忍殺TRPGソロリプレイ【ファースト・ウォーク・ウィズ・チェインドッグ】

◇前置きな◇

 ドーモ。しかなです。当記事はソロシナリオを遊んだ結果をテキストカラテナイズして生まれたリプレイ記事となります。つまりは読み物だ。お気軽にどうぞ。

 今回挑戦したソロシナリオは海中劣=サンの【ニンジャの初詣】です。いつもお世話になっております。

 さて、挑戦者……と考えてふと気づく。このソロシナリオ、フレーバー的には二人で行っても違和感がないのではないか?

 というわけで、勝手ながら以下2名に初詣に行ってもらうことにした。

画像1

ニンジャ名:キールバック
【カラテ】:3
【ニューロン】:5
【ワザマエ】:6
【ジツ】:1(カナシバリ)
【体力】:3
【精神力】:5
【脚力】:3
【DKK】:0
【万札】:7
装備:
・ウイルス入りフロッピー
▲バイオサイバネヘッド(軽度)
○信心深い

画像2

ニンジャ名:チェインドッグ
【カラテ】:2
【ニューロン】:3
【ワザマエ】:4
【ジツ】:2(キネシス)
【体力】:2
【精神力】:3
【脚力】:2
【万札】:21
【名声】:2
持ち物など:
・ウイルス入りフロッピー
・バイオサイバネ
○実家のカネ

(画像はいずれもななメーカーで作成したイメージです。いつもお世話になっております)

 元ストリートチルドレンと元カチグミ家庭の一人娘である。トラブルがないといいですね。

 では早速やってみよう。よろしくおねがいします。



◇お詣りな◇


「タノシイくじだよ、タノシイくじあるよ」「アマザケ一杯300円!」「ハイーッ!」「ドッソイ!」「オモチどうぞ! つきたてですよ!」「オモチください! ピーナッツ! 3つ!」「ブラインド=サン、やめてくださいよ」

 ネオサイタマ一角にあるシュラインは大賑わいであった。なにしろ新年が始まってまだ間もない時期。仕事に追われていたサラリマンやオショガツ休みに惚けていた無軌道大学生などが、少し遅めの新年祝いに訪れているのだ。

「アイエエエ……」

 そんな人混みの中、弱々しい悲鳴を漏らす少女あり。怖々と周囲を見渡していた彼女は、連れの少女の袖をギュッと握りしめている。

「チェインドッグ=サン? あんまりしがみついてこられても動きにくいんですけど」

「アイエッ! ご、ゴメンナサイ……」

「……まあ、はぐれられるよりはマシですけどね。しっかりついてきてください」

 こくこくと頷く相方……チェインドッグを見て、もう一人の少女ことキールバックはこっそり嘆息した。なんともやりにくい相手だ。

 彼女たちは故あって同じ部屋を共有するルームメイトである。家主の『お姉さま』……もとい、ディスグレイスが留守にしている間、キールバックはふと思い立ちこのシュラインを訪れた。初詣のためだ。

 そこに震える声で同行を申し出たのが、一番の新入りことチェインドッグである。その意図を読みかねたキールバックだったが、他のルームメイトを考え納得した。無口で無愛想で一見近寄りがたいフィアーレスに、一見朗らかだが行動の読めないシャープキラー。あの二人の元に残されるよりは自分と来たほうがマシだと判断したのだろう。

(まあ、自分で行動を起こせるようになったのを褒めておくべきですかね。まったく、どういう温室で育てばこんな風になるんだか)

 チョウズで手の清め方の作法を軽く教えながら、キールバックは眉間にしわを寄せた。数日間過ごしてわかったが、そもそもこのチェインドッグという少女は世間知らずにも程がある。『お姉さま』の知り合いのアベレージに確認したところ、元々はカチグミ家庭の出なのだとか。

 なぜそれがソウカイニンジャになったのか、などと詮索する気は毛頭ない。ただ、同じ年代でも育ちが違うとここまで変わるのかと呆れるだけだ。キールバック自身には親と呼べるものはなく、かつては家と呼べるものもなかった。ディスグレイスと出会うまで、バイオドブネズミめいた生活を送っていたのである。

「す、すごい人ですね……」

「え? ああ、そうですね」

 チェインドッグの囁きに、キールバックの意識は現実へ引き戻された。手を清めた後は賽銭箱にトークンや小銭を投げ入れ、ブッダかりボディサットヴァなりに願いを送るイベントがある。メインイベントといっていい。

