FGO二次創作:試し書き
「……輩、先輩!」
懐かしい響きのチャイムとともに耳に飛び込んできたのは、カルデアに来てから一番聞き慣れた声だった。優しい響き。思わずリラックスしてしまうというか、まだまどろんでもうちょっと聞き惚れていたいような気分になる。
「起きてください、先輩!」
が、声の調子からいってそんなのんびりしてられる状況でもなさそうだ。仕方なく上半身を起こす。
「んー。おはよう、マシュ。……?」
自称『後輩』に挨拶を返してから、私は視界に飛び込んできた光景に首を傾げた。あきらかにカルデアではない。マシュの後ろに鎮座している教卓や黒板を見ればわかる。
……教卓や黒板。
「え? どこ、ここ。どこの学校?」
「やっぱり、一般の教育機関ですよね。学生生活を送られた先輩が言うんですから間違いないです」
やや眉を下げながらマシュが言う。困惑がありありと伝わってきた。私は改めて周囲を見やる。規則正しく並べられた机。後方には雑多にカバンが突っ込まれたロッカー。隅に鎮座する清掃用具入れ。窓から差し込んでくるのは橙色の夕焼けの光。
どこからどう見ても典型的な学校の一教室である。それも放課後。私はその中の最前列、ど真ん中の席に座って居眠りをしていた……ようだ。おかしいな。寝る前はコタツに入ってたはずなんだけど。
「私が寝てる間にレイシフト……?」
「それはありえないと思います。私も気づいたときにはここに……あの、先輩。起きたところに申し訳ないんですけど」
何やらマシュが口ごもった。なんだろう。私はじっと彼女を見つめる。彼女も困ったように見つめ返してくる。
「その……指、離していただいてもいいですか」
「指?」
おうむ返しをしてから手元を見る。なるほど、いつのまにかマシュの人差し指が自分の人差し指に抑えられている。どういう寝癖だ。我ながら器用にもほどがある。
「ご、ごめんね? 今すぐ」
指を離しかけたところで気づく。私が抑えているのは、マシュの指だけではない。さらにもう一つ、小さな−−−−
「十円玉?」
マシュが怪訝そうに覗き込んでくる。確かに十円玉だ。カルデアに来てから、まともに使ったこともない……いや、おかしいな。なんでマシュはこんなものを押さえこんでるんだ。ここにはたった二人しかいないけれど、これはまるで……
馬鹿げた考えが脳裏をよぎった直後。机から風が舞い上がった。
思わず閉じた目を、おそるおそる開く。数秒にも満たないその間に、机には新たな要素が追加されていた。すなわち十円玉の下に敷かれた一枚の紙。描かれているのは鳥居のマークに数字、そして五十音。
「これは……」
「……『こっくりさん』、かなあ」
どう反応したものか。私はなんとなくマシュと顔を見合わせるのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
……という感じから始まる与太話を書こうかなあと思ったけど、どうなんだろうね!
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