忍殺TRPGソロシナリオ【キャッチ・ザ・フライング・カリブー】

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はニンジャスレイヤーTRPGを遊んでいる方々にちょっとした楽しみを届けるためのシナリオ……しかも1人でも遊べるタイプのやつです。ダイスとメモするものがあればすぐできる。やったね。

 当シナリオは……まあオープニングは【ソウカイヤ】所属者に向けて書いています。が、【ドラゴン・ドージョー】でも【フリーランス】でも、なんなら【ザイバツ】や【アマクダリ】でもいい気がする。些細な感じの左寄りシナリオになるはずだからだ。

 まあとにかくやってみよう。ヨロシクオネガイシマス。



◇オープニングな◇


 ある冬の寒い日。ネオサイタマは白く染まりつつあった。重金属酸性雨は重金属酸性雪へと変わり、ストリートにはきらびやかなネオン・イルミネーションやにぎやかな商業的クリスマス・ミュージック、そしてなんかいい感じの男女が溢れる。だがソウカイニンジャであるお前にとってはそのどれもが遠い出来事にすぎない。お前は少し悲しくなった。

 閑話休題。暇を持て余してトコロザワピラーを訪れたお前は、スカウト部門オフィス前の掲示板に貼られた雑多な張り紙を眺めていた。その中に一つ、意味深な一文あり。

『つきあってくれる人募集』

 これはひょっとするとひょっとするのではないか? そう考えたお前はほとんど反射的に併記されていた集合場所、トナカイ・ストリートへと向かっていた。果たしてその入り口に待っていたのは……小柄な少女! 

 雪の中でも映える桃色の髪に、ぶかぶかのミリタリーコートが特徴的だ。こちらを見る顔はやや無愛想だが、かわいらしい。彼女はじっとこちらを見つめ……唐突にオジギした。

「ドーモ。オーキッドです。……本当に来る人がいると思わなかった。じゃ、行こうか」

 そう言って彼女は踵を返す。いったいどこ? お前が投げかけた声に、彼女は無表情に振り向き、行った。

狩り

 ……どうやらややこしいことに首を突っ込んでしまったらしい。諦めて彼女に協力したまえ。



◇本編な◇


改めてオーキッドにアイサツしたお前は、口数の少ない彼女からどうにかして狩りの標的を聞き出すことに成功した。どうやらバイオトナカイらしい。「ただのトナカイじゃない。空を飛ぶやつ」……そういうことらしい。わけがわからない。
「このあたりに目撃情報がある」オーキッドは淡々と言った。トナカイ・ストリートは人通りも多く、そうした流言も罷り通るのかもしれない。現に今も、なんかいいアトモスフィアを香水めいて振りまくカップルがそこかしこにいる。……なにも知らない者にとって、自分たちはどう見えるのだろうか。ふと気になったそのときだ。
「ウェーイ!」「キミ、カワイイネ! なにしてんの?」「そんなやつほっといて、オレらと遊ばない?」ナムサン! 唐突に絡んできたのはアルコールに浮かれたと思しき無軌道大学生たちだ! 見た目からして判断力が鈍っていると考えて間違いない。不愉快なのでカラテをお見舞いしてやろう。

【カラテ】判定(プレイヤーニンジャの【カラテ】値と同数のダイスを振って判定を行うことを指す)せよ。出目が3以上のダイスが一つでもあれば成功だ。

 【カラテ】に自信がなければ【精神力】を1消費して自動成功させることもできる。これは今後の判定でも使用できる……が、『【精神力】が0のとき』および『目標出目に6を要求されたとき』は使えない。注意せよ。

(成功した場合)
「イヤーッ!」「グワーッ!?」お前は馴れ馴れしくオーキッドの肩に手を置こうとしていた無軌道大学生に、(それなりに加減した)カラテを見舞った。「アイエエエエ!?」「スミマセン、スミマセン!」突然の暴力に怯えたのか、仲間の無軌道大学生たちがドゲザせんばかりの勢いで頭をさげる! そして差し出したのは【万札】1だ。ちょっとした授業料と思って受け取るとよい。
(失敗した場合)
お前がカラテを放とうとしたそのとき!「イヤーッ!」「アバーッ!?」オーキッドの肩に手を置こうとしていた無軌道大学生が飛び上がり、雪の中で悶絶! ナムアミダブツ……オーキッドがその無防備股間を蹴り上げたのだ。ここまでされる謂れはない! 「失せろ」「「ハイ! ゴメンナサイ!」」他の無軌道大学生たちが失禁しつつ仲間を回収し退散! お前はそれを哀れなものを見る目で見送った。(【万札】の獲得はありません)


