忍殺TRPGソロリプレイ【オロチ・メイクス・フェイク・トゥ・プラウジブル・ニュース】前編

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はしかながニンジャスレイヤーTRPGのシナリオを遊んだ結果を元に書き上げたテキストカラテ……所謂リプレイというものになります。気楽に読めるよ。

 今回挑戦させていただいたのはくりーむ=サンの【フェイク・ニュース・アンド・フェイク・ガーズ】です。

 ヘルカイトと協力? してネコソギ・ファンド重役? を護衛する……大雑把にいうとそのようなシナリオです。

 ニュービー3〜4名、ないしベテラン1〜2名に向けた難易度となっているため、今回はベテラン1名で挑戦します。オープニングで発表だ。

 では早速いってみよう。よろしくおねがいします。



◇オープニング◇

 ……ある日のことだ。タタミ100枚が敷き詰められた完全防音の会議室にて、豪放な笑い声が木霊した。

「ムッハハハハハ! 良かろうヘルカイト=サン! その案でやってみるがいい! タイムイズマネーだ!」

「ハイ、ヨロコンデー!!」

 オフホワイト装束のニンジャが跪き、オジギする。外では重金属酸性雨が降り注ぐ。しかし窓から見える雲の隙間には、珍しく赤い空が顔を覗かせていた。


◇◆◇◆◇


 その日の深夜0時。トコロザワピラーの一室には多くのソウカイニンジャが参集していた。その全員が緊急のIRCノーティスを受け取った者たちだ。壁際にはクローンヤクザが立ち並び、前方に黒板めいて掲げられたワイド・スクリーンはまだ沈黙を保つ。

 ……そして今、一人のニンジャが会議室に足を踏み入れる。思い思いの席に座り談笑していたニンジャたちが口をつぐみ、入室者を見やった。

 入室者……改造ミコー装束の女ニンジャは、金色に輝くヘビめいた瞳で室内を睥睨する。視線がかち合いそうになったニュービーの一人が慌てて顔を逸らした。

 女ニンジャはそれに対し何も言わぬ。二人の取り巻きニンジャを引き連れていた彼女は、最後列の空いている席に座ろうと

「あなたの席はこちらです。ディスグレイス=サン」

 したところを、ワイドスクリーン横に立つオフホワイト装束のニンジャに呼び止められる。彼女はややきまり悪そうにその言葉に従い、最前列へ向かった。

ニンジャ名:ディスグレイス
【カラテ】:8          【体力】:18/18
【ニューロン】:10      【精神力】:11/10
【ワザマエ】:4         【脚力】:4
【ジツ】:6(カナシバリ)   【万札】:4
近接攻撃ダイス:8
遠隔攻撃ダイス:4
回避ダイス:10

【特筆事項】:
【名声】:14
【DKK】:3
風呂により【精神力】+1

【サイバネ】:
▲バイオサイバネ腕(片腕)
▽吸血バイオ器官

【スキル】:
●連続攻撃2、●時間差、●マルチターゲット
◉翻弄
★カナシバリ・マスタリー
★ブンシン・ジツ(Lv3)
★レッサー・イビルアイ
★★コブラ・ゲン・ジツ
★★★半神的存在:
このニンジャの【体力】は【カラテ】+【ニューロン】となる
★★★不滅
○信心深い

【説明】
 右腕を五本の冒涜的バイオ触手に置換したニンジャ。
 バイオ触手と強力なカナシバリ・ジツで相手を束縛・屈服させることを好む。
 元は自らの性的嗜好を苦に自殺を試みたミコー。現在はもはや堕落あるのみ。

(おい、ディスグレイス=サンまで来てるぜ)

(マジかよ……相当ヤバイミッションなんじゃねえのか)

(相変わらずすげえ豊満「イヤーッ!」「グワーッ!?

