忍殺TRPGソロリプレイ【イッツ・カインド・オブ・バッカナール】

◇前置きな◇

 ドーモ。しかなです。当記事はソロシナリオを遊んだ記録をテキストカラテナイズドして誕生したリプレイとなります。要は読み物であり、気軽に読める。

 今回挑戦したソロシナリオは海中劣=サンのソロシナリオ【ニンジャの飲み歩き】です。

 そして挑戦者……と言いたいところだが、実はうちのダイス産ニンジャはわりとハイティーンが多くサケを飲ませるにはちょっとアブナイ。誰がいたかなあと思って記憶を探したらこいつがいた。ので、彼女に挑戦してもらう。

ニンジャ名:コールドブラッド
【カラテ】:4
【ニューロン】:3
【ワザマエ】:6
【ジツ】:2(ヘンゲヨーカイ)
【体力】:4
【精神力】:3
【脚力】:3
持ち物など:
・ウイルス入りフロッピー
○指名手配犯(【DKK】+2で開始)
【万札】:39
【名声】:4

 実はアベレージの次くらいに古株のコールドブラッドである。そして彼女、まだ余暇を二日持て余していることが判明した

 なので余暇パートから開始させてもらおう。よろしくお願いします。



◇余暇:模様替えな◇


 ネオサイタマ中心部から離れた場所に位置するカンオケ・オフィス。元々は単身赴任用に誂えられた施設であり、部屋構成もトイレ付きのワンルームという極めてシンプルなものだ。

 そのワンルームへ、黙々と木人を設置する影あり。女だ。屋内だというのにフード付きPVCレインコートを着込んでおり、その下には素肌に直接巻いているのであろうバイオ包帯が覗く。ニンジャ視力をお持ちの読者であれば、そのレインコートの裾や包帯に乾いた血がこびりついているのが見て取れるかもしれぬ。

「アー……まあ、こんなもんか。こんなもんだろ」

 狭い室内を見回した包帯女は、自分に言い聞かせるように呟いた。彼女の名はコールドブラッド。ネオサイタマを闇で支配するソウカイヤのニンジャの一人だ。

 そのニンジャがなぜこのようなカンオケ・オフィスに? その答えは簡単だ。トイレすらついていないソウカイヤ支給のレンタル・アジトにウンザリし、自らの手持ちと相談した結果引っ越せる場所がここくらいだったからである。

 購入費だけならもう一つ上のランクの物件も探せなくはない。しかし調度品にかけるカネを考えるとこのあたりで妥協せざるを得ないのだ。

 コールドブラッドは壁にカケジクをかける。見事な筆致で描かれたブッダが、開いているのかいないのかわからない目で彼女を見返した。いつぞやトーフ工場から強奪した一品である。

「売っぱらうよりは、使ってやった方がアンタも気分がいいでしょうよ。ねぇ?」

 コールドブラッドは愛想良く笑った。特に意味はない。いずれにせよ、これで自分だけのアジトが完成したというわけだ。

黒鷺あぐも=サンのアジトカタログから『カンオケ・オフィス』を購入 
【万札】39 → 36

家具として『木人』『香炉』『偉大なるショドー』購入
【万札】36 → 24
所有していた『見事なカケジク』と合わせて配置


◇余暇開始な◇


「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

 休憩もそこそこに、コールドブラッドは木人へカラテを打ち込み始める。彼女はニンジャであるが、彼女より強いニンジャなどごまんといる。もしものときのためのトレーニングを欠かすわけにはいかない。

(まだ死にたくねえからな、アタシだってよ)「イヤーッ!

