クラシックギターの弦が勝手に切れるのは?その2

3日ぶりに西荻窪教室に行ったら河野ギターの弦が切れていました。

見事にロペス巻き(後で解説します)の首の部分で切れています。

やはり温度差が厳しくなってきたこの時期に古い弦(レコーディングなどに使用した弦)を張り替えて無駄なく使っているのですが限界だったようです。ここで先日お話しした切れた場所に注目してみましょう。
ブリッジ(獣骨などを使った縦に入っている棒状の物)に問題があって
切れた場合(エッジが尖っていたりして)はもう少し弦の長さが残りますので、これは完全に弦を支えているわっかの部分で切れていますね。

ではここで丁度弦を張り替える必要性が出来たので写真付きで説明しましょう!

ブリッジ側の結び方の悪い例です。

④弦を見てください弦を止める為にねじった弦がコマの上に来てしまっています。これで糸巻きを巻いていくと確実に外れます(しかもコマの弦止めが削れてしまいますし、最後は反動で表面版に弦が叩きつけられて線上の傷がつく可能性も)

少しピンボケですみません。でも④弦がコマの右横側で止まっています。一周しかしていないのが
気になりますね(大丈夫だとは思いますが)


これで2周巻いて右横で止めました。これで安心ですがまだ通した弦のわっかの位置が
ねじれたままで。これも微調整の必要性があります。


これで2周ねじって弦を巻いている部分を弦が出来るだけ真っ直ぐになるように
奥に詰めました(この作業をしてから弦を巻き上げた方が、首がつらない状態になりやすいです)


そしてこちらがロペス巻きの完成品です。私は作るわっかはこのぐらいが好きですが
もっとぎゅうぎゅうに詰める方も多いですね。

「ロペス巻き」はネットで調べて頂ければ様々な解説があります。
アグアドの最後の時期の製作のアシスタントをしていて、ご本人も素晴らしいギター製作家であったマルセリーノ・ロペスさんが考案した結び方で
ブリッジの模様に弦巻の傷がつかず、二回止めているので弦飛びが(特にナイロン弦)少ないと言われています。

私もこの巻き方は日本で知ったのですが、マルセリーノさんはスペイン留学時代に私のアテネオ劇場のデビューリサイタルにアウラ会長の本山さんが連れて来てくださり、「演奏が気にいったから1本作ろうか?」と声をかけて下さったのに、何も知らない私は「ありがとうございます、でも今は大丈夫です!」とバカなことを言ってしまいました。

お金もなかったですし、誰かも知らない上品な細身のピノキオのゼペットおじ様のような方に急に言われたので、若気の至りの私は即答で断ってしまいました。後から本山さんに会うたびに「もったいなかったね~!」と言われました。20年後に自分でアグアドを買う事も考えると本当に残念なことをしました。


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