 最前列に向かう途中にも、ニュービーと思しきニンジャたちの囁きが耳に入る。途中のカラテシャウトは彼女の取り巻きの一人、小柄な少女ニンジャが蹴りを入れたものだ。

「よしなさいな、キールバック=サン! ……スミマセン、ヘルカイト=サン」

 ディスグレイスはその振る舞いを叱責し、腕組みするオフホワイト装束ニンジャへ頭を下げた。なにしろ彼こそソウカイ・シックスゲイツの一員たるニンジャ。シツレイがあってはよろしくない。

 幸いにも、彼は首を横に振った。

「ノープロブレム。むしろ今のは向こうに非があります。……そこの貴方。自分が何のためにここへ参集したかを忘れないように」

「は、ハイ。ゴメンナサイ……」

 脇腹を抑えつつ座り直すソウカイニンジャ。ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン……ディスグレイスがヘルカイトの眼前の席に座ると同時、室内に鐘の音が響き照明が落とされた。

 そしてワイドスクリーンに映し出されたのは、ミラーめいた光沢のあるニンジャ装束を身に纏う、尋常ならざるアトモスフィアのニンジャ。会議室に緊張が走る。このニンジャの名を知らぬものなど、ソウカイヤには存在しない。

『ドーモ。若きソウカイニンジャの皆さん。ゲイトキーパーです』

 ソウカイヤ最古参の1人にして、シックスゲイツの創設者は厳かにアイサツした。間近でその顔を見ることとなったディスグレイスも緊張を隠せない。

 彼女とて相当の場数を踏み、スカウト部門の筆頭補佐という立場に登り詰めたニンジャ。しかし彼とは地上と雲上ほどのカラテ力量がある。それほどのニンジャが司令役として顔を出すとは……!

『今回君たちを呼んだのは、明日執り行われるネコソギ・ファンド社重役会議の警護をしてもらうためだ』

 一瞬だけ会議室がどよめいた。ネコソギ・ファンド。ソウカイヤ首領たるラオモト・カンがチェアマンを務めるメガコーポである。

『先日、ダイダロス=サンがネットワーク上でネコソギ・ファンド社襲撃の取引現場を抑えた。依頼人の方は現在探索中だが、依頼を引き受けた傭兵はすでに判明している』

 ピポッ。分割されたスクリーン上に表示されたのは、中折れ帽が特徴的な男の顔写真。下には『アーバンホエール』『フリーランス傭兵』『ピストルカラテの使い手』の注釈が躍る。

『もしアーバンホエール=サンが明日に控える会議を妨害してきた場合、それによって引き起こされる社会的、経済的損失は甚大なものだ。故に私は、その会議に参加するネコソギ・ファンドの社員全員にニンジャの護衛を就けることに決めた』

 会議室のざわめきが大きくなる。口にこそ出さねど、ディスグレイスも内心では驚愕していた。いくら狙いがネコソギ・ファンド重役とはいえ、これだけの数を護衛につけるとは。

『重役達が乗るリムジンは襲撃される可能性が高いため、シックスゲイツであるヘルカイト=サンを充てる。逆説的に君たちが充てられるのは襲撃される可能性が低いリムジンということになるが、けして手を抜いてはいけない。君たちの任務は、ネオサイタマの秩序を守る崇高なものである。それを肝に銘じておきなさい』

 その言葉を皮切りに、壁際待機していたクローンヤクザたちが出席ニンジャたちにリストを配り始めた。手渡されたリストを、ディスグレイスは一瞥する。

護衛対象:アシタダ・ヤタウジ
年齢:39歳
身長:169cm
体重:51kg
性別:男性
役職:係長
◆注意事項な◆
1.敵の乗る車が接近していることに気付いたとしてもそれを破壊してはならない。大破した車は渋滞を引き起こし経済活動の妨げとなる可能性がある。
2.どれほど危険な状況に置かれたとしても、車を停止させてはならない。到着時刻の遅れによりネコソギ・ファンド社重役会議の開始が遅れた場合、看過できない経済的損失が発生する。
3.任務中不測の事態が発生した場合はヘルカイト=サンに連絡すること。
◆破ったらケジメ重点◆

