第一話

駐屯地にて

 駐屯地には既に国連軍のEXOが到着していた。泉明はその中にある機体を見つける。

 その機体は自分が搭乗する「児雷也」やその原型の「トード」とはまた違った印象の機体だった。

「児雷也」や「トード」が既存の戦車や装甲車といった「(戦闘)車両」の延長ならコイツはまさに「兵士」の延長といったところだ。

 戦車のような重厚さは無いが、しなやかでスマート。装甲は必要最小限だがかえってそれが鎧をつけた戦士のようで逞しく見える。パイロット文字通り目となり鼻となるセンサーヘッドも装甲に覆われ「児雷也」や「トード」に比べて大きいがそこに機能を集中させているのだと理解できた(「児雷也/トード」は頭と胸の2カ所にセンサーヘッドがある)。むしろ、それがさらに人間らしさを醸し出させていた。

脱走ヒュージ追跡

 駐屯地にて機体を受領した明だったが直後にガーデンから緊急連絡が。検体ように捕獲していたヒュージが逃げ出したと言うのだ。クラスはミディアム級。正式な発足式も行われていないにもかかわらずEXO部隊に出動要請が来た。逃げられて市街地等にはいられてはまずいので、速やかな捜索と殲滅が求められた。ヒュージを確認したら速やかに応援を要請するように言われ、各機体は分散し捜索に当たる。明は捜索の途中で3人のリリィたちと偶然合流、その中には先ほど汽車内で出会った新米リリィの一柳梨璃もいた。

 遭遇した百合ヶ丘の3人のリリィ。その中には今朝、電車の中で遭遇した璃梨の姿もあった。
入学式もまだなのに無茶をするな、と思い心配になってきたので同行する。
リーダー格で上級生らしい長い髪が特徴的な結由はしばらく考えた末に動向をすることを許してくれた。
 もう一人のリリィ、こちらも入学式を迎えていない1年生――璃梨と別れる直前に校門前にリムジンで乗り付けて来たかと思うと、目の前にたまたま居た璃梨を実家から送り込まれてきた付き人と勘違いし、開口一番に「もう帰って良い」と言った世間知らずのお嬢様。  

 ウェーブした髪にフランス人形みたいな碧い瞳が特徴の楓・ジョアン・ヌーベルはこの鋼鉄の巨人の同行を良く思っていなかった。
 彼女は対ヒュージ戦の主役はあくまで自分たちリリィと考えている(これ自体は作中世界の常識なので間違っていない)ため、むしろ邪魔だと思っていた。


 一見するとシュールな光景だった。楽器ケースを持った黒い制服の女学生3人に、全長約3メートルの鋼鉄の巨人が彼女らの背丈の半分以上はある機関銃を手に付き添っている。

 少女たちはピクニックに来たかの様に周囲を眺めたりベンチに座っている傍ら、巨人はまるで少女たちを守る様に機銃を手に油断なく周囲を警戒していた。


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