忍殺TRPGソロシナリオ【マイ・フェア・ニンジャ】

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はニンジャスレイヤーTRPG用のシナリオ……それも一人で楽しめるタイプのものとなっております。ダイスとメモできるものが有れば楽しめる。そうした類のものです。

 当シナリオは大まかに『ソウカイヤ所属者』向けのものとなっています。あくまで大まかな志向であり、必要であればオープニングを弄ってフリーランスやドラゴン・ドージョー所属のニンジャで挑戦していただいてかまいません。ただシナリオの都合上、挑戦者はニンジャに限ります

 ではやってみよう。ヨロシクオネガイシマス。




◇オープニング◇


「ウゥーム、どうしたものか……」「困りましたねぇ」

 トコロザワピラー、高層階にある休憩所。暇を持て余し、特に意味もなくだらけていたソウカイニンジャのお前は横合から聞こえてきた会話に気を惹かれた。

 それとなく様子を伺うと、くたびれたヤクザスーツ姿の男と改造ミコー装束の女がなにやら疲れた様子で顔を突き合わせている。その装束にあしらわれたクロスカタナのエンブレムからわかるとおり、彼らもまたお前と同じソウカイニンジャだ。

「いっそのこと、オーキッド=サンに頼むか……?」

「よしたがいいでしょう。下手をすると餌付けされて帰ってこなくなるかも」

「いや、さすがにそれは……ウーム……」

「流石にこう、何度も求められては閉口です。どこかに暇を持て余したニンジャでもいないでしょうか……」

 ミコー装束の女ニンジャが物憂げに呟く。お前のニンジャ第六感が警鐘を鳴らした。この場にいるとロクな目に遭わぬと。お前はそっと席を外そうと……

「イヤーッ!」「グワーッ!?」

 ナムサン! そのときだ、お前の胴体に謎めいたバイオ触手が巻きついたのは! なにが起こったのかを判断するより早く、お前は二人のニンジャの元へと巻き取られる!

 その様子を眺めていた、ヤクザスーツの男が皮肉げに笑った。

「ドーモ、ドーモ。スカウト部門のアベレージです。ついでに紹介するとバイオ触手でお前を捕まえたのはディスグレイス=サン

「ウフフ! ドーモ」

 右袖から複数のバイオ触手を伸ばしたミコー装束ニンジャがニヤリと笑みを浮かべる。アベレージは淡々と続けた。

「お前、暇そうだな。実に暇そうだ……そんなお前にいい仕事がある! カネが欲しくないか? カチグミの御息女とお近づきになりたくは? なりたいだろう? なら是非この仕事を引き受けてもらう! 説明はディスグレイス=サンが担当してくれる」

「……わたくしが?」

 ナムアミダブツ、おおナムアミダブツ。お前はすぐに理解した。なにか面倒な仕事を押しつけられたのだと……!

◇◆◇◆◇

カエン工業、知ってます?」

 有無を言わさず載せられたヤクザカマロの中、同乗したディスグレイスが気のない様子で尋ねてくる。

「ええ、ソウカイヤともネンゴロな銃器メーカーです。ついでに言うと、今の我々の目的地」

重金属酸性雨がルーフを叩く音が虚しく響く。運転クローンヤクザは無言。幼子に物語を聞かせるような調子で、ディスグレイスは続けた。

「では、一ヶ月ほど前に起こった事故はどうでしょう? カエン工業社長の娘、ホムラギ・カエンを乗せた車がトーフ工場のユバ・タンクに衝突した、あの悲惨な事故。工場のみならず、付近のマケグミ住宅街まで巻き込んだ火災。痛ましいことです」

端正な顔が不意に歪む。

「ホムラギ・カエンは死んだ……表向きにはそう伝えられています。しかし実際は違う。彼女は生還しました。ニンジャとなってね。ええ、アベレージ=サンの言ってた御息女とは彼女のことです」

「そしてなお悪いことに、そのソウルは強大なものでした。事故に見せかけて自分を暗殺しようとした刺客を焼き殺すばかりか、大規模な放火までしてみせたんですからね。ええ、揉み消しが大変でしたとも」

「悪いことというのは続くもので、彼女はひどくうまく立ち回っています……なにしろバックにはカエン工業。キリステは可能ですが、そこから生まれる経済的損失は無視できません。無碍に扱えないというわけです。で、これが最悪なことなんですけど」

 不意にディスグレイスが沈痛な溜息を挟む。そのバストは豊満である。

「……彼女、カラテ・トレーニングに熱をあげてるみたいで。結構な頻度でソウカイヤにニンジャのデリバリーを依頼してくるんですよ。ええ、もうおわかりですよね。今回はあなたの番です

