忍殺TRPGソロリプレイ【ウェン・ユー・カースド・サムワン……】その3

◇簡単な前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はしかながニンジャスレイヤーTRPGのソロシナリオを遊んだ結果をテキストカラテナイズしたリプレイ記事となります。要は読み物だ。

 そして続き物でもある! 前回のはこれです。

 ではやってみよう。よろしくおねがいします。



◇これまでのあらすじ◇


 (あるソウカイニンジャがノロイに冒された。同じソウカイニンジャであるディスグレイスは、妹分のキールバック、謎めいたフリーランスニンジャのヘヴィドランカーと共にキョートへ乗り込み、ノロイの術者を叩き潰すこととなった)

 (敵の本拠と思しき朽ち果てたジンジャ・カテドラルにて、彼女たちはアンダーガイオンから拐われた非ニンジャの女イノリと出会う。彼女から情報を聞き出したそのとき、ザイバツニンジャのモスキートがアンブッシュをかけてきたのだった!)



◇VSモスキート◇

◆モスキート (種別:ニンジャ)	
カラテ     7		体力	7
ニューロン   5	        精神力	5
ワザマエ    7		脚力	4
ジツ      (3)		万札	10
◇装備や特記事項	
 装備:なし
 スキル:『●連続攻撃2』、『●連射2』、『猛毒の血液』、『吸血汚染攻撃』

『吸血汚染攻撃』
 モスキートは両手首から生えた中空状のニードルを敵に突き刺して血液を吸い上げると同時に、
 背中のタンクに詰まった自らの汚染血液を相手に注ぎ込み、相互の血液を循環させ毒に冒す。
 これを表すため、出目6を1個以上含んで成功した『近接攻撃』のダメージは、毒により+1される。
 例えばモスキートが『連続攻撃』で振ったダイスの出目が【6、4、4、3】と【5、4、3】だった場合、
 1発目のダメージが1+1で2、2発目のダメージが通常どおり1となる。
 加えて、この毒ダメージを受けるたびに、敵は戦闘終了まで【脚力】が−1される(蓄積する)。
 また『近接攻撃』によって「モータル」もしくは「ニンジャ」を殺害するたびに、
 モスキート=サンは直ちに【体力】を1回復する(上限は超えない)。

『猛毒の血液』
 モスキートの体液はウィルス汚染されており、返り血を浴びた敵を衰弱させる。
 これを表すため、モスキートに対して隣接状態で1ダメージ以上与えた敵(攻撃方法問わず)は、
 その手番の終わりに、毒による1ダメージと『回避ダイスダメージ1』を受ける(どちらも回避不能)。
 これは命中した1発の攻撃につき最大で1ずつ発生し、カウンターカラテ時にも発生する。
 例えば三連続攻撃を3回とも命中させ、モスキートに3ダメージを与えた敵は、
 毒による3ダメージと『回避ダイスダメージ3』を受ける。
 一方、大型武器で切りつけ、1回の攻撃でモスキートに3ダメージを与えた敵は、
 毒による1ダメージと『回避ダイスダメージ1』を受けるだけだ。
行動順は以下の通り。()内は【ニューロン】値が同値のため判定に使用した1d6の出目
ヘヴィドランカー→ディスグレイス→モスキート(6)→キールバック(5)

 「イヤーッ!」真っ先に動いたはヘヴィドランカー! その手がひらめくと同時、鋼鉄の星が飛ぶ!「イヤーッ!」モスキートはこれを難なく側転回避!

「フィーヒヒヒ! ミソスープめいたスリケン! 当たらぬよ!」

 「イヤーッ!」「フィヒッ!?」嘲るモスキートに妖光が迫る。ディスグレイスのカナシバリ・ジツだ! 彼は眼前にクロス腕を掲げこれをガード。そこへ踏み込んだディスグレイスが「イヤーッ!」右袖からバイオ触手を射出!「ゴボーッ!」吹き飛ばされるモスキート! あまりの威力に吐血!

 その血がバイオ触手にふりかかる。追撃しようとしたディスグレイスはしかし、血を浴びた部分から襲う虚脱感に眉を潜めてたたらを踏む。毒! このザイバツニンジャの血液はなんらかのウイルスに汚染されているのだ!

「ゴボーッ……なんたる荒々しいカラテ! 流石だ! もっと間近で見せてくれたまえ……息が吹きかかるほどの近さで! フィーヒヒヒ!」

「お姉さま!」

 異常を察したキールバックが叫ぶ。モスキートが目を細め、舐めるような眼差しで少女の全身を眺めた。

「しかし俺はソウカイヤを甘く見ていたかもしれんな! フィヒッ、密かに荒野に咲く花園めいて! 目移りしてしまう!」

 クネクネと立ち上がりながらモスキートが視線を走らせる。「ミコー!」ディスグレイスへ!「女子中学生!」キールバックへ!「女……ンン、おかしいな? なにやら風味が異なるように思えるが……」最後にヘヴィドランカーを一瞥して首を傾げる。

 対するディスグレイスらはカラテ警戒。相手がなんらかのドク・ジツの使い手とわかった以上、擦り傷を負うことさえ危うい。その血を浴びればカロウシだ。なんたるキョートを体現するかのような嫌らしい戦法を扱うザイバツニンジャか!