 パァン! 小気味いい音とともに、木人が揺れた。

余暇一日目:カラテトレーニング
【万札】24 → 21
1回目: 1d6 → 1 ≦ 4 失敗
ショドー効果で振り直し
2回目:1d6 → 6 > 4 成功!
【カラテ】4 → 5
【体力】4 → 5

 ……明くる日! コールドブラッドは狭い部屋の中心でザゼンを組んでいた。室内にはもうもうと香炉からの煙が立ち込める。

 コールドブラッドはヘンゲヨーカイ・ジツの使い手だ。巨大なトカゲの姿に変じ、一時的にカラテを高める恐るべきジツである。

 ……が、彼女はあまりこのジツに対していい思い出がない。理由は単純で、ニンジャになりたての自分にジツを使って暴れまわっていたところをスカウト部門の筆頭に叩きのめされたからだ。『上には上がいる』『ノーカラテ・ノーニンジャ』を否応なく理解させられた瞬間だった。

 とはいえ、だ。コールドブラッドは今までくぐり抜けてきた窮地を思い出す。暴走状態のアーチ級ソウル憑依者……なぜかは知らねど、ソウカイニンジャに異様な敵意を持っていた巨大バイオタラバガニ……そうした難敵から彼女の命を救ったのもまたヘンゲヨーカイ・ジツであった。

 つまるところ、いい加減このジツと向かい合い、モノにする努力を積み始めたほうがいいのではないか。彼女はそう考えたのである。

「スゥー……フゥー……」

 コールドブラッドは深呼吸した。インセンスが彼女の肺を満たし、包帯の下のバストがわずかに揺れた。彼女のバストは豊満である。

余暇二日目:ザゼントレーニング
【万札】21 → 18
1d6 → 4 > 3 成功
【ニューロン】3 → 4
【精神力】3 → 4

 幾分か頭がすっきりしてきた。コールドブラッドは大きく伸びをし……立ち上がる。

「ま、こんなもんでいいだろ。飲みに行くか」

余暇後の状態な
ニンジャ名:コールドブラッド
【カラテ】:5
【ニューロン】:4
【ワザマエ】:6
【ジツ】:2(ヘンゲヨーカイ)
【体力】:5
【精神力】:4
【脚力】:3
持ち物など:
・ウイルス入りフロッピー
○指名手配犯(【DKK】+2で開始)
【万札】:18
【名声】:4



◇プロローグな◇


 所変わって大衆居酒屋「ここにする」! ザゼントレーニングを終えたコールドブラッドは一人、晩酌を行っていた。ソウカイネットにはノミカイの知らせがいくつもあるし、『ジョシ・カイ』のIRCチャネルにも入っている。が……

アルコール耐性判定な
1,2: 下戸 
3,4: 普通
5,6: うわばみ
1d6 → 5 コールドブラッドは「うわばみ(飲み比べ判定-1)」だ

 運ばれてきたジョッキを受け取り、中に満たされたシュリンプ・ビールを一気に飲み干す。「クーッ……!」爽やかな喉越しに声が漏れた。コールドブラッドはアルコールに強い性質であり、他のニンジャが参加するノミカイでは飲酒量を抑えているのである。そのため、たまに一人でハメを外す必要があるのだ。

 もう少し入れておくか。コールドブラッドが顔を上げ、追加注文を出そうとしたそのとき。「オットット」「……アン?」背後に軽くぶつかるものあり。振り向くとそこにいたのは、アイマスクをつけた女だ。足取りが怪しい。酔っているのか。

「ア、ゴメンナサイ……ンンー?」

「アア? なんだよ」

「……違うなー。バッカス=サンじゃないや」

 唐突に顔を近づけてきた女をコールドブラッドは睨み返す。が、女は恐れた風もなく顔を離し、唐突にオジギした。

「あなたニンジャだよね? ドーモ。私はブラインドです」

「ドーモ。ブラインド=サン。コールドブラッドです。……ニンジャだと? テメェ、どこのニンジャだよ」

 唐突なニンジャとの遭遇に、コールドブラッドの頭がやや冷えた。腰を浮かしかけた彼女の肩が抑えられ、やんわりと席に座り直させられる。そしてブラインドは勝手に右隣の席へ腰を下ろした。そのバストは平坦である。

「あのねー、お酒飲んでると会えるニンジャがいるんだよ!」

「……おい。まずアタシの質問に答えろ」

「でもブレードブレイカー君もチキンハート君も信じてくんなくて」

「知らねェよテメェのお友達なんぞ……いや、待てよ」

 なぜか顔を近づけてくるブラインドを押しのけつつ、コールドブラッドは目を細める。ブレードブレイカー。名前だけは聞いたことがある。最近メキメキと腕を上げているらしい……ソウカイニンジャだ。

