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ソルの練習曲に見られるギター曲としての考察、その1

ギターを勉強していて、中級以上の人なら、誰しも一度は練習したことのあるF.Sorの練習曲。今現在月刊誌現代ギターでも私は技術解説としてこの曲集
(セゴビア版)を使用しています。
今回は秘術解説ではなくて、ソルがギター用に作曲していて、どのように工夫したかの場所をピックアップして作曲的にアナリーゼしたいと思います。

セゴビア版ソルの20の練習曲集より第2番。

アルぺジョが美しい曲で、いわゆるアルベルティバス(ドソミソドソミソという伴奏形)のような形が使われた練習曲です。
のようなと言葉を濁したのは、もうソルの工夫でしょうか。アルペジオが
(ドソミソドソミソ)ではなくて(ドソミソミソミソ)になっています。
最初のほうはこの形でも演奏できるので、試してみれば分かりますが
2拍目の頭がドだと少し重めになりミのほうが軽快でギターでは弾きやすいのです。
しかし、今回のお話はここではありません。
17小節目からさりげなくドミナントに移ってしばらく進んだ19小節と20小節がメロディはともかく、せっかくの軽めのアルベルティバスのアルぺジョが
形が崩れて1拍目はともかく2拍目はバスは低くなり1拍目のアルぺジョとも高さが異なります。

これはソルとしたことが、どうしたことでしょうか?

結論は簡単です。1拍目の(レシソシ)を続けて(ソシソシ)と弾けば開放弦で演奏も楽ですし、曲の冒頭からの形にはまります。で実際に(レシソシソシソシ)とすべて開放弦で弾いてみますとG7の「ソシレファ#」が1拍目には揃っていますが、2拍目は「ソシファ#」で肝心な3度(長短をつかさどる大事な音)のシがなくなってしまい、急に無色透明になったようです。そこでソルはバスにシを置きました。でも、これでも問題は残ります。バスをシにしたので、残りの伴奏がシシソシとシが多くなり違和感があるので、2拍目の伴奏をシレソレとシをレに上げたのです。押さえる音も変わるので奏者は大変ですが、結果としてこのイレギュラーの音型が完璧なハーモニーを作っています。

さて、その次の小節がソルの工夫の本丸です。
メロディは係留でファ―ミと降りていますが、バスは保続音のドを使って1拍目の伴奏は前の小節と同じ違和感なく(ドレソレ)です。ここから2拍目が
和声がグラデーションのようにハ長調に戻りますが、問題視したいのはその時の伴奏です。(ドレソレソドミソ)あらら!同じ2拍目の中で伴奏がどんどん下に降りてきています。これはどうしたことか!
でも少し試してみるとすぐにわかるのですが、この2拍目を曲の冒頭のように(ミソミソ)で弾くここにものすごい音の段差を感じてしまいます。
では前の音型から繋げて(ソドソド)で来るとアルぺジョの最後の音のドと次のメロディが音程が二度ですのでドーレとメロディに聞こえてしまいます。
高くなりすぎた全体の音型をさり気なく降ろしているのですね。

ギターの学習者はこの部分を普通はどう見ているでしょうか?
先生に「ほらほら!ここはアルぺジョの音型変わっているから気を付けて」
と注意されたかもしれませんね。
でもこのように作曲的にアナリーゼしてみると、ソルの隠れた苦労や
本当の意味での作曲の工夫や楽しさが少し分かって楽しいですよね。

というわけでこの曲を弾くときにはこの部分をさり気なく滑らかに繋げて演奏してくださいませ。




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