忍殺TRPGソロシナリオ【アワ・スウィート・ブラウン】

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はニンジャスレイヤーTRPGプレイヤーに向けたシナリオ……しかもダイスとメモするものさえあれば一人でもプレイできるソロシナリオとなります。

 オープニングはソウカイヤ所属者をターゲットに書いています。が、もしあなたのニンジャがフリーランスだったりドラゴン・ドージョーだったりしても問題ありません。ご自由に改変し、挑戦してくださいね。

 なお、今回のソロシナリオにはNPCが一人ついてきます。ダイスを振る機会も多くなるかと思いますのでご了承ください。

 ではいってみよう。よろしくおねがいします。



◇オープニングな◇

 重苦しい灰色の雲を空に抱くネオサイタマ。敏感なネオサイタマ市民であれば、街を彩るネオンにピンクが増えていることや甘い匂いが漂うことに気づかざるを得ない。暗黒メガコーポにとって、商売のときがやってきているのだ。

 そんな中、ソウカイニンジャであるお前は……ピンクや甘い匂いとはまるで関係のないタマチャン・ジャングルにやってきていた!

「ハァ……空気が不快です。そう思いませんか?」

 お前の隣、そう言ってお前の顔を見上げたのはまだジュニア・ハイスクールに通っていてもおかしくない年頃の少女。身体のラインを浮き立たせるラバースーツめいたニンジャ装束が特徴的だ。そのバストは平坦であった。

 ……ニンジャ装束。そう、この少女もまたお前と同じニンジャである。付け加えるならば、お前をこのジャングルに誘った依頼人だ。名をキールバック。

「いいですか、絶対このあたりにあるはずなんです。ジャングル浸食に呑まれた工場を発見して、死蔵されているチョ……ンン! 物資を回収します。よろしくお願いしますね」

 なにやら含むものを感じつつも、お前は頷いてみせた。冒険の始まりだ!



◇本編な◇

■ドーモ! モーター・リッポータイです! あなたのミッションを全力でサポートしますよ。ロクメンタイ? きっと同型機のモーター違いですね■
■さて、今あなたは鬱蒼と茂るバイオバンブー林の中……要はタマチャン・ジャングルの一角にいます。依頼人であるキールバック=サンに協力し、この一帯に廃棄された工場を探して死蔵されている物資を回収する。それが今回のミッションの概要ですね■
■探索を始める前に、キールバック=サンがどのようなニンジャか知っておいたほうがいいでしょう。ソウカイ・データベースを照合します■
ニンジャ名:キールバック
【カラテ】:3          【体力】:3/3
【ニューロン】:7       【精神力】:7/7
【ワザマエ】:8          【脚力】:5
【ジツ】:2(カナシバリ)   【万札】:??
近接攻撃ダイス:4
遠隔攻撃ダイス:9
回避ダイス:9

【装備品】:
▲バイオサイバネヘッド(軽度)
▽生体弾

【スキル】:
●連射2
●疾駆
●時間差
●マルチターゲット
◉スリケン急所破壊
◉タツジン:スリケン
○信心深い
■ご覧の通り、遠距離戦が得意なニンジャです。反面カラテは苦手なようで、協力者を募っていたのもそれを補うためでしょう。あなたはカラテに自信がありますか? なくてもきっとなんとかなりますよ。だってニンジャなんですから■
■さて、早速工場を探しましょう。「この辺りだとは思うんですけど……いかんせんジャングルですからね。特定には時間がかかるかも」キールバック=サンが困ったように呟きます■
■早速ダイスを一個振ってください。その出目によって以下のイベントが発生します■
出目1:地面に不自然な跡。掘り返してみると……未公開株券が埋まっていた! D6(6面ダイスを振り、その出目と同じ数)の【万札】を獲得せよ
出目2:「ウオーッ!」茂みからバイオパンダが現れた! 【カラテ】判定(自ニンジャの【カラテ】と同値のダイスを振って判定)せよ。出目4以上のダイスが一つでもあれば撃退に成功し【万札】1を獲得。失敗しても「SPIT!」キールバックが生体弾で片付けてくれる(この場合は【万札】獲得なし】
出目3:……特になにもおこらない! 探索を続けよう
出目4:アンタイ・ブディズムブラックメタリストの儀式跡と思しき魔法陣と、その中央に突き刺さるフランベルジュ(『ノダチ』相当の大型武器)を見つけた。必要であれば持ち帰ってもいい
出目5:ニンジャ第六感が警鐘を鳴らす! 【ニューロン】判定せよ。出目3以上のダイスがあれば成功。失敗した場合、お前は頭上から落下してきた影……バイオローチに身体中を這い回られ、【精神力】が1減少してしまう
出目6以上:お前たちはついに目的の廃工場を発見した! 早速侵入せよ(先に進む)
■出目6が出るまで探索ダイスを振ってください。え? そんなことをしていたらずっと工場にたどり着けないんじゃないかって? ご安心ください。探索ダイスで6以外の出目が出た場合、次の出目が+1されます。さらにこのボーナスは累積される(1回失敗なら+1、2回連続で失敗したら+2……といった具合に)ので、どんなに運が悪くても最終的にはたどり着けますよ■