 だが……賽銭箱の前には人、人、人! バイオアナコンダめいた行列ができあがっていた。キールバックは考える。いっそカラテを持って割り込んだほうがいいかもしれない。もしくは、警戒心の薄い客からサイフをスって暇を潰すか。……申し遅れたがキールバックとチェインドッグはニンジャである。その程度のことは造作もないだろう。しかし。

選択肢3:大人しく並ぶ

「……まあ、待っていればすぐに順番が回ってくるでしょう。気持ち悪くなったら言ってくださいね、チェインドッグ=サン」

「は、ハイ。アリガトゴザイマス」

 キールバックはチェインドッグの手を引き、大人しく列の最後尾に加わった。シュラインとはすなわち神の領域である。いくらニンジャといえど、滅多なことで狼藉を働くのはよくない。……キールバックはこう見えて信心深いのだ。

 新たに後ろに並んだ客にびくりとして、チェインドッグがキールバックへ身を寄せてくる。心底うっとうしかったが、彼女は敢えてそのままにしておいた。『お姉さま』の言いつけを思い出したからだ。このまま懐かせて信頼を勝ち取っておけば、きっとあの人は褒めてくれるだろう。それを想うとわずかに頬が緩んだ。


 ……そして数十分後! ようやく彼女らは賽銭箱の前に辿り着いたというわけなのだ!

「いいですか。トークンか小銭を投げ入れて、そこの縄を揺らしてベルを鳴らします。そしたらまず二回オジギ。それが終わったら二回手を打って願い事。で、最後にオジギして終わりです」

「は、ハイ! エット……」

「ああもう、私の真似をすればそれでいいです! いきますよ」

 チャリン、チャリーン! 二人の投げた小銭が、賽銭箱に軽やかな音を立てて落ちていった。

【万札】:0。二人とも小銭を投入

 カランカランカラン。乾いたベルの音に聞き入りつつ、キールバックとチェインドッグは二回オジギし、二回拍手。そして手を合わせて目を閉じ、願い事を告げる。

(もっとお姉さまのお役に立てますように)

「き、キールバック=サンたちともっとナカヨシになれますように……」

 隣から聞こえてきた小さな声に、キールバックは思わず薄い横目でチェインドッグを見やる。目を閉じたまま、実に真剣な面持ちで彼女は手を合わせていた。

(……隣に本人がいるときにそういうこといいます? 普通……)

 キールバックは顔をしかめる。その顔がやや赤らんでいたのを指摘するのは野暮というものだろう。パン。キールバックは勢いよく手を打ち、慌てて真似をしたチェインドッグの手を引いて退場した。


「エット、エット……」

 シュライン敷地内の売場前にて。物珍しげに並べられている品を眺めているチェインドッグを見やり、キールバックは小さく欠伸した。いずれにせよ、懐の寒い彼女には関係のないことだ。

 オマモリ・タリスマン、神棚、破魔矢……いずれも凝った作りではあるものの、その分値が張る。(シュラインも経営が大変なんですかね)キールバックにとっては他人事である。

「お、お待たせしました」

「ああ、ハイハイ。なにか買ったんですか?」

「え、エット、その……ゴメンナサイ」

「ああ、買わなかったんですか。浪費癖がないようでなによりです。じゃ、帰りますか」

 頭を下げるチェインドッグに構うことなく、キールバックは出口を目指そうとし……ふと足を止めた。敷地の端に座る男。その前には台と「おみくじ」の看板。

「……気が変わりました。ちょっとアレ、見ていきましょう」

「あ、アッハイ」

 チェインドッグの手を引き、男の前へ。なぜか編笠を被ったその男は、笠の下から鋭い眼光を向けた。

「ドーモ。オミクジ、やっていきますか」

「そうですねえ……ん」

 キールバックは顔をしかめた。オミクジにしては高いのだ。チェインドッグは相場を知らないのか、オミクジ・ボックスを物珍しげに眺めている。

「……もしカネがないならタダでも構いません。その場合、大吉はでないかもしれませんが」

「ム……ナメないでください! ありますよカネくらい!」

 キールバックは代金を台の上に叩きつける! なけなしのカネではあるが、相手の同情めいた言葉が癪に触ったのだ。チェインドッグもおずおずと代金を台に載せる。彼女もやるらしい。

「マイドアリ。ドーゾ」

「ドーモ」「アイエッ、ど、ドーモ」

 二人はそれぞれ、自分の前に置かれたオミクジ・ボックスに手を入れ……中のクジを掴み取り、引いた!

