忍殺TRPGソロリプレイ【レッド・ファイト・クラブ】その3

◇簡単な前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はしかながソロシナリオを遊んだ記録をテキストカラテにした、いわゆるリプレイ記事となります。気楽に読めるよ。

 付け加えるならば続き物であり、前回のエピソードはこれ。

 カニを獲るついでにイッキ・ウチコワシの戦闘員を皆殺しにする一幕もあったものの、あとちょっとだけ航海は続くのだ。ではいってみよう。よろしくおねがいします。



◇一ヶ月経過◇

「「「ヨイショ! ヨイショ!」」」

 乗組員たちは今日も息を合わせ、手慣れた様子でカニキャッチ漁に励む。それを後方で見守るレッドブーツは満足げに頷いた。漁が始まってからの欠員、いまだ一名のみ。漁獲量もそこそこ。彼らもヤルキを見せてきたか。

【カニキャッチ】判定(難易度NORMAL)
7d6 → 1, 2, 3, 4, 4, 4, 5 成功数4
【カニ】14 + 4 → 18

『あともう少しカニが獲れたら、ネオサイタマに帰れるかもしれないね』

「フフ……うん、そうだね。そのときはきっとキミに……」

「アイエッ!?」

 レッドブーツの夢見心地は、乗組員の一人である無軌道大学生の短い悲鳴に破られた。眉をひそめ、彼の元へ。

「どうかした?」

「アッ、スミマセン! その、あれ……」

「うん? ……バイオサメか」

 海面に覗く巨大なヒレを見て、レッドブーツはそう判断した。カニキャッチを終え見物に集まった乗組員たちを手振りで下がらせる。バイオサメは凶暴であり、この距離ならば飛びかかってこちらを食いちぎりにくる可能性がある。

「殺しとこう。下がってな」

 ドシュッ! ヒキャクより放たれる鏃めいたスリケン! それは波間に漂うヒレの持ち主目掛けて真っ直ぐに飛び「アバーッ!」SPLAAAASH!

 大きな飛沫を上げ影が跳躍!「「「アイエエエ!?」」」驚き離れる乗組員たちの頭上を飛び越え、甲板のど真ん中に転がり込む! レッドブーツは訝しんだ。たしかにそれはバイオサメめいたヒレを持っている。だが手脚を備え、藻屑の奥からニンジャ装束を覗かせるバイオサメなど聞いたことがない。

「ハァ? バイオニンジャ? なんでこんなところにいるんだよ……ドーモ。レッドブーツです」

「アババーッ!」

 乗組員が充分に離れたことを確認したレッドブーツはオジギを終え、カタナに手をかける。が、相手はアイサツすら返さない。否、返せないのだろう。「アバッ、アババッ……」力なくもがくのみ。既に瀕死。バイオインゴット欠乏症だろうか。

『バイオインゴット? アハッ、スゴイ偶然だねレッドブーツ=サン』

「ン……あ、そうか」

選択肢2:バイオインゴットをくれてやる

 優しい囁きに記憶が引き上げられる。レッドブーツはモニタルームにほど近い位置にいたブラックメタリストへ声をかけた。

「そこのキミ! ハッカーに声かけて、アタッシュケースもらってきて」

「あ、アッハイ……」

 ……数分後。アタッシュケースから取り出したバイオインゴットを、レッドブーツは無造作にバイオニンジャの鼻先に置いた。

「アバッ……? し、シャァーッ!」

 迷うことなく食らいつくバイオニンジャ! 乾いた視線で見守るレッドブーツの前で、あっという間にインゴットを消費したそのニンジャは立ち上がり、丁寧にアイサツする。

「シャァーッ……助かった! 礼を言う! ドーモ。シャドウイーターです」

「ドーモ。少しでも妙な真似をしたら殺す」

「せんよ、そんなことは」

 バイオサメニンジャ……もといシャドウイーターはキョトンとした顔でレッドブーツを見つめる。腹が満ちているためか、見た目よりはおとなしい。

 そう思えたのも一瞬だ。シャドウイーターは思い出したようにうろたえ始めた。

「そんなことはどうでもいい! お、お前たち、今すぐここから立ち去るんだ!」

「なに、海の守護者気取り?」

「違う! 私は……わ、私は恐ろしい……脱走なんてするんじゃなかった。ヨロシサンのイケスで大人しく一生を過ごすべきだったんだ……」

 頭を抱え始めるシャドウイーター。そのバストは豊満である。レッドブーツは頭の横で指をくるくると回し状況判断。まるで要領を得ないものの、どうやらこのあたりに恐ろしいなにかがいるのは確からしい。