 つまり、それと知り合いであるこの女もソウカイニンジャということだろうか。その結論に至った瞬間、コールドブラッドはへらへらと笑うブラインドを見やる。本当にこいつが同僚なのか疑わしくなった。まあ、敵意がないのは事実らしい。

「そうだ! せっかくだし探すの手伝ってくれない!? 一緒に飲もうよ!」

「ハァ? なんでだよ……いや、待て」

 反射的に断ろうとしたコールドブラッドは思い直す。既に酔いの回っているこの女。妄言はともかくとして、あと少し飲ませてやれば潰れるだろう。そうすれば後の会計を押し付け、タダ酒を飲むことができるのではないか?

 その思考はコンマ数秒で行われた。コールドブラッドはにんまりと笑う。

「気が変わった。いいぜ、付き合ってやるよ」

「ワーイ! アリガト! お姉さーん! ジョッキ大ください!」

「アタシにも同じの!」

「ヨロコンデー!」

 そして何食わぬ顔で追加注文を行ったのだ。


◇第一勝負な◇


「「カンパーイ!」」

 ジョッキを打ち合わせ、コールドブラッドとブラインドは同時に口をつけた。「プハー!」半ばで中断したブラインドを横目に、コールドブラッドはビールを全て飲み干し、勢い良くテーブルに置く。

「アー……一杯じゃ足りねェな。次、二杯頼んでいいか?」

「イイヨイイヨ! どんどん頼んで、バッカス=サンを見つけようね!」

「……あのさァ、そのバッカスってのはさァ……」

飲んでますかー!?」

 突如、男の声が割って入った。コールドブラッドは顔をしかめて振り返る。そこにいたのはサラリマンだ。頭にハチマキめいてネクタイを結んだその姿はどう見ても出来上がっている。

酩酊サラリマン
【カラテ】:2
【ニューロン】:1

 コールドブラッドはブラインドを見やる。このシツレイな邪魔者をどうするか相談しようと考えたのだ。が、当のブラインドはふにゃふにゃとした笑みを顔に貼りつけてボーッとしている。コールドブラッドは彼女を当てにしないことにした。

 さて、どうするか。コールドブラッドの主観時間が鈍化する。カラテで叩きのめす? いやいや、せっかくのこのアトモスフィアが台無しだ。サケのおかげか、そこまで苛立ちも湧いてこない。

 となればここはひとつ、酒場の流儀で相手をしてやるとしよう。コールドブラッドは左隣の椅子を引いた。

「……おう、飲んでる飲んでる。アンタはどうだ? ほら、ここ座んなよ」

「エッヘヘ、アリガトゴザイマス! もうねェ、飲んでますよ! 今日も接待! 明日も接待だ!」

「ヘェー、そりゃ大変だ……それならさァ、他のとこでゆっくり飲んだほうがいいぜ。アタシらに付き合うと潰れちまうからさ……」

「そりゃすごい! けどねェ、私だって負けてませんよ! こんなに飲まされて、ほら、飲まなきゃあやってられませんよ!」

飲み比べ1:先攻はサラリマン
ビール『一杯』(難易度EASY)
3d6 → 2, 3, 4 成功

 ゴク、ゴク、ゴク。喉を鳴らしながらビールを飲み終えたサラリマンは勢い良くジョッキを置き、赤らんだ顔で自慢げにコールドブラッドを見やった。

 コールドブラッドは小さく拍手し……背後を通る店員へと声をかける。

「あ、スミマセン。ビールおかわり」

「ハイ!」

「ジョッキ大、3つで」

「ハイヨロコンデー!」

「……エッ?」

 サラリマンが目を丸くした。運び込まれた3つのジョッキを前にコールドブラッドは舌舐めずりし、早速そのうちの1つに手をかける……!

飲み比べ:後攻コールドブラッド
ビール『三杯』(難易度KIDS)
3d3, 3d3, 3d3 → (2, 3, 5), (1, 3, 5), (1, 2, 5) 成功!