キールバック
【万札】7 → 2
1d6 → 1 大吉!

チェインドッグ
【万札】21 → 16
1d6 → 2 吉!

「……ヤッタ……!」

 キールバックは小声で快哉を上げた。ゴウランガ! 彼女が引いたのは「大吉」である! だが彼女はそれ以上の喜びを顔に出すことなく、むしろ「これが当然」と言いたげに胸を張ってオミクジ男を見下ろした。彼女のバストは平坦である。

「あ、あの、キールバック=サン。これってどうなんでしょうか……?」

 おずおずとチェインドッグが袖を引いてくる。いくらかいい気分になっていたキールバックは彼女の引いたクジを見やり、目を丸くした。

「ああ、吉ですか? よかったですねチェインドッグ=サン。それは二番目にいい結果なんです」

「そ、そうなんですか!? ヤッタ……!」

「ま、私は大吉なので一番なんですけど。……じゃ、シツレイしますね」

「オタッシャデー」

 オミクジ男の平坦な声を背に、二人の少女は出口へと向かおうとした。彼女らのアトモスフィアは明らかにきた時より明るい。

 と、そのときだ。

アーン! アーン! パパー! ママー!」

 参道から響く泣き声に、二人は足を止めた。怯えたように身を寄せてくるチェインドッグもそのままに、キールバックは目を細める。道のど真ん中、大声をあげて泣いているのはまだ幼い男の子だ。

 どう見ても迷子。この人混みの中、はぐれた親を探すのも面倒だろう。放っておいても誰か親切な人間が声をかけるかもしれない。だが……

「……チェインドッグ=サン。しばらくここで待っててください。ちょっとあの子のところに行きます」

「エッ、ナンデ……」

「『困っている人を助けないのは腰抜け』……だったかな……とにかく、そういうコトワザがあるんです。どうせ人混みの中を歩くことになるので、そういうの貴女嫌でしょう? だから待ってて。いいですね」

 返事を待つことなく、キールバックは男の子の元へ駆けていく。屈み込んで彼に声をかける少女の姿をハラハラと眺めながら、チェインドッグは困ったように立ち竦んでいた。一人になるとどうしていいかわからない。

「モシモシ」

「キャンッ!?」

 急に背後から声をかけられ、チェインドッグは文字どおり飛び上がった。慌てて振り向くとそこには先ほどのオミクジ男。編笠の影のため、その表情は窺えない。

 彼は少し離れた場所に生える木を指差した。

「吉のオミクジは、枝に結ぶといいですよ。そうすると運気が向上します」

「そ、そうなんですか……? でも、エット……ここで待つようにって……」

「もし彼女が戻ってきたら、私のほうから説明します。今なら空いていますよ」

「あ、アッ……アッハイ……」

 妙な威圧感に思わず頷いてしまったチェインドッグは、小走りで木に近寄る。既に結びつけられているオミクジを参考に、自身の「吉」オミクジを枝に結びつけた。

 額の汗を拭い、元の場所に戻ろうとしたそのとき!

オゴー! オゴー!

「ブラインド=サン! しっかり!」

「アイエッ!?」

 すぐ隣から聞こえてきたただならぬ様子の男女の声に、チェインドッグは身を竦ませた。見ると、アイマスクをつけた女が自身の首を抑え、苦しげに震えているではないか。側では嘴めいたメンポをつけた男が女の背中をさすっている!

「アイエ……アイエエエ……!?」

 チェインドッグは意味もなくうろたえた。なにが起こっているのかはわからないが、大変なことになっていることだけは感じとれる。助けなければ。いや、自分になにができるというのか? いや、でも。

『困っている人を助けないのは腰抜け』

 不意に、キールバックの先ほどの言葉がニューロンに木霊した。チェインドッグの迷いが消える!

「い……イヤーッ!」

オゴー!?」

 チェインドッグは女の背中にカラテチョップを叩き込む! 目を丸くする嘴メンポの男! 衝撃でモチを吐き出す女!

