忍殺TRPGソロリプレイ【アタック・オブ・ツー・サーペンツ】余暇編

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はしかながシナリオを遊んだ結果を元に作成したテキストカラテ……一般的にリプレイと呼ばれるものとなります。

 そして続き物です。前回のエピソードはこちら。

 前回はヤクザ事務所の『掃除』を終えたところまで。今回はそこで得られたリザルトの精算や余暇を描いていきます。

 ではやってみよう。よろしくおねがいします。


◇リザルト◇

これまでのあらすじ:ソニックブームの指令によりブラッドカタナ・ヤクザクランの『掃除』に赴いたソウカイニンジャ、ディスグレイスとキールバック。ヤクザクランの虎の子でもあった傭兵ニンジャ『ブラックマンバ』を爆発四散せしめた彼女達は、見事グレーターヤクザのキヨシの首を持ってトコロザワ・ピラーへ帰還したのだった)

「まあ、まあ、まあ!」

 報告を終え、主人を失ったヤクザ事務所へと戻ってきたディスグレイスは嬉しげに声を上げた。ソニックブーム筆頭の手配したソウカイヤクザはよほど力を入れてくれたらしい。ゴアめいた血痕やヤクザの死体はもはやなく、新品同様に掃除された応接間が彼女を出迎えたのだ。

「他の部屋も綺麗にしてくださってるみたいです。実際ありがたいですね」

 一通り事務所を見て回ってきたキールバックが淡々と報告する。しかしその顔には隠しきれない微笑が浮かんでいた。無理もあるまい。今日からこの事務所が『お姉さま』の物となるのだから。

 にこにこと満面の笑みを浮かべていたディスグレイスは、思い出したかのように足踏みをする(彼女の右腕はバイオ触手に置換されているため、手を打つことができないのだ)。

「ああ、そうだ! 浮かれてばかりもいられませんね。今回の収穫を整理しなくては」

「ハイ。こちらに」

 キールバックが抱えていた荷物を応接間中央クリスタルテーブルの上へ。黒い革張りソファへ腰を下ろしたディスグレイスは、早速検分を開始する……

■事務所襲撃リザルト■
【万札】:29
メン・タイ→売却 【万札】29→30
ショドー×2→売却 【万札】30→34
記憶素子→売却 【万札】34→39
トロ粉末→売却
1d3 → 2 【万札】39→41

「このあたりは売り払ってしまって構わないでしょう」

「異議ありません。……こちらはどうしますか? 相当の年代品ではありそうですけど」

 言ってキールバックが指し示したのは赤漆塗りの鞘に納められたカタナ。ブラッドカタナがその象徴として宝物庫に収めていた業物である。

 ディスグレイスは視線でカタナを抜いてみるよう促した。キールバックが刀身を見せると同時、わずかに周囲の大気が震えて甲高い音を響かせる。

 その様をまじまじと見ていたディスグレイスは結論した。

「それは残しておきましょう。実用にも耐えられそうです。……そうだ、貴女が使ってみては?」

「私が?」

「ええ。貴女のニンジャ器用さであればカラテよりはイアイの方が適していそうですし」

「……ではありがたく」

 キールバックはブラッドカタナを鞘へ戻し、恭しく一礼。ディスグレイスは微笑した。優秀な妹分には相応の得物が必要だ。あのカタナはそれに足る。

*ブラッドカタナ* :キールバックが所有、装備



◇模様替えな◇

「あ、あの……」

 背後からかけられたか細い声に、ディスグレイスは微笑とともに振り返る。そこには儚げなアトモスフィアのオイランの姿。スズリである。

 彼女は結局、この事務所を去らなかった。元々はブラッドカタナ・ヤクザクランと敵対するヘルカーネージ・ヤクザクランから攫われたのだという。その時の誘拐者がブラックマンバ。故に、ニンジャの恐ろしさを知っていたというわけだ。

「ドーモ。なにかお困りですか? スズリ=サン」

「い、いえ。その……私、本当にここに残らせていただいても……」

「もちろんですとも! 貴女が選んだ道なのですから。わたくしは拒むつもりはありません」

「アリガトゴザイマス……!」

 スズリが安堵のため息とともにオジギ。その奥ゆかしい様子へ、ディスグレイスは微笑混じりの視線を向けた。予想の範疇。彼女のようなオイランが元のヤクザクランで受けていただろう待遇と、己を助けた自分を天秤にかけどちらを取るか? 結果はご覧の通りというわけだ。