「作戦実行は早朝だ。以上。明日の会議が、何ごともなく円滑に執り行われることを期待している」

 ブツン。その言葉を最後にスクリーンが暗転した。同時に会議室に光が戻る。いくつかの吐息が唱和し、数人のソウカイニンジャが退席を始めた。

 ディスグレイスは後方に座っていた二人……すなわち、側近たるキールバックと自身が指導するニュービーへと振り向く。

「貴女がたの護衛役はどなたです? 念のため教えてくださいな」

「ええと、ヨリチュネ係長という方みたいですね。貴女はどうですか、シングルラブル=サン?」

「アッ、キールバックのオネエサンと同じッスね! ヨロシクオネガイシマス!」

 嬉しげに笑うニュービー。ヤクザスラックスにヤクザジャケットを着込んだ少女だ。ディスグレイスは一息つく。キールバックと共同であれば、万が一の事態でも問題あるまい。

 ディスグレイスは立ち上がり……ふとヘルカイトを見やる。退室しようとしていたニュービーたちに声をかけていた彼は、自然な様子で彼女たちの元へ。

「ディスグレイス=サン。シツレイですがこの後のご予定などは?」

「いいえ。特には」

「ならばトレーニングフロアに参集いただけますか。私はニュービーとともにトレーニングを行うつもりです」

「成る程」

 ディスグレイスはキールバックらを一瞥する。仮に明日何事もなかったとしても、シックスゲイツから直接指導を受ける機会などそうそうない。であれば。

「ハイヨロコンデー。ご指導のほど、よろしくお願いします」

「グッド。では行きましょうか」


◇トレーニングフロア◇

「GRRRR!」「イヤーッ!」「Arrrgh!?」

「GRRRR!」「イヤーッ!」「GRRRR!」「グワーッ!? タスケテーッ!」

 トコロザワピラー13回、トレーニングフロア! トレーニング用に放たれたメキシコライオンたちとカラテを振るうニュービーたち。そのうち一人がウカツにも爪の一撃を受けて倒れ込む。食事制限を受け飢えていたメキシコライオンは、目をギラつかせその喉元を

「イヤーッ!」「アバーッ!?」

 食いちぎらんとしたところ、横手から伸びた『なにか』に首をへし折られる。当然のごとく即死!

「ハァー……大丈夫ですか?」

「アイエッ……アッ、その……アリガトゴザイマス……」

 ライオンの死骸を真横に放り、ディスグレイスは溜息混じりに尋ねる。動揺した様子で頷くニュービーにさらに溜息を重ね、視線で立つように促した。

「いかに相手が獣であろうと、一瞬でも油断すれば命を取られます。明日、仮に貴方の警護するベンツが襲われたとして……救い手は現れません。わかりますか?」

「エッ? アッハイ……」

「だとしたらいつまでそこでへたばっているのです。さっさと立つ! そして明日に響かないよう帰ってスシを食べて寝なさい!」

「は、ハイ! ゴメンナサイ!」

 バネ細工めいて跳ね起きたニュービーは背筋を伸ばして返事! 慌てふためいてトレーニングルームを後にする。

 ディスグレイスは三度溜息をついた。その右袖が虚しく揺れる。なにも知らぬ者からすれば、隻腕のように見えたかもしれない。彼女はふと、自分の指導するシングルラブルを見やった。

「イヤーッ!」「Arrrgh!?」

 何の問題もなし。たった今、自身の左右に浮かぶ朧な影とともにライオンを打ち倒した。ディスグレイスは頷く。多少は仕上がったか。あれは鍛えてやれば伸びるタイプ。少し指導をしてやるか。

「イヤーッ!」「「「「グワーッ!?」」」」

 そのときだ。横合から飛んできたニュービーを、ディスグレイスは無造作に左手で掴んだ。「す、スミマ」「イヤーッ!」「グワーッ!?」そして床へ投げ捨てる! 無慈悲!