◇◆◇◆◇


数十分後。お前はオーキッドを追いかける形でトナカイ・ストリートの路地裏を回っていた。暗く、人けがない。メイン・ストリートとはまるで違う。
「協力者がいるのは、いい。獲物を見つけるのが楽になる」オーキッドがぼそりと呟く。「あの張り紙、よかった。最初は半信半疑だったけど」となると、あれは誰かの入れ知恵なのだろうか? お前はそれとなく聞いてみた。「うん。シャープキラーってやつ。ああいう風に書けば、引っかかるやつが出るって」聞かない方がよかった。
お前がげんなりしたそのときだ! 「アイエエエエ! そこどけッコラー!」叫びとともにかけてくるのはヤクザめいた身なりの男! 後生大事そうに小さなカバンを抱えている! 「コラー! 逃げるんじゃないよ!」そしてそれを追ってきたのは女だ。赤く染めたフワフワとした髪が嫌でも目立つ。
「そこのあんた! そのクズを足止めして!」女の頼みに、お前は反射的にスリケンを構えた!

【ワザマエ】判定の時間だ。目標出目は4以上。

(成功した場合)
「イヤーッ!」「アイエッ!?」お前の投擲したスリケンは見事逃走ヤクザの足元に突き刺さる! つんのめったヤクザの背に「イヤーッ!」「グワーッ!?」女の飛び蹴りが突き刺さった! たまらずヤクザ気絶! 「フゥーッ……手間とらせてくれちゃってさ! あ、ご同業だよね? ドーモ! アタシはスイートハート! お礼にこれ、受け取っておくれ」
言って渡してきたのは、どうやらむき出しの飴玉だ。いったいどこから出してきたのだろう……? 「まったく、もうこんな時間じゃないか……アタシはこれでシツレイするよ。うちの若い子のためにクリスマスパーティーがあってさ。急がないと食いっぱぐれちまう。ジャアネ!」軽々とヤクザを持ち上げたスイートハートは、騒々しく去っていった。お前たちもトナカイ探しに戻るべきだ。(『アメダマ』を入手。使用すると【体力】と【精神力】が1ずつ回復する)
(失敗した場合)
お前はスリケンを投擲しようと……BRAKKA!「アイエッ!?」逃走ヤクザがひるむ! 隣で響いた銃声に驚いたお前は、すぐに何が起こったかを理解した。オーキッドがどこからか取り出したショットガンで威嚇射撃を行ったのだ! 「イヤーッ!」「グワーッ!?」その間に女が逃走ヤクザの背に飛び蹴り! 確保! 「まったく、カネ借りといて逃げるその根性がわからないね……と。アンタ、ご同業だね? ドーモ! アタシはスイートハート! お礼に、ほら」
言って女がオーキッドへ差し出したのは、むき出しの飴玉だ。「……アリガト」受け取った少女はそれをポケットにしまうと、両手でスイートハートの手を包み、不思議そうにクンクンとその掌を嗅ぐ。「アッハハ! なに、もっと欲しいのかい?」スイートハートが笑い、手を閉じ、開く。今度はスリケンめいた形状のアメ。「おお」オーキッドが受け取る。スイートハートが手を閉じ、開く。今度はクナイめいた形状のアメ! 「おおお!」オーキッドのテンションがあがる!
……結局、スイートハートを彼女から引き剥がすのに時間を取られてしまった。微妙な倦怠感を覚えつつ、お前は元々の目的に立ち戻ることにする。(【精神力】が1以上のとき、【精神力】1減少


◆◇◆◇◆


時、すでにウシミツ・アワー。当然のことながらトナカイの姿はおろか影すら見えない。いつまでこの少女に付き合えばいいのだろうか……? いい加減に切り上げの提案をしようとした、そのとき。

【ニューロン】判定せよ。目標出目は6。つまり、【精神力】消費による自動成功は使えない!

ウルルルルオーン!」突如闇に響いた方向! そして頭上から降ってくる巨大な質量! 雪をはね散らかして着地したのは……なんたることか! 巨大なトナカイに相違なし! (【ニューロン】判定に失敗した場合、トナカイを避けきれず【体力】1を失う。【体力】0になったらゲーム終了だ。エンディングに向かいたまえ)
オーキッドが目を細める。彼女はお前を一瞥した。一瞬だけ向けられた視線。そこに込められた言葉をお前は否応なく理解する……狩る。
オーキッドが大きく腕を振るうと、袖から滑り出てきたのはテック内蔵のヒートナイフ。お前もカラテを構え、この謎めいたトナカイに挑みたまえ!