◇◆◇◆◇


■さて、廃工場を見つけたら後は物資を回収して帰還するだけなのですが……「ちょっと待って」キールバック=サンがあなたを制止します。あなたもいちいち理由を聞き返すようなことはしません……廃工場入口前に立つ、三体のクローンヤクザを見つけたからです■
■「なんでこんなところに? ……どこかのヤクザが目をつけてた? ザッケンナ……」忌々しげに舌打ちしたキールバック=サンは、眉間にしわを寄せてあなたを見上げます。「早急に殺します。私が二人、あなたが一人。いいですね?」■
■そういうわけで【ワザマエ】判定です。目標出目は4以上。成功すれば「「「アバーッ!」」」キールバック=サンの放った水滴スリケンと同時にクローンヤクザを始末することができます。やりましたね! 「早くしないと! お姉さまへの贈り物が……!」キールバック=サンは早々に工場内へと向かいます。代わりに【万札】3を回収しておきましょう■
■……おや? クローンヤクザの胸元にある菱形のバッチ……それはもしや……!? キールバック=サンがアブナイかもしれません。急ぎましょう!■



■【ワザマエ】判定に失敗した場合「「アバーッ!」」「ザッケンナコラー!」BLAM! あなたがスリケンを外したために行かなかったクローンヤクザが反撃のチャカ・ガン銃撃!「もう! ええい、私は先に行きますから! 後は任せますよ!」キールバック=サンは罵りを残し工場内へ!■
■つまるところ、あなたは【カラテ】【ニューロン】【ワザマエ】のうちもっとも高いステータスと同数のダイスを振って銃撃の【回避】判定をする必要があります。目標出目は4以上。失敗すると【体力】が1減少してしまいます。もしここで【体力】が0になった場合、あなたは爆発四散します(キャラロスト)■
■回避に成功した、あるいは失敗しても耐え切った場合、あなたはクローンヤクザに反撃のカラテを仕掛け今度こそ殺します。ザンシンするあなたの耳に「……イヤーッ!……」「……イヤーッ!……」遠く響くカラテシャウト! まさか内部にニンジャが!? 急ぎましょう!■


◆◇◆◇◆


■「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」……ナムサン! 工場内では既にイクサが始まっているではありませんか。キールバック=サンと相対しているのは、焦茶色のニンジャアーマーを纏うニンジャです。あなたの姿を認めたそのニンジャは目を剥き、慌てた様子でアイサツします■
■「新手だと!? ドーモ! メルトダウンです! なぜこんなところにニンジャが……!」「それはこちらの台詞です! なんでこんなところにザイバツが潜んでるんですか!? チョコ工場ですよねここ!?」あなたの横にまで飛び下がったキールバック=サンが非難がましい様子で指摘! メルトダウンは……覚悟を決めたように目を細めます■
■「おのれ……だが貴様らごときサンシタ二人、この俺一人で充分よ。焼き尽くしてくれる!」メルトダウンが両拳を打ち合わせると同時、その拳が赤熱し始めます。カトン・エンハンスメント! あなたもまたカラテを構えます! イクサ、待ったなし!■
これ以降、プレイヤーのあなた……そう、あなたです……がこの三人のニンジャの行動をダイスで判定することになります。【ニューロン】の高い順番に行動していきますよ(同値だった場合はダイスを振るなどして順番を決めてください)■
■メルトダウン(種別:ニンジャ)
【カラテ】:4        【体力】:8/8
【ニューロン】:5       【精神力】:5/5
【ワザマエ】:3       【脚力】:1
【ジツ】:3(カトン)   【万札】:10
近接攻撃ダイス:5(カトン・パンチ使用時)
遠隔攻撃ダイス:3
回避ダイス:5