 ディスグレイスはじゃじゃ馬を慣らすのが好きだ。だがそれは従順な駿馬に興味がないということではない。温情めいた打算で他人の生き方を縛ることも彼女の好みというだけのこと。

「あ、あと! 頼まれていた買い物を済ませておきました。木人と香炉。既にドージョーと電算機室に運び込んでもらっています」

「ウフフ! アリガト、スズリ=サン。気が利きますね……ミコチ=サンは?」

「……その、自発的に……私のいた部屋へ……よいのでしょうか?」

「彼女の選んだ道です。そうさせてあげなさいな」

 慣らしたじゃじゃ馬もちゃんと言うことを聞いてくれている。なんとも愉快なことだ。ディスグレイスは笑みを深めた。後で少し遊んでやるとしよう。

木人・香炉を購入:【万札】41→39
オイラン(スズリ)をミニオンとして獲得
ミコチはとりあえず牢屋へ
模様替え後の【万札】を以下のように山分け
ディスグレイス【万札】2→21
キールバック【万札】1→21

画像1


◇余暇一日目・二日目◇

「さて! 早速申し訳ないんですけれど、頼まれて欲しいことがあるのです」

「は、ハイ。なんなりと」

 ディスグレイスはスズリに言う。やや緊張が混じる初々しい姿に頬を緩めつつ、キールバックを一瞥。

「キールバック=サンとともに事務所を空けます。留守番をお願いできますか? 念のため、わたくしのほうで数人ほどニンジャを呼んでおきますので」

「は、ハイ。ヨロコンデー」

「私も? なにかミッションですか?」

 キールバックが訝しむ。ディスグレイスは苦笑し、首を横に振った。

「せっかくまとまったカネが入ったのです。一緒にオンセンでもいきませんか?」

 妹分の表情がパッと明るくなるのを見て取り、ディスグレイスは嬉しく思った。たまには仕事抜きでも二人きりで寛ぐべきだろう。……厳密には単なる休暇にするつもりもないのだが。


◇◆◇◆◇


 その日の夕方! タマチャン・ジャングル内に位置するオンセン旅館「ユノクトヒ」! 今日の疲れと汗を流し落とすため、ディスグレイスとキールバックは早速ともにオンセンに浸かっていたのだった!

「ふふ……相変わらずいい湯ですね、ここは」

「ええ。……その、お姉さま。宿泊代の件なのですけれど」

「もう話はついたでしょう? わたくしが2、貴女が1です。この旅館にいる間、貴女はわたくしのセンセイなのですから」

 ディスグレイスに寄り添うキールバックが顔を赤くして俯く。湯に当たったか、照れか。はたまたその両方か。ディスグレイスはそっと少女の肩をを抱き寄せる。数々のイクサを乗り越えたニンジャとは思えぬほどその身体はか細い。

 抵抗することなく自分の身に頭を預けてくる少女を愛おしく見下ろし、ディスグレイスは言った。

「貴女の指導力を見る良い機会でもありますからね。シャープキラー=サンにも稽古をつけたのでしょう?」

「け、稽古だけです! それ以外のことはなにも!」

「あら、そう? わたくしとしては、あなたがそちらの経験を積んでいてもよかったのだけれど」

「からかわないでください、お姉さま……私の愛は貴女に向けるだけで精一杯なのです」

「ウフフ! カワイイ」

 ディスグレイスは優しく少女の頭を撫でる。彼女のバストは豊満である。気持ち良さげに目を細めるキールバックに、ふと尋ねた。

「冗談はさておき。シャープキラー=サンと過ごして、どうでしたか? なにか思うところは?」

「……ンン……その、笑われるかもしれないのですけど……」

「言ってみなさい」

「……あの女。示し方が相当に回りくどいだけで、お姉さまに対する思いに裏はないのではないかと。カラテを交わしてそう思いました」

 成る程、とディスグレイスは納得する。どうやら感じるところは同じ。自分だけでは贔屓目もあるかと思っていたのだが、距離を置いていたこの子がそういうのならばおそらく間違いはないのだろう。

「少し扱い方を変えてやる必要があるかもしれませんね……」

 その呟きは湯煙の中へと消えていった。


◆◇◆◇◆


 褥を共にした翌朝。バイオバンブーの葉擦れの音を聞きながら、ディスグレイスとキールバックは向き合いザゼンする。

 かつて岡山県で手に入れたマキモノから得た教えを、キールバックは既に自身のニューロンへ刻み込んでいるようだった。始めこそ慣れぬ様子でそのインストラクションを口ずさんでいたものの、語り終えた今は無心である。

 ディスグレイスはその静かさを好ましく思った。内省の時だ。少女の声がマントラめいてニューロンを駆け巡る……

ディスグレイス:ニューロン特訓withキールバック
ディスグレイス【万札】211
キールバック【万札】2111
1d6 → 5 成功
ディスグレイス【ニューロン】67、【精神力】56
『●マルチターゲット』『●時間差』取得


◇余暇三日目◇

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

 オンセン旅行帰還の翌日! ディスグレイスとキールバックは早速無慈悲なカラテを振るっていた。その相手は単なるヨタモノではない。ヤクザ!

