名盤「結束バンド」についての感想と備忘録

※アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」のアルバム「結束バンド」の感想を備忘録的にまとめたものとなります。少し長くなってしまいましたが、お時間ある方は是非みてください。少しでも共感してもらえたら嬉しいです。

1.タイトル

 まずはタイトル。結束バンドというバンド名と同じセルフタイトルとなっていますが、この名前は1話で虹夏ちゃんが後で絶対変えると言っているんですよね。ファーストアルバムという(もしかするとラストアルバムとなるかもしれない)大事なアルバムでこの名前を持ち出してきた辺りに、結束バンドへの愛着のようなものを感じてしまいました。背景想像すると二重においしいですね。

2.ブックレット

 次にブックレット。これ右端4色の輪っかが書かれているのですが、ページが進む=曲順が進むと輪っか間の距離が縮まってきて、最後には4つの輪が繋がるように書かれています。4つの輪っかはどう見ても結束バンドメンバーを表していて、その距離が縮まっていくと言うことは、曲順=作中での経過時間を表しているように感じました。なのでここからの考察は全て曲順=作られた順という前提の上で妄想しています。
 ちなみに裏表紙ではピンクの輪っかだけ少し下に向かっていて、少し考察させてくれる仕組みになっていたりします。ぼっちちゃんがみんなを引っ張る描写なのか、みんながぼっちちゃんをはぐれさせまいと手を繋いでいる描写なのか…4色の輪っかだけで色々想像できてしまいます。

3.収録曲

※前述の通り、曲順=作られた順という前提で妄想しています。また、一部を除いて全曲ぼっちちゃん作詞の前提で妄想しています。

1.青春コンプレックス

 もはや聞き馴染みの深いOP。溢れんばかりの願望(待ってた、したい、etc)を抱えつつ、ただひたすらギターをかき鳴らす姿はまさしく初期ぼっちちゃんですね。
 「水の底にも月があった」、「虎になりたいから」って歌詞がぼっちちゃんらしくてすきです。それこそ作中で使われてないのが勿体無いくらい。あとはところどころアジカンのリライト感があってなんとなく嬉しくなる。タイトルほどコンプレックスはなく、むしろ青春から縁が遠いながらも私は私で何かを成し遂げたいという意志を感じました。
 2番だけサビのコードが微妙に変わるのがオシャレ。ラスサビのこれでもかって転調もいいですね…。あとサビ直前のギターセッション(デッデッデッデッ)でぼっちちゃんと喜多ちゃんが顔を見合わせながら弾いてるの想像すると捗るのでオススメ。

2.ひとりぼっち東京

 東京(下北沢)に1人で出てきて、結束バンドという出会いを経て浮かんだ感情が現れていそうです。この曲のキーワードはやはり「青い炎」。真っ赤な炎よりも落ち着いて見えるけれど、実はもっと熱いんだということが意図されているなら、ぼっちちゃんなかなか熱い性格してますね。東京がちょっと優しく見えたのは結束バンドに出会えたからでしょうか。「言えない夢ばかりだ」あたりの歌詞は8話への伏線ですかね?毎回素直に泣きそうになります。
 この曲に使われる「ギターの音が歪んでいるのは」ってフレーズを見て、「歪みって何?→ディストーションって言って…→喜多ちゃんDistortion!!作詞」って流れがぼ喜多であったと妄想するとすごい気持ちいいのでオススメ。

3.Distortion!!

 初期ED。喜多ちゃん作詞だと信じている曲。なんとなく初期ぼっちちゃん作詞にしてはあまりに眩しく明るい。最初はギター初心者がディストーションそんなに推す?って思ってたけど、前述の通りひとりぼっち東京からインスピレーションを得ていたと考えるとニヤニヤが止まらなくなる。
 「交わらないその心を繋ぎたい、端っこでも」ってフレーズだけ若干控えめですが、一度バンドから逃げ出した後ろめたさのようなものが表れていそうでとってもいいですね。「指先が硬くなるたび」、「追いかけた日々Fコード」なんかはギター初心者がよくぶつかる壁で初期喜多ちゃんの波動を感じました。

4.ひみつ基地

 アルバム新規曲。誰かとの秘密基地じゃなく、自分だけの秘密基地のことを歌っているのが最高に初期ぼっちちゃん。でもそのひみつ基地には一面に結束バンドの写真が貼られてそう。自分の好きなものを集めるだけ集めてひみつ基地を作っておきながら、自分はその輪に加わるという発想がまだなさそうで応援したくなります。
 喜多ちゃんの「夜更かし、お寝坊、ダメ絶対」は全人類聴いたほうがいい。ぼっちちゃんとリョウさんこれ言わせたくて曲作ったのでは…?