「よし、わかった」

「おお、わかってくれたか!」

選択肢1:危険を承知で漁を続ける

 ここから離れられると考えたのだろう。シャドウイーターが顔を輝かせた。レッドブーツはにっこりと笑い、宣言する!

「漁を続行する! 乗組員諸君は船室に戻って身体を休めること! いいね!」

「「「アッハイ」」」

 乗組員たちは特に疑問に思わぬ様子でぞろぞろと船室に戻っていく。シャドウイーターがぽかんと口を開けた。鋭い牙がいくつも並ぶが、特に恐ろしくはない。すぐに彼女……だと思う……はレッドブーツに縋り付いた!

「な……ナンデ!? 危険だと言ってるのに! お前たちネオサイタマから来たのだろう!? 帰ればいいじゃないか! 私を連れて!」

「細かい事情は省くけど、ボクらこのまま帰ったら死ぬより酷い目に遭うんだ。カニが足りないからね」

 レッドブーツの結論はシンプルだ。今のカニ収穫では到底ラオモト・カンを満足させることはできまい。待ち受ける危機は回避できる可能性はある。が、このまま帰って待つ未来は避けようがない。故に前者だ。

 硬直するシャドウイーターの肩を、レッドブーツは満面の笑みとともに叩く。

「なに、安心しなよ。カニが集まったらすぐにでも帰還する。だからキミも頑張ってくれよな」

「……エ? 私も? エット……?」

「キミ、まさかあのバイオインゴットを食い逃げするつもりだったのか? この船でタダのものなんてないんだぞ」

 唖然とするシャドウイーターの腕を引きずり、レッドブーツは彼女を船室まで連れて行くのだった。


◇???◇

 バイオサメニンジャのシャドウイーターを労働力に加え、『ケジメを迫るヴィーナス号』は危険地帯(シャドウイーターの情報提供より判断)に突入した。空は暗く、遠くになる雷鳴が不穏なアトモスフィアを運ぶ。

「一雨来るかな」

「デスネー」

 レッドブーツとハッカーの間にも、やや緊張が走る。オー……風だろうか。奇妙な音が周囲に木霊した。

「ん……」

 レッドブーツは眉をひそめる。ニンジャ第六感が嫌に騒めく。モニタ越しに見えるのは巨大な岩塊だ。……岩塊? こんなところに?

「おい、進路を変えろ。このままだと衝突するぞ」

 ハッカーに警告する。返答なし。レッドブーツはわずかに苛立ち、彼を睨んだ。ハッカーは……蒼白だ。小刻みに震えている。酷い脂汗だ。

「……おい」

「か、変えてます。とっくに。逸らしてるし、曲がってる。けど……けど、アレ追ってくるンスよ! なんなんすかアレ!?」

「……オー……」

 前方から響く声に、レッドブーツはゆっくりとモニタに向き直る。然り、声。彼女は気づいてしまった。これは眼前の存在が発する唸りだ。急に目の前のそれがなんであるか理解できた。

 端的に言えば巨大なカメだ。ただその顔は奇妙に老いを感じさせる獅子のもので、波間に蠢く巨大な脚はどうやら六本。尋常の存在ではない。わかる。わかってしまう。これは……

「ハァー……マジか」

 諦念めいた声が漏れる。レッドブーツの口元が引きつった。眼前のそれは……ニンジャである。恐らくは太古からずっとあり続けているであろうもの。抵抗すらしたくなくなるほどに強大。ナムアミダブツ。レッドブーツは今、そのニンジャと目が合ったのを理解した。