というわけで、ここから簡易な戦闘となる。トナカイのデータはおおよそこんな感じだ。

エネミー名:謎のトナカイ
【体力】:8
【精神力】:2
スキルなど:
『●連続攻撃2』
『●突撃』
 このスキルを使った直後の近接攻撃はダメージが+1される
『巨大なツノ』
 ダメージ1、回避難易度HARD

 この戦闘はお前→オーキッド→謎のトナカイの順で行われる。

 お前は自分の手番で攻撃を行う。【カラテ】、【ワザマエ】、カトンのような攻撃的ジツを持っているならば【精神力】を1消費した上で【ニューロン】+【ジツ】のいずれかで攻撃せよ。成功すれば謎のトナカイにダメージを与えることができる。

 もしお前がヘンゲヨーカイのように自分の力を底上げするジツを持っている場合、攻撃前に発動を宣言することができる。

 また【カラテ】判定で出目6のダイスが2つ以上あった場合『サツバツ!』が発生する。この場においては単純にダメージが+2され、かつ残虐ボーナスとして【万札】2を得ることができる(どこから入手しているかは気にするな)

 オーキッドは自分の手番で果敢にヒートナイフで切り掛かり、トナカイの【体力】を2削っていく。

 そして謎のトナカイであるが、その行動原理はやや複雑だ。まずお前が直前に【カラテ】を挑んでいた場合、ツノを振り回して攻撃を仕掛けてくる。これはお前とオーキッドに一回ずつ攻撃している状態のため、お前は1回だけ【回避】判定(【カラテ】【ニューロン】【ワザマエ】のうちもっとも高いステータスと同数のダイスをふって判定)すればよい

 お前が事前にスリケン(【ワザマエ】判定だ)やジツを使って攻撃していた場合、謎のトナカイは自分の【体力】によって行動を変えてくる。

 【体力】が5以上のとき、トナカイはまずオーキッドを危険存在とみなし攻撃を集中させる(オーキッドは問題なく回避している)。つまり、お前に攻撃はしてこない

 だが【体力】が4以下になった場合は要注意だ。トナカイは遠距離から攻撃してくるお前を脅威とみなし、『突撃』して『連続攻撃』をしかけてくる。つまりこの場合、お前は『回避ダイス』を分割し、2回の【回避】判定を行わなければならない。しかも突撃後のため、失敗した場合に受けるダメージは2。最悪の場合、4ダメージを受けることとなる。

 いずれにせよ、トナカイの【体力】が0になるお前の【体力】が0になる(今回の戦闘は特殊であり、どんなに大ダメージを受けても【体力】は0で止まる)まで戦闘を続けること。お前の【体力】が0になったらそのままエンディングへと向かうように。


◇◆◇◆◇


「ロオオオー……!」いくら巨大で力強くあっても、お前とオーキッドという2人のニンジャ相手にはかなわなかったらしい。空から降ってきた謎のトナカイは崩れ落ち、力なく横たわる。オーキッドが無造作にショットガンを構えた。カイシャクか。
だが、そのときだ。『しばし待て、人の子らよ』崩れ落ちたトナカイの前に音もなく降り立ったのは……ナムサン! 新たなトナカイ! 最初のものよりもさらに巨大であり……その瞳には確かな知性がある。『弟子の粗暴を詫びよう。彼はまだ成り立てでな。気性が荒いのだ』
お前はおもわずぽかんと口を開けた。オーキッドすら反射的に銃口を下ろしている。『イヤーッ!』不意に知性トナカイの鼻が赤く輝く! 瞬間的にお前は目を閉じ、そして開く。するとお前の手元には包み紙とリボンで丁寧にラッピングされたなんらかの箱があった。
『詫びの品だ。我が親友がいれば、もっと豪勢なものを渡せたのだが……許せ』そして再度の赤い閃光! 瞬間的に閉じていた目を開いたそのときには、もはや二頭のトナカイの姿はない。『そしてサラバ! 我が親友の目にかなうよう、善行を積むのだぞ人の子らよ!』その声ははるか上から聞こえた。軽やかな鈴の音とともに。
「………………キル失敗」オーキッドが憮然とした様子で呟く。その手にはお前と同じく、丁寧にラッピングされた箱。「けど臨時収入。よしとする」自分の中で適当に結論付けたのだろう。彼女はどこへともなく武器をしまい始めた。どうやら、狩りはこれで終わりということらしい(エンディングへ)



◇エンディングな◇

 さて、お前はこれがオーキッドの『依頼』だったことを意識しているだろうか? つまり、ある程度の報酬はある。こうだ。

トナカイをハント? した
【万札】6、【余暇】2
トナカイに倒された
【万札】3(医療費)、【余暇】1

そしてトナカイをハントした場合、お前はそれとは別にラッピングされた箱……プレゼントを受け取っているはずだ。これを手に入れた場合、ブラックマーケットで販売されているアイテムの中から【万札】20までのアイテムを一つ獲得することができる。欲しいアイテムがなかったら【万札】15を獲得だ。

 トコロザワ・ピラー。思わぬ収入を得たお前は、これをどう使おうか考える。オーキッドが別れ際に呟いていた「次こそは狩る……」という言葉を頭の片隅に思いやりながら。(終わり)



◇後書きな◇

 たまにはこういう季節モノもいいよね!

 ここまで読んでくださった皆様、そして遊んでくださった皆様。ありがとうございました! 気が向いたらまたやるよ!




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