【装備品】:
*ヘヴィニンジャスーツ*
フルフェイスメンポ

【スキル】:
★カトン・パンチ
手番開始時に難易度NORMALで発動可能。
発動に成功するとその戦闘中の近接攻撃ダメージと近接攻撃ダイス数が+1される
■メルトダウンはこのようなニンジャです。最初の手番で『★カトン・パンチ』を発動させ(【ニューロン】+【ジツ】で判定します。出目4以上あれば成功)そのままあなたにカラテを挑んできます。キールバック=サンは援護のために距離をとっているからでしょう。カトン・パンチは痛くて熱いため、回避に失敗すると2ダメージを受けてしまいます■
■無論、キールバック=サンだってただ見てるわけではありません。「SPIT! SPIT!」水滴めいた生体弾を放ち、あなたを援護してくれます。9個のダイスを二分割し攻撃してください。彼女の射撃は精密であり、メルトダウンは二回の回避を強いられます。無論、あなたも攻撃するので彼は合計3回の回避を強いられます。数の利ですね!■
■また、あなたがメルトダウンの攻撃で危機に陥る(【体力】が2以下になる)と……「下がってて! 私が引き受けます!」キールバック=サンがあなたの代わりに回避を担当してくれるようになります。もし最初から【体力】が2以下だった場合、最初からメルトダウンの攻撃を引きつけます。彼女が回避に使えるダイスは9個もあるので、時間稼ぎになるでしょう■
■あなたは好きに攻撃して構いません。カラテでもスリケン(【ワザマエ】判定ですね)でも、持っているならジツでもいいです。ニンジャのイクサに出し惜しみは禁物ですよ■
■また【カラテ】判定で6の出目が二個以上出た場合「サツバツ!」が発生します。コアルール通りに処理してもいいですし、面倒であれば単に「ダメージ+1」と処理しても構いません。ちなみにキールバック=サンは所有スキル『◉スリケン急所破壊』により 、遠距離攻撃にも関わらず6の出目が二つ以上あった場合に与えるダメージが+1されます■
■このイクサは以下の条件のどれかを満たした時点で終了します■
1. メルトダウンの【体力】を0以下にし爆発四散させる(【万札】10を獲得できます)
2. あなたの【体力】が0以下となり爆発四散する(キャラロスト)
3. 5ターンが経過する(この場合、メルトダウンは逃走します)


◇◆◇◆◇


■ザイバツニンジャたるメルトダウンを撃退したあなたたちは、すぐさま工場内の探索に移ります(メルトダウン逃亡時も、キールバック=サンは工場内の物資探索を最優先します)。程なくして「あった!」キールバック=サンが嬉しげな声を上げました■
■彼女が抱えているのは、ダンボールいっぱいに詰められたチョコレート!「カチグミの連中が買い占めやがるから、調理する分が手に入らなかったんですよ! 読みが当たってよかった……これだけあれば、お姉さまに相応しいチョコを……」うっとりとしていた彼女は、あなたの視線に気づいて咳払いします■
■「え、エート……オツカレサマデシタ。あなたのおかげでザイバツニンジャとのイクサも楽ができましたよ。報酬は振り込んでおくので確認してくださいね」軽い足取りで出口へ向かおうとしたキールバックは、ふと思い出したように言った。「あなたも持っていったらどうですか、チョコレート。最近品薄なので、需要があるかもしれませんよ」■
■……というわけで、以下が報酬獲得となります■
【万札】15, 【余暇】4, チョコレート(消耗品。使用すると【体力】が1回復)


◇エンディングとおまけ◇

■さて、トコロザワ・ピラーに戻ってきたあなたは持ち帰ったチョコをどうするか考えていました。そのときです。「あ、あのう……」■
■おずおずと声をかけてきたのは、ゴシック・ニンジャドレス装束の少女ニンジャ。身なりや立ち振る舞いからして、あきらかにカチグミです!「ど、ドーモ。チェインドッグです。その……それ、チョコレートですよね? あの、エット、その……い、いくらかお譲りしていただけませんか? 必要ならおカネも支払うので…….!」■
■思わぬ需要が見つかりましたね。あなたは寛大にチョコレートを譲ってあげてもいいですし、いくらかカネを要求してもいいです(目の前のニンジャは実に気弱そうなので、押し通せるでしょう)。もちろん、譲らないという選択もありますよ■
選択肢1:丁重にお断りする
選択肢2:寛大にチョコを分けてやる
選択肢3:売りつける


