忍殺TRPGソロリプレイ【ハウス・オブ・イーヴィル・スピリッツ】#2
◇前置き◇
ドーモ。しかなです。当記事はしかながニンジャスレイヤーTRPGのシナリオを遊んだ結果を元に作成したテキストカラテ……いわゆるリプレイというやつです。気楽に読めるよ。
そして続き物でもある。前回のリプレイはこれ。
前回はなぜか一階に潜んでいたニンジャとの遭遇で終わった。さてこいつはなんなのか? それを今回は見ていこう。よろしくおねがいします。
◇和室にて◇
マーシレスボムが着込んでいた古い武者鎧を脱がすのを手伝ってから……実用品としてはもちろん、美術品としての価値も薄い一品だった……ディスグレイスは改めてドゲザしたニンジャの後頭部を黒塗りのゲタとともに踏みつけにした。
「これは恭順のサインですか? マーシレスボム=サン」
「ハイ。ゴメンナサイ」
「素直でヨロシイ。ではインタビューです。貴方の所属は?」
「し、所属? その、私はこれまで一人でずっとやってきて……」
震えた声が返ってくる。ディスグレイスはこの胡乱ニンジャの背後に控えさせていたエスコートを見やる。彼は小さく首を縦に振った。嘘ではない、というのが共通認識か。
ディスグレイスは踏みつけた脚へわずかに体重を乗せる。
「ここに侵入した目的は」
「い、言う! 言います! 害虫駆除です! 近所のカネモチに頼まれて」
「駆除? ……それを使って?」
エスコートが訝しげに呟き、視線を横にずらした。その先に鎮座しているのは背負式のヨロシデコンタミネイター火炎放射器。少なくとも室内で軽々しく使う類のものではない。
踏みつけにされたマーシレスボムはモゴモゴと続けた。
「なんでも、この辺に異様な数の虫が湧いてきてるらしくて。どうも発生源がここらしいっていうんで、調査と駆除を……巣があれば、そいつで燃やせば済む話ですし」
「虫ねぇ」
ディスグレイスも訝しむ。そのようなことはミノタから聞いていない。いや、あるいは怪奇現象の一つとして片付けていたのか?
思考を巡らせつつも、ディスグレイスはさらに足へ重みを乗せる。
「まあいいでしょう。その害虫駆除業者のニンジャが、なんでこの部屋で鎧を着込んで待ち伏せなどしていたか。その辺の申し開きをしなさい」
「ん、ンアーッ……スミマセン、スミマセン! あいつらが追ってきたのかと思ったんです!」
ディスグレイスは素早くエスコートと視線を交わし、ようやっとマーシレスボムの頭から足を下ろした。そして膝をついて相手の顔を上げさせる。額にタタミの跡を刻んだ涙目の女の顔が見返した。
「あいつらとは? 他にもニンジャが?」
「わ、わからないんですよ。キッチンに入ったら急に湧いてきて……すごい勢いで襲いかかってきたからどうしようもなくて! 咄嗟にここに逃げ込んで隠れてたんです!」
必死に訴えるマーシレスボム。ディスグレイスは数秒の思考の後、彼女がごまかしや嘘の類を並び立てているわけではないと判断した。これでこの場をやり過ごせると考えていたならニューロンがお粗末にすぎる。
これ以上の情報は望めまい。そう結論したディスグレイスはもう一つの仕事に移ることにした。その瞳が妖しい金色に輝き、マーシレスボムを覗き込む。
「ヨロシイ。では最後の質問なのですが」
「アッ……ハイ……?」
「ソウカイヤに入りませんか? 貴女のようなニンジャが、たかが害虫駆除で一生を費やすなどあまりに惜しい……然るべき訓練と経験を積んで、然るべき仕事に当たるべきです。そうでしょう?」
「……アッハイ……」
とろんとした眼差しを返してくるマーシレスボムに、ディスグレイスは微笑を向けた。単純な相手を丸め込むのも独特の趣があってよいものだ。彼女にとってニンジャのスカウトは自分の嗜好を果たせる絶好の機会でもあった。
【回収な】
押入れコモントレジャー
1d6 → 1 違法ドラッグ「シャカリキ」獲得
マーシレスボムをスカウト
◇リビングへ◇
スカウトを成功させたディスグレイスらは怪奇現象の目撃情報が多いリビングへと足を踏み入れていた(マーシレスボムには和室への待機命令を下している。彼女がこれに背くことはあるまい)。
マーシレスボムがあきらかにこの騒ぎと関係がない……どころか被害を受けている以上、事態の解決にはまったく繋がらないからだ。
「ニンジャソウルの反応もない……ように思えます。エスコート=サン、そちらは」
「目立った気配はありませんな。怪奇現象とやらが起こってくれれば、なにか目処がつくかもしれませんが」
エスコートの軽口にディスグレイスは眉をひそめた。小言の一つでも返してやろうと口を開いたそのときである!