5.ギターと孤独と蒼い惑星

 ぼっちちゃんの、結束バンドの、もっと言うと視聴者の今後を決定的なものにした曲。超絶キラーチューンですね。5話で結束バンドとしての演奏を初めて披露した曲でもあります。視聴後速攻で曲買いに行ったくらい衝撃的だったのを覚えてます。
 恐らく結束バンドメンバーもこの曲に自信があったと思いますが、だからこそ8話で思い通りの演奏ができなかったことはかなりのショックだったと思います。視聴者目線でも、5話であれだけ震えたこの曲で客が帰ってしまう描写に泣きそうになりました。
 歌詞はただただ自分を見てくれとアピールする曲。ストレートな分強く刺さりますね。それでも「馬鹿な私は歌う(弾く)だけ」なのですが、その行為に救われる人が意外と多いんです。あとは「誰にも気付かれない」って歌詞の部分で、5話ではぼっちちゃんの変化に虹リョウが気付き、8話では凄さに気付かれず客が帰ってしまうという対比が非常に印象に残っています。「変わって見えた…ような」などなど自信を出しきれない感じがこの頃のぼっちちゃんらしくてすごくいいですね。ラスサビ前の「聴いて→聴けよ」はみんなすきなポイントではないでしょうか。
 正直語り尽くせないくらい全部すき。

6.ラブソングが歌えない

 アルバム新規曲。ラブソングというより、人との繋がり全般にまだハードルを感じていて、一方でその繋がりの正体を知りたいと熱望しつつ、やっぱり触れるのは怖いなぁっていう歌詞。なんだかんだでラブソングを歌えるように愛の正体を知ろうとしているのはぼっちちゃんの成長の証ではないでしょうか。
 この曲で少し人との繋がりに興味が出てきたのかな?と感じさせながら、次の曲で思いっきりぶった斬ってくるのはなんとなくドラマを感じますね。

7.あのバンド

 8話のやべー曲。これも非常に強い意志を感じる曲ですね。8話の澱んだ空気を一新するかのようなぼっちちゃんのソロ演奏からの入りが最高にかっこよかったです。4話のリョウさんの話を聞いたぼっちちゃんが作詞した曲だと信じています。実は割と初期から喜多ちゃんがちょいちょい練習しているのが恐らくこの曲だったりします。
 作詞的にはこの曲までは孤独と拒絶を強めに感じますね。バンドは組んだものの、理解し合える関係にはそう簡単になり得ないというぼっちちゃんらしい思考が垣間見えます。とは言え前のバンドを抜けたリョウさんへの共感のメッセージでもあるはずなので、同時に少しずつ打ち解け始めてた雰囲気も漂い始めています。
 Aメロの「笑い声に聞こえる」辺りでなるぼっちちゃんのギターが、序盤でやべー強敵にあった時に流れる曲みたいでほんとすき。

8.カラカラ

 中期ED。あのバンドのアンサーとしてリョウさんが作詞したと信じている曲です。作中での登場順に反してアルバムでこの曲順なのはそういうことでいいんですよね?正直この曲順だけで脳が焼かれてリョウさんが愛おしくなりました。ここまでひたすら卑屈で孤独で受動的だったぼっちちゃんの歌詞を受け入れつつ、「それでも私は前に進むよ」と優しく諭しているようでホントすきです。
 あとは他の曲と比べて表現されている感情が明らかに重めなのもすきなポイントです。「前借りしてる命を使い切らなくちゃ、今この時に」なんて結束バンドに命かけてないと出てこないと思うんですよね…。
 最後の「やれるわ」連呼は、実はメンタルよわよわなリョウさんが自分と結束バンドを鼓舞してそうで応援したくなる。あぁ…リョウさん…

9.小さな海

 アルバム新規曲。この辺りから人との繋がりに能動的な歌詞が入り始めるのがぼっちちゃんの心境の変化を感じてすごく嬉しくなってくる。カラカラがぼっちちゃんの糧になって一歩前に進めたと考えると2人の関係が素敵すぎる。全然変われない僕と変えてくれそうな君のことを歌っていますが、この歌詞を書けた時点で既にかなり変わっているような…。
 君は作中の誰にでも当てはまる気がしますが、曲順的には虹夏ちゃんが一番しっくりきますね。