 ダン! 飲み干したジョッキを勢いよく置く! 次のジョッキを取る! 飲み干す! ダン! 次のジョッキを取る! 飲み干す! ダン! ゴウランガ! 一瞬にしてジョッキがすべて空に!

「プハー! ……で、どうする? まだやるかい」

「ウップ……オミソレシマシタ! こちらは約束のウップ……万札になりますウップ……」

「おいおい、吐くんなら別のとこでやれよ……ダイジョブか? トイレまで連れてくか?」

 渡された万札をそれとなく懐にしまい、コールドブラッドは気遣いを見せた。もちろん勝ったほうがカネを出す約束などしていない。が、向こうが善意で渡してきたものを断ってはシツレイだろう。

「スミマセン、スミマセンウップ!」

「おい、まだ吐くなよ! 我慢しろ!」

 危うい様子のサラリマンをトイレの前まで連れて行き戻ってみると、ブラインドがツマミの皿をぺろぺろと舐めていた。コールドブラッドは呆れる。

「ヤメロ、バカ! 犬じゃねェんだから」

「キレイに食べなさいっておばあちゃんも言ってたし。ねえ、そろそろお店変える?」

 思わぬ提案に、コールドブラッドはまじまじとブラインドを見つめた。

【万札】18 → 20



◇第二勝負な◇


「ドーモ! ご注文のサケ・ボムです!」

 女性店員二人が注文したサケをテーブルに置く。ガールズバー「透ーイル」。ここがコールドブラッドがハシゴ先に選んだ店だった。深い理由は特にない。強いて言えば何度か来店したことがあるからだ。

「コールドブラッド=サァン。今日はディスグレイス=サンと一緒じゃないんですかァ?」

「いつもアイツと一緒に行動してるわけじゃねェんだよアタシは……っつーかアイツ、一人で来ねェの? ここ」

「だっておサケ弱いって言ってたし。フフッ、カワイイ」

「本人に言ってやれ。アタシじゃなくてな」

 しなだれかかってくるフランケンシュタインの怪物風メイクの女店員にコールドブラッドはうんざりとした。ディスグレイスはほぼ同期の同僚であり、比較的仕事にマジメに打ち込むニンジャだ。が……こうした店を好む性的嗜好の持ち主である。以前飲みに行った時に大いにごねられ、二人で来店したのがこことの縁の始まりだ。

 ……おかげで自分も同じ趣味と見られている気がする。今回の同行者も女だ。ちなみにその同行者ことブラインドの隣には、前髪を伸ばして目を隠したユーレイゴス店員が座っている。注文したメニューの金額が高いほどより過激な服装を女性店員に着せることができるシステムなのだ。

「それより、ほら。サケきてるんだろォ?」

「ハーイ。それじゃあ行くよ」

 フランケンシュタイン女店員とユーレイゴス店員がいたずらっぽく笑い、ビールグラスの上に箸を乗せた。さらにその上にサケの入ったオチョコ。彼女たちのバストは豊満である。

「「サケ・サケ・サケボーム!」」

 掛け声と同時、オチョコがビールに落下! サケとビールがカクテルされる! サケ・ボムだ! 「「カンパーイ!」」コールドブラッドとブラインドは同時にグラスを取り、イッキ!「イエー!」「ワースゴーイ!」女性店員たちが讃える! 最高潮! 

ザッケンナコラー!」「アイエエエ!」

 だが、そこに水を差すものあり。男の怒声と女の悲鳴である。コールドブラッドは半眼でそちらを見やった。女性店員に絡む酔客の姿が飛び込んでくる。

「マルゲリータピザはクーポン対象だからネコネコカワイイのコスチュームは駄目だと!? スッゾコラー!」

「……ケチくせぇなァ」

 コールドブラッドは吐き捨て、自分にしがみついていたフランケンシュタイン女店員を静かに押しのけ立ち上がる。そして無造作に酔客の元へ近づき、その肩を掴んだ。

「ギャアギャア騒いでんなよ。それでも男かテメェ」

「アア? なんだおま……え……!」

 視線が交錯する。瞬間、コールドブラッドは相手の男がなんであるか理解したし、おそらく向こうもそうだろう。両者は同時に飛び離れ、オジギを繰り出す!