……BZZZZZ……BZZZZZ……
耳障りな唸りとともに、突如リビングの隅へ朧げな人影が出現! 両ニンジャは咄嗟にカラテを構える!
「噂をすれば影、ですな」
「貴方が余計なことを言うからでは? イヤーッ!」
ディスグレイス:スリケン→W
(1,2,5,5) 成功
ゆっくりと動き出そうとした朧な人型へ、ディスグレイスのスリケンが突き刺さった。と見えた瞬間! BZZZZZZ! 人型は瞬時に霧散! 散りゆく小さな影を見て、ディスグレイスは目を見張った。
ナムサン、それは羽虫の群れだ。いかなる超常の力を受けたものか、無数の虫が寄り集まって人の形を為しているのである! それが残り三体! いったいどれほどの虫がこの屋敷に集結しているというのか!?
◆羽虫群 (種別:なし)「W」
カラテ 1 体力 1
ニューロン 0 精神力 ー
ワザマエ 0 脚力 6
ジツ ー 万札 0
◇装備やスキル
殺到:
羽虫の群れは猛スピードで飛来し、犠牲者の体に食らいつく
これは『近接攻撃』(基本難易度:HARD)とみなされ、
【体力】と【精神力】にそれぞれ1ダメージを与える。
高速で飛び回る羽虫をパンチや銃弾で撃ち落とすのは、そう簡単なことではない。
このため、PCから羽虫群へのあらゆる攻撃は、難易度が+1される。
ただし、羽虫群の攻撃に対する『カウンターカラテ』は、通常どおり可能である。
「成る程、マーシレスボム=サンを襲ったのは此奴らか! イヤーッ!」
エスコート:スリケン投擲→W
(2,4,4,5) 成功 一体撃破!
エスコートのスリケンも同様に人型に擬態した羽虫の群れへと突き刺さり、雲散霧消せしめる。ワザマエ! BBBBZZZZ! しかしいまだ結集する羽虫たちは恐れる様子もなくディスグレイスらに殺到する!
W:殺到→ディスグレイス
(6)
ディスグレイス回避
(2,4,5,6) カウンターカラテ発動! カエリウチ!
W:殺到→エスコート
(4) 失敗
BZZZ! セイケン・ヅキめいて殺到する羽虫を「イヤーッ!」ディスグレイスの右袖から伸びた細い影が弾き散らす! おお、心臓の弱い読者は目を背けられたし。その袖口から伸びたのはおぞましきバイオ触手だ。ディスグレイスが右腕の代わりに手に入れたバイオサイバネ!
一方のエスコートもセイケン・ヅキめいて迫ってきた羽虫の群れを回避。反撃のカラテを叩き込もうと「イヤーッ!」
ディスグレイス:スリケン→W
(1,2,4,6) 成功! ゼンメツダー!
そこへ飛びきたスリケンが羽虫の群れを散らした。エスコートはザンシンし、スリケンの投擲者……ディスグレイスへと一礼する。
「アリガトゴザイマス。助かりました」
「どういたしまして。……増援はないようですね」
返事もそこそこにディスグレイスはリビング内を見渡す。あれだけいた羽虫の群れはもはやどこにもいない。隙間に潜り込んだか、あるいは外に逃げたか。いずれにせよ、あれが怪奇現象と関わりがあることは間違いあるまい。
「……電気のスイッチを入れる。もしくは水道を開く。今の羽虫どもにならできそうな芸当ですね」
「あれだけ高等な集団行動を取れるのですから、容易いでしょうな。しかし」
「ええ。たかだか虫がそのような知性を持っているとは思えません。裏にニンジャがいますね。間違いなく」
ディスグレイスとエスコートは頷きあい、羽虫の増援が湧いてくることを警戒しつつも調査を再開。何気なく机の下を覗いたディスグレイスは、床に刻まれた爪痕を見つける。「ニンジャ」と読めるそれに眉をひそめた。
ミノタが購入を決める前にもなんらかの超常現象が起こっていた、という情報を思い出す。それもまたニンジャの仕業だったのだろうか。だとすればその原因となるニンジャは、まだ生きている?
ディスグレイスは思考を中断し、立ち上がる。これだけで考えても詮無いことだ。一階に見るべきものはもはやあるまい。彼女はそう判断し、部屋の隅のチェストボードを確認しているエスコートへ口を開いた。
【ドロップな】
部屋隅のコモントレジャー
1d6 → 2 「素晴らしいセラミック皿」獲得(【万札】1相当)
◇二階へ◇
ぎしぎしと軋む階段を踏みしめ、ディスグレイスとエスコートは二階に到達。廊下に出る前に、ディスグレイスは左手にある扉へ目を向けた。
「こちらは寝室。エスコート=サン、あなたの右手にあるのが子供部屋です。提供された不動産の資料ではそのようになっています」
「ふむ……では私はこちらを確認します。ディスグレイス=サンはそちらへ?」
「ええ。いつまでも貴方の後ろについていては時間がかかってしまいますからね」
「はは! 手厳しいですな」
「あなたが過保護なだけです。そちらで異常事態があったらすぐわたくしを呼ぶように」
「ハイヨロコンデー」
エスコートが用心深く子供部屋へ踏み込んでいくのを見送ってから、ディスグレイスは寝室のドアに手をかけ……訝しむ。扉のすぐ向こう。何者かの気配。となれば。
ディスグレイス:【カラテ】判定(難易度HARD)
(2,2,2,5,6,6,6,6) 成功!