10.なにが悪い

 後期ED。虹夏ちゃん作詞としか思えない。8話スタッフロールの印象が強く、気持ちのいい終わりを感じさせてくれる最高の曲。演出と相まって当時は8話を無限に再生していました…。
 歌詞はバンドに全力を注ぐという他の人とは違う形の青春を謳歌していることを、迷いながらも半ば開き直って歌っている感じでしょうか。楽しい感情も悲しい感情も「全ては最高のプレゼント、大人になった僕へのプレゼント」って表現するのがめっちゃ素敵。そう信じてなにも悪くないですね!そして何色かわからなかった心を最後には「心は透明だ(=今なら何でもできる)」、「行こうぜずっと先へ」と歌い上げる構成が、結束バンドへのエールにも感じてすごく虹夏ちゃんらしいです。見方によってはカラカラへのアンサーというか協調にも感じますね。もっと聴き込むと熱い虹リョウが待ってそう。
 曲調的には、はやる気持ちを抑えるかのように2番サビ後に一旦下がるのがほんとすき。

11.忘れてやらない

 文化祭編1曲目。次の曲とセットで、ぼっちちゃんの心境が確実に変わったことが感じられて嬉しいような、物語の終わりを感じて悲しいような複雑な気持ちになってきます。学校での生活を「こんなこともあったって笑ってやる」と思えるようになったところにかなりの成長を感じます。
 作中ではこの曲の演奏時に誰もいない校舎のいろいろな場所が映されていたのですが、それらがぼ喜多の思い出の場所だとするとまた想像が膨らみますね…図書室とか屋上とか、一体どんな思い出があるのでしょうか。歌詞作りの資料を探したり、練習場所の候補にしてみたりしたんだとすると、確かにお互い忘れてやらないんでしょうね。

12.星座になれたら

 文化祭編2曲目。最高に脳を焼かれて今でも後遺症を引き摺っているやべー曲。演出も相まってぼ喜多曲のように見えますが、個人的にはぼっちちゃんが結束バンドの、もっと言うとバンドを通じたみんなと、メタ的なことを言うとファン(視聴者)のみんなと繋がりたいという想いを綴った曲だと感じています。実は即興で虹リョウもぼっちちゃんのソロに時間作ってますし、星座って大抵いくつかの星を繋げて作りますしね。
 ここにきて初めて人との繋がりをテーマにストレートな歌詞を書いたぼっちちゃんの心境の変化にガチ泣きしました。「色とりどりの光放つような」星座になりたいって歌詞が、4話のリョウさんの「バラバラな個性が集まってそれが結束バンドの色になる」って一言から繋がっているようで、あの会話がぼっちちゃんに与えた影響力の大きさを感じます。そしてトラブルを乗り越えつつ結束バンド全員が協力して最高の形で演奏しきったことで、確実に星座になれたことを感じさせてくれます。
 アニメの演出でぼっちちゃんが山場を乗り切って天を仰ぐようなシーンがあるのですが、あのワンシーンがまさしくぼざろの集大成ですね。この光景のために12話転がり続けたと言っても過言ではないでしょう。この曲も正直なところ無限に語れそうです…。

13.フラッシュバッカー

 12話終了後に突如アップされた本PV曲として登場しました。歌詞は輝かしい日々を懐かしむような内容で、12話の喪失感も相まって「何勝手に終わってるんだよ…」って思ってました。「いつかは消えてしまうけど誰かの記憶には残れるかな」なんて終わりを意識せずにはいられません…ただ、喪失感に寄り添ってくれると考えるとすごく優しい歌でもあると思います。ファンの心に残っている限りはいつでもフラッシュバッカーになれますから。

14.転がる岩、君に朝が降る

 最後の最後に持ってきたアジカンカバー曲。ぼざろの命題とも言える曲です。カバー曲なのにぼっちちゃんや結束バンドに異常なほど合ってるんですよね…。ぼっちちゃんの歌い方がかなり感情こもっててすごくいいです。
 星座になれたらで終わりを迎え、フラッシュバッカーでそれまでの思い出を振り返りつつ、この曲で新たなスタートを感じさせる構成に初聴時は鳥肌が立ちました。もっと言うと、この曲で転がっていくのは僕だけではなく僕らなんですよね。一緒に転がる仲間が出来たことは、12話全力で転がり続けた証ではないでしょうか。
 新たなスタートはこのアルバムで言うと1曲目に当たるので、これで半永久的にぼざろの世界を楽しめますね!

4.最後に

 作詞作曲編曲の皆さんのぼざろへの理解力が圧倒的すぎました…聴くたびにただただ感想が溢れてきて、一周で12話+αを振り返ることができてしまう名盤です。もしまだ通して聴いたことがない方がいれば、ぜひ聴いてみてください。きっとそれぞれの曲に新しい一面が見えてきます。こんなに素晴らしいアルバムを作っていただいた関係者の皆さん、ここまで読んでいただいたモノ好きな皆さん、本当にありがとうございます!もう少し聴き込んだら各曲感想上げるかもしれません。

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