カポ老師の相談室、その1
※カポ老師とは中国は山東省のギターアンサンブル講習会で、あるパートが合奏楽器用の移調譜面と知らずに普通のギターを使用して、別の調性で演奏しており、その響きの濁りにとても苦しんでいた。その小学生のパートの一人に老師は持っていたカポタストを付け、瞬時にその問題を解決し、その場にいた父兄や先生方から賞賛された伝説のギタリストという設定である。確かな知識の答えもあれば、思い込みの強いかなりいい加減な答えもあるので、参考にする時にはかなりの注意が必要である。
♪ギター愛好家Aさんからの質問♪
ギターを始めて1年ぐらいたつのですが、家での練習で家族に全然良い音が聞こえてこないと言われるのです。何が悪いのでしょうか?
☆カポ老師の答え
お~ほほっ!よくある悩みじゃな。悪い音の原因は様々で、簡単には答えられないのぅ。まぁ、でも答えてみるかのぅ。
●例えばギターの管理が悪かったりしてじゃな、中の力木が外れてしまったら、どんな名手が弾いてもビリビリと雑音が入る事は知っておるか?
これは、もうアコスティックの楽器としては故障しているのと同じ現象で、
楽器の修理が必要じゃな。
他にもノイズが入る原因は沢山あるぞ。
●糸巻きの弦の処理が悪くて振動でノイズが入る。これは目視できるな。
●駒側の弦の結んだ残りがびよ~ん!と伸びていて表面版に触って振動して 雑音が入る。これも見えるな。
●服のボタンが裏板に触ってビリビリとなる。これはこの服を脱げば解決するな。勿論着替えるのじゃぞ。裸でギターは演奏しない方が良い。
外では公然わいせつ罪もそうじゃが、家の中でも特にセラックニス(ラックカイガラムシ、およびその近縁の数種のカイガラムシの分泌する虫体被覆物を精製して得られる樹脂状の物質をアルコールで薄めて手塗りする技法)のギターは長時間肌が触れて汗まみれになると白く変色する事があるのでな。
何?その手の雑音の話では無くて音自体が汚いという意味だったのか。
そうなると、疑わしいのはまず弦を弾いている右手じゃな。
爪が無いならともかく、あるなら弦に触れる時に爪から当たると
やはり細かいビリビリした音が入るからのぅ。
たま~に、どうしたら器用に全部の音をカシャカシャと音をたてらながら演奏できるのかと思える方もいるでな(笑)
弦を雑音無しで掴んでも、油断は大敵じゃ。
弦をリリースするときに肉と爪が別に時間差で当たると極端に言えば2つの音がでてしまう事があるのじゃ。
掴むのもある程度同時、リリースも弦の上を指頭と爪が滑らせることはあっても離すときには音が一つにならないといけないのじゃ。
これらの問題はタッチを研究して、弦を掴む角度などをよ~く考えて
指先の肉が同時か、難しければ指頭の肉から一瞬でも早くつかむことで爪の雑音は防げるはずじゃ。この時の指針になるのは、実は目では無くて自分の音をよく聞く耳で確認する事じゃな。
何?右手の問題は無いと!では次に疑うべきは左手じゃな。
左手のノイズも多く出るぞ。所謂ビリつきじゃ。
フレット近くを押さえていないと出るビリつきじゃな。これのたちの悪いのは少しの場所がフレットから離れており、少しビリつくと位置を直さずに力だけ入れると、音のビリつきが無くなるのでたちが悪いのいじゃ。
何故かと聞くのか?そんなことも分らんのか?左手の位置をフレットに吸い付かせるのが、できるだけ力を入れすに伸びた音を出す基本なのじゃ。
しかも、押さえる時には最低の力加減は難しいから、フレットに軽く触る様に押さえてからビリつかぬように、ぎりぎりまで脱力してヴィブラートをかけるから美しい伸びのある音になるのじゃ。
左手のビリつきはまだまだあるぞ。
後ビリと言って、押さえて弾弦した少し後にビリビリと来るのじゃ。
これは単音では流石に起こりずらいが、難しい和音などで中声部の音の
指のポジショニングが悪かったり、力が入りすぎて、左手が硬くなっても起こる傾向があるな。(実はわしの得意技じゃ)
他にもフレットを押さえた左手指の爪が上にある低音弦に当たるビリつきもあるな。これは、全くたちが悪い。ギターの美しいカンパネラの和音の妨げになるし、防ごうと弦をずらすとピッチも悪くなることも多いのじゃ。
何?わしの作る曲はカンパネラだらけではないかというのか?
そ、それは曲の美しさと、技法の難しさはなかなか一致しないのじゃ。
わしの指は普通のギタリストよりうんと太いので、わしが何とか弾ければ
後の者も何とか弾けるじゃろう!という甘えもあるな。
何!?今までわしが話したどれにも当てはまらない音の汚さというのか?
ちょっと待ちなさい。そもそも良い音がしないと思っているのはあなた自身なのか? ち、違うと申すのか!誰じゃあなたの音が美しくないと言っているのは?
家族やギター仲間じゃと!
は~(溜息)一番悪いパターンじゃ。
そもそもギターの音の美しさに絶対の条件などは無いのじゃ。
聴き手が美しい音、汚い音と思えばそれまでじゃ。
しかし、ここに大きな齟齬があるのじゃ。
一概には言えんが、ギタリストで音が美しいと言われている方は
実は自分の音に満足していない人の方が多いのじゃ。
なんなら、何故もっと美しい音が出ないか、常に悩んでいるほどじゃぞ!
では、なぜ自分の音に満足できないか?それは求めている音の志が高い
からじゃ。そして、その意識を持った人が初めて美音の扉を開ける事になる
という事じゃな。
何じゃ、意外に簡単な質問だったな。
自分の音に問題点や嫌悪感ぐらい持てるようになって、日々の練習に励めばおのずと、他の人に美しく聴こえる音になっていくという事じゃ。
イメージも大切じゃぞ。演奏の理想のイメージを持つ人は多いが好きな音、出したい音の明確なイメージを持つ事はとても大切で、他楽器も含めて一流の演奏家は皆実践しておるようじゃ。
勿論、演奏には他にやることが沢山あって初見や手に入った曲で実行するのはやはり難しいな。
常に自分の実力より簡単な曲で楽に演奏できるぐらいの曲で、自分の音の研究はするものじゃぞ。覚えておくと良い。
やれやれ、初回から説明に回り道が多く、無駄な時間が多かったようじゃ。
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