「イヤーッ!」「グワーッ!?」
ディスグレイスはカラテを込めてドアを勢いよく開く! 向こう側にいた何者かはそれを避けきれずドアに激突、吹き飛ばされる! 手応えで向こうの出来事を確信してから、ディスグレイスは悠々と足を踏み入れた。
◇寝室、あるいは魔法陣の部屋にて◇
「あら」
部屋の中を一瞥したディスグレイスは声を上げた。まず目につくのは部屋の隅に積み上げられたベッドや家具。そしてガラ空きになった床へ赤いペンキで描かれた(血でないことはニンジャから見れば一目瞭然だ)逆さトリイの魔法陣。
なんのためのものか。それは壁に衝突して気絶している者の風貌を見れば自ずとわかる。リベットやチェーンで飾り立てられた黒のライダースーツ。唯一覗く顔は死体めいた白化粧。得物と思しきフランベルジュが虚しく床に転がっている。
「アンタイ、ブディズム、ブラック、メタリスト。成る程」
◆アンタイブディズム・ブラックメタリスト「クロミ・ハイト」
(種別:モータル/カルマ:善)「AK」
カラテ 6 体力 6
ニューロン 2 精神力 3
ワザマエ 4 脚力 3
ジツ ー 万札 0
◇装備やスキル
○アーキタイプ:カルト
フランベルジュ(大型武器扱い)
『ウイルス入りフロッピー』
確かめるように口の中で呟いてから、ディスグレイスは顔をしかめた。かつて本当のミコー・プリエステスであった彼女は今、ブッダに対して非常に屈折した思いを抱いている。にも関わらず、ブッダに唾を吐きかけるようなこの手の連中はどうにも好きになれないのだった。
見ればこのブラックメタリスト、まだ若い少女である。あとでインタビューついでにネンゴロにしてもいい。が、その前に。
「まずは貴女から話を聞くべきなのでしょうね」
「ンーッ! ンーッ!?」
逆さトリイ魔法陣の上で簀巻きにされ、投げ出されている女へディスグレイスは歩み寄る。女は遠ざかろうと身を動かしているものの、それでは逃げようもあるまい。
ディスグレイス:【ワザマエ】判定(難易度NORMAL)
(1,3,4,5) 成功
「大人しくしなさいな。とって食おうというわけではないのですから」
穏やかな声で宥めつつ、ディスグレイスは女の戒めを解いていく。「プハッ」猿轡を外した瞬間、女が大きく息を吸い込んだ。そしてへたり込んだままディスグレイスを見上げる。
「そ、その……アリガトゴザイマス。でも、あなた……ニンジャ、ですよね?」
「そのとおりです。ドーモ、はじめまして。ディスグレイスです」
ディスグレイスはオジギを返す。ごくりと唾を飲んだ女は、それでも震える声でアイサツを返した。
「ど……ドーモ。り、リクヨ・キヌタです……」
◆リクヨ・キヌタ(種別:モータル/カルマ:善)「JD」
カラテ 4 体力 4
ニューロン 6 精神力 6
ワザマエ 5 脚力 3
ジツ ー 万札 0
◇装備やスキル
○霊媒体質
ディスグレイスは目を細める。怯えてはいるものの、ニンジャを前にNRSに陥る様子もない。身なりからしてネオサイタマ大学あたりの大学生か。そのバストは豊満だ。ではなく。
「貴女はここでなにを? ここの怪奇現象を体験しにでも来ましたか?」
「い、いえ、違う……それは、もう、前のときに済ませて……違う! あの、お願いします! ユタンポ=サンを、ユタンポ=サンを助けてください!」
「……ユタンポ?」
足元に縋りついてくるリクヨに、ディスグレイスは眉をひそめた。そのユタンポなる人物は何者か。ジツで落ち着かせてから事情を聞かなければ……
「アアアダブ!」「ブッダの手先を殺せ!」
その矢先に廊下から聞こえてきた叫びに、ディスグレイスは舌打ちした。他にもブラックメタリストの連中がいたか。身を竦ませるリクヨと視線を合わせ、囁く。
「ご心配なく。わたくしが片付けてきます。貴女は……そうですね、そこのブラックメタリストの娘を拘束しておいてください。できますね?」
「は、ハイ」
「片付けた後にゆっくり話を伺います。では」
簡潔な指示を与えてから、ディスグレイスはそのまま廊下へと駆け出した。
【ハウス・オブ・イーヴィル・スピリッツ】#2終わり。#3へ続く
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