇をやってのけ、ここに復活した。彼女は疑いなくかつてのジャンヌ・ダルクを越える救国の英雄でしょう」

「私とて、見たことがありませんが再び魔法少女が戦局を左右する時が来ているのかもしれません」

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