ほむら☆ファイナルウォーズ

「ゴジラ Final Wars」のパロディ。

魔女を怪獣、ミュータントを魔法少女に置き換えている。

怪獣と生身で闘う超戦士、しかし、その怪獣と彼らにはその出生が共通しているという所がなんとなく「マギアレコード」や「まどか☆マギカ」の魔法少女と重なった。

イントロ


 近未来。発達し過ぎた科学と相次いだ戦争は多くの環境破壊や矛盾を生み出した。
 それによって、人間の負の感情より産まれた怪物〈魔女〉が出現、人類を脅かし始めた。
 人類はお互いを敵とする時代を終え、魔女の脅威と戦う時代に突入する。〈地球防衛軍(Earth Defence Forces)〉の誕生である。
 そして魔女の出現とともに世界中で確認され始めた、魔法を使う少女たち――新人類・魔法少女。地球防衛軍では〈魔女〉殲滅部隊として魔法少女を集めた部隊『M機関』を結成する。

 そして、地球防衛軍最大の敵こそ、西暦2011年。日本の見滝原市に初めて姿を現し、世界を滅亡の危機に陥れた、人類の裏切り者にして最強最悪の魔法少女。その名は――

プロット/下書き

プロローグ

 猛吹雪の南極にて炎を挙げる、戦車や戦闘機の残骸。

 円を書いて散らばるその残骸の中心に漂う小さな影。

 南極にいるとは思えない、露出の多い黒い羽根をモチーフにしたドレスをまとった少女――ほむら だった。

 突然、南極のクレバスを突き破り彼女の飛ぶ真下から飛び出す艦影――ロケットの様な葉巻型のボディー/四方に取り付けられた安定翼/潜水艦様な甲板に取り付けられた戦艦を思わせる砲塔と艦橋/目を引く船首の螺旋=巨大なドリルーー地球防衛軍の決戦兵器=万能戦艦〈轟天号〉。

 予想外の角度から巨大な質量が出現したことで反応が遅れた ほむら。

 艦長はわずかなスキを見逃さず、全砲門による攻撃を命じた。

「撃て!!」

全弾が至近距離から命中。ほむら は爆炎に包まれる。

やったか!?

しかし、ほむら は無傷。とっさに魔法陣からなるシールドを展開し弾かれる。

ほむら の反撃。彼女が手をかざすと、無数の紫色の矢が空間に出現。轟天号に殺到した。

爆炎に包まれる轟天号、そのまま氷原に座礁した。

「諦めるな!」

艦長の一喝。

ほむら はそのまま地面におりた。そのまま、何を思ったか轟天号に歩み寄ろうとする。直後に地表が激しく揺れた。

跳ぶ暇もなくクレバスに落ちそうになる ほむら 。艦長はそのすきを見逃さなかった。

「ミサイル発射!クレバスを撃つんだ‼」

新兵のヴィニョル二等兵が取り付き、発射レバーを引いた。

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艦橋のすぐ後ろに設けられたVLSよりミサイルが一斉に発射される。ミサイルは ほむら の周囲に降り注ぎ、ほむら を氷の中に閉じ込めた。