【精神力】判定(難易度HARD)
シャドウイーターの情報提供によりダイス+1
3d6 → 2, 5, 6 成功

「こういうのこそ幻覚であるべきだよな……理不尽だなあ……」

『アハッ! ガンバロ、レッドブーツ=サン』

「わかってる。ウン、ダイジョブ」

 レッドブーツは少女の幻影に笑いかける。その向こうに透けて見えるハッカーが、この世の終わりのような表情を浮かべているのが妙に滑稽だった。

「れ、レッドブーツ=サン……?」

「ハァーッ……シャキッとしろよ、キミ。あんなカメにビビって死ぬの、たぶん最悪だぞ」

「……デスネー」

 無味乾燥な会話が、ギリギリでハッカーを正気につなぎとめた。レッドブーツは振り返る。いつの間にか隣の船室からシャドウイーターを始めた労働力たちが顔を覗かせていた。面倒なことだ、と彼女は考えた。貴重な労働力をこんなところで発狂させてたまるものか。

 なにか気を逸らしてやる必要がある。なにかないか。レッドブーツはふと、あの子がモニタにかぶりついて旧いニンジャを興味津々に眺めていることに気がついた。その岩山めいた甲羅を。そこな蠢く、紅い……

「……カニだ」

「「「「「エッ?」」」」」

 その場にいる全員が、レッドブーツの呟きを理解した。おお、読者諸氏も気を確かに持って観察せよ! 旧いニンジャの甲羅にしがみつく無数のカニたちの姿を! ゴウランガ! おお、ゴウランガ!

 シャドウイーターがおずおずと口を開く。

「そ、そのう……レッドブーツ=サン、今はそれどころでは」

「「「「ウオオーッ!」」」」

「アイエッ!?」

 突然モニタルームに響いた雄叫びに、シャドウイーターは身を竦ませる! 他の乗組員たちによる喝采だ!

「カニだァーッ!」「しかもあの量!」「ボーナス地帯!」「「ヤッター!」」「シマッテコーゼ!」「ウオオーッ!」

 ナムアミダブツ。彼らのニューロンは既にカニキャッチ調律済みであった。シャドウイーターが気圧されたように半歩下がる。

「え、エエーッ……」

「よォし! いつもの通りカニキャッチだ。命かけろ! 帰って全臓器ケジメだのロクでもないテスターだのやりたくないんならな!」

「「「「ウオオーッ!」」」

 檄を飛ばしたレッドブーツが勢いよく立ち上がり、甲板へ! 呆気に取られていたシャドウイーターが目を見開く。

「れ、レッドブーツ=サン? どこへ……」

「まずボクが命をかける。あのカメと遊んでくるから、こぼれたカニを拾え」

 シャドウイーターの思考が数秒間停止した。慌てて止めようとしたときにはもう遅い! レッドブーツは勢いよく駆け出し、降り出した雨の中巨大なニンジャと相対する!

 彼女は宙を見た。朧な少女が浮かび、手招きしている。夢見るような微笑とともに彼女は跳躍した。

 ……船を狙っていた怪物は、無謀にも飛び出したカトンボめいたニンジャに目を奪われた。「オー……!」反射的に食らいつく!

【ワザマエ】判定(難易度U-HARD)
7d6 → 1, 3, 4, 4, 4, 6, 6 成功!

 ……痛いほどの無音の中、レッドブーツは差し伸べられた朧な手を取った。彼女は踊ろうとした。いつものように。

 無論、怪物は知らぬ。彼女が既にある種の狂気に侵されていることなど。怪物には見えぬ。彼女の狂気の産物など。故にカトンボめいたそのニンジャが、紙一重で自らの牙を回避したようにしか捉えられない。

 怪物の頭の上に着地したレッドブーツは勢い余って何度かステップを踏み……怪物の身じろぎによって船上に落下していくカニの姿を見て別の狂気に帰った。彼女は叫ぶ!

今だッ! 獲れッ!」

「「「「ウオオーッ!」」」」

 乗組員全員が甲板に突貫! 唯一モニタルームから恐々と様子を伺うバイオサメニンジャを見咎めたレッドブーツはさらに声を張り上げる!

