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新譜「季節のうつろい」の1曲目”佐藤弘和の主題による変奏曲の主題が「素朴な歌」ではなく「小シシリエンヌ」の理由。

新譜のCDをプレイヤーにかけるとまず流れてくるのがこの曲です。
主題は主題として展開していくために繰り返しは省いてありますが
永島志基の自作曲集Vol.3のCDをかけると佐藤弘和氏の小シシリエンヌが流れてしまう面白さを狙ってみました。
彼は私の作曲の師でありますし、クラシックの世界では昔から好きな作曲家の主題を使用して変奏曲を書くことはよくあります。
特に有名なものはモーツアルトの「きらきら星」変奏曲やオーケストラでは
ブラームスの「ハイドンの主題のよる変奏曲」やパガニーニのカプリスNo24番を使ったラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」なども有名です。
という訳で私が尊敬する佐藤弘和の主題の変奏曲を書いて見たわけです。

ここでこの曲を発表した時に(先に現代ギターよりワイン&スパイスという曲集に集録されていました)佐藤弘和ファンの数人から「どうして小シシリエンヌを選ばれたのですか?素朴な歌では無くて?」と質問されることがありました。これには私自身の思い入れと、想い出が深くかかわっています。

確かに「素朴な歌」の完成度は高く、無駄な音が一つも無く、弾きやすく
心に残る旋律です。その頃は、彼とはカルテットの練習もありよく会っていた時期なのですが、ある日「現代ギターの菅原さん(当時の編集長でやはり佐藤弘和の才能をいち早く気が付いていた方)がページが1ページ足りないから数日で何か書いて!と言ってきてびっくりしましたよ!でも結構良い曲が書けましたが」と話していました。「ふ~ん、すぐに書けて凄いね!」と
答えたのは覚えていますが、それっきりで数年して愛好家の方々の皆さんが弾いているのを聴いて「あ~この曲なんだ」と思ったわけです。
これが「素朴な歌の」シンプルな思い出です。

そして、「小シシリエンヌ」は彼が最愛の幸さんと結婚するというので
立川の美しい結婚式場に招待されて行きました。
とても、素敵なところでお庭も広く天気も良く、華やかな会の始まりです。

しばらくしてチャペルに集められて「新郎新婦のご入場です!」というアナウンスがありお二人が入って来たのですが、その時に吹き抜けの上の階からオルガンで演奏されたのがこの「小シシリエンヌ」だったのです。
雷に打たれたような、天上界に誘われるような美しさで、新郎新婦の姿が滲んで霞ました。何故か「この音楽は永遠だ!」というフレーズが頭に浮かんだほどです。(のちに幸さんに何度も私の音楽体験の話をするのですが、
幸さんは素敵な笑顔で「でもオルガニストが間違ってしまって(笑)」というのですが、私に不思議とそのミスの記憶はありません。

こんな深い想い出があり私の変奏曲の主題は「小シシリエンヌ」になったのです。
シシリエンヌのリズムに乗り美しいメロディが鳴りながら、ベースがクリシェ(半音や全音進行で下がっていく形)して、音は少ないのに声部が3声に分かれてそれぞれの役目を果たします。
中間部は属調ではなく並行調(調号が同じ長調と短調の関係)から始まり
最後はハ長調に転調してドッペルドミナント的なラ#でホ長調のドミナントB7に終始。主題が戻りメロディが跳躍して華やかになり終止はまた歳ほどのハ長調-ニ長調(D7)-ホ長調(最後は得意の9th)で終止します。
この途中と最後のハ長調の使い方が美しいのですね。
次回はいよいよ自作部部分の解説を展開していきたいと思います。




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