 適当にバイオ触手で巻き取ったレッサーヤクザを無造作に壁に叩きつけつつ(「アバーッ!?」)、ディスグレイスはドゲザするグレーターヤクザを見下ろした。

「それは恭順のサインですか? それでわたくしが許すとでも? ソウカイヤに守られているにも関わらず、火事場泥棒に訪れた塵芥以下のヤクザを?」

「スンマセン! スンマセン! オヤブンの命令は絶対なんで……!」

 最後の一人をカラテで気絶させたキールバックが、ディスグレイスの横に並び氷めいた眼差しを向ける。(殺しますか)(否。仮にもヘルカーネージの連中ですからね)

 なにが起こったか? 簡単なことだ。なし崩し的にネンゴロとしていたオイランに出奔されたヘルカーネージ・ヤクザクランが血迷ったのである。ソウカイヤへアサシン派遣を依頼しておきながら、彼らはあまりにもそのカラテを舐めていたのだ。

「……このことは上層部に報告します。追って次第を待ちなさい」

「そ、そればかりは……!」

「誠意が見られませんね。誠意が」

 キールバックが冷たく言い放つ。そのバストは平坦であった。ともあれ、ヤクザであればその限外の意味は察知したことだろう……カネである。それでテウチにしようというのだ。

 もっともこれは彼女の独断ではない。ディスグレイスとも打ち合わせ済みのことである。仮にもソウカイヤ傘下である以上、無闇に処分するわけにもいかないのだ。

 震える手で差し出された万札を奪い取り、勘定を始めるキールバック。それを横目に、ディスグレイスはドゲザヤクザを見下ろした。

「今後、この界隈への立ち入りを禁じます。破ったが最後……貴方だけでなくクランそのものを掃除にしにいきますからね」

 ドゲザグレーターヤクザは静かに失禁した。

ディスグレイス&キールバック:モータルハント
ディスグレイス:1d6 → 4
【万札】 1 + (10 - 4) → 7
キールバック:1d6 → 2
【万札】 11+(10-2) → 19


◇余暇四日目、そして……◇

「フゥーム……」

 事務所の電算機室でザゼンを終えたディスグレイスは大きく伸びをした。いずれはこの部屋にもカケジクかなにかを用意したいものだ。マンション『せなまし』に飾ってあるものを持ってくるという手もあるとはいえ、ちゃんとトレーニングできる場所を複数用意するのは後続のためにもなる。

ディスグレイス:ザゼントレーニング
【万札】7 → 1
2d6 → (5, 6) = 11 > 8
【ニューロン】7 → 8 【精神力】 6 → 7

 しかし、と彼女は考える。こうしてザゼンに打ち込んでみると、自分の身に宿るニンジャソウルの悪影響が見えてくるように思う。ジツの制御にも多少の影響が出ているのではないか。折を見て向き合う必要があるかもしれない。

 KNOCK KNOCK! 「ディスグレイス=サン、お客様です」

「……? ハイ、今行きます」

 ノックとともにドア向こうから投げかけられたスズリの声に、ディスグレイスは首を傾げつつ立ち上がる。ここが自分の所有となってまだ数日。訪れるような相手など……


◇◆◇◆◇


 黒の皮張りソファに腰を下ろし、スズリと談笑していたスーツの男を見て、ディスグレイスは一瞬だけ口元を引きつらせた。それに気づいた男は立ち上がり、柔和な笑みとともにオジギする。

「ドーモ。ディスグレイス=サン。フマトニです。いつもお世話になっております」

「ア……ど、ドーモ……その、スズリ=サン。オチャを用意していただけるかしら」

「ハイ、ただいま」

 恭しく一礼し、ぱたぱたと小走りでキッチンに向かうスズリ。ディスグレイスは深呼吸をして男の対面に座る。彼はもはやその笑みを消し、カタナめいた眼差しを向けていた。

「いいご身分じゃねェか、エエッ? 誰のおかげでこんな立派な生活できてると思ってんだ?」

「……ソニックブーム=サン。来るなら来ると言ってください! 心臓に悪い……」

「ハ! こんなことで止まるほどヤワじゃねえだろテメェは」

 フマトニ……否。ソウカイヤスカウト部門筆頭、ソニックブームは獰猛に笑った。何事か切り出そうとした彼は、ふと応接間の玄関口を見やる。そのコンマ数秒後!