「なにやってる! キミもだぞシャドウイーター=サン! バイオインゴット分は働いてみせろ!」

「し……シャァーッ!」

 シャドウイーターがヤバレカバレに乗組員たちのカニキャッチに加わる! レッドブーツは視線を戻した。朧な少女はすぐそこにいる。満面の笑みだ。かつてレッドブーツが憧れたときと全く同じ。

『アッハハハハハ! スゴイよ、レッドブーツ=サン! 大漁だ!』

「ハハハ! ハハハハハハハッ!」

 レッドブーツも声を上げて笑う。彼女がバランスを崩すことはない。頭上のカトンボを払い落とそうと躍起になる怪物の思惑を嘲笑するかのように、彼女は笑い続け、踊り続けた。少女の幻とともに。

【カニキャッチ】判定(難易度NORMAL)
8d6 → 1, 3, 3, 4, 4, 4, 5, 6
【カニ】18 + 6 + 7 → 31

『……ガガッ……レッドブーツ=サン! カニキャッチ完了です!』

 インカムからの声がかろうじてレッドブーツを繋ぎ止めた。「イヤーッ!」レッドブーツは跳躍し、『ケジメを迫るヴィーナス号』の甲板に難なく着地! ゴウランガ!

「稼げたかッ!?」

「「「「大漁です!」」」」「し、シャァーッ!」

「よし! 転進! 全速!」

『アイアイサー!』

 ドッ、ドッ、ドッ……『ケジメを迫るヴィーナス号』が黒い煙を吐き、全速力で怪物から……危険海域から離れていく。オー……古のニンジャは恨めしげな声を上げ、海の中へと沈んでいった。


◇◆◇◆◇


 ……数十分後。束の間の熱狂から解き放たれ、力なく甲板上に転がる乗組員たち。その中、レッドブーツはザンシンを崩さない。起き上がったシャドウイーターが恐る恐る声をかける。

「れ、レッドブーツ=サン? 大丈夫か?」

「…………キミさぁ」

「シャッ?」

「もっと具体的に説明しろよ……」

 レッドブーツは不意に尻餅をつく。そして力ない笑みをシャドウイーターに向けた。

「ちゃんと説明してくれればキミ、ボクだって時間がかかっても別の場所とか手段とか……」

「す、スマン」

「ハァーッ……いいよもう。ボクは休む。これからネオサイタマだ……予想外に燃料を使っちゃった……なんとかなるだろ、たぶん……」

 積み上げられたカニコンテナの数を思い出し、レッドブーツは安堵の笑みを浮かべる。ふと気づいたやつに周囲を見渡した彼女は、至極残念そうに溜息をついた。

「…………見えなくなっちゃった」

「シャッ?」

「なんでもない。見張りをお願いね。労働力を減らさないように」

 レッドブーツはフラフラとモニタルームへ。荒れた海の中でのカニキャッチを強硬したためか、モニタルームの中まで水浸しだ。UNIX盤にもたれてぐったりと寝入るハッカーに毛布をかけてやってから、レッドブーツはいつものように引き出しを開け……そこに秘蔵していた愛しの少女の盗撮ピンナップ写真がなくなっていることに気づき、天井を仰いだ。


◇リザルトな◇

「ムッハッハッハ! 貴様か、カニキャッチ漁を半期も経たぬうちに切り上げて帰ってきたヤバイ級イディオットとは!」

 ネオサイタマ。トコロザワ・ピラー、最上階。跪くレッドブーツを尊大に見下ろし笑うこの男こそ、ネオサイタマの支配者ラオモト・カンである。

 その前にあっても、レッドブーツは平静であった。

「どれ、どれほどのカニを集めてきた? 報告してみよ!」

「コンテナ31個分」

 静かに事実を述べる。ラオモトの笑みが止まり、代わりに静かな唸りが部屋の空気を響かせた。債務者としては破格の収穫量。下手をすれば本業のカニ漁師にも勝る量なのだ!