「あ、アイエエエ……その、ゴメンナサ……」

「オゴゴ……アー……ドーモ、アリガト! 死ぬかと思った」

 やりすぎたかと心配になり、頭を下げかけたチェインドッグ。だがそれよりも先に、あっけらかんとした様子で女が礼を行った。目を丸くしていた男が安堵の息を吐く。

「何やってるんですか……ああ、ドーモスミマセン。ご心配をおかけしてしまったみたいで」

「アイエッ、その、あの」

「こちら、迷惑料です。受け取ってください」

 言葉とともに手渡されたのは、なにやら薄い封筒だ。「オンセン旅行券」とのショドー付きである。

「エッ……その……」

「それねー、年末クジで当てたの! いらないからあげる!」

「ブラインド=サン! 黙ってて! ……コホン! とにかく、そういうことで。遠慮なく受け取ってください。それでは」

「あの……エット……アッ」

 なにか声をかけるより早く、騒々しい男女はどこへともなく歩き去ってしまった。残されたオンセン旅行券を見下ろしつつ、チェインドッグはトボトボと約束の場所まで戻っていく。

チェインドッグ
【余暇】3日と『オンセン旅行券』獲得


 ……一方そのころ、キールバックは!

「パパー! ママー!」「ミツケ……! 心配したのよ!」

 迷子の男の子と、程なくして見つかったその両親の再会。キールバックはそれを欠伸を噛み殺しながら眺めていた。ニンジャであれば、比較的容易い仕事であった。

 感動の再会を見守っていても仕方ない。キールバックはそれとなく去ろうとし……ふと、父親のほうが歩み寄ってくることに気づいた。

「あの、アリガトゴザイマシタ! 見つからなかったらどうしようかと、心配になっていたところで」

「え? アー……そうですね……人も多いですし」

「これはほんの気持ちです。どうかお受け取りください」

「はあ、ドーモ……? ……!?」

 無造作に渡された茶封筒。その思いがけぬ重さに、キールバックは目を白黒させた。顔を上げるとあの一家が手を繋いで去っていくところだった。

 残されたキールバックは……思わず適当な建物の影に駆け込み、茶封筒の中身を確認!「……ブッダ」彼女は思わず天を仰いだ。どうやらあの一家、相当なカネモチだったらしい。

キールバック
【万札】2 → 27
【余暇】3日獲得


 ……数分後! チェインドッグと合流したキールバックは、その手を引いてそそくさとシュラインを後にしていた。

「さあさあ早く帰りますよチェインドッグ=サン! 妙な連中に目をつけられる前に!」

「あ、アイエエエ……あの、来た道と違うような……」

「当たり前じゃないですか。治安が比較的良くて人通りの少ないところを選んでるんです! それより周囲に目を配ること! そのオンセン旅行券を取られたくないでしょう!?」

「あ、アッハイ……!」

 チェインドッグは素直にキョロキョロと辺りを見渡し始める。その手を引きながら、キールバックは急ぎ足でアジトへと向かうのだった。


【ファースト・ウォーク・ウィズ・チェインドッグ】終わり



◇後書きな◇


 というわけで、無事ニンジャスレイヤーに遭遇することなく初詣を終えることができたのだった。よかったね二人とも。

最終的なステータスはこうだ。

ニンジャ名:キールバック
【カラテ】:3
【ニューロン】:5
【ワザマエ】:6
【ジツ】:1(カナシバリ)
【体力】:3
【精神力】:5
【脚力】:3
【DKK】:0
【万札】:27
【余暇】:3
装備:
・ウイルス入りフロッピー
▲バイオサイバネヘッド(軽度)
○信心深い
ニンジャ名:チェインドッグ
【カラテ】:2
【ニューロン】:3
【ワザマエ】:4
【ジツ】:2(キネシス)
【体力】:2
【精神力】:3
【脚力】:2
【万札】:16
【名声】:2
【余暇】:3
持ち物など:
・ウイルス入りフロッピー
・オンセン旅行券
・バイオサイバネ
○実家のカネ

 今度は忘れないうちに余暇を消費させておきたいと思う。よく考えればディスグレイスのやつもいい加減休ませたほうがよさそうだし。

 さて、ここまでお読みくださった皆様。そして、楽しいソロシナリオを提供してくださった海中劣=サン。ありがとうございました! 気が向いたらまたやるよ!

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