「ドーモ。コールドブラッドです」

「ドーモ。コールドブラッド=サン。ハイパーボンバーです」

ハイパーボンバー
【カラテ】:3
【ニューロン】:1

 両者はカラテを構えかけ……周囲の怯えた視線を感じ取り、構えを解く。

「あのな。ここアタシの行きつけなんだよ」

「お、俺だってそうだ。だがお前、ケンカ売っといて逃げる気じゃねえだろうなオラー!?」

「アァ? 逃げるかよ。……アァ、そこのアンタ」

 コールドブラッドはたまたま近くにいたウェイター女店員に声を掛ける。びくりと震える彼女に溜息をついてから、指を二つ立てて見せた。

「サケ・ボム。二人分だ」

「何だお前、何だ。やる気か!? いいだろう! 受けて立つぞコラー!」

 ……数分後! 両者は同じテーブルについていた。コールドブラッドは頬杖をついて対面のハイパーボンバーを眺める。彼はちょうど、二杯目のサケ・ボムを飲み干したところだった。

先攻:ハイパーボンバー
サケ・ボム二杯(難易度EASY)
2d6・2d6 → (2, 3) (2, 6) 成功

「カーッ! ……ヘヘ、どうだよ。次はお前の番だぞコラー」

「アァ、そうだな。じゃ、やるか」

「「サケ・サケ・サケボーム!」」

 サケ・ボムコールとともに一杯目のサケ・ボムが完成! コールドブラッドは一瞬でそれを飲み干す!

「「サケ・サケ・サケボーム!」」

 サケ・ボムコールとともに二杯目のサケ・ボムが完成! コールドブラッドは一瞬でそれを飲み干す!

「「サケ・サケ・サケボーム!」」

 サケ・ボムコールとともに三杯目のサケ・ボムが完成! コールドブラッドは一瞬でそれを飲み干す! ハイパーボンバーの顔が悔しげに歪んだ。この時点で飲み比べの敗北が決まったからだ。だが!

「「……サケ・サケ・サケボーム!」」「なッ……?」

 コールドブラッドの無言の要求により、サケ・ボムコールとともに四杯目のサケ・ボムが完成! 唖然とするハイパーボンバーの前で、コールドブラッドは一瞬でそれを飲み干す! 叩きつけんばかりの勢いでグラスをテーブルに置いた彼女はニヤリと笑った。

「ゴチソウサマ。どうする、オカワリやるか? エエッ?」

後攻:コールドブラッド
サケ・ボム四杯(難易度KIDS)
2d6・2d6・2d6・3d6 → (5,6)(3,3)(5,6)(3,4,5) 成功!

「ゴ、ゴボボーッ! クッソー! 覚えてろよ!」

 青ざめたハイパーボンバーはそのまま逃げ去りかけ……思い出したようにマルゲリータピザを一切れ頬張ると、会計へ無造作に万札を置いて逃げるように退店! 「ヤッター!」「スゴーイ!」「ヤンバーイ!」降り注ぐ黄色い歓声!

 苦い顔をして立ちあがったところへ、こそこそとした様子でやってくる中年男性店員あり。どうやら店長であるらしい。

「あン? ……アァ、悪いな。騒がしちまって」

「いえ、そんな! その……アリガトゴザイマス、お客様。これはホンの……」

 そういってこそこそと差し出したのは、店のクーポンと万札である。コールドブラッドは頬を掻き、遠慮なくそれを受け取って懐に入れた。儲け物ではあるが、どうにも飲みにくいアトモスフィアである。

「アー……オイ、ブラインド=サン。次の店行くぞ、次の店」

「エヘヘ! エヘヘヘ!」

 元の席にいたブラインドは、ユーレイゴス店員に膝枕をしてもらいご満悦だ。深い溜息をついたコールドブラッドは足早に近寄り「イヤーッ!」「ンアーッ!?」その足を無造作に掴んで引きずり下ろす!