 原因は? 問うまでもない。「シューッ……!」イクサ用フィールドの中心で一人ザンシンするあのシックスゲイツだ。周囲には三人のニュービーが伸びている。

「私がなぜシックスゲイツであるか。骨身にしみたでしょう、ニュービー? 命が惜しくば、思い上がらないことです」

 冷酷に告げたヘルカイトは、気絶するニュービーたちを一人一人蹴り起こし……やがて、ふと気づいた様子でディスグレイスを見やった。

「おや、シツレイ。……気骨のある者は増えたようですが、カラテが追いついていないようですね。嘆かわしい」 

「さすがシックスゲイツは厳しくていらっしゃる」

 ディスグレイスは微笑した。同時にその言葉に潜むトゲも感じ取っている。ヘルカイトとて知らぬわけがない。ニュービーの教育はディスグレイスも所属するスカウト部門の仕事である。

 ヘルカイトは真正面から眼前の女ニンジャを凝視した。その瞳に宿る金色の妖光を恐れるそぶりもなく。

「これではトレーニングになりません。彼らにとってはともかく、私のね」

「それはそれは」

「……ディスグレイス=サン。ここだけの話ですが、貴女は翌日一人で護衛を務めることとなります」

 ディスグレイスは小首を傾げた。彼女もまた、シックスゲイツから視線を逸らすようなことなどしない。

「まあ、そうだったんですか? 存じ上げませんでした。ウフフ」

「……つまり、貴女のカラテ次第では私が手を煩わされることとなります。わかりますか?」

 空気がわずかに張り詰める。それを肌で感じたのか、メキシコライオンを撃破し休憩を取っていたニュービーたちが顔を上げた。

 ディスグレイスが笑みを深める。

「申し訳ありません、ヘルカイト=サン。わたくし学がないもので……キョート風の作法には疎いのです。率直にお願いできますか?」

「……ヨロシイ。ディスグレイス=サン、私と立ち会いなさい。トレーニングも兼ねて、貴女のカラテを測ります」

 空気が張り詰め、トレーニングフロアに騒めきが起こる。ディスグレイスは……微笑を保ったまま、イクサ用フィールドへ足を踏み入れた。

「ハイ、ヨロコンデ」


◇スパーリング:1ターン目◇


画像1

「ドーモ。ヘルカイト=サン。ディスグレイスです」

「ドーモ。ディスグレイス=サン。ヘルカイトです」

 イクサ用フィールドを取り巻くニュービーたちの前で、スカウト部門筆頭補佐とシックスゲイツは静かにアイサツを交わした。組織での立ち位置がどうあれ、アイサツは絶対だ。古事記にもある。

◆ヘルカイト (種別:ニンジャ)
カラテ      9		体力	10
ニューロン    6		精神力	6
ワザマエ    10		脚力	4		
ジツ        3		万札	10

◇装備や特記事項	
 装備:タケヤリ(近接武器)、背負式カイト(スキルの使用に必要)
 スキル:『●連続攻撃2』、『●連射2』、『緊急カイト脱出』、『カイト・ダイブ』
	
『緊急カイト脱出(完全脱出)』:
 移動の代わりに使用。【精神力】1消費。
 そこが屋外である場合、即座にマップから脱出できる。

『緊急カイト脱出(一時撤退)』:
 移動の代わりに使用。高く飛び上がり、一旦マップから消える。
 次のターンの自分の手番の開始時に『カイト・ダイブ』によって出現する。
 『緊急カイト脱出』を使わず、いきなり『カイト・ダイブ』を使ってもよい。

『カイト・ダイブ』:
 移動の代わりに使用。ヘルカイトは空高く飛び上がった直後、急降下攻撃を繰り出す。
 マップ内で視界が通っている好きな場所へと、直ちにヘルカイトを移動させること(これを着地点と呼ぶ)。
 着地点と隣接する敵1体は、この移動終了時に、自動的ダメージを1受ける(回避は『U-HARD』で可能)。
 ヘルカイトは『カイト・ダイブ』終了後に、そのまま通常どおり近接攻撃を繰り出せる。

「このスパーリングはイポンを取った方の勝ちとします。せいぜい本気を見せてみなさい」

特殊ルール
・体力に1ポイントでもダメージを受けた場合、そのキャラクターは戦闘から脱落する。この戦闘で【精神集中による自動成功】は使用できない。また、この戦闘に置いて【サツバツ!】が発生した場合、ロールの結果は後遺症の残らない【1】で固定される。
・作戦に影響がないよう、トレーニング中に受けたダメージは即座に治療される。また、消費した精神力も即座に回復する。