オペレーターが報告する。

「やりました!ほむら は氷の中です‼我々は勝利しました!」

艦長と兵士たちが完成を挙げた。

後日、魔法少女たちにより厳重に封印が行われた。人類はここに勝利したのだ。

本編

それから、10年以上の時が過ぎた。

訓練でよかったわね

ノルマンディー沖

 海底で激闘を繰り広げる、新・轟天号。そして、それに絡みつく魔女。

 オペレーターが報告する。

「船体の50パーセントが損傷!これ以上は持ちません」

副長が艦長より先に命じた。

「すぐに浮上しろ!」

しかし、それを艦長のヴィニョル大佐が却下した。

「駄目だ!このまま潜航しろ」

ヴィニョル大佐は決して冷静な態度を崩さず、艦長席に座ていた。

艦長の指示通りに海底へと潜航する新・轟天号。

目指すは海底火山だ。

溶岩の熱にあぶられて苦しむ魔女。しかし、それは轟天号も同じだった。

損傷は艦内にも及び、火花が走る。内部温度も90℃を越えていた。

クルーが悲鳴を上げる中、艦長は平静を崩さない。

やがて、熱に耐えられなくなり魔女は離れた。

しかし、それでもしつこく追いすがってくる。

「〈魔女〉。追っています!」

艦長は命じた。

「轟天号、主舵いっぱい。180度回答!」

〈魔女〉と対峙する轟天号。

「艦首メーサー衝角砲発射準備。モード・冷凍メーサー!」

「駄目です!火器管制システムオフライン」

「構わん。静香、手動で狙え‼」

砲手席に座っていた一人の少女――黒いジャンプスーツ/胸部・肩・脛・膝を護る透過材質のプロテクター/頭覆い素顔を隠すHMD付きのヘルメット。

彼女はそれを外した。露になる素顔――たれ目だが、強い意志の宿った瞳。

 M機関所属 魔法少女兵――時女静香 少尉は目の前に表示されたスクリーンの照準に〈魔女〉を捕らえた。

 瞳孔が狭まり視界の中心に〈魔女〉を完全に捉える。

すでに、轟天号の巨大な船体は彼女の体の一部のようなものだった。

静香は引き金を引いた。

冷凍メーサーが艦首――ドリルの先端から放たれる。

冷凍メーサーの青い光が直撃し、氷漬けになる〈魔女〉。すかさず轟天号が突撃し、砕いた。

勝利を確信したヴィニョル大佐はクルーに命じた。

「轟天号、基地に帰投する」

直後に通信が入る、地球防衛軍の総司令官からだった。

『ヴィニョル大佐。あなたは轟天号を沈めるつもりですか?軍法会議は避けられませんよ』

「うるせえ!現場を知らない奴は黙ってろ‼」

 この後、軍法会議に出席したヴィニョル大佐は法務将校(裁判長)を「カッと」なってぶん殴り、営巣入りになったそうな。

 一方で、日本の神浜市にある地球防衛軍本部、それに隣接するM機関の駐屯地に帰投した静香は格闘訓練に参加していた。

四方をフェンスに囲まれた訓練施設内のリング。

 静香と対峙する魔法少女――紅晴結菜。

 二人ともM機関の戦闘服ではなく、魔法少女のコスチューム。

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 リングはかなり狭いが、彼女2人の身体能力なら壁も床同然だった。

 激しくリングを飛び交いそれぞれの武器ーー静香・七支刀/結菜・棍棒で打ち合う。激しい打ち合いの末、静香が優位になった。体勢を崩して倒れる結菜。彼女に七支刀の剣先を突き付ける静香だったがそれ以上はし掛けなかった。「まいった」と言うのを待っているらしい。