「心配しないでも死にはしません。その点は相手もわきまえてます。ただまあ……行くまでに少々、テストめいたことをやらされますので。そこであまりブザマをさらしたらどうなるかわかりませんけど」

「いくら見目麗しくても、何度も呼びつけられてはね……それに相手の立場上、手を出すわけにもいきませんし。据え膳って嫌いです。ハァ……」

 憂鬱そうな呟きを最後に、ディスグレイスは口を閉ざす。いずれにせよ、お前はその御息女を満足させるためにニンジャとしての実力を見せねばならないということらしい。呆れか、それともなんらかの野心か。お前はじっと目的地への到着を待つ……



◇本編◇


■ドーモ。モーター・リッポータイです。あなたのミッションをサポートしますよ。ロクメンタイ? 同型機のモーター違いでしょう■
■さて、あなたが連れてこられたのはネオサイタマ郊外のアツサ・ディストリクト。カエン工業のコンビナート地帯付近です。要はカエン工業のお膝元というわけですね。ひとまずここで立ち尽くしていても仕方ありませんし、ディスグレイス=サンから連携されたポイントへと向かいましょう(なお、彼女はさっさとトコロザワピラーへ戻っています)■
■……指定された先は寂れた倉庫のようです。そしてその入り口に立つのは「ザッケンナコラーッ!」クローンヤクザですね。こちらの姿を認めるや否や、ショットガンの銃口を向けてきました! アブナイ! 撃たれる前にスリケンで倒しましょう! 【ワザマエ】と同値のダイスを振ってください出目が4以上のダイスが一つでもあれば成功です!■
■必要であれば、【精神力】を1消費して判定を自動成功させることもできます。これは今後の判定でも適用可能です。が、【精神力】が0のとき出目6を要求される判定では適用できないので注意してくださいね■
(成功した場合)
■「イヤーッ!」「アバーッ!?」オミゴト! あなたの投擲したスリケンはクローンヤクザの額に突き刺さりました。当然即死! 見ればそのスーツには火を象った社章が施されています。カエン工業のものですね。どうやらディスグレイス=サンの言っていた『テスト』はもう始まっているようです。ヤクザの懐から【万札】1を抜き取り、倉庫に入りましょう■
(失敗した場合)
■手が滑ったのか、あるいはもともと不得意だったのか……あなたのスリケンはクローンヤクザの横を虚しく通り過ぎました。「スッゾコラーッ!」BRAKKA! お返しの散弾が容赦なくあなたに襲いかかります! 【回避】判定をしてください!【カラテ】【ニューロン】【ワザマエ】のうちもっとも高い値と同数のダイスを振り、出目4以上のダイスが一つでもあれば成功! 失敗した場合、【体力】が2減少してしまいます! ここで【体力】が0以下になると爆発四散(キャラロスト)です!
■回避に成功、あるいは散弾を耐え切ったあなたは反撃のカラテでクローンヤクザを仕留めることに成功しました。スーツに施された火を象った社章から見て、ホムラギ・カエンが差し向けたテスト用の刺客でしょう。これ以上時間を無駄にはできません。先を急ぎましょう(【万札】獲得なし)■


◇◆◇◆◇


■倉庫に侵入したあなたは油断なくカラテ警戒します。少なくともクローンヤクザのおかわりがある……というわけではなさそうです。ですが人の気配もありません。さて、どうしたものでしょう?■
■……おや? 見てください。中央にコンテナが置いてあります。他に荷物もなさそうなのに、ひどく不自然です。ひょっとしたらあの下になにかあるのかもしれません。ニンジャのカラテがあれば造作もなくどかせますよね! 【カラテ】判定をしてください。目標出目は4以上です■
(成功した場合)
■「イヤーッ!」ズズズズズ……あなたのニンジャ膂力により、コンテナは少しずつ移動していきます。そして……ALAS! 現れたのは地下へと続く階段です。どうやらこの先に進まなければならないようですね。気をつけて進みましょう■
(失敗した場合)
■「イヤーッ! イヤーッ! ……イヤーッ!」あなたが力を込めても、コンテナは動く様子もありません。【体力】2以上のときのみ【体力】が1減少します。これはもう帰るしかない……あなたが肩を落としかけたそのときです。ゴウン……なんとコンテナがひとりでに動き出しました! そして現れたのは地下へと続く階段です。なにかバカにされたような気分になりつつも、あなたは先に進むことにしました■