 そしてヘラヘラと笑ったままのブラインドの懐からサイフを抜き取ると、呆然としていたフランケンシュタイン女店員へ声をかけた。

「……っつーわけで、これでオイトマするわ。いくらだっけ」

「エ、エェート……あ、クーポン持ってるなら安くなるよ?」

「クーポン、エート、クーポンね……あれ、アタシこんなにここで飲んでたっけか……? 妙にたくさん……」

「ディスグレイス=サンの分ももらってたんじゃない?」

「アー、そうだった。完璧に思い出したわ。……じゃ、これな。あと頼むわ」

「ハーイ! またヨロシクネ!」

 女店員の明るい声を背に、コールドブラッドは退店した。ブラインドの片足を引きずったまま。

【万札】20 → 25



◇第三勝負な◇


 次にコールドブラッドが選んだのは、バー「王様のファン」。薄暗い店内の仄かな照明が、カウンターに並べられたグラスに反射する。まるで星の海めいていた。今までとは違う落ち着いたアトモスフィア。いい加減ゆっくり飲みたくなっていたコールドブラッドの気分にぴったりだ。

カンパーイ!」

「うるせえ!」

「……アッハイゴメンナサイ」

 そのアトモスフィアをブチ壊しかねない大声をあげたブラインドを注意しつつ、ブランデーベースのカクテルでカンパイ。思えばこのニンジャもなかなか潰れない。舌でアルコールを味わいつつ、コールドブラッドはしかめ面を浮かべた。

 右目の飾り気のないサイバネアイに置換した老人が店の端へと向かう。首元の蝶ネクタイを整えた彼は、そこにあった椅子へ座りアンティーク・アコーディオンの演奏を始めた。歯切れのよい軽快な音楽。初めて聞くはずなのに、どうしてこうも懐かしいのか。(らしくねェな)コールドブラッドは苦笑する。だが、たまにはこういうサケも悪くない。

 ゼンめいた心地よい境地を感じながら、ふと彼女は横を見た。赤いロシア帽を被った男と目が合った。

「アア!? 何だよ! カネなら返さんぞ!」

「アア? なんだよ。うるせェぞアンタ」

 突如絡んできた男に、コールドブラッドはうんざりとする。なぜどいつもこいつも少しサケを飲んだだけでこんなことになってしまうのか?

「おじさん、ナンデ帽子取らないの?」

「オイ! バカ! ヤメロ! どうでもいいだろうが!」

「ムム! そう言われると気になってきた!」

「ヤメロ! 絶対に取らせんぞ! カネも返さん!」

 ……サケにやられたバカ二号ことブラインドも乱入してきたせいで、相当に騒がしくなってきた。他の客からの視線が痛い。コールドブラッドは舌打ちし、ロシア帽の男が抱えていた酒瓶を奪い取ってアルコール度数を確認。……かなり、いや、相当に強い。

「しょうがねえな、本当……アー、悪い。グラスを二つ」

「飲み比べか? わかった受けるぞ。カネは返さんがな!」

ロシア帽の男
【カラテ】:2
【ニューロン】:3
うわばみ:飲み比べ勝負の判定難易度−1

「オットット! オットットット!」

 ブラインドが両者のグラスにサケを入れる。コールドブラッドとロシア帽の男は同時に口をつけた。ダン! コールドブラッドが先に飲み干す! ダン! ロシア帽の男が続く!

「オットット! オットットット!」

 ブラインドが両者のグラスにサケを入れる。コールドブラッドとロシア帽の男は同時に口をつけた。ダン! コールドブラッドが先に飲み干す! ダン! ロシア帽の男が続く!

 コールドブラッドは眉間にしわを寄せた。ペース配分を間違えたか? この度数のサケをこの速さでイッキはいささか無理があったか……

「オットット! オットットット!」

 ブラインドが両者のグラスにサケを入れる。コールドブラッドとロシア帽の男は同時に口をつけた。ダン! コールドブラッドが先に飲み干す!「……ングッ、ゲホッ! ゲホーッ!?」ロシア帽の男が蒸せる!