「もちろんですとも。シックスゲイツを相手に手加減など……」

 ディスグレイスがクスクスと笑う。その瞳から金色の妖光が溢れた。ヘルカイトは油断なくカラテを構える。

「おい、どっちが勝つと思う」「賭けようぜ」「やっぱヘルカイト=サンだろ」「けどディスグレイス=サンもザイバツニンジャを爆発四散させたっていうぜ!」「俺はプライドの高い女が這いつくばってるところが見た「イヤーッ!グワーッ!?

 不用意な発言を漏らした野次馬ニュービーがシングルラブルに殴り飛ばされる! それと同時、ディスグレイスが瞳を一際強く輝かせた。

「……全力を尽くさせていただきます。イヤーッ!」

 ざわり、とフィールドが揺れる。「……これは!? イヤーッ!」ヘルカイトは跳躍、背中のカイトを展開させ滑空開始! いったいなにが起こったか!?

「アイエエエ!?」「コブラ!? コブラナンデ!?」

 ニュービーの数名が悲鳴。その足元に何の前触れもなくヘビが沸いたからだ。ヘルカイトは舌打ちする。なんらかのゲン・ジツ!

 そのまま滑空攻撃へと移ろうとしたヘルカイトは再度目を見張ることとなる。フィールド上、五人のディスグレイスが微笑を浮かべこちらを見上げていたからだ!

ディスグレイス:翻弄
【精神力】11→10
近接攻撃ダイス+4
ディスグレイス:コブラ・ゲン・ジツ
M10→9
(2,2,2,2,2,3,3,3,3,4,4,5,5,5,6,6) 成功
ヘルカイト攻撃難易度+1
ディスグレイス:ブンシン・ジツ
M9→8
(1,1,1,1,1,1,1,2,3,3,4,4,4,5,5,5) 成功

画像2

「ブンシンだと……! イヤーッ!」

 怯むことなく急降下! タケヤリが朧な影を貫いた。ヘルカイトは舌打ちする。偽物!

「イヤッ! イヤーッ!」

 間髪入れずにカラテ! 初撃の狙いが逸れたことを悟り、彼は顔をしかめた。宙に前触れもなく現れた小さなヘビが嘲笑うかのように消える。もう一撃のカラテも手応えなし! 幻影!

ヘルカイト:カイト・ダイブ
幻影! コマ一つ消滅
ヘルカイト:カラテ→ディスグレイス×2
(2,3,3,4,4) 失敗!
(3,5,6,6)幻影! コマ一つ消滅


◇2ターン目◇


画像3

 ヘルカイトは討ち漏らしたディスグレイスの幻影を睨み……すぐさま目を見開いて片腕を目の前へ掲げる!

「イヤーッ!」

 そこに照射されたのは金の妖光! ディスグレイスの得意とするカナシバリ・ジツだ。すなわちこれが本物!

「「「イヤーッ!」」」

 綺麗なユニゾン・カラテシャウトを響かせ、三人のディスグレイスがヘルカイトへ殺到する。それぞれの右袖から伸びるのはおぞましきバイオ触手!

「チィーッ! イヤーッ!」

 ヘルカイトは冷静にこのカラテを捌く。眼前のディスグレイスのバイオ触手を弾き、迫る二つの幻影をタケヤリで突き消した。タツジン!

 だが息つく暇などない。彼の周囲にまたもディスグレイスの幻影が立ち上がる!