◇◆◇◆◇


■ひたすらに下へと続く階段を、あなたは淡々と降りていきます。クローンヤクザもなし、トラップもなし。延々と続く単調な風景にニューロンが参りかけたそのとき、ようやく出口が見えました。■
■ですが……アブナイ! あなたは危うくたたらを踏みます。出口のすぐ先に広がるのは暗い穴。見れば、やや離れた位置に飛び石めいた足場があり、そこから穴を挟んでさらに地下へと向かう道があるようです。ニンジャであれば飛び越えてみせろ、ということでしょうか
■ですが、それだけではなさそうです。横手を見るとそこにはUNIXが設置されています。ハッキングをすれば、なんらかの打開策を見つけることができるかもしれません
■さて、どうしますか?■
1. 穴を飛び越える(【ワザマエ】判定、目標出目5
2.UNIXをハッキングする(【ニューロン】判定、目標出目4
(1を選択した場合)
判定に成功した場合「イヤーッ!」あなたは見事穴を飛び越え、飛び石めいた足場に到達! そこに設置されていた【万札】2をありがたく頂戴してから「イヤーッ!」対岸の出口に着地しました。ワザマエ!
失敗してしまった場合、あなたは途中で足を滑らせ穴に真っ逆さま! ですが【回避】判定(目標出目4以上)に成功すればウケミを取ることができ【体力】1減少ですみます。これにも失敗した場合【体力】2減少です。いずれにせよ、生き残っていれば先に進むことができますよ。
(2を選択した場合)
■判定に成功した場合
……パワリオワー! 電子ファンファーレとともに、あなたの足元から鉄の板が飛び出します。鉄の板はアーチを描くように(つまり、飛び石めいた足場をまたぐようにして)対岸の出口へと到達。簡易な橋を作り出しました。やりましたね! さあ、安全に先へ進みましょう!
失敗してしまった場合、UNIXに仕掛けられていたトラップが発動! あなたの肩に毒矢が突き刺さり【体力】と【精神力】が1減少します。【体力】が0以下になった場合はもちろん、【精神力】がマイナスになっても爆発四散するので気をつけて下さい。
ハッキングに失敗した場合、あなたは選択肢1にチャレンジすることもできます諦めて帰ることもできます(帰る場合はそのままエンディングへ向かってください)


◆◇◆◇◆


■さらに地下へと降りた先……あなたが穴に落ちていた場合は、落ちた先のすぐ目の前……にあったのは鉄製の扉です。その奥から漏れるニンジャ存在感と熱気に、あなたはごくりと唾を……飲んだかもしれません。いずれにせよ、ここまで来て帰るという選択肢はありませんね。ご対面といきましょう■
■意を決し、扉を開いた先であなたを待ち構えていたのは燃えるような髪の……いいえ、炎そのものとなった髪を揺らす女ニンジャでした。爛々と輝く瞳であなたを見つめたそのニンジャは、炎に彩られたドレスめいたニンジャ装束の裾をつまみ、優雅なアイサツを繰り出します■
■「ドーモ、ゴキゲンヨ。私、ウェスタリスと申します。……今日はアベレージ様でも、ディスグレイスお姉さまでもありませんのね」やや残念そうに顔を曇らせた彼女は、すぐに笑顔を取り戻します。「ですが、ここまでたどり着いたニンジャの方ですもの。きっと楽しませてくれますわ。そうでしょう?」■
■彼女の両手が神秘的なサインを描いた次の瞬間。その手に炎が凝縮し、ボーめいたカトン・ウェポンを形成しました! 「では、参ります! イヤーッ!」振るわれると同時、それはムチめいて伸長! 薙ぐような一撃を見舞ってきます! 【回避】判定を行ってください。目標出目は5以上! 失敗すると【体力】2減少です! なお、この場では【体力】の減少は0が限度であり、【体力】0になっても爆発四散することはありません。が、【体力】が0になった時点でこの『手合わせ』は終了します(エンディングへ)■
■回避に成功、あるいは【体力】が1以上残っているあなたは反撃です。【カラテ】、【ワザマエ】、カトンなどの攻撃的ジツを持っている場合は【精神力】を1消費し【ニューロン】+【ジツ】。いずれかで判定を行ってください。どの判定でも目標出目は6となります。
ヘンゲヨーカイのように自分の能力を向上させるジツを使いたい場合、攻撃の前に【精神力】1を消費して【ニューロン】+【ジツ】で判定を行うことができますよ(こちらは目標出目4以上です)■
反撃に成功した場合「グワーッ!」あなたはウェスタリス=サンを弾き飛ばすことに成功します! その手からカトンウェポンが離れ、幻めいて消えていきました。「ムゥーッ……結構なオテマエで」やや驚いた様子でウェスタリスがオジギします。今ので手合わせは終了、ということのようです。「まだまだ私も未熟ということですわね……アリガトゴザイマス」どうやら満足していただけたようですよ。やりましたね!(エンディングへ)■
反撃に失敗した場合、ウェスタリス=サンは再度カトン・ウェポンで反撃を仕掛けてきます。初撃と同様、【回避】判定(目標出目5以上)を行ってください(失敗すれば【体力】2減少です)。その次はまたあなたの攻撃判定(目標出目6)となります。
これを「あなたの【体力】が0になる」「ウェスタリスに攻撃を当てる」「回避成功・攻撃失敗を2ループする」のいずれかを達成するまで続けてください■
■ウェスタリス=サンとの手合わせが完了したら、今回のミッションは終了です。オツカレサマデシタ! エンディングへ向かってくださいね■



