池袋にて


 嘗て、ミカエラはある吸血鬼からこんな話を聞いた。
 そいつはたまたま都市防衛隊の歩哨としてペアを組んだ仲で別に親しいわけでもないく、そもそも吸血鬼は同胞も含めて他者に興味を持ちにくいので本当に気まぐれだったのだが、彼が言うには「吸血鬼になって半世紀がたった頃、猛烈に後悔したことを憶えている」と、今となってはその時の感覚を思い出すことも叶わないが確かなのはその時自分は確かに「こんなことならば(吸血鬼に)ならなきゃ良かった」と声に出して悲嘆に暮れていた記憶があるとのことだった。
 ただ、そいつはこうも言っていた「成らなかったら、成らなかったで『あの時なっときゃ良かった』と後悔していただろう」と。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?