コマ消失 ディスグレイス攻撃ダイス+2
ディスグレイス:カナシバリ
(1,1,1,1,2,2,3,3,4,4,4,4,4,5,6,6)
ヘルカイト:回避
(1,5)
ディスグレイス:集中バイオサイバネ
(1,1,3,3,4,5,6)(1,2,2,3,5,6,6)
ヘルカイト:回避
(1,3,3,5)(2,2,4,6)
ディスグレイス:ブンシン
【精神力】8→7
(1,1,1,1,1,1,1,2,2,2,3,3,3,4,5,5) 成功

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「……これほどまでにジツを練り上げていたとは!」

「全力で参ります」「わたくしはそのように言いましたよ?」「卑怯とは言いませんよね」「ヘルカイト=サン」

 幻影が声を投げかけてくる。否、それは足元に湧くコブラの幻影から発せられているような……そのような錯覚さえ生じさせた。

「イヤーッ!」

 ヘルカイトは急上昇、急降下! 手近にいたディスグレイスを背後から突き刺し掻き消す! いかに幻影とはいえ、これを残せば敵のカラテはより厄介なものとなる。ヘイキンテキを保ち、カラテあるのみ!

「ヌゥ……ッ!?」

 そのタケヤリの穂先にコブラが巻きついているのを見てとり、ヘルカイトは呻いた。幻影だ。無視すべし……本当にそうか?

「い、イヤーッ!」

 コブラを払い落しつつタケヤリを振るう! しかし、ナムサン。余計な動作を付け加えてしまったがためにそのカラテは虚しく宙を切る!

ヘルカイト:カイト・ダイブ
幻影! コマ一つ消滅
ヘルカイト:カラテ→ディスグレイス×2
(2,3,4,4,4) 失敗!
(1,2,3,3) 失敗!

(……キールバックのオネエサン! これ、やれちまうんじゃ……! オレ、ディスグレイスのオネエサンに賭けてきます!)(イヤーッ!)(グワーッ!?)(イディオット。お姉さまの直属たる意識を持ちなさい、シングルラブル=サン)(す、スンマセン……)


◇3ターン目◇


2ターン間両者ノーダメージ
アトモスフィア:ハードモードへ移行

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「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 カナシバリの妖光を浴び、ヘルカイトは顔をしかめる。認めざるを得ない。シックスゲイツたる自分がフーリンカザンを取られ後手に回っている。侮りが過ぎたか。

「「「イヤーッ!」」」「……イヤーッ!」

 ディスグレイスの幻惑的カラテを、ヘルカイトは最小限の動作で回避し、捌く。おお、と観戦ニュービーの間で歓声が沸いた。それを注意する余裕すらない!

 消えたはずの幻影が再び周囲に湧き上がる。ヘルカイトは血走った目で睨みつけた。これほどのジツの行使。長く続くはずもない。だが……コンマ数秒のやりとりが行われるニンジャのイクサにおいて、持久戦狙いが如何に愚かなことか!

コマ×3消失
ディスグレイス攻撃ダイス+3
ディスグレイス:カナシバリ
(1,1,1,2,2,2,3,3,3,4,4,4,5,5,6,6)
ヘルカイト回避
(1,3) 【精神力】6→5
抵抗!
(1,2,3,3,3,5)
ディスグレイス:集中バイオサイバネ
(2,2,3,3,4,4,5,6)(1,1,3,4,4,5,6)
ヘルカイト:回避
(1,2,3,6)(1,1,4,6)
ディスグレイス:ブンシン
【精神力】7→6
(1,1,1,1,1,1,3,3,4,5,5,5,5,5,6,6) 成功

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「イヤーッ!」

 ヘルカイトは飛び、背後のディスグレイスを急降下刺突で仕留める。まとわりつくコブラの幻をものともせず、さらに二体のブンシンを消し飛ばした。

 そして残った二人のディスグレイスへと向き直る。ほぼ同時にこちらへ歩み寄るディスグレイスたちへ、ヘルカイトはタケヤリを構えた。


◇4ターン目◇


両者ノーダメージ
アトモスフィア:ウルトラハードへ移行!

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 ディスグレイスはヘルカイトを見据える。その動きを縛らんとカナシバリを放つ。最小限の動作で避けられたが、気にもならない。ディスグレイスは笑った。

 こうまでジツを行使して戦うのは初めてのことだ。それでも一撃も浴びせられていない。さすがはシックスゲイツの俊英。身体が熱くなる。もはや体温が何度あるかもわからない。

 心地よい熱を感じながら、ディスグレイスは疾る。その横に幻影が並ぶ。ヘルカイトは油断なくこちらを一瞥し「イヤーッ!」鋭い突きを繰り出した。避けきれぬ……

「ザンネン」

 ヤリを受け消え去る幻影を横目に、ディスグレイスはワン・インチ距離へ。咄嗟にタケヤリを捨てカラテを構えようとしたヘルカイトへ「イヤーッ!」触手が伸びる!