「アアーッ! あちらを狙えばこちらが逃げてしまう! なんたる贅沢なアンビバレンツイヤーッ!」

 身悶えしていたモスキートが唐突に跳躍! その狙いはキールバックだ。不意を打たれたディスグレイスらが反応するより早く、痩身のニンジャは少女のワン・インチ距離!

 ……さて、彼がアイサツにて告げた身分に偽りはない。モスキートは油断ならぬアデプト位階。そのカラテはよく練られたものであり、平常であれば間違いなくキールバックと汚染血液を直結相互循環していただろう。

 平常であれば? 然り、平常であればだ。今のモスキートは冷静さを欠いていた。それは眼前の女子中学生に対する油断のためではない。絶対数の少ないはずの女ニンジャに囲まれるというこの希少な状況が、彼のニューロンを必要以上に昂らせていたのである。

 故に彼のカラテは持ち味である精細さを失い、空を切った。対してキールバックはどうか? 対ニンジャ戦の経験が足らず、浮ついていた彼女の心は凪めいて平静であった。侮られた怒りやワン・インチに迫るこの汚らわしいザイバツニンジャに対する嫌悪感が閾値を超えたためである。

 故に彼女はわずかに屈んでモスキートのカラテをやり過ごした。そして相手の無防備股間へ……SPIT

アバーッ!?」

 モスキートが激痛に絶叫! SPIT! 続くキールバックの水滴スリケンをブザマに転がり回避! 咄嗟の回避で『直撃』は免れたものの、急所を撃ち抜かれたことには違いなし!

「アバーッ! 我が熱き血潮が! アバーッ! なんと惨い! 薄紙一枚隔てて……アバーッ!」

 SPIT! 三度目の水滴スリケンをモスキートはワーム・ムーブメントで回避! その拍子に背中のシリンダーが外れ床に転がるがお構いなし! 無表情のキールバックが早足で追いかける。SPIT

「い、イヤーッ! しかしこれは考えてみれば役得では? バイオ器官とはいえ女子中学生の体液! すなわち間接的相互循環」SPIT!「イヤーッ!」

「死ね」SPIT!「死ね」SPIT!「死ねーッ!」SPIT! SPIT! SPIT! 徐々に怒りの表情を浮かべ始めたキールバックが追い討ちの水滴スリケン連射! やがてモスキートが落としたシリンダー付近へと、

「……いかん! イヤーッ!」「ンアーッ!?」

 唖然としていたヘヴィドランカーが表情を険しくし、横合いからキールバックを抱き抱え離脱! その直後! KABOOM! 突如シリンダーが爆発し周囲に毒々しい赤色の霧を撒き散らす! その霧の向こう、モスキートの笑い声!

「フィーヒヒヒ! どうやら分が悪いようだ。俺はこれで撤退重点! 縁があればまた会おう! バラめいて可憐なソウカイヤの皆さん!」

「二度と! 顔を! 見せるな!」

 ヘヴィドランカーに抱き抱えられたまま、キールバックが怒鳴る! 下劣な笑い声を残し、モスキートの気配が遠ざかっていく。言葉通りの撤退か。

 ザンシンしていたディスグレイスは大きく息をつく。あれがザイバツ・シャドーギルドのニンジャ。なんと苦しい戦いだったのだろう。……主に精神的疲労の意味で。

『1ターン目』
ヘヴィドランカー:スリケン
1, 3, 3, 3, 5
モスキート回避
2, 4
ディスグレイス:カナシバリ・マスタリー
2, 2, 2, 3, 3, 5, 5, 5, 5, 6
モスキート回避
3, 6
ディスグレイス:バイオサイバネ
1, 1, 1, 2, 2, 3, 4, 4, 5
モスキート回避
1, 3 失敗 【体力】7→5
『猛毒の血液』によりディスグレイス【体力】16→15、回避ダイス-1
モスキート:カラテ→キールバック
(3, 3, 3)(1, 2, 2, 2)まさかの両方失敗
キールバック:スリケン
1, 2, 5, 5, 6, 6, 6 ◉スリケン急所破壊
モスキート回避
3 失敗
「苦しみ抜いて死ぬがいい」
【体力】5→3 【精神力】5→3 【ニューロン】5→4
残虐ボーナス 1d6 → 4 / 2 → 【万札】2獲得
イクサ終了な

