忍殺TRPGソロリプレイ【ハウス・オブ・イーヴィル・スピリッツ】#1

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はしかながニンジャスレイヤーTRPGのシナリオを遊んだ結果を元に作成したテキストカラテ……一般にはリプレイと呼ばれるタイプのものとなります。気楽に読めるよ。

 今回挑戦させていただくのは、公式シナリオの【騒霊の家】です。

 ……なのですが、実は当バースでは既にこのシナリオのボスにあたるポルダーガイスト=サンが爆発四散してしまっている(ソロアドベンチャーとして用意された【騒霊の家】でのバタフライエフェクトだ)。

 そのため、勝手ながらいろいろ改変をさせてもらったうえで挑みます。では行ってみよう。よろしくおねがいします。



◇オープニング、あるいはダンゴウ◇

「「ドーゾドスエ」」

 高級料亭「しのびやか」にて、客人二人の両脇についたオイランたちがオチョコへ奥ゆかしくサケを注いでいく。二人組の一人、どこかヤクザスーツの似合わぬ黒髪の女が、困ったように連れへと視線を送る。当の連れは目を細めてテーブル向かい側に座る老人を見据えていた。

「わざわざスミマセンねェ。こんな歓迎を」

「いえいえ! フマトニ=サンにはいつもお世話になっておりますからな。ささ、遠慮なさらず」

「では……カンパイ」

 互いのオチョコを打ち合わせてからイッキ。渋い顔をする女に呆れた一瞥を向けてから、フマトニは身を乗り出した。

「で? こんなオモテナシをするってことは、なにかまた相談事があるんでしょう。ミノタ=サン」

「ハハハ……かないませんな。実はその通りなのですよ。お聞きいただけませんか」

 変わらぬ笑顔で返してくる老人に、フマトニはこっそりと溜息をついた。そして隣の女を肘でつつく。

(見ろ。予想通りだ。なんでテメェを連れてきたか、これでわかったろ)

(……いつもなんですか)

(いつもなんだよ。なにか困ったことがありゃすぐ呼びつけてきやがる)

 囁くようなやりとり。ミノタはそれに気づいた様子もなく、訥々と己の悩み事を語り始めた。

 曰く。自身の所属するレイジング・ブル・ヤクザクランが大掛かりなジアゲを成功させカネが入ったため、カネモチ・ディストリクトの風情ある一軒家を購入した。かつては怪奇現象の噂もあったが近頃は鳴りを潜め、これは掘り出し物だと飛びついたのだという。

「……ですがね。家具を入れようという段階になってまたユーレイが戻ってきたようなのですよ」

「はあ、ユーレイ」 

「そうです。ひとりでに電気が点いたり消えたり……水道から水が流れたと思って見に行けば止まっていたり……怪しげな影がちらついたり。その類のものです」

 ミノタの顔は深刻かつシリアスだ。彼のような老ヤクザには迷信深い者も多い。実際に怪奇現象に遭遇すれば必要以上に事態を重く受け止めることもあるだろう。

 対するフマトニはしらけたアトモスフィア。さすがにミノタに感じ取られるほど露骨ではないとはいえ、彼はそうした怪奇現象を脅威と思う性質の持ち主ではない。

「手放すにしても、あのままではどうしようもなく……なのでお願いします。あそこのユーレイを叩き出して欲しいんですよ」

「叩き出すって、ミノタ=サンねェ……」

「できるでしょう? ニンジャなら。お願いしますよ」

 言って頭を下げるミノタ。苦い顔をしたフマトニは……隣でオイランとじゃれついてる女を再び肘で突いてから口を開く。

「わかりました。ですが私も忙しいもんで、代わりにうちの若いのを行かせます。……いいな、ナダ=サン」

「アッハイ。……申し遅れました。わたくし、ナダ・ヒメグシです」

 一瞬だけ半眼をフマトニへ向けた女は、改まった様子でオジギ。そのバストは豊満である。目を丸くしていたミノタは反射的に彼女の右腕を見た……正確には右袖を。ケジメかあるいは事故によってなのか。その右袖は虚しく揺れるのみ。隻腕なのだ。

 彼女の瞳に宿る金色の妖光を見て、彼は一瞬にしてその正体を察した。

「ドーゾ、ヨロシクお願いします。ニンジャだけが頼りなんです……!」


◇◆◇◆◇


「……というわけで、ヤサガシです。いいですね」

「成る程」

 翌日。カネモチ・ディストリクトへ向かうヤクザベンツの中。助手席に座るスーツ姿の男はナダ・ヒメグシは無造作に言葉を投げつける。今の彼女が身に包むのはヤクザスーツではない。改造ミコー装束だ。