「ただいま戻りました! 見てくださいお姉さま、ブラックマーケットでこんな掘り出し物……ッ!? シ、シツレイしました! お出でとは知らず!」

 買い物を終えて戻って来たキールバックが、ソニックブームの姿を見て慌てふためく。ソニックブームは気のない様子で手を振り、少女が体に巻きつけたものを見やる。

「そりゃそうだ、アポなしだからな……クナイベルトか? いいモン見つけたな。大事にしやがれ。で、ちょうどいいからテメェもそこで聞け。ビズの話だ」

キールバック:ブラックマーケットで買い物
【万札】19 → 9
*クナイベルト*獲得

 二人のニンジャが姿勢を正すのを確認してから、ソニックブームは淡々と言った。

「今度のビズは……少なくとも、ここの掃除よりかは歯ごたえがある。ターゲットはこいつだ」

 言ってクリスタルテーブルの上に放り出されたのは、女子高生と思しき少女の写真。ディスグレイスは怪訝に目を細め、上司を見やる。彼は口元を歪めた。

「ちっとは嬉しそうな顔してみせたらどうだ? テメェにお誂え向きの仕事なんだからよ」

「……となると、ニンジャですか」

「ソウカイヤに楯突く身の程知らずだ。ヤサは割れてる。捕獲してこい……俺がここでチャを啜りながらスシを食ってる間にな」


【アタック・オブ・ツー・サーペンツ】終わり


◇あとがき◇

 新居を手に入れるばかりでなく、妹分と一緒にオンセンに行ってニューロンの壁を突破したディスグレイス。これはソニックブーム=サンに揶揄されてもしかたないのでは?

 さて、二人の最終的な能力はこうだ。

ニンジャ名:ディスグレイス
【カラテ】:8(+1)       【体力】:18/17
【ニューロン】:8       【精神力】:8/7
【ワザマエ】:4         【脚力】:5
【ジツ】:6(カナシバリ)   【万札】:1
近接攻撃ダイス:9
遠隔攻撃ダイス:4
回避ダイス:9

【特筆事項】:
【名声】:10
『ニンジャソウルの闇:ソウルの悲鳴』
オンセンボーナスにより【体力】と【精神力】+1

【サイバネ】:
▲バイオサイバネ腕(片腕)
▽吸血バイオ器官

【スキル】:
●連続攻撃2、●時間差、●マルチターゲット
★カナシバリ・マスタリー
★ブンシン・ジツ(Lv3)
★レッサー・イビルアイ
★★コブラ・ゲン・ジツ
★★★半神的存在:
このニンジャの【体力】は【カラテ】+【ニューロン】となる
★★★不滅
○信心深い

【説明】
 右腕を五本の冒涜的バイオ触手に置換したニンジャ。
 バイオ触手と強力なカナシバリ・ジツで相手を束縛・屈服させることを好む。
 元は自らの性的嗜好を苦に自殺を試みたミコー。現在はもはや堕落あるのみ。
ニンジャ名:キールバック
【カラテ】:3          【体力】:4/3
【ニューロン】:7       【精神力】:8/7
【ワザマエ】:8          【脚力】:5
【ジツ】:2(カナシバリ)   【万札】:9
近接攻撃ダイス:4
遠隔攻撃ダイス:10
回避ダイス:9
【特筆事項】:
【名声】:6
オンセンボーナスにより【体力】と【精神力】+1

【サイバネ】:
▲バイオサイバネヘッド(軽度)
▽生体弾

【装備品】:
*ブラッドカタナ*
*クナイベルト*

【スキル】:
●連射2、●疾駆、●時間差、●マルチターゲット
◉スリケン急所破壊
◉タツジン:スリケン
○信心深い

【説明】
 ディスグレイスに拾い上げられたストリートチルドレンのニンジャ。
 カラテには乏しいものの、持ち前のニンジャ柔軟性とニンジャ器用さで立ち回る。
 ディスグレイスを姉と呼び慕う。ある種狂的な忠誠心の持ち主。

 さて、サンプルシナリオの続きということで次回は彼らの自宅に殴り込みだ。オタノシミニネ!


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