(選択肢1を選んだ場合)
■「そ、そうですか……そうですよね……ご、ゴメンナサイ! 忘れてください!」チェインドッグ=サンはやや意気消沈しながらも、逃げるように去っていきました。あなたは改めてチョコの使い道に思いを馳せます(特になにも起こらない。終わり)■


(選択肢2を選んだ場合)
■元より使い道を思いつかなかったのか、それともこの少女ニンジャに己の寛大さを誇示したかったのか。あなたは快くチョコレートをチェインドッグ=サンに渡しました。「エッ、いいんですか!? あ、アリガトゴザイマス! これで友達にチョコレートが作れる……!」■
■嬉しげにチョコレートを受け取ったチェインドッグ=サンは、思い出したように懐から古びたマキモノを取り出しました。「その、これ……この間見つけたものなんですけど、よろしければ……」思わぬトレードとなってしまいましたね。あなたは*マキモノ・オブ・シークレット・ニンジャアーツ*を獲得します■
■持て余したものが思わぬ品となったものです。予期せぬワラシベを体験したあなたは、気持ちよくトコロザワ・ピラーを後にしました(終わり)■


(選択肢3を選んだ場合)
■カネを払うと言っているのだから、払ってもらおう。そう決めたあなたはチェインドッグ=サンにチョコの値段を提示します。【万札】1(ほとんど相場です)から12の間の好きな値段をつけてください。どんなに高くてもチェインドッグ=サンはチョコを購入してくれます■
■「よ、よかったぁ……あの、アリガトゴザイマシタ!」ほっとしたような笑顔とともに、チェインドッグ=サンは立ち去っていきます。思わぬ収入にあなたも顔を綻ばせトコロザワ・ピラーを後にしました。その途中、セーラー服の少女とすれ違ったことなど気づきもしません■
■……唐突ですが、6面ダイスを2つ振ってください。その出目の合計はどうなりましたか? あなたがチェインドッグ=サンに吹っかけた値段より大きい? それはよかった! あなたは気持ちよく今日の儲けをなにに使うか考えられるわけです(終わり)■
■……もし出目の合計がチェインドッグ=サンに吹っかけた値段以下だった場合……あなたは後日、スカウト部門に呼び出されます。「ドーモ。ディスグレイスです」呼び出した張本人、改造ミコー装束の女がアイサツします。ひょっとしたらあなたは彼女の目がまるで笑っていないことに気づいたかもしれません■
■「聞きましたよ? チェインドッグ=サン……わたくしの預かりなのですけれど……彼女に、法外な値段でチョコレートを売りつけたとか」ナムアミダブツ! いったいどこから聞きつけたのでしょう!? ディスグレイス=サンはニッコリと笑いました。「その腐った性根、叩き直します。トレーニンググラウンドに来なさい!」■
■ナムアミダブツ、おお、ナムアミダブツ。あなたはディスグレイス=サンから徹底的なシゴキを受けることになりました。そうそう甘い話は転がっていないということですね! 次回シナリオ開始時、あなたの【体力】と【精神力】は-2されます(最低値は【体力】1と【精神力】0です)。その代わり、【カラテ】【ニューロン】【ワザマエ】のうち好きな能力を+1できますよ■
■なお、ああ見えてディスグレイス=サンは強力なカラテの持ち主です。もしあなたの【カラテ】が6だった場合、成長の壁を超えて【カラテ】7まで上昇させることができます。なお、代償として次回シナリオ開始時の【体力】が1、【精神力】が0になります■
■……極度の疲労でトレーニンググラウンドに倒れたあなたの意識が薄れていきます。甘いものが食べたい。しかし、きっと自分にそんなものを渡してくれる存在などいないだろう……諦念にも似た思いを最後に、あなたの意識は途切れたのでした(終わり)■


◇あとがきな◇

 というわけで、季節もののソロシナリオを体験していただいた。仕様上ダイスを振る機会が多くなってしまうものの、それ相応のリターンがあるようにしたつもりだ。

 なお見ての通りキールバックは【ニューロン】と【ワザマエ】が成長の壁を突破している。必要であればあなたのニンジャの成長の壁突破指南役として使ってもらって構わない。

 それではここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました! 気が向いたらまたやるよ!





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