 助手席の男がシート越しに振り返る。その口元は豊かな白髭に覆われていた。

「わざわざ貴女が足を運ぶような一件とは思えませんな。ディスグレイス=サン」

「そうですね。普通でしたら貴方やスムーストーン=サンに投げてもいい仕事ではあります。けれど、エスコート=サン」

 ナダ……否。恐るべきグレアリング・オロチ・ヤクザクランの女オヤブン、ディスグレイスは配下のニンジャをじろりと見やる。

「こうした怪奇現象でまずユーレイよりも前に疑うべきはニンジャです。すなわち、例の屋敷にニンジャが侵入し狼藉を働いているのではないか? と」

「成る程。合理的ですな」

「……ニンジャの関与があるとすればわたくしが出向く必要があるでしょう。十中八九は野良ニンジャ。すなわちソウカイヤの戦力になりうる存在なのですから」

「流石にマジメでいらっしゃる。……となると、はて。今度は私がお邪魔になるのでは?」

「貴方がどれだけやれるかを確かめる場でもあります。せいぜいそのワザマエを見せなさい」

「ハハハ、成る程! これはブザマを見せられませんな」

 エスコートは破顔し、前方へと向き直る。ディスグレイスは溜息をつきシートへ身を沈めた。なるべく時間をかけずに済ませたいものだ。

ニンジャ名:ディスグレイス
【カラテ】:8          【体力】:16/16
【ニューロン】:8       【精神力】:9/8
【ワザマエ】:4         【脚力】:4
【ジツ】:6(カナシバリ)   【万札】:4
近接攻撃ダイス:8
遠隔攻撃ダイス:4
回避ダイス:8

【特筆事項】:
【名声】:13
【DKK】:3
風呂により【精神力】+1

【サイバネ】:
▲バイオサイバネ腕(片腕)
▽吸血バイオ器官

【スキル】:
●連続攻撃2、●時間差、●マルチターゲット
◉翻弄
★カナシバリ・マスタリー
★ブンシン・ジツ(Lv3)
★レッサー・イビルアイ
★★コブラ・ゲン・ジツ
★★★半神的存在:
このニンジャの【体力】は【カラテ】+【ニューロン】となる
★★★不滅
○信心深い

【説明】
 右腕を五本の冒涜的バイオ触手に置換したニンジャ。
 バイオ触手と強力なカナシバリ・ジツで相手を束縛・屈服させることを好む。
 元は自らの性的嗜好を苦に自殺を試みたミコー。現在はもはや堕落あるのみ。
ニンジャ名:エスコート
【カラテ】:4             【体力】:4/4
【ニューロン】:5      【精神力】:5/5
【ワザマエ】:2            【脚力】:2
【ジツ】:3(ムテキ)    【万札】:0
近接攻撃ダイス:4
遠隔攻撃ダイス:4
回避ダイス:5

【特筆事項】:
 ローン10

【アイテム】:
 家族の写真

【サイバネ】:
 ▶︎サイバネアイ

【スキル】:
 ○錠前破り

【説明】
 かつてはスラッシュ&ハックの錠前破りとして名を馳せた男。
 ニンジャ器用さで障害を取り除き、ムテキ・アティテュードで味方の盾となる。
 そのニンジャネームは彼のワザマエから来たものだ。



◇到着◇

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 ヤクザベンツを降りた二人のニンジャを出迎えたのは、陰鬱なアトモスフィアを漂わせた屋敷だった。それはなにも空を覆う重苦しい黒灰色の雲のせいだけではあるまい。

「……フム。この屋敷の評判とやらはずいぶん知れ渡っておるようですな」

「なぜそう思うのです?」

「塀の落書きですよ。道路側は随分と手ひどくやられておりますが、内部は綺麗なものです。つまり、ヨタモノの類が入り込んでいない」

 エスコートは指差しながら説明を行う。その間にも彼のサイバネアイはフォーカスの調整を行なっている。

「もっとも、それだけではないやも……ディスグレイス=サン。先行させていただいても?」

「許可します」

「ドーモ」

 眉根を寄せるディスグレイスに一礼してから、エスコートは慎重に敷地内へと足を踏み入れた。そのときだ!

エスコート:【ワザマエ】判定(難易度HARD)
(1,1,4,6) 成功!

「イヤーッ!」

 突如彼はその場で小跳躍! KRACK! 一拍遅れて響いたのは鋼が打ち合わされる硬い音だ。着地したエスコートは油断なく音源を破壊!

「やはりか。お気をつけください、ディスグレイス=サン。この庭、罠が仕掛けられております」

「……不法侵入者撃退用のトラップ。成る程。よく気づきましたねエスコート=サン」

「お褒めに預かり恐悦至極。……しかしなんですな。いささか過剰な量が仕掛けられている気配です」

「購入者が不動産屋にカネを積んで増量させたのでしょう。面倒なことを」

 昨夜のミノタの顔を思い出し、ディスグレイスは舌打ちする。こちらがニンジャだからと言って罠のことに一言も触れないとは、いい根性をしているようだ。

 とはいえ、ここで堪忍袋を温めてもなにも始まるまい。ディスグレイスはタタミ5枚分は先にある玄関を睨む。

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ディスグレイス:連続側転
(1,2,2,6) 成功
ディスグレイス:移動
トラップ判定:1 発動
トラップ種類:2 電子トラバサミ!
ディスグレイス:【ワザマエ】判定(難易度HARD)
(1,2,4,6) 回避
エスコート:連続側転
(1,2,4,4) 成功
エスコート:移動
トラップ判定 2 また発動!
トラップ種類 6 バイオスズメ撃退電流!
エスコート:【ワザマエ】判定(難易度U-HARD)
(3,3,5,6) 回避!