 ヘヴィドランカーの手を静かに振り払ったキールバックは、スタスタとディスグレイスの元へ。そしてなんら躊躇うことなく彼女へと抱きついた。目を丸くするディスグレイスは、すぐに妹分から伝わってくる震えに気づく。

「怖かった……お姉さま、怖かったです……グスッ」

「アー……」

 ディスグレイスは困ったように天井を仰ぐ。たしかにキールバックはカワイイ妹分でありオモチャである。とはいえ、本来であればミッションにおいてこのような泣き言を言うことなど許されない。嗜め、注意すべきだ。普通であれば。

 しかしディスグレイスはそうせず、少女の背を優しく撫でるにとどまる。いくらなんでもあれは相手が悪い。ヘヴィドランカーが神妙な顔で言った。

「あれがザイバツのニンジャ……なんというか、凄まじい相手でしたな……」

「まったく。ツーオクロックとやらがあのような手合いでないことを祈るばかりですね。……さて、あのモスキート=サンが仲間を呼んで戻ってこないとも限りません。早急に用を済ませましょう」

「つまり、神木」

「ええ。……キールバック=サン。大丈夫ですよ。わたくしがついていますからね」

 ミコー装束に顔を押しつけてくるキールバックを優しく宥めつつ、ディスグレイスらは本殿を後にした。向かうはその裏手、神木だ。



◇神木付近◇


 ディスグレイスは額の汗を拭う。神木への道のりを進めば進むほどに空気の重苦しさが増していく。まるで空気が粘性を帯び、体にまとわりついてくるような……そのような錯覚さえ覚えるほどだ。

「仮にもジンジャ・カテドラルだというのに、こんな……」

 ぴったりと寄り添うキールバックが眉をひそめた。彼女は彼女なりに篤い信仰心の持ち主だ。祭られている神がなんであれ、この冒涜的なアトモスフィアは目に余るのだろう。(このような狼藉をも見落とすのですね、ブッダ)ディスグレイスは心中でひとりごちる。

 ふと、彼女は足を止めた。

「……ところで、ヘヴィドランカー=サンは?」

「後ろに……あれ?」

 振り向いたキールバックが驚いたような声を上げる。いったいいつの間に姿を消したのか。あの長身痩躯のニンジャは忽然と消えていた。眉間にしわを寄せていたディスグレイスは、ややあってから大仰なため息をつく。

「……まあ、あの人のことです。必要なときになったらまたひょっこり顔を出すでしょう」

「裏切るつもりじゃなければいいですけど……」

「そうであったら四肢を折って……ウーン」

 ディスグレイスは口ごもる。いつもはオタノシミに続けるのだが、どうにもあのニンジャ相手にそういうことをする気が起きない。いずれにせよ、あの者がツーオクロックの側につくとは考え難い。短い付き合いとはいえ、そうした謀りとはむしろ縁の遠い存在のように思える。

 ……オオオォォォ……オオォォ……

 不意に聞こえてきた呻き声に、ディスグレイスとキールバックは互いに飛び離れカラテ警戒! いつの間にか周囲に漂う霞の奥に巨木がそびえ立っている。そこにいくつもの人形が……否!

「これは!」

 ディスグレイスは瞠目した。それは人形などではない! 打ち込まれた釘の巨大さで見誤りそうになったが、紛れもなく人間なのだ! 「オオオォォォ……」「オオォォ……」首や心臓を釘で撃ち抜かれているにも関わらず、その口からは不気味な呻きを発している。コワイ!

「お姉さま、あれを!」

 その死体の一つをキールバックが指差す。ディスグレイスは彼女の言おうとすることをすぐに理解した。その死体のニンジャ装束に縫い付けられているのはクロスカタナのエンブレム。同僚たるソウカイニンジャではないか!?

 ディスグレイスは状況判断する。スカウト部門に所属している彼女に取っても、眼前のニンジャは初めて見る顔だ。おそらくキョート支部に属する者だったのだろう。彼女がそのような推論を立てている最中にも、アワレなニンジャの死骸は徐々に干からび、乾いたワラニンギョへと姿を変えていく。神木が発する禍々しさが増した。まるで……被害者からなんらかの力を吸収したかのように。

「僥倖僥倖……ソウカイヤのニンジャ共をこうもおびき寄せられるとは……」

 背後から声。二人のニンジャは電撃的速度で振り返る。その視線の先、タタミ10枚分の距離を保って佇むのは煮凝りめいたニンジャ装束を纏うニンジャであった。その口元を覆うのは、水を押し固めたかのような異様なメンポ。

「ドーモ。ソウカイヤの皆さん。私はザイバツ・シャドーギルドのマスター位階……ツーオクロックです」

 二人へ嘲りの視線を向けたそのニンジャは、禍々しいアイサツを繰り出した。


【ウェン・ユー・カースド・サムワン……】その3終わり。その4へ続く

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