◇エンディング◇


■今回のミッションの報酬は、まずウェスタリス=サンとの手合わせの結果によって以下のように変わってきます。■
■手合わせ結果■
A: ウェスタリスに一撃当てる:【万札】15、【余暇】4
「よければうちのニンジャにならない? 私の方からお父様にかけあってもよくってよ」
B: 手合わせを3ターン継続する:【万札】10、【余暇】3
「もう! すばしっこいったら! ……次も来てくださる? 今度は完膚無きまでに叩き伏せますから」
C: 【体力】が1になる:【万札】6、【余暇】2
「フフン! 私もワザマエを上げているということね! 貴方はもう少し鍛えなおしていらっしゃいな」
■……そして、道中の判定の成功数も報酬に加算されます。カウントされる判定は「クローンヤクザへのスリケン投擲」「コンテナ移動」「飛び石チャレンジ or ハッキングチャレンジ」です■
■成功数ボーナス■
A 3つ全て成功:【万札】7
B 2つ成功:【万札】4
C 1つ成功:【万札】1
D 全て失敗: シゴキ・タイム
E 途中で帰った: シゴキ・タイム×2
■……ん? シゴキ・タイムが気になりますか? そう大したものではありません。あまりにもあなたがブザマを晒した場合、ウェスタリス=サンが怒ってスカウト部門にクレームを入れます。結果、顧客先を怒らせたあなたにアベレージ=サンとディスグレイス=サンが焼きを入れ……もとい、熱心なカラテ指導をしてくれるというだけの話です■
シゴキ・タイム1回につき、あなたは【カラテ】【ニューロン】【ワザマエ】の好きな値を1上げることができます。これで成長の壁を越えることはできません。ただし、シゴキ・タイムを過ごしたあなたは過剰な負担により次回ミッション開始時の【体力】と【精神力】が1減少します。シゴキ・タイムが2回ある場合、ボーナスポイント2を割り振り【体力】と【精神力】が2減少です。これによって【体力】が0になったり【精神力】がマイナスになることはないのでごあんしんください(その場合、次回ミッションは【体力】1や【精神力】0で開始となります)■
■また、もしあなたが手合わせ結果Aを取得していた場合、ウェスタリス=サンの誘いに乗って『カエン工業』に所属することができます(ソウカイニンジャのまま、普段はカエン工業で働くことも可能ですよ!)。その場合、【名声:カエン工業】を5得てください。詳細は下記の非公式プラグインを参照してください■




 思わぬ臨時収入、思わぬ出会い、思わぬカラテ……様々なものを得たお前は、気をとりなおすようにトコロザワピラーを後にした。ここからトレーニングに励むのも、スシを食べるのも、オンセンに行くのも自由。少なくともバイオ触手に囚われたり、炎のムチに晒されるようなことはない。お前はつかの間の自由を楽しむのだった【終】



◇あとがき◇

 ……いかがだっただろうか。ウェスタリスは強大なアーチ級ニンジャソウルの憑依者であり、ひょっとしたら今後もなにかの拍子に顔を出すかもしれない。なお、現時点での彼女の能力はこんなだ。

ニンジャ名:ウェスタリス
【カラテ】:1(+1)
【ニューロン】:2
【ワザマエ】:6
【ジツ】:2(カトン)
【体力】:2(+1)
【精神力】:2
【脚力】:3
持ち物など:
◯未覚醒のアーチ級ニンジャソウル憑依者
ニンジャソウルの闇:ソウルの悲鳴
★カトン・ウェポン生成
★★★不滅
・パーソナルメンポ
・タクティカルニンジャスーツ
​・護身用デリンジャー「サンショウ」
 『特殊近接武器』、『ダメージ1』
 『戦闘スタイル:精密攻撃/セイケンヅキ射撃を選択可能』

 非公式プラグイン的な感じで、彼女とカラテ・トレーニングするような余暇の使い方を出したいなあ……などと思っている。

 いずれにせよ、ここまで読んでくださった皆様、アリガトゴザイマシタ! 遊んでくださった方は感想やアドバイスなどいただければしかなはもっと喜びます。気が向いたらまたやるよ!

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