「ええい、うざったい! イヤーッ!」「ディスグレイス=サン!?」

 エスコートが目を見張る中、ディスグレイスは連続側転! 風めいて草の生茂る庭を突っ切り玄関へと向かう!

「お、お待ちを……イヤーッ!」

 エスコートも慌てて連続側転! KRACK! 上司が通過した後を虚しく噛みつく電子トラバサミを視界の端に捉えた彼は「イヤーッ!」騒めく己のニンジャ第六感を信じ高く跳躍! 

 自分の進行ルートに張り巡らされていたバイオスズメ撃退用の電流トラップを見下ろしてから、彼は玄関口で待っていたディスグレイスの横へと着地した。

「ハイ、オツカレサマ」

「ドーモ。……ディスグレイス=サン。罠の張り巡らされた中を無造作に突っ切るのはどうかと」

「面倒だったんですもの。後でスシでも奢りますよ」

「二人きりで食事をさせていただきたいものですな。そのときは」

 世間話めいて言葉を交わした二人のニンジャは、そのまま屋敷のドアを押し開ける。中から流れ出した黴臭い空気が両者を歓迎した。


◇探索開始◇

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 エスコートが玄関脇のスイッチを押すと、老朽ボンボリがバチバチと火花を散らし明滅する。どうやらミノタが本格的リフォームに着手する前に怪奇現象とやらが戻ってきたらしい。面倒なことだ、とディスグレイスは思う。フマトニ……もとい、ソニックブームが自分にマルナゲしたのも肯ける。

「さて、どこから手をつけましょうか」

「……まずは一階を洗います。そうですね、和室から探してみましょうか」

 エスコートの言葉に現実へ引き戻されたディスグレイスは状況判断する。ミノタによれば怪奇現象はキッチンでよく目撃されたのだとか。故にまずそれ以外の部屋を潰し、そちらに原因がないことを確認したうえで突入する。

「了解しました。では先行いたします」

「……貴方よりわたくしのほうが丈夫だと思いますけど」

「ははは! そう仰らず。オヤブンが率先して危険が待ち受ける場所に潜り込む必要はありますまい」

 爽やかな笑みとウインクをひとつ残し、エスコートは玄関左、和室に続くフスマに手をかけ……引き開ける!

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イヤーッ!

 和室に足を踏み入れた瞬間、カラテシャウトが響く! 彼は目を見開いて声の主を見た。和室奥に鎮座している錆びたカタナと古びた武者鎧。そのカブトの奥から覗く血走った目。そして……自分に飛来する三つの拳大光球!

エスコート【回避】判定(難易度HARD)
回避の代わりにムテキ・アティテュード発動
【精神力】5→4
(1,1,3,3,3,6,6,6) 発動成功

 だが彼は冷静であった。「ムテキ!」腰だめに拳を構えシャウトを発する! 見よ、その肉体が鋼めいた強度と光沢を獲得! KABM! KABM! KABM! 光球がその身体に突き刺さり小規模爆発を起こすも、無傷! これぞエスコートがニンジャとなった際に習得したムテキ・アティテュード!

「……ニンジャだと!? なぜこんなところに……!」

「イヤーッ!」

 動揺する武者鎧ニンジャの前に、ムテキを解いたエスコートを乗り越えてディスグレイスがエントリー! 着地と同時にアイサツを繰り出す!

「ドーモ。はじめまして。ソウカイヤのディスグレイスです」「同じくエスコートです」

「……ど、ドーモ。マーシレスボムです」

 ぎこちない動作で鎧の中のニンジャがアイサツを返す。

ニンジャ名:マーシレスボム(N1)
【カラテ】:3       【体力】:3/3
【ニューロン】:5      【精神力】:4/5
【ワザマエ】:6      【脚力】:3
【ジツ】:2(カラテミサイル)【万札】:0
近接攻撃ダイス:3
遠隔攻撃ダイス:6
回避ダイス:6

【アイテム】:
 ヨロシデコンタミネイター火炎放射器

【スキル】:
 ○放火魔

「まさか早々にニンジャが見つかるとは。動けますか、エスコート=サン」

「問題ありません」

 同時にカラテを構えるソウカイニンジャ二名。その様は威圧的だ。一方のマーシレスボムは……ぎこちなく両手を動かし、背後に隠していたなにかを取ろうとと苦戦した挙句……諦めたように倒れ込んだ。

「ゴメンナサイ」

 否、ドゲザである! 相手の数とエスコートのジツを目撃したこのニンジャは早々に抵抗の選択肢を排除。誠意を持って生き延びる方向に舵を取ったのである! なんたる情けなくも生存可能性の高い選択肢を油断なく選び取るニンジャ判断力か!

 ディスグレイスはエスコートと顔を見合わせ……肩を竦めて見せてからマーシレスボムへと歩み寄った。なにはともあれインタビューが必要だ。

【ハウス・オブ・イーヴィル・スピリッツ】#1終わり。#2へと続く

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