「……成る程。タイム・イズ・マネーか」

「は」

「ムッハッハッハッハ! 貴様は運がいいな!」

 再びの笑いも先ほどとはまるで色が違う。ラオモトは目を細め、跪く少女を見据えた。

「報告は聞いておる。それ以外にもヨロシサンの脱走ニンジャも捕獲したそうだな」

「は。港にて自発的にヨロシ研究員に回収されました」

 担当の研究員……たしかソラン・イゾセとか名乗っていた……に抱きつき、自らイケスに戻してもらうよう懇願していたあのバイオサメニンジャを思い出し微笑する。さすがにその理由があの怪物めいたニンジャのためとは言うまい。信じられるはずもなし。

「つまりヨロシサンにまた貸しを作れたというわけだ。褒めてやろう」

 レッドブーツの眼前に無造作に万札の束が投げ込まれる。レッドブーツはドゲザめいて低頭し、それを受け取った。

【カニ】31 → 【万札】30
バイオニンジャ捕獲 → 【万札】5
ローンを支払い【万札】11獲得


◆◇◆◇◆


 ……その数十分後のこと。

 ツチノコ・ストリートの裏路地を、こそこそと周囲を見渡しながら往く影あり。5フィートにも届かぬ体躯に幼さを残す顔つき。だがヨタモノが侮ってカツアゲをしようとしてもこの者はものともせぬだろう。なぜならソウカイニンジャであるからだ。名をブライトクロウという。

 ブライトクロウは落ち着かぬ様子で周囲の様子を探る。尾行されている。最初は疑惑に過ぎなかったその思考が確信へと変わる。だが……相手はその影すら見せない。つまり尾行者もまたニンジャ。

(チックショ……さっさと顔を出せ! アタイのソニックカラテでぶちのめしてやる……!)

「やあ」

「エッ、ンアーッ!?」

 突然の背後からの声! コンマ数秒後にはブライトクロウは首根から吊り下げられていた。このシツレイ者はいったいどこのどいつか。怒りの目を向けた彼女の顔は、すぐに驚愕と恐怖に変わる。

 それは男装めいた出で立ちの少女。6フィートを超える長身、中性的な美貌。よく知った顔。冷や汗が流れた。

「ドーモ。ブライトクロウ=サン。レッドブーツです。ゴブサタしてます」

「ど、ドーモ。レッドブーツ=サン……アンタ、死んだはずじゃあ……!?」

「ハハッ、面白いジョークだね。それより頼みたいことがあるんだけど」

 あっさりと笑い飛ばすレッドブーツ。ブライトクロウの背筋に冷たいものが走る。その目がかつて以上に考えの読み取れないものとなっていたからだ。

「シャープキラー=サンのピンナップ、焼き増ししてくれないかな……出先でなくしちゃってさ。今は手持ちが少ないんだけど、キミとボクの仲だし。いいだろ?」

 ブライトクロウは……死を覚悟した。彼女は下劣なパパラッチであり、ニンジャとしての身体能力やソニックカラテを悪用して盗撮に励む性根の持ち主だ。だが、問題はそこではない。

「ご、ご、ゴメン。ゴメンナサイ……あれ、アレはもうないんだよ……!」

「……へぇ?」

「し、仕方ないじゃないか! 本人に見つかっちまったんだ! あ、アタイだってもう少しで死ぬところだったんだぞ!?」

 ブライトクロウは今でも夢に見る。小遣い稼ぎの写真を撮り終え、帰還したアジトで待ち構えていたセーラー服の少女のことを。五体満足で済んだのが不思議だった。

 レッドブーツは無表情に彼女を見つめ……謎めいた笑みを浮かべた。

「……そっか。それじゃ仕方ないな」

「! そ、そうだろ!? だから離して、」

「じゃあ本人のところまで案内してもらおうかな。あの子のことだし、きっとキミのアジトも把握済みだろ? 適当に連絡して呼び出してくれよ。ね?」

「あ、アイエエエ……」

 優しい口調にも関わらず、ブライトクロウは失禁しかかった。レッドブーツは夢見るように笑い、ブライトクロウを吊り下げたままくるりと回った。ダンスを踊るように。


【レッド・ファイト・クラブ】おわり


◇あとがきな◇

 無事生還エンドとなった。note版にあたり描写を大幅に追加したため、本当に生かしておいていいのかわからないやつになってしまったがまあいいだろう。

 下劣なパパラッチ、ブライトクロウも今回で初登場。こいつの盗撮ピンナップのせいでレッドブーツがカニキャッチに飛ばされたという裏話もあるがまあいいや。

 なんにせよここまで読んでくださった皆様、そして楽しいソロシナリオを書いてくださったトラッシュ=サン! ありがとうございました! 気が向いたらまたやるよ!

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