「アァ? おい、ダイジョブかよ」

「オットット!」

「サケはもういいよブラインド=サン! アタシの勝ちだろこれ……ったく」

 ついでとばかりに注がれたサケを、コールドブラッドは一気に飲み干した。

飲み比べ:
ロシア帽の男
三杯(難易度EASY)
2d6・2d6・1d6 → (2,6) (5,6)(1) 三杯目で失敗
コールドブラッド
四杯(難易度EASY)
2d6・2d6・2d6・3d6 → (1,6) (3,4)(3,4)(2,5,5) 成功

「ゲホッ、ゲホッ……グゴーッ! グゴーッ!」

 咳き込んで突っ伏していたロシア帽の男がそのまま豪快にいびきをかき始めた。コールドブラッドは深く息をつく。なんと苦しい戦いだったのだろうか。

「ヨシ! 今のうちに!」

「お嬢さん、ちょっとやめなさい」

 帽子を取ろうとしたブラインドの肩を叩いたのは、先ほどのアコーディオン奏者だ。いつの間にか演奏が終わっていたことに、コールドブラッドはようやく気づく。アコーディオン奏者の老紳士はコールドブラッドを見て微笑した。

「そこのあなた。いい飲みっぷりでした。是非奢らせてください」

「エッ……アア……ドーモ」

「さあ、ヨコギ=サン。しっかりしてください。行きますよ」

 コールドブラッドが手渡された万札に目を白黒させている間に、老紳士は手馴れた様子で酔い潰れたロシア帽の男に肩を貸し、そのまま店を後にした。

「アーン……ロシア帽行っちゃった……」

「どうでもいいだろうが、そんなん。……チッ、アタシらも出るぞ」

 演奏が終わってしまい、あのゼンめいた境地はもはや楽しむことができそうにない。コールドブラッドはブラインドを連れて店を出た。

【万札】25 → 32



◇場外乱闘な◇


 ……「ズルズルッ! ズルズルーッ!」「うめえな、ここのラーメン!」「そうだろう」隣に座っていたくたびれたヤクザスーツの男が、どこか自慢げに言った。「この屋台は店主の気が向いたときにしか出さない。その分、味は保障付きだ」「ケッ、そういうこと知ってるんなら教えろよなァ、マジメニンジャクンよォ」「アベレージだ。せめて名前で呼べ、コールドブラッド=サン」「ズルズルッ! ズルズルーッ!」……
 ……ピンポーン!「ハイ。……あら、コールドブラッド=サン。なんですか急に」「ドーモ。ディスグレイス=サン。ああ、こっちはブラインド=サンっつって」「知ってます。何のようです?」「場所貸してくんねえかなあ。飲み屋が閉まっててさ……」「……ハァ……なにか軽いオツマミでもつくります?」「頼むわ」……
 ……「この『最低の金塊パワード』ってヤバイじゃね?」「ヤバイ。ヤバイ。買ってこうよ」「エー、何本いくよ」「パーッ! と六本くらい! じゃないとバッカス=サンに会えないよ」「知らねェよバッカス=サンなんか……」……
 ……「ヒヒッ、お嬢さんたちさァ……あんまりサケに飲まれるのもどうかと思うね。特にこの辺じゃあさ」「アアーッ?」路地裏にて。地べたに座って『最低の金塊パワード』を飲んでいたコールドブラッドは顔を上げる。痩せた男がそこにいた。まっすぐなワン・レングスの長い黒髪、えんじ色のシャツ。首にはインディアンめいたアクセサリー。「なんだテメェ……こちとらニンジャだぞ。テメェも飲んでけよ」「いや、俺はコロナ派でさ……」……


「ッたく、どこの店も閉まってやがる……サケが足りねえぞ、サケが」

「ピンクのゴリラが一匹、ピンクのタコが二匹、ピンクのドラゴンが……」

 ブラインドの呟きを無視し、コールドブラッドは次の飲み場を探す。世界が回転し、ネオンの光がマンゲキョめいて煌めく。こういう心地になるのは初めてだった。閉じた店、閉じた店、不穏な影、閉じた店、閉じた店……