分身消失
ディスグレイス:攻撃ダイス+1
ディスグレイス:カナシバリ
(1,1,1,2,2,3,3,3,3,4,4,5,5,6,6,6)
ヘルカイト回避
(3,4,5)
ディスグレイス移動後バイオサイバネ
(2,2,3,4,6,6)(1,2,3,5,5,5,5)
ヘルカイト回避
(2,2,4,5)(2,2,6)
サツバツ1固定
残虐ボーナス 1d3→2 【万札】0→2
ヘルカイト【体力】9→6
吹き飛びダメージ【体力】6→5
トレーニング終了

「グワーッ!?」

 オフホワイトの風が、野次馬ニュービーたちの頭上を吹き抜けていく。「グワーッ!」CRAAAAASH! 直後の衝突音に、一同の視線が集まった。トレーニングフロアの壁に亀裂を作り、オフホワイト装束のニンジャがよろよろと立ち上がる。

 触手を右袖の中に収めたディスグレイスがザンシン。その周囲、コブラの幻影が陽炎めいて宙に溶けて消えていく。

「……アリガトゴザイマシタ。ヘルカイト=サン。胸を貸していただく結果となりましたね?」

「ぬ、ヌゥゥゥーッ……!」

 ヘルカイトが苦々しげに睨み返し……やがて唐突に踵を返した。

「……ええ。スカウト部門筆頭補佐のカラテ、たしかに測らせていただきました。明日は私の手伝いも必要ないでしょう……!」

「そうですか。お互いにベストを尽くしましょうね。……もうお帰りで?」

「充実したトレーニングをドーモ、ディスグレイス=サン! 私はこれで切り上げ明日に備えます! では!」

 足音も荒く、ヘルカイトがトレーニングフロアから退室!「アイエッ!?」トイレから戻ってきたらしいニュービーが、そのキリングオーラに圧倒され危うく失禁しかけた。

 ディスグレイスは深く息をつく。礼を言うのはこちらでもあった。ニュービーたちの驚愕とソンケイの眼差しを感じつつ、彼女は昂るニューロンの冷却に努める。

・ディスグレイスはベテランであるため、『ヘルカイトに勝利した』パターンのボーナスを獲得とする
【名声】14 + (1d6 → 5) → 19
【ワザマエ】の成長の壁を先んじて突破
【ワザマエ】上昇判定
1d6 → 5 > 4 成功
【ワザマエ】4→5

「お姉さま!」

 騒めくニュービーたちの中から駆けてくる影が二つ。キールバックにシングルラブルだ。キールバックが差し出したテヌギーを、ディスグレイスはありがたく受け取った。

「お、オネエサン! すげえカラテでした! シックスゲイツを相手に、あそこまで……!」

「ええ……やれるものですね。あそこまでニューロンを酷使したのは久しぶりです。貴女もきっとこの高みにこれますよ、シングルラブル=サン。……ところでキールバック=サン」

「なんですか、お姉さま?」

 きょとんとこちらを見上げる少女へ、ディスグレイスは笑みを浮かべる。艶やかな。

「トレーニングを切り上げませんか? わたくし、昂ってしまって」

「ア……は、ハイ。お姉さまがそう仰るのであれば……」

「? オネエサン、オレもついていっていいですか!」

 顔を赤らめ俯くキールバック。それと対照的に無垢な笑みを向けてくるシングルラブルに、ディスグレイスは苦笑を漏らした。ひとまず説明をしてやる必要がある。それでも自分の『クールダウン』の相手をするかどうかは、本人の意思に任せるとしよう。


【オロチ・メイクス・フェイク・トゥ・プラウジブル・ニュース】前編終わり。後編へ続く

 


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