 結菜に降参する意思はなかった。すかさず足払いをかまして転ばせる、そして倒れた静香を踏みつけて動きを止めると顔に棍棒を振り下ろそうとした。

その時。

「そこまで!」

凛とした女性の声が響いた。

結菜は振り下ろそうとしていた手を止め、静香から足をどけた。

気を付けの姿勢をとり、声の主を見る。

足をどけられて自由になった静香もそうした。

声の主――両胸に地球防衛軍M機関の軍章のある灰色のオーバーコートに、ベルトで軍刀をつるした女性。

すでに40歳を過ぎているが年齢を感じさせない見かけだった。

M機関の格闘戦教官の時女少佐だった。名前の通り静香の実の母でもある。

他の魔法少女たち――全員がM機関の戦闘服を装着――も姿を現した。

全員でリングを取り囲み静香と結菜の二人を見る。

少佐は静香を見て言った。

「時女少尉」

少佐は彼女を階級で呼んだ。実の母娘だからこそ、公私混同はしない。

「訓練で良かったわね。実戦なら死んでいたわよ」

隣で訓評を聞いていた結菜は思わず吹きだした。

「それから紅晴少尉」

少佐は咎めるように言った。

「調子に乗るんじゃありません」

「勝ったのは自分です!」

「訓練の目的は相手より強くなることではないわ」

「では何ですか!?」

「昨日の自分より、強くなることよ。以上、解散!それと、静香」

「はい?」

「後で、執務室に来なさい」

魔法少女たちが練兵場を後にし始めた。

静香も、コスチュームを戦闘服に戻し、出ようとした時、結菜から声をかけられた。

「どうして、あの時トドメをためらったのかしらぁ?あなたが勝っていたからぁ?」

静香は何か言い返そうとしたが辞めた。振り返ろうとせず、背を向けたまま、

「いいえ、貴方の勝ちよ」

「一つだけ言っておくけどぉ、実戦では手段なんか選んでいられない。あなたの優しさぁ、戦場では命とりよぉ」

これに対しては静香も返さずにはいられなかった。自分が未熟なのは認めるが、『優しさ』を否定されるわけにはいかなかった。

「私たちの使命は人々を守ること!優しさが無くて、どうやってそれができるの!?」

すると結菜は静香の肩をひっつかみ振り向かせた。そして息がかかるほどの顔を寄せて低い声で言った。

「だからあなたは甘いのよぉ!それこそ違うわぁ!私たちの使命は攻めることよっ!勝つことが全てっ‼私たち魔法少女をはそのために産まれて来たんだから‼」

魔法少女がなぜ『少女』と呼ばれるのか?

それは多くが成人を迎える前に死んでしまうからだ。魔法少女はその生命をその力の源である、ソウルジェムに委ねている。

ソウルジェムが濁ってしまえば、力を失うだけではなくそのまま死んでしまうのだ。ソウルジェムの濁り=穢れを取るには魔女を殺すことで手に入る『グリーフ・シード』を得るしかない。

 故に、魔法少女はその生きる意味やその意義を考えてしまうのだ。

どうせ学者なんて

 戦闘服からM機関魔法少女将校の制服――佐官同様に両胸に地球防衛軍の軍章があるが、赤地で描かれ全体の色は黒、肩から吊るしたガンベルトのホルスターにはM機関制式のダブルアクション・リボルバー/口径357マグナムが収まっている――に着替えた静香は少佐の執務室に出頭していた。

 敬礼の後、休めの姿勢を取ると、静香は少佐から次の任務に就いて聞いた。

「北海道沖で未知の魔女の化石らしきものが発見されたの。その調査のために、国連安全保障理事会と学術研究所の要請で科学者が派遣されるから、その警護を命じるわ」

「それだけですか?」

「良かったじゃない。楽な任務で」

「そんなのM機関がやらなくても良いんじゃ?」

「先のノルマンディー海底沖での戦闘が原因で轟天号は修理ドッグ入り、ヴィニョル大佐は軍法会議で法務官を殴って懲罰房行きよ。しばらく貴方も暇でしょ?」

静香は安めの姿勢のまま露骨に嫌な顔をして見せた。

「どうせ学者なんて、老いぼれで理屈っぽくて、頭ガッチガチの......」

その時、少佐=母の目線が自分の背後に向いているのに気づいた。

まさかと思って振り返る。

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「理屈っぽくて悪かったわね!」

少佐が立ち上がって、彼女を紹介した。

「分子生物学者の里見灯火さんよ。今見えても米国の大学を飛び級で卒業してるの」

 第一印象最悪の出会いだったものの、任務である以上遂行しなければならない。これでも、地球防衛軍の少尉なのだ。

 灯火を連れてM機関駐屯地の駐車場に向かった。途中、何度か戦闘服を着た魔法少女兵の一団とすれ違った。

 灯火とは一言も口をきいていない。

 調査期間中、ずっと口を聞かないというのも気まずいので何とか話しかけることにした。

「いやぁ、学者さんってあなたみたいな人もいるのね。想像してたのと違ってびっくりしちゃった」

「私様も魔法少女にあなたみたいなのがいるとは思わなかったわ。みんな戦うことしか考えてないような脳筋ばっかりだと思ってたけど、貴方みたいに脳筋かつ無知蒙昧な田舎娘もいるのね」

誰が田舎娘よ!静香は声を荒げそうになるのを抑えた。なんとか年上としての矜持を守り平静を装う。

「学者にあなたみたいなのがいるのと一緒。自分が物知りなのをいいことに威張ってる、生意気な小学生みたい」




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