「……アン?」

 コールドブラッドはようやく気づく。道の中央に立ちはだかる人影に。煮えたぎる混沌めいた顔面。超自然のメンポ。……ニンジャだ。

「ドーモ。バッカスです」

「アア? ……ドーモ。コールドブラッドです。バッカス? バッカスだと? なんだ、マジで実在してたのかよ?」

「ピンクの……イック! ブラインドです」

 ブラインドもふらつきながらアイサツに参加。バッカスが冷たい呼気を吐いた。

「SHHHH……俺が見えるのか? そこな小娘は先日も見た……成る程。俺を捕らえに来たか?」

 その顔面が揺らぐ。

「俺は影。人の意識がふわりと浮かんだところを気紛れに掬い上げる、」

ゴチャゴチャウルセッゾコラーッ!」「グワーッ!?」

【カラテ】判定(難易度HARD)
5d6 → 2, 2, 3, 6, 6 成功!

 バッカスが吹き飛ぶ! ふらつきながらもワン・インチ距離に踏み込んだコールドブラッドがその顔面を殴り飛ばしたのだ!「イック! エヘヘ! ……ウップ! ……フゴー……」その背後でブラインドは立ったまま爆睡!

「テメ、テメェのことなんか知るかコラー! アタシはな、次の、次のサケ……ウップ!」

 そしてバッカスを指差し怒声を放とうとして吐き気に襲われ「オゴーッ!」嘔吐したのだ。「ヌゥーッ……」バッカスが口惜しそうな声とともに消えていく。だが、コールドブラッドにそんなことを気にする余裕はない。彼女はそのまま地面に転がり、寝た。

コールドブラッド
【カラテ】5 → 6


◇エンディングな◇


「……モシモシ。モシモーシ」

 頭を小突かれる。コールドブラッドは呻き、薄く目を開く。剥き出しのサイバネ脚が写り込んだ。次にこちらを覗き込む少女の顔。

「ドーモ。シャープキラーです。……聞こえてる? モシモーシ?」

「……ウゥ」

「あ、生きてた。アハハ! よかったよかった! いくらニンジャでも、女の人がこんなとこで寝てちゃアブナイだよ?」

「ブ、ブラインド=サンは?」

「エ? アア、あのアイマスクの人? 知り合いの人に回収されてたみたいだよ。チキンハート=サンだっけ? まあいいや。とりあえずそれだと動けないでしょ。背中貸してあげるから、アジトの場所教えてくれる?」

 わけのわからないままに、コールドブラッドは背負われていた。朦朧とする意識の中で彼女はアジトの住所を告げる。こちらのほうが体格差で勝るというのに、シャープキラーは気にする風もなく歩いていく。

 それにしても。と、痛み始めた頭でコールドブラッドは考える。今回はハメを外しすぎた。しばらくは飲むまい。

 だが……近いうちにディスグレイスのやつを「透ケーイル」に連れてかねばならないし、またあの「王のファン」でゆったりとした時間を過ごすのも悪くない。そのときにサケを入れてしまうのは、まあ、うん。仕方ないのではないか?

 心地よい揺れの中、コールドブラッドの意識は再び眠りに落ちた。


【イッツ・カインド・オブ・バッカナール】終わり


◇後書き◇

 というわけで、なんとバッカスにカラテをお見舞いすることになったのだった。最終的にはこんなだ。

ニンジャ名:コールドブラッド
【カラテ】:6
【ニューロン】:4
【ワザマエ】:6
【ジツ】:2(ヘンゲヨーカイ)
【体力】:6
【精神力】:4
【脚力】:3
持ち物など:
・ウイルス入りフロッピー
○指名手配犯(【DKK】+2で開始)
【万札】:32
【名声】:4

 相当に強力なニンジャとなった。このまま壁突破を目指して頑張るのもいいかもしれない。

 さて、ここまで読んでくださった皆様、そして楽しいソロシナリオを提供してくださった海中劣=サン。ありがとうございました! 気が